[本編] 黒木 忠生 編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【ハク】
(黒木……)
【ハク】
(俺が捕まったばっかりに……こんなことに………)
【ハク】
(俺がもっと注意していれば……)
【ハク】
(あの時、捕まったりしなければ………)
【ハク】
(ごめん、黒木……)
俺は、自己嫌悪でいっぱいになった。
責めても責めても責め足りない……心の中で何度も何度も黒木に謝る。
【水野】
「そんじゃ、おやすみ…っ」
俺は再び目隠しをされ、耳栓をされた。俺の視界からは水野の姿もヤクザの事務所も消えていく。
そのかわり、暗黒の中で、恐怖と後悔がぐるぐると俺の心を苛んでいた―――。
ヤクザの事務所のトイレで、構成員の男2人が用を足していた。
2人は、小便をしながら立ち話をしている。
【男1】
「あいつら、キレイどころをさらってきたらしいぜ…」
【男2】
「へぇ。そいつぁいいや。じゃあ今頃はお楽しみってわけだな」
【男1】
「はっ、俺もご相伴にあずかりたいもんだぜ…」
【男2】
「ぎゃははは。違いねぇや」
【男1】
「久しくご無沙汰だからなぁ…たまにはウマイ目にもあいたいぜ」
そこへ、偶然親分である久々津が姿を現した。
久々津は2人の話を聞き、厳しい表情でそれについて問い詰める。
【久々津】
「―――今の話、どういうことだ?」
【男1】
「ひっ!…く、組長……!」
【男2】
「な、なんでもねぇです……今のは、その……っ」
【久々津】
「ほう…俺には話せないということか?」
【男1】
「っ…!」
じろり、と睨みをきかせながら笑う久々津に、構成員は固まった。
久々津を前にして、シラを切り通せるほど肝は座っていない。
2人は目配せをすると、観念したようにがっくりとうなだれた。
【男1】
「実は………黒木をおびきよせるために、黒木のツレってやつを拉致したんす……」
【久々津】
「何だと……?―――誰がやった?」
【男1】
「そ、それは……」
【男2】
「…み、水野さんっす…!水野さんがやったんっす…!」
【久々津】
「水野が……?」
【久々津】
「水野はどこにいる」
【男2】
「た、たしか事務所にいるはずです」
それを聞くなり、久々津は早々にトイレを去っていく。
残された構成員2人はようやく恐怖から解放され、もぬけの殻のように、へんなりと壁にもたれかかった。
部屋に戻った久々津は、ひときわ大きな声で赤屋に命令した。
【久々津】
「リュウ、水野を呼べ!!!」
【赤屋】
「はい…」
久々津のその顔は、怒りに沸騰していた――――。
数分が経ち、組長の部屋に、水野が呼び出された。
水野にとって慕ってやまない存在である組長と、若頭候補の赤屋が、水野を取り囲んでいる。
【久々津】
「素人に手を出すとは何事か!!」
【水野】
「……っ!」
開口一番、久々津が水野に放った言葉はそれだった。すごい威圧だ。
【水野】
「で、でも、組長………っ!」
【久々津】
「……リュウ」
【赤屋】
「――はい」
言い訳をしようとした水野の前で、久々津が何かをジェスチャーする。
それを受けた組長からリュウと呼ばれた男が、水野の頬を数発立て続けに殴った。
【水野】
「ぐっ…!ぁあ…っあ!!」
殴られた衝撃で床に吹っ飛んだ水野の腹に、赤屋の蹴りが飛ぶ。
水野の口からは、ごぶっ、と血が吹き出した。
【水野】
「がはっ…!ぐっ、うっ…っ!」
【赤屋】
「てめぇ、組の掟を知った上でやってんだろうな…?」
赤屋は、水野のシャツの首をつかむと、ぐいっと身体を持ち上げる。
そして、そのままの状態で、低くドスの利いた声で水野に凄んだ。
【水野】
「ち、ちがう……お、おれ……は……っ」
【赤屋】
「口答えする気か?まだ自分の立場がわかってないみたいだな…」
【水野】
「や、やめ…っ!」
赤屋が、もう一度水野を殴ろうと腕を振り上げた。
――――が。
【久々津】
「やめろ、リュウ」
ピタッ……
久々津の一声で、赤屋の動きが止まった。
