[本編] 黒木 忠生 編
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【ハク】
「いや……この会社、俺がいた会社なんだけど………」
二人で夕食を食べているとき、何気なくつけていたTVからニュースが流れてきた。
そのニュースが伝えたのは――――
俺が元いた会社の、倒産、だった………。
【ハク】
「まさか倒産するなんて……」
俺は口ではそう言いながらも、内心、少し嬉しい気もしていた。
まるで、制裁でも加えられたみたいで……。
何しろ俺は、いわれもない横領の罪をきせられたんだ。恨むことはあっても、未練などはない。
【ハク】
(………なんて。…こんなこと思う俺って、性格悪いかもな……)
普通に真面目に働いている社員だっている……そういう社員にとっては、倒産なんて最悪の事態だろう。
とはいえ、俺はもっと最悪の事態に見舞われたのだ………。
【ハク】
「はは……なんかちょっと、良い気味だとかって思っちゃうよな……本当はそんなこと、思うの良くないんだろうけど……」
俺は、複雑な気持ちを抱えつつも、冗談っぽくそう言ってみる。
すると………。
【黒木】
「俺がやったんだ」
【ハク】
「………え?」
【黒木】
「アレ―――俺がやったんだよね」
黒木が、にっこりと笑った。
俺の頭は一気に混乱してしまう……俺がやったとは、一体どういうことなのか………?
……でも、黒木は詐欺師なのだ。
【ハク】
(それって…つまり………黒木があの会社を、倒産させた……って、ことなのか……?)
【ハク】
「まさか……!冗談だろ……?」
【黒木】
「何で?冗談なんかでこんなこと自白しないだろ?」
【ハク】
「そりゃまあ……そう、だけど………でも、信じられないよ……」
【黒木】
「ハクが信じなくても、事実は事実だよ」
【ハク】
「またまた……いつもの冗談だろ……?」
いくら黒木が詐欺師だといっても、会社を倒産させるなんてことをするだろうか……?
どんなに黒木が自分の仕業だと言っても、俺はどうしても信じることができなかった。
【ハク】
(冗談……そうだよな、冗談なんだよ…。俺に合わせてくれてるだけなんだ……)
俺はそう思うようにすると、止まっていた手を動かして、食事を咽喉に通した。
だけど、なんだかさっきまでのように、美味しく感じられない……。
―――と、その時。
【黒木】
「あれれ、ナイスタイミング」
突然、黒木の携帯がけたたましく鳴り響いた。
黒木は意味深なことを口にして電話に出ると、嬉しそうに笑いながら応答する。
電話の向こうからは、怒鳴り声が聞こえてきた。
しかもそれは………。
【ハク】
(こ、この声……っ…!)
俺はその声の主を知っていた。
俺の……元上司だ…………。今さっきTVで倒産が報じられた、あの会社の…………。
【上司】
「おい、お前を信じてたのに、これはどういう事だ!」
【黒木】
「はぁ?なんの話かなぁ?」
【上司】
「とぼけるな!お前が…お前がもっと儲かるっていうから指示に従ったのに!騙したな!!」
【黒木】
「…は?お前、馬鹿なんじゃない?ウマイ話を信じたお前が悪いんだよ!!」
黒木はそう吐き捨てると、二つ折りの携帯電話を真っ二つに折ってしまった。
そして俺を見て、にっこりと笑う。
【ハク】
「け…携帯…いいのか…?」
【黒木】
「あ、コレ?いいのいいの。かわりはいくらでもあるからさ。」
【黒木】
「よかったね、ハク。これですっきりしただろ?」
【ハク】
「あ、ああ……。黒木の話、本当だったんだな……」
【黒木】
「だから言っただろ?事実だ、って」
【ハク】
「うん……」
【ハク】
(黒木は、俺のためにやってくれたんだ……)
【ハク】
(俺が、会社にされたことを知って……俺には何も手立てがなかったから……)
俺は、腹いせに何かをしたくても何もできず、泣き寝入りするしかなかった……。
だから、黒木が俺の為にしてくれたことは、俺をスカッとさせてくれた。
【ハク】
(黒木がそうして俺の為を思ってやってくれたことは……正直、嬉しい。…でも………)
でも、なんだろう……どことなく、違和感を覚える…………。
【ハク】
(……いくら俺の為とはいえ、倒産まで追い込むなんてすごいよな)
【ハク】
(……普通、友達のためにそこまでやるか……?)
