大きくて遠い背中【ゴン夢】
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『ゴンがハンター試験受けるって?』
『でも、その条件が沼の主を釣ることだとさ!』
『ミトちゃんも厳しいね〜!』
ゴンがハンター試験を受けるということは、小さな島全体に知れ渡るのには2日もかからなかった。
もちろん、私の耳にも届いた。
でも、私はハンターがどんなものなのか知らなかった。
「お父さん、ハンターって何?」
漁師の仕事に出掛ける準備をしているお父さんに聞いてみた。
「色んなハンターがいるが、一言で言えば…変わり者だな。」
そう言ってお仕事に行ってしまったお父さんの後ろ姿を見つめた。
昔、ゴンが言っていたことがある。
ー父さんは生きてるらしいんだー
私に教えてくれたことなのに、ゴンは私にじゃなく、希望を見出だしたように独り言を呟いたように思えた。
ゴンに聞かなくたってわかる。
何故ゴンがハンター試験を受けに行くのか…
お父さんを探すため…
今までずっと近くでゴンを見てきた。
ゴンが何をして何を得たいのか。
全てわかってしまう。
それだけ、好きだったからー
だから、ゴンが沼の主を釣った時は島のみんなが見に行ったのに、私は一人、家で泣いていた。
年が明けてすぐ、ゴンはハンター試験に向けてくじら島を旅立ってしまった。
あれから半年…
ゴンは突然くじら島に帰って来た。
知らない男の子を連れて
「ゴン……?」
ゴンの家から少しだけ離れた所に、私の家もある。
ゴンが知らない男の子を連れて帰って来た時、ミトおばさんは私にも教えてくれた。
『名無しさんちゃんもいらっしゃい』と…
ゴンの家に行くことに躊躇いはあったけど、ゴンに早く会いたい…
そう思ったら、自然と足がゴンの家に向かっていた。
「ゴン…!」
ゴンの家へと続く一本道。
その遠くの方で、小さな影がこちら側に手を振っているのがわかる。
「ミトさーーーん!ただいまーー!」
紛れもなくゴンの声だった。
ずっと聞きたかった声
ずっと見たかった姿
…ゴンが帰って来た!
今すぐゴンの元へ駆け寄りたい…
でも何故?
怖くてその先に進めない…
ゴンは私を見てどんな反応してくれる?
会いたかったと思ってくれる?
名無しさん。って、笑いかけてくれる?
たった半年会わなかっただけなのに、そんな不安が押し寄せる。
いつの間にか私は、私の家とゴンの家の中間辺りにある大きな木の後ろに隠れていた。
ゴンとミトおばさんの距離が近くなる。
その度に私の心臓はドクドクと確実に速くなっていった。
ゴンの隣にいる銀髪の男の子。
私たちと同い年くらいの子…
ハンター試験で知り合った子かな?
銀髪の子を見てると、その子と目が合った。
「…!」
目が合った途端、また木の後ろに隠れてしまった。
銀髪の子が私の方を指差した後…
「名無しさんー!」
ゴンが私に手を振りながら叫んだ。
「名無しさんちゃん!ほら、こっちにいらっしゃい!」
ミトおばさんが振り向いて手招きする。
私はおずおずと姿を見せ、ゆっくりみんなの元に向かった。
「ゴン…おかえり、なさい…」
まともにゴンの顔が見られなくて、俯いてしまう。
「ただいま、名無しさん!」
ゴンの声が明るくて笑っているのが見なくてもわかる。
だからこそ、何も変わらないゴンに対しての安心感と、たった半年会わなかっただけの私自身の動揺に戸惑った。
「この子はキルアって言うんだ!ハンター試験で知り合った子なんだよ!」
「…どうも…」
キルアと名乗る銀髪の子は、少し緊張した様子でペコリと頭を下げた。
「あなたがキルア君ね。ゴンの叔母のミトです。」
「こっちがおばあちゃんで、この子が俺の幼馴染の名無しさん!」
ゴンがキルア君に私たちを紹介する。
「は、初めまして…」
少し小さめな声で挨拶すると、キルア君が私を一瞥する。
そのあとすぐに納得したように私から視線を外した。
な、何だったんだろう…?
不思議に思いつつも、これ以上ここにいるのも悪い気がして、私は家に戻ることにした。
ミトおばさんからは遠慮しなくていいのに。と言われたけど、せっかく久々にゴンが帰って来たんだし、積もる話もあるだろうと思って遠慮した。
家に戻る私の背後で、ゴンの楽しそうな声が聞こえる。
ゴンにとっては初めての同性の友達。
しかも同い年…
半年振りに帰って来たゴンは、少しだけ背が伸びて、心も大人になっている気がした。
そうやって徐々に私のことも忘れていくのかな…
そう思ったら堪らなくなって、足早に家に戻った。
それから数時間が経った。
いけない…洗濯物取り込まなきゃ…
朝に用事があると出ていったお母さんからの言い付けを思い出して、重い体を起こして外に出た。
洗濯物を取り込んでると、ゴンの家からゴンとキルア君が出てきた。
多分、森に行くのかな?
そう思いながら洗濯物を取り込んでいると、何故かキルア君が私の方に走ってきた。
「お前さ、ゴンのこと好きだろ。」
「え…!」
急にそんなことを言われて、持っていた洗濯物を地面に落としてしまった。
初対面に図星をつかれて何も言えなくなる私に、キルア君が更に続けた。
「視線でバレバレだっつーの!…ったく、ゴンといいお前といい…。」
「え、それって…どういう…」
言いかけると、キルア君が私に被せて言った。
「さっきからゴン、お前のことばっかり話してんだよ。 」
「っ…!」
あまりのことに驚いた。
ゴンが…私のことを…?
そう思っていると、遠くでゴンが叫んだ。
「キルアー!!そろそろ行くよー!」
「おー!」
ゴンの声にキルア君が大きく手を振って返事をする。
「ゴンもあんたのこと好きだと思うぜ!」
ニヤっと笑って私の肩をポンと叩くと、キルア君が走ってゴンの元へ向かった。
二人を見つめる私の顔は多分真っ赤だと思う。
でも、不思議と体の重さはなくなっていた。
「キルア君にお礼を言わなきゃ…」
森に行ったのなら帰りは多分遅いはず。
明日にでも言いに行こう…
そう思いながら落としてしまった洗濯物を再度洗いに行った。
「名無しさんと何話してたの?」
「あ?お前のこと!」
「な、何話したのさ!?」
「お幸せにってな〜!」
「ちょ…!何だよそれー!!///////」
END
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