赤屋は腑に落ちないという顔つきで久々津を見ている。
【赤屋】
「組長?………しかし」
【久々津】
「いい。もう十分だろう。それに…そろそろ本当のことを吐く気になっただろう。なあ、水野」
【水野】
「………っ…」
【久々津】
「さあ、吐くんだ。いったい誰の指示でこんなことをやった?お前の判断でやったわけじゃないんだろう?」
【水野】
「…………」
水野は、久々津の質問になかなか答えなかった。
目を逸らし、おし黙る。
いかにもバツが悪いというふうに………。
久々津は、そんな水野の前にしゃがみこむと、その顎を掴み、強制的に顔を向けさせた。
そして、威圧感のある声で凄む。
【久々津】
「言わないつもりか……?」
【水野】
「…………」
【久々津】
「水野っっ!!」
【水野】
「……っ!…………サン、です……」
【久々津】
「なに……?」
【水野】
「……坊、の指示で…………」
【久々津】
「―――――香月か……」
久々津は、ようやく白状した水野の顎から、そっと手を離した。
水野の口から出てきた名前に、何か思うところがあるらしい………。
久々津は立ち上がると、どっしりと落ち着いた声でその場を制した。
【久々津】
「……分かった。この件については、俺が預かることにする」
【水野】
「あ、あの……っ。組長……!」
【久々津】
「水野。お前はもう戻っていい。――――行け」
【水野】
「あっ………はいっ。失礼しました……っ!」
床から転げ起きた水野は、せわしない様子で90度に腰を折り曲げて礼をすると、早々に部屋をでていく。
ばたばたと廊下をかけていく音が消えた頃、赤屋が口を開いた。
【赤屋】
「……組長」
【久々津】
「ああ、リュウ。お前ももう下がっていい。……悪かったな」
【赤屋】
「……いえ。それじゃあ…俺も失礼します」
水野に引き続き赤屋が部屋を去っていくと、その場には久々津だけが残される。
久々津は先ほどの水野の様子と、その口から出てきた名前を思い返していた。
そして、深い息をつく。
【久々津】
「…………さて。ここからは俺の仕事か」
続く…
(黒木……)
【ハク】
(俺が捕まったばっかりに……こんなことに………)
【ハク】
(俺がもっと注意していれば……)
【ハク】
(あの時、捕まったりしなければ………)
【ハク】
(ごめん、黒木……)
俺は、自己嫌悪でいっぱいになった。
責めても責めても責め足りない……心の中で何度も何度も黒木に謝る。
【水野】
「そんじゃ、おやすみ…っ」
俺は再び目隠しをされ、耳栓をされた。俺の視界からは水野の姿もヤクザの事務所も消えていく。
そのかわり、暗黒の中で、恐怖と後悔がぐるぐると俺の心を苛んでいた―――。
ヤクザの事務所のトイレで、構成員の男2人が用を足していた。
2人は、小便をしながら立ち話をしている。
【男1】
「あいつら、キレイどころをさらってきたらしいぜ…」
【男2】
「へぇ。そいつぁいいや。じゃあ今頃はお楽しみってわけだな」
【男1】
「はっ、俺もご相伴にあずかりたいもんだぜ…」
【男2】
「ぎゃははは。違いねぇや」
【男1】
「久しくご無沙汰だからなぁ…たまにはウマイ目にもあいたいぜ」
そこへ、偶然親分である久々津が姿を現した。
久々津は2人の話を聞き、厳しい表情でそれについて問い詰める。
【久々津】
「―――今の話、どういうことだ?」
【男1】
「ひっ!…く、組長……!」
【男2】
「な、なんでもねぇです……今のは、その……っ」
【久々津】
「ほう…俺には話せないということか?」
【男1】
「っ…!」
じろり、と睨みをきかせながら笑う久々津に、構成員は固まった。
久々津を前にして、シラを切り通せるほど肝は座っていない。
2人は目配せをすると、観念したようにがっくりとうなだれた。
【男1】
「実は………黒木をおびきよせるために、黒木のツレってやつを拉致したんす……」
【久々津】
「何だと……?―――誰がやった?」
【男1】
「そ、それは……」
【男2】
「…み、水野さんっす…!水野さんがやったんっす…!」
