弱い自分【塚不二】
今日君に告げられた言葉…
ずっと僕の中で木霊してるよ…
『腕を治すためドイツに行く。』
『え…』
その言葉を聞いて、僕はどんなに驚いただろう?
『…そうなんだ。気を付けてね。』
その時僕は笑ってたけど、ホントは辛かったんだ…。
部活中ずっと君のことばかり気にしてた。
―君の姿、しばらく見られなくなるんだね―
そう思うと、胸が苦しくなった。
手塚がドイツに行ってから、もうすぐ2週間が経とうとしている。
僕は教室で英二と話していた。
「不二は強いよな~。俺だったら大石と離れちゃったら泣きつくもん…。」
大石と付き合っている英二は、僕の顔を見ながら言った。
「仕方ないよ。腕を治すためなんだから。」
やっぱりこの時も笑ったけど、心のどこかで表情と気持ちの矛盾に気がついていた。
ある日、部屋の掃除をしていたら、小さな封筒が引き出しから出てきた。
「あれ?何かな?」
中身を見てみると、何枚か写真が入っていた。
それを取り出してみると、見覚えのある顔が写っていた。
「…これ………」
そこには、手塚と出掛けた時僕がカメラで写真を撮った時のものだった。
写っていたのは手塚。
相変わらず笑顔じゃないけど、一番手塚だとわかる写真ばかりだ。
ポタッ…ポタッ…
気がついたら、僕は写真に涙を落としていた。
堪えても堪えてもどんどん溢れてくる涙。
「……僕…英二が言うほど………強くないよ……」
ベッドにドスンッと腰かけ、写真を抱きしめる。
手塚との思い出が、一気に僕の頭の中に蘇った。
もう二度と会えないわけじゃないのに、無性に切なくて、やるせない気持ちになる。
…とその時……
♪♪♪♪~♪♪~♪♪~♪♪~
突然携帯が鳴り出した。
ディスプレイの画面には手塚の名前。
ドイツは今、夜中のはずなのに…
嬉しさと驚きの混ざった気持ちで、通話ボタンを押した。
「……手塚…?」
『不二、俺だ。今大丈夫か?』
手塚のいつもの声…
それを聞いただけで心が落ち着く。
「うん。大丈夫だよ?どうしたの?」
『?不二、今泣いていたのか?』
ズキンッ
手塚には知られたくない。
「ううん。ちょっと風邪気味なんだ。」
…手塚に嘘ついてしまった…。
…でも、
『嘘を言うな。声が震えていたぞ。』
ばれないようにしたつもりだけど、僕のほんの僅かな変化も、手塚にはすぐにわかってしまう。
それが嬉しくて、また涙が出そうになった。
「ゴメンゴメン。…で、どうしたの?」
『不二。お前に言っておきたいことがあってな…。』
急に改まった声で言う手塚。
「何?」
『どんなに離れた場所でも、俺はいつでもお前のことを想っている。…だから心配せずに俺が帰るのを待っていろ。』
受話器から聞こえた手塚の言葉。
僕の瞳からは、また涙が出てきた。
でも、この涙は嬉し涙だった。
「…うん!」
君の言ってくれた言葉を信じて、僕は君の帰りを待ってるよ。
帰ってきたらいっぱい相手してよね!手塚!
END