普通だったら、ここまでのことはしないだろう。
俺は詐欺師じゃないしそんな度胸もないけれど……。
俺がその立場ならば、もっと軽い仕返しをするはずだ。
俺は…なんでここまでするのかを尋ねる。
【黒木】
「なんでって、どういうこと?」
【ハク】
「……黒木、なんで…ここまでやってくれるんだ?」
【ハク】
「だから……どうして俺の為にここまでやってくれるのかな、って思ってさ」
【ハク】
「だって普通、友達のためにここまでやらないだろ……?」
【黒木】
「あぁ、そういうことか。だって……」
確かに黒木は優しいけれど……
でも、優しいにも程がある。
さすがに今回のことは少しやりすぎだろう。
そう思っていた俺に向かって、黒木は純粋そうな表情で首をかしげた。
【黒木】
「しょうがないだろ?ハクのこと――――――」
【黒木】
「いじめたんだもん」
【ハク】
「…………な、に………?」
【ハク】
(…今、黒木はなんて言った…?)
突然何かに頭を殴られたような衝撃が俺を襲った。
【黒木】
「ハクをいじめるヤツなんて……バチが当たって当然だよねぇ?」
【ハク】
「な…に、言ってるんだよ………?」
ゾクッ………
背筋に、冷たいものが走る。
黒木の言葉が、なんだか妙に恐ろしい………
いや、それよりも………。
――――表情と、言葉が、ちぐはぐで
……何だか不気味だ…………。
【ハク】
(な…んだ、これ………?)
【ハク】
(なんだか…得体の知れない恐怖感が………)
【黒木】
「ハク?どうしたの?ほら、早く食べないと冷めちゃうよ」
【黒木】
「せっかくハクのために作ったんだから……」
【ハク】
「あ…ああ、ごめん……っ」
【黒木】
「これとか、好きだろ?」
【ハク】
「ああ、うん!ありがとう…っ…」
俺は、チラッと黒木の方を見てみる………
特に変わった様子はない。
いつもどおりの黒木だ。
【ハク】
(……さっき妙に寒気がしたのは気のせいだったのかな………?)
俺は、なるべく余計なことを考えないようにして、次々に料理を口に運んでいった。
TVからは相変わらずニュースが流れていたが、俺の耳には全く入ってこない。
俺の心は、無意識の内に、さっき覚えた違和感をなかったことにしようとしていた―――――……。
続く…
「いや……この会社、俺がいた会社なんだけど………」
二人で夕食を食べているとき、何気なくつけていたTVからニュースが流れてきた。
そのニュースが伝えたのは――――
俺が元いた会社の、倒産、だった………。
【ハク】
「まさか倒産するなんて……」
俺は口ではそう言いながらも、内心、少し嬉しい気もしていた。
まるで、制裁でも加えられたみたいで……。
何しろ俺は、いわれもない横領の罪をきせられたんだ。恨むことはあっても、未練などはない。
【ハク】
(………なんて。…こんなこと思う俺って、性格悪いかもな……)
普通に真面目に働いている社員だっている……そういう社員にとっては、倒産なんて最悪の事態だろう。
とはいえ、俺はもっと最悪の事態に見舞われたのだ………。
【ハク】
「はは……なんかちょっと、良い気味だとかって思っちゃうよな……本当はそんなこと、思うの良くないんだろうけど……」
俺は、複雑な気持ちを抱えつつも、冗談っぽくそう言ってみる。
すると………。
【黒木】
「俺がやったんだ」
【ハク】
「………え?」
【黒木】
「アレ―――俺がやったんだよね」
黒木が、にっこりと笑った。
俺の頭は一気に混乱してしまう……俺がやったとは、一体どういうことなのか………?
……でも、黒木は詐欺師なのだ。
【ハク】
(それって…つまり………黒木があの会社を、倒産させた……って、ことなのか……?)
【ハク】
「まさか……!冗談だろ……?」
【黒木】
「何で?冗談なんかでこんなこと自白しないだろ?」
【ハク】
「そりゃまあ……そう、だけど………でも、信じられないよ……」
【黒木】
「ハクが信じなくても、事実は事実だよ」
【ハク】
「またまた……いつもの冗談だろ……?」
いくら黒木が詐欺師だといっても、会社を倒産させるなんてことをするだろうか……?
