Trick and Treat【不二菊】
“トリック オア トリート お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうよ”
これが一般的なハロウィーンの合言葉。
だけど俺の恋人、不二周助は違う…
「トリック アンド トリート!お菓子をくれてもイタズラしちゃうよ!」
…と朝っぱらから元気良く笑顔で言ってきた。
「何それ?」
俺は不思議そうに不二を見る。
「ん?僕が考えたハロウィーンの合言葉。…どう?お菓子くれる?」
さっきよりも笑顔を増して俺に顔を近づける。
「…それって、お菓子あげてもイタズラするってことだろ?…ならあげても意味ないじゃん。」
不二から目線を反らして、読んでいた本に目を向ける。
「クスッ…くれないと、もっとひどいイタズラしちゃうかもよ…?」
不二のその言葉がちょっと気になって、また不二に目を向ける。
「…例えば?」
「例えば……英二にメールで連続で“好き”って打って送ったり…電話越しにずっと愛を囁いたり…全校放送で英二の事が好きだって流し…」
「ああああああ!!!!ち、ちょい待ち!…だんだんひどくなってるよ~!!」
最後まで聞くのが怖くなって、不二の言葉を遮った。
「だから言ったじゃない?…もっとひどいイタズラするよって!」
ニッコリ笑顔でそう言われて、俺は不二の顔がまともに見れなくなった。
そして、渋々鞄の中から用意していたお菓子を取り出した。
「…ほい……。心配しなくても…ちゃんとあるから…//////」
それは、俺が昨日手作りで作ったクッキー。
不二のためにちょこっと夜更かしして作った。
「…英二……。ありがとう。」
不二はクッキーの入った袋を嬉しそうに俺から受け取ると、急に俺にキスしてきた。
「ん………/////////」
急すぎて頭が回らないけど、嬉しいってことだけは確か…。
「イタズラ完了!」
俺の唇から離れて、またニッコリと笑顔を見せて言った。
「…もぉ~/////」
俺は頬を膨らましながら不二を睨んで、笑顔になった。
「…不二?…大好き…。」
「うん。僕も、大好き。」
ちょっと恥ずかしいけど、大好きな人に想いを告げるのって、いいな…なんて思ってしまう自分がいた。
END