[本編] 黒木 忠生 編
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あれから数日――――
なんでもない普通の日常が続いていた。
相変わらず黒木は俺の身の回りのことを、あれこれとしてくれている。
俺は、住所不定のままでは何かとやりづらかった就職活動を、それでもなんとかやり続けていた。
【ハク】
「あ……。これなんか良いかもな………」
就職斡旋のサイトでいくつかの会社をピックアップした俺は、とりあえずは元の家の住所で履歴書を送った。
郵便物については住所の問題もあったが、今のところ連絡は大体メールで済んでいる。
そんな中で、俺はなんとか面接までこぎつけることができた。
【ハク】
「黒木!俺、書類選考通ったよ!つぎ、面接だって!」
【黒木】
「よかったね、ハク」
【ハク】
「じゃあ俺、この日、面接行ってくるからさ……」
【黒木】
「分かった。俺も出てると思うけど……鍵、渡してあるだろ?ちゃんと持ってる?」
【ハク】
「ああ、大丈夫!」
そんなこんなで数日が過ぎ…………。
俺は、なんとか面接まで取り付けた会社に出向いていた。
面接は意外と好感触だったように思うが、前の会社の離職理由については頭をひねらなければならなかった。
【ハク】
(横領の罪をきせられてクビになりました、なんて……まちがっても言えないもんな………)
結果的には嘘をつくことになってしまうが……それは仕方がない。
俺は、もっと自分の力を試したかっただとかなんだとか…とにかく適当にそれらしい理由でその場を乗り切った。
火事については、さすがに同情の言葉をもらったりして……。
【ハク】
(面接なんて久々に受けたけど、やっぱり緊張するなあ……)
面接を終えて、緊張から解放された俺は、ホッとしながら会社を後にした。
結果はともかくとして、まあ第一段階はクリアというところだろう。
携帯で時間を確認すると、もう夕方になっている。
【ハク】
「ふう…面接も終わったし、あとは結果待ちだけだ……。……この時間だと黒木はまだ帰ってないよな……?」
俺は、黒木の家に帰るその道すがら、スーパーに寄って買い物をした。
夕食用の食材をいくつかと、飲み物などを買う。
【ハク】
(最近、俺もだんだんわかってきたんだよな)
【ハク】
(大体何が必要なのか、とか……さすがに、これだけ毎日黒木と一緒にいるんだしな……)
会計を済ませると、俺はまっすぐ黒木の家へと向かった
今ではもう慣れてしまった黒木のマンションに着くと、俺は慣れた調子で黒木の部屋の前まで向かう。
【ハク】
「ええと……鍵、鍵……っと」
ポケットを探って、渡されていた鍵を取り出す。
それを差し込んで、ドアを開けようとした―――――……その時。
【ハク】
「なっ、なんだよ!!?」
突然、どこからか複数のガタイの良い男達が現れ、ガッと俺を取り押さえた。
俺は一瞬にして身動きがとれなくなる。
咄嗟にあばれてみたものの、俺の力ではビクともしない……まるで歯が立たない……。
【ハク】
「や、やめろ!!あんた達だれだよ!?なにするんだ…!!」
思い切り叫んだが、口を塞がれ、俺は強制的に黒く厳めしい車に乗せられてしまった。
せめてもの抵抗をしたせいで、買い物の袋から食材がボロッと落ちる。
所在なげに地面に転がった食材をそのままに、車は俺を乗せて走り出していく――――。
【ハク】
「んんっ…ぐっ……」
【男1】
「……おい、ふさげ」
【男2】
「へい」
どこに向かうかわからない車内で、俺は恐怖にガタガタと震えた。
一人の男が何かの指示をすると、俺はさらに目隠しをされ、耳栓、猿轡までされ、感覚を奪われる。
耳栓をされる間に、男が電話で何かを話しているのがかすかに聞こえたが、そのあとは全く何も音が聞こえなくなった………。
【ハク】
(………お、おれ……これから、どうなっちゃうんだ………!?)