どんなに黒木が自分の仕業だと言っても、俺はどうしても信じることができなかった。
【ハク】
(冗談……そうだよな、冗談なんだよ…。俺に合わせてくれてるだけなんだ……)
俺はそう思うようにすると、止まっていた手を動かして、食事を咽喉に通した。
だけど、なんだかさっきまでのように、美味しく感じられない……。
―――と、その時。
【黒木】
「あれれ、ナイスタイミング」
突然、黒木の携帯がけたたましく鳴り響いた。
黒木は意味深なことを口にして電話に出ると、嬉しそうに笑いながら応答する。
電話の向こうからは、怒鳴り声が聞こえてきた。
しかもそれは………。
【ハク】
(こ、この声……っ…!)
俺はその声の主を知っていた。
俺の……元上司だ…………。今さっきTVで倒産が報じられた、あの会社の…………。
【上司】
「おい、お前を信じてたのに、これはどういう事だ!」
【黒木】
「はぁ?なんの話かなぁ?」
【上司】
「とぼけるな!お前が…お前がもっと儲かるっていうから指示に従ったのに!騙したな!!」
【黒木】
「…は?お前、馬鹿なんじゃない?ウマイ話を信じたお前が悪いんだよ!!」
黒木はそう吐き捨てると、二つ折りの携帯電話を真っ二つに折ってしまった。
そして俺を見て、にっこりと笑う。
【ハク】
「け…携帯…いいのか…?」
【黒木】
「あ、コレ?いいのいいの。かわりはいくらでもあるからさ。」
【黒木】
「よかったね、ハク。これですっきりしただろ?」
【ハク】
「あ、ああ……。黒木の話、本当だったんだな……」
【黒木】
「だから言っただろ?事実だ、って」
【ハク】
「うん……」
【ハク】
(黒木は、俺のためにやってくれたんだ……)
【ハク】
(俺が、会社にされたことを知って……俺には何も手立てがなかったから……)
俺は、腹いせに何かをしたくても何もできず、泣き寝入りするしかなかった……。
だから、黒木が俺の為にしてくれたことは、俺をスカッとさせてくれた。
【ハク】
(黒木がそうして俺の為を思ってやってくれたことは……正直、嬉しい。…でも………)
でも、なんだろう……どことなく、違和感を覚える…………。
【ハク】
(……いくら俺の為とはいえ、倒産まで追い込むなんてすごいよな)
【ハク】
(……普通、友達のためにそこまでやるか……?)
普通だったら、ここまでのことはしないだろう。
俺は詐欺師じゃないしそんな度胸もないけれど……。
俺がその立場ならば、もっと軽い仕返しをするはずだ。
俺は…なんでここまでするのかを尋ねる。
【黒木】
「なんでって、どういうこと?」
【ハク】
「……黒木、なんで…ここまでやってくれるんだ?」
【ハク】
「だから……どうして俺の為にここまでやってくれるのかな、って思ってさ」
【ハク】
「だって普通、友達のためにここまでやらないだろ……?」
【黒木】
「あぁ、そういうことか。だって……」
確かに黒木は優しいけれど……
でも、優しいにも程がある。
さすがに今回のことは少しやりすぎだろう。
そう思っていた俺に向かって、黒木は純粋そうな表情で首をかしげた。
【黒木】
「しょうがないだろ?ハクのこと――――――」
【黒木】
「いじめたんだもん」
【ハク】
「…………な、に………?」
【ハク】
(…今、黒木はなんて言った…?)
突然何かに頭を殴られたような衝撃が俺を襲った。
【黒木】
「ハクをいじめるヤツなんて……バチが当たって当然だよねぇ?」
【ハク】
「な…に、言ってるんだよ………?」
ゾクッ………
背筋に、冷たいものが走る。
黒木の言葉が、なんだか妙に恐ろしい………
いや、それよりも………。
――――表情と、言葉が、ちぐはぐで
……何だか不気味だ…………。
【ハク】
(な…んだ、これ………?)
【ハク】
(なんだか…得体の知れない恐怖感が………)
【黒木】
「ハク?どうしたの?ほら、早く食べないと冷めちゃうよ」
【黒木】
「せっかくハクのために作ったんだから……」
【ハク】
「あ…ああ、ごめん……っ」
【黒木】
「これとか、好きだろ?」
【ハク】
「ああ、うん!ありがとう…っ…」
俺は、チラッと黒木の方を見てみる………
特に変わった様子はない。
いつもどおりの黒木だ。
【ハク】
(……さっき妙に寒気がしたのは気のせいだったのかな………?)
俺は、なるべく余計なことを考えないようにして、次々に料理を口に運んでいった。
TVからは相変わらずニュースが流れていたが、俺の耳には全く入ってこない。
俺の心は、無意識の内に、さっき覚えた違和感をなかったことにしようとしていた―――――……。
続く…