照れ隠し【リョ海】
真冬の放課後の空の下―
青学男子テニス部は今日も練習をしている。
全国大会が終わり、3年生も引退した。
時間にゆとりもでき、3年生のいない部活にもようやく慣れ始めた頃、海堂の厳しい声が聞こえた。
「お前ら!ペースが乱れてるぞ!!」
「は、はい!!」
部長という重大な役柄になった海堂は、より気合いを入れて指示した。
そんな中、海堂に近づいてくる人物がいた。
「薫先輩♪」
海堂の恋人の越前リョーマだ。
「っ!//////おい越前!…部活の時にその呼び方で呼ぶな!!/////」
顔を真っ赤にして海堂は越前を睨んだ。
「いいじゃないっスか!別に。」
越前は海堂にしか見せない笑顔で見上げた。
「…で、何だ…?」
さっと越前から目を反らす。
「もうすぐ俺の誕生日っスよね?」
少し意味あり気にそんなことを言いだした越前。
「ああ…そうだったな…。」
「俺、“薫”先輩に祝ってもらいたいんスけど。」
“薫”の所を強調させ、さらにニヤッと笑った。
「っ!!だから!!止めろっつってんだろ!!!!」
大声を出して越前を叱った。
その声にびっくりして、今まで練習をしていた部員が動きを止めて一斉に海堂を見た。
「…////な…何だ!!手を止めんな!さっさと練習に戻れ!!」
照れを隠すかのように部員を必要以上に怒鳴った。
海堂の怒鳴り声を聞いた部員は、額に冷や汗をかきながら練習に戻った。
「相変わらずお熱いな~お前ら!」
全員が練習に戻ったのかと思いきや、ラケットを片手にした桃城が二人を茶化した。
「あ…桃先輩。」
「…!桃城…!」
部員の中で唯一二人の関係を知っている桃城は、面白そうに言う。
「う…うるせぇ!!お前も早く練習に戻れ!」
ギロッと睨む海堂を無視してニヤッと笑う桃城。
「真冬なのに、お前らの近くにいると汗かきそうだ!」
「熱いのは当たり前じゃないっスか!桃先輩…。」
越前はギュッと海堂の腕にくっついた。
「おい!越前!!//////」
またもや真っ赤になる海堂。
「んじゃ、邪魔者は退散すっか!…お前ら、早く練習に戻れよ!」
それだけ言って桃城は去っていった。
「…/////」
桃城の後ろ姿を見送っている海堂に、越前が話しかけようとしたその時…。
「海堂!越前!今は練習中だろう!何をしゃべっている!」
「「えっ…?」」
二人は声のする方を見た。
その声の主は、制服姿の手塚だった。
「「手塚先輩(部長)!?」」
二人は同時にびっくりした。
「俺たちもいるよ~ん♪」
手塚の後ろから現れたのは、菊丸、大石、乾、河村、不二だった。
「あれ~どうしたんっスか?先輩たち~」
桃城が手を止めて言った。
「みんなの様子が気になってね。」
相変わらず口元に笑みを浮かべながら不二が言った。
「練習中に無駄口をたたくとは…。越前!海堂!二人ともグランド20周だ!」
厳しい顔つきで手塚が二人に命令した。
「は、はい!!」
「…う、ウィ~ッス…。」
二人は一緒にグランドを走り始めた。
走っている途中、海堂がふと言い出した。
「おい……リョーマ…。」
「!…何っスか?薫先輩」
「……ってやる////」
「え…?」
「…お前の誕生日!祝ってやるっつってんだよ!!///////」
顔を真っ赤に染めて越前を追いこした。
「…ウィッス!楽しみにしてます!」
越前も負けじと海堂の背中を追った。
END