俺は、先のわからない不安と恐怖に怯えるしかなかった…………。
どのくらい走ったのか――――しばらくすると、車がどこかに止まった。
俺は、まるで荷物のように、車内から抱えられて運び出される。
そして、ようやく目隠しや耳栓や猿轡が外されると…………。
【ハク】
「…!?」
【ハク】
(こ、ここは……っ)
そこは―――ヤクザの事務所だった………。
今まで足を踏み入れたことなど無いけれど、それでも見た目だけですぐそれだということが分かる。
【ハク】
(な、何で!?俺、な、何かしたのか!?……こ、殺される……っ…)
俺は蒼白になり、恐怖でいっぱいになった。勝手に体が震えてしまう……。
なんでこんなところに連れてこられたのか、その理由にはまるで心当たりがない……。
俺の目の前には、チンピラ風の若い男が立っていた。
俺は、冷や汗を垂らしながら、怖々と口を開く。
【ハク】
「あ、あの………ど…どなたでしょうか……?」
【???】
「お前が黒木のツレか」
【ハク】
「…く、黒木は、友達ですけど………」
そんな俺の反応を見た男は、俺の顎を掴んで言った。
【???】
「友達ぃ?」
男が、俺と黒木の関係について聞いてきたが、友達としか言いようがない。
その時、部屋に別の男が入ってきた。
白いスーツを着た、チンピラとは少し違う雰囲気の男だ。
【???】
「水野。こいつが、今追ってるやつのツレなの?」
【水野】
「坊…あんまり首を突っ込まないでください……」
【???】
「いいじゃん、少しくらい。ケチだなぁ。それともなに?俺に反抗する気?」
【水野】
「……すみません」
【???】
「へぇ、カワイイ顔してんじゃん」
【ハク】
「……っ…」
坊と呼ばれたスーツの男が、ちょっと楽しそうに俺を覗き込んでくる。
水野と呼ばれたチンピラは、背後でじっとしながらも、迷惑そうな顔を向けている。
【???】
「ま、いいや。水野、16時には桃のところ行くから、それまでになんとかしてね。宜しく」
【水野】
「はい…」
スーツの男が去っていくと、水野は舌打ちをし、いかにも面倒だという顔をして携帯を取り出した。
そして、どこかへと電話をかける。
水野が口にした言葉を聞いて、俺はその電話の相手が誰なのかを知った。
【水野】
「お前のツレは預かった…。無事に返してほしければ久々津組までこい」
【ハク】
「……!」
【ハク】
(電話の相手は…黒木…だ………)
どうやら留守電だったらしく、水野はその一言だけ言うとそのまま電話を切った。
水野が脅迫する声は、いかにもドスがきいていた。
あまりに恐ろしくて、改めてヤクザに囚われているんだということを認識させられる………。
【水野】
「悪く思うんじゃねぇぞ」
【ハク】
「…………」
【水野】
「こっちも忙しいんだよ。ご多忙な身なワケ」
【水野】
「16時までには何とかしろってうっさいからな……お前にはもうちょっと我慢してもらうぜ」
俺は、水野の言葉に返答できないままうなだれた。
頭の中には、黒木の姿が浮かんでいる……。
俺は、黒木をおびき寄せるためにここまで連れてこられたんだ………。
なんでもない普通の日常が続いていた。
相変わらず黒木は俺の身の回りのことを、あれこれとしてくれている。
俺は、住所不定のままでは何かとやりづらかった就職活動を、それでもなんとかやり続けていた。
【ハク】
「あ……。これなんか良いかもな………」
就職斡旋のサイトでいくつかの会社をピックアップした俺は、とりあえずは元の家の住所で履歴書を送った。
郵便物については住所の問題もあったが、今のところ連絡は大体メールで済んでいる。
そんな中で、俺はなんとか面接までこぎつけることができた。
【ハク】
「黒木!俺、書類選考通ったよ!つぎ、面接だって!」
【黒木】
「よかったね、ハク」
【ハク】
「じゃあ俺、この日、面接行ってくるからさ……」
【黒木】
「分かった。俺も出てると思うけど……鍵、渡してあるだろ?ちゃんと持ってる?」
【ハク】
「ああ、大丈夫!」
そんなこんなで数日が過ぎ…………。
俺は、なんとか面接まで取り付けた会社に出向いていた。
面接は意外と好感触だったように思うが、前の会社の離職理由については頭をひねらなければならなかった。
【ハク】
(横領の罪をきせられてクビになりました、なんて……まちがっても言えないもんな………)
結果的には嘘をつくことになってしまうが……それは仕方がない。
俺は、もっと自分の力を試したかっただとかなんだとか…とにかく適当にそれらしい理由でその場を乗り切った。
火事については、さすがに同情の言葉をもらったりして……。
【ハク】
(面接なんて久々に受けたけど、やっぱり緊張するなあ……)
面接を終えて、緊張から解放された俺は、ホッとしながら会社を後にした。
結果はともかくとして、まあ第一段階はクリアというところだろう。
携帯で時間を確認すると、もう夕方になっている。
【ハク】
