傍にいたい【シャルナーク夢】
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~あいりすside~
どんなに私がアプローチをかけても、貴方は決して振り向いてくれない。
どこまでも自分を蜘蛛の団長として、そして私を蜘蛛の一員として接する。
決して私を一人の『女』としては見てくれない。
私は貴方を…一人の『男』として見てるのよ…?
「今回はご苦労だった。またしばらくバラけるが、必要になったらまた集合をかける。」
団長からの集合がかかってたった一週間で仕事が終わった今日、再びしばらくの解散を迎えようとしていた。
団長の指示で集められ、仕事が終わると解散して居場所さえわからなくなる幻影旅団。
次はいつ団長に会えるのか約束されないこの瞬間を、もう幾度となく経験した。
その度に私は団長をデートに誘う。
でも、いくら色仕掛けで誘っても団長は私に興味を示さない。
今日だって…
「団長、デートに行きましょ?」
団長の腕を組んで上目遣いで迫る。
「あいりす、俺の指示が聞こえなかったか?解散だ。」
……ホラね…?
「蜘蛛としては解散でしょ?…でもこれは私と団長の個人のことよ?」
「個人のことなら俺は俺のやりたいようにする。」
そう言って団長は私の腕をほどき、スタスタと歩いて行った。
「団長…!」
団長の冷たい視線や物言いに、私は団長の後ろ姿を追い掛けることが出来なかった。
~シャルナークside~
荷造りをしていると、アジトの外からマチの声が聞こえてきた。
「団長。今の態度、ちょっと冷たすぎない?」
「あいりすのあれは毎回のことだ。」
「だからって冷たくあしらうことないだろ?」
「何度言っても聞かないのならこうする他ない。」
「…!…団長はあいりすの気持ち気付いてるだろ!?なら少しだけでも答えてやりなよ!」
「マチ。情が移るのは構わないが、俺はあいりすの気持ちに答える気はないし、従う気もない。」
団長は表情一つ変えず歩いて行った。
「はぁ…」
その様子を見ていると、マチが俺の存在に気づいていたのか、声をかけた。
「見てるのはわかってるよ。シャル、出てきな。」
「あっはは…。バレてた…?」
「バレたくなきゃ絶使いな。」
相変わらずクールに言うマチに苦笑する。
「ところで、さっき団長と話してたこと、あいりすのことだろ?」
「…まぁね。あいりすもいい加減諦めたらいいのにさ…」
「それだけ団長のことが好きなんだよ。」
「フン…。わかったようなこと言うじゃん。じゃ、あたしは行くけど、あんた暇ならあいりすを励ましてやって。」
言いながらマチは荷物を持って行ってしまった。
「了解!」
あいりすが団長の事が好きなのは知ってる。
振り向いてくれなくても一途に想い続けてることも知ってる。
それだけ俺もあいりすのこと見てたから。
アジトの周りを探すと、すぐにあいりすの姿を見つけた。
俺はなるべく明るく声をかけた。
「みんな行っちゃったのに、こんなところで何してるんだい?」
俺の声に振り返るあいりすの姿はとても綺麗だった。
スラリと細い身体に長い綺麗な黒髪を靡かせて、俺より少し歳上なだけなのに妙に大人の色気を感じさせる。
「シャル。…あなたこそ、みんなと行かなくていいの?次いつ会えるかわからないのよ?」
何事も無かったかのように普通に振る舞うあいりす。
でも、俺はその表情の裏に隠されたあいりすの本当の顔が見える。
「それはあいりすも同じだよ。他のメンバーと一緒じゃなくていいのかい?」
「ええ…。少し考え事してたから…」
一瞬、あいりすが寂しそうな顔をした。
俺はそれを見逃さず…
「それって、団長のこと?」
ストレートに言った。
あいりすは一瞬目を見開いたけど、すぐに元の表情に戻った。
「…どうしてそう思うの?」
「君の顔がそう言ってるから。」
「プッ…!何それ…?」
少しキザに言うと、あいりすはクスッと笑った。
「笑うことないだろ?……でも、あいりすは笑ってる方が良いよ。」
「え…?」
「あいりすの笑顔もっと見たいから、俺とデートしようよ!」
「デート?」
笑顔が見たいというのはもちろん口実。
弱っている時に優しくされると、女の子は気持ちが揺れ動くというのは本で見たことがある。
だから俺は、団長への気持ちを俺に向かせるためにあいりすをデートに誘った。
「……いいわよ。行きましょう。」
少し考えてからあいりすは頷いた。
デートと言っても、ただ街をブラブラ歩いて、たまに店に入るくらい。
「この帽子、シャルに似合うんじゃない?」
そう言ってあいりすは店に置いてある帽子を取り出して俺に被せた。
普段あまり見ることがないあいりすの楽しそうな笑顔。
でも時々、俺に見えないように少し寂しそうな顔をする。
「………」
その顔を見たとき確信した。
「…俺は…団長の代わりにはなれないんだね…」
ポツリとそう呟いた。
「何か言った?」
あいりすが振り返って聞く。
俺は咄嗟に笑顔を作って誤魔化した。
「いや、何でもないよ。…次、行こうか。」
ニコッと笑って店の外へ出た。
あいりすが俺を追い越して先に進む時、ふと耳元であいりすの声がした。
「…ありがとう。ごめんなさい。」
「え……」
驚いて目を見開くと、あいりすはそのまま歩きだした。
その背中はとても切なく、でも何故か凛としていた。
叶わない恋でもいい
だけどせめて少しでもあいりすの気が紛れるなら…
あいりすの傍に居させてください…
青い空を見上げながらそう願った。
END