本編
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《兆し》
次の仕事への移動中。
政親は隣で運転する山口に声をかけた。
【政親】
「あれから、3人の様子はどうですか」
【山口 遼太】
「あ、二條さんと本村さん、そして葛城さんですか。
そうですね……、一応黒田さんが想定していたように、新人さんたちへのアドバイスをちょこちょこしてくれてるみたいです」
話の内容のわりに、山口はちょっと困ったような表情を浮かべた。
【政親】
「なにか気になることがあるようですが?」
【山口 遼太】
「あ、えーと……新人さんたちが萎縮してるっていうか…
3人、特に本村さんと葛城さんの考えているレベルが高すぎて―」
山口の言わんとしている事に政親は気が付き、
そう気にする事でもない、と短くつぶやいた。
《本番》
3人が入ったことにより、より営業力がましたポラリス・プロダクション。
今日は前回よりもパワーアップし、200人規模で、ハコも渋谷の人気ライブハウスでのライブとなった。
【政親】
「山口、わかりますか。後ろにいる」
【山口 遼太】
「……?…あっ、冴じっ」
【政親】
「声が大きい」
慌てふためく山口の口元を政親は手でそっと抑えた。
【山口 遼太】
「く、黒田さん……」
【山口 遼太】
「今日は冴島エンターテインメントのアイドルはいないはずですが…なぜ……?
て、偵察でしょうか……前回のライブの評判を知って」
また顔を赤らめたまま山口は紡いだ。
【政親】
「まさか、あのレベルの規模で本人がわざわざ出向くほどのことではないでしょう。
大方、別の付き合いで偶然居合わせたというところでしょうか」
【山口 遼太】
「な、なにか俺達の…邪魔とか…されたりしないでしょうか……」
【政親】
「なぜそう思うのです?」
【山口 遼太】
「す、すみません…!俺……社長からその、1年前の話ちょっとだけ聞いて……」
オドオドと言いよどむ山口。
1年前まで冴島エンターテインメントにいた政親と榎本。
まだたった1年。政親が育て上げたアイドルを、切り捨てられてから―
政親は知らずうちに、眉間に皺が寄ってしまっていた。
【政親】
「公志郎さんも仕方ない人だ。山口になにをさせたいのか」
山口に聞こえないような小声で口の中でつぶやいた。
《絶頂》
ライブ終了後。
案の定、冴島は政親に声をかけてきた。
【冴島 享正】
「ご無沙汰しております。復帰されたのですね」
口元に嫌味な笑みを浮かべながら慇懃無礼に声をかけてくる。
【政親】
「以前は大変お世話になりました。新しい事務所を榎本が立ち上げたのですよ。
私もしばらくゆっくりさせて頂くつもりでしたが―やはりこちらの業界の水が恋しくなりまして」
政親は憎しみの表情を悟られないように応じる。
【冴島 享正】
「それはそれは。ではお祝いをしなくてはなりませんね」
【政親】
「冴島さん自らそのような――ありがとうございます」
【冴島 享正】
「同じ釜の飯を食った仲間ですからね。」
にやり、と企むような表情で冴島は政親の肩を軽く叩いた。
【政親】
「これからもぜひともよろしくお願いします。
―と申しましても。うちは弱小事務所ですので冴島さんの目に止まるかどうかわかりませんが」
【冴島 享正】
「あなたは素晴らしい才能をお持ちだ。
これからの活躍期待してまっておりますよ。ライバルになれば、ですが」
【政親】
「お眼鏡に叶うよう―努力いたします」
政親の様子に冴島はくくっ、と小さく笑ったあと、無言で手を上げてその場を去っていった。
今はまだ、冴島が何かするとは思えないが、ただ、トップアイドルを育てるという目標は変わらない。
今後、冴島が目の前に立ちはだかることになるだろう。
それは山口の目から見ても明らかだった…。