「ふう…面接も終わったし、あとは結果待ちだけだ……。……この時間だと黒木はまだ帰ってないよな……?」
俺は、黒木の家に帰るその道すがら、スーパーに寄って買い物をした。
夕食用の食材をいくつかと、飲み物などを買う。
【ハク】
(最近、俺もだんだんわかってきたんだよな)
【ハク】
(大体何が必要なのか、とか……さすがに、これだけ毎日黒木と一緒にいるんだしな……)
会計を済ませると、俺はまっすぐ黒木の家へと向かった
今ではもう慣れてしまった黒木のマンションに着くと、俺は慣れた調子で黒木の部屋の前まで向かう。
【ハク】
「ええと……鍵、鍵……っと」
ポケットを探って、渡されていた鍵を取り出す。
それを差し込んで、ドアを開けようとした―――――……その時。
【ハク】
「なっ、なんだよ!!?」
突然、どこからか複数のガタイの良い男達が現れ、ガッと俺を取り押さえた。
俺は一瞬にして身動きがとれなくなる。
咄嗟にあばれてみたものの、俺の力ではビクともしない……まるで歯が立たない……。
【ハク】
「や、やめろ!!あんた達だれだよ!?なにするんだ…!!」
思い切り叫んだが、口を塞がれ、俺は強制的に黒く厳めしい車に乗せられてしまった。
せめてもの抵抗をしたせいで、買い物の袋から食材がボロッと落ちる。
所在なげに地面に転がった食材をそのままに、車は俺を乗せて走り出していく――――。
【ハク】
「んんっ…ぐっ……」
【男1】
「……おい、ふさげ」
【男2】
「へい」
どこに向かうかわからない車内で、俺は恐怖にガタガタと震えた。
一人の男が何かの指示をすると、俺はさらに目隠しをされ、耳栓、猿轡までされ、感覚を奪われる。
耳栓をされる間に、男が電話で何かを話しているのがかすかに聞こえたが、そのあとは全く何も音が聞こえなくなった………。
【ハク】
(………お、おれ……これから、どうなっちゃうんだ………!?)
俺は、先のわからない不安と恐怖に怯えるしかなかった…………。
どのくらい走ったのか――――しばらくすると、車がどこかに止まった。
俺は、まるで荷物のように、車内から抱えられて運び出される。
そして、ようやく目隠しや耳栓や猿轡が外されると…………。
【ハク】
「…!?」
【ハク】
(こ、ここは……っ)
そこは―――ヤクザの事務所だった………。
今まで足を踏み入れたことなど無いけれど、それでも見た目だけですぐそれだということが分かる。
【ハク】
(な、何で!?俺、な、何かしたのか!?……こ、殺される……っ…)
俺は蒼白になり、恐怖でいっぱいになった。勝手に体が震えてしまう……。
なんでこんなところに連れてこられたのか、その理由にはまるで心当たりがない……。
俺の目の前には、チンピラ風の若い男が立っていた。
俺は、冷や汗を垂らしながら、怖々と口を開く。
【ハク】
「あ、あの………ど…どなたでしょうか……?」
【???】
「お前が黒木のツレか」
【ハク】
「…く、黒木は、友達ですけど………」
そんな俺の反応を見た男は、俺の顎を掴んで言った。
【???】
「友達ぃ?」
男が、俺と黒木の関係について聞いてきたが、友達としか言いようがない。
その時、部屋に別の男が入ってきた。
白いスーツを着た、チンピラとは少し違う雰囲気の男だ。
【???】
「水野。こいつが、今追ってるやつのツレなの?」
【水野】
「坊…あんまり首を突っ込まないでください……」
【???】
「いいじゃん、少しくらい。ケチだなぁ。それともなに?俺に反抗する気?」
【水野】
「……すみません」
【???】
「へぇ、カワイイ顔してんじゃん」
【ハク】
「……っ…」
坊と呼ばれたスーツの男が、ちょっと楽しそうに俺を覗き込んでくる。
水野と呼ばれたチンピラは、背後でじっとしながらも、迷惑そうな顔を向けている。
【???】
「ま、いいや。水野、16時には桃のところ行くから、それまでになんとかしてね。宜しく」
【水野】
「はい…」
スーツの男が去っていくと、水野は舌打ちをし、いかにも面倒だという顔をして携帯を取り出した。
そして、どこかへと電話をかける。
水野が口にした言葉を聞いて、俺はその電話の相手が誰なのかを知った。
【水野】
「お前のツレは預かった…。無事に返してほしければ久々津組までこい」
【ハク】
「……!」
【ハク】
(電話の相手は…黒木…だ………)
どうやら留守電だったらしく、水野はその一言だけ言うとそのまま電話を切った。
水野が脅迫する声は、いかにもドスがきいていた。
あまりに恐ろしくて、改めてヤクザに囚われているんだということを認識させられる………。
【水野】
「悪く思うんじゃねぇぞ」
【ハク】
「…………」
【水野】
「こっちも忙しいんだよ。ご多忙な身なワケ」
【水野】
「16時までには何とかしろってうっさいからな……お前にはもうちょっと我慢してもらうぜ」
俺は、水野の言葉に返答できないままうなだれた。
頭の中には、黒木の姿が浮かんでいる……。
俺は、黒木をおびき寄せるためにここまで連れてこられたんだ………。