【久々津】
「水野が……?」
【久々津】
「水野はどこにいる」
【男2】
「た、たしか事務所にいるはずです」
それを聞くなり、久々津は早々にトイレを去っていく。
残された構成員2人はようやく恐怖から解放され、もぬけの殻のように、へんなりと壁にもたれかかった。
部屋に戻った久々津は、ひときわ大きな声で赤屋に命令した。
【久々津】
「リュウ、水野を呼べ!!!」
【赤屋】
「はい…」
久々津のその顔は、怒りに沸騰していた――――。
数分が経ち、組長の部屋に、水野が呼び出された。
水野にとって慕ってやまない存在である組長と、若頭候補の赤屋が、水野を取り囲んでいる。
【久々津】
「素人に手を出すとは何事か!!」
【水野】
「……っ!」
開口一番、久々津が水野に放った言葉はそれだった。すごい威圧だ。
【水野】
「で、でも、組長………っ!」
【久々津】
「……リュウ」
【赤屋】
「――はい」
言い訳をしようとした水野の前で、久々津が何かをジェスチャーする。
それを受けた組長からリュウと呼ばれた男が、水野の頬を数発立て続けに殴った。
【水野】
「ぐっ…!ぁあ…っあ!!」
殴られた衝撃で床に吹っ飛んだ水野の腹に、赤屋の蹴りが飛ぶ。
水野の口からは、ごぶっ、と血が吹き出した。
【水野】
「がはっ…!ぐっ、うっ…っ!」
【赤屋】
「てめぇ、組の掟を知った上でやってんだろうな…?」
赤屋は、水野のシャツの首をつかむと、ぐいっと身体を持ち上げる。
そして、そのままの状態で、低くドスの利いた声で水野に凄んだ。
【水野】
「ち、ちがう……お、おれ……は……っ」
【赤屋】
「口答えする気か?まだ自分の立場がわかってないみたいだな…」
【水野】
「や、やめ…っ!」
赤屋が、もう一度水野を殴ろうと腕を振り上げた。
――――が。
【久々津】
「やめろ、リュウ」
ピタッ……
久々津の一声で、赤屋の動きが止まった。
赤屋は腑に落ちないという顔つきで久々津を見ている。
【赤屋】
「組長?………しかし」
【久々津】
「いい。もう十分だろう。それに…そろそろ本当のことを吐く気になっただろう。なあ、水野」
【水野】
「………っ…」
【久々津】
「さあ、吐くんだ。いったい誰の指示でこんなことをやった?お前の判断でやったわけじゃないんだろう?」
【水野】
「…………」
水野は、久々津の質問になかなか答えなかった。
目を逸らし、おし黙る。
いかにもバツが悪いというふうに………。
久々津は、そんな水野の前にしゃがみこむと、その顎を掴み、強制的に顔を向けさせた。
そして、威圧感のある声で凄む。
【久々津】
「言わないつもりか……?」
【水野】
「…………」
【久々津】
「水野っっ!!」
【水野】
「……っ!…………サン、です……」
【久々津】
「なに……?」
【水野】
「……坊、の指示で…………」
【久々津】
「―――――香月か……」
久々津は、ようやく白状した水野の顎から、そっと手を離した。
水野の口から出てきた名前に、何か思うところがあるらしい………。
久々津は立ち上がると、どっしりと落ち着いた声でその場を制した。
【久々津】
「……分かった。この件については、俺が預かることにする」
【水野】
「あ、あの……っ。組長……!」
【久々津】
「水野。お前はもう戻っていい。――――行け」
【水野】
「あっ………はいっ。失礼しました……っ!」
床から転げ起きた水野は、せわしない様子で90度に腰を折り曲げて礼をすると、早々に部屋をでていく。
ばたばたと廊下をかけていく音が消えた頃、赤屋が口を開いた。
【赤屋】
「……組長」
【久々津】
「ああ、リュウ。お前ももう下がっていい。……悪かったな」
【赤屋】
「……いえ。それじゃあ…俺も失礼します」
水野に引き続き赤屋が部屋を去っていくと、その場には久々津だけが残される。
久々津は先ほどの水野の様子と、その口から出てきた名前を思い返していた。
そして、深い息をつく。
【久々津】
「…………さて。ここからは俺の仕事か」
続く…