[本編] 黒木 忠生 編
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高校時代、黒木と俺はクラスメイトだった。
思えば黒木とはいろんな悪いこともしたし、とにかくいつも一緒にいたものだ。
【ハク】
「ああ~俺、今回の期末、最悪だ……。黒木、テストどうだった?」
【黒木】
「別に?適当だけど」
【ハク】
「何だよ、ちょっと見せてくれよ!…………って。なにこれ……」
【黒木】
「どうしたの、ハク?」
【ハク】
「お、お前……だって、昨日勉強してないって言ってたよな…?」
【黒木】
「あぁ、してないよ?」
【ハク】
「黒木さ…お前って確か、いつも授業中寝てるよな…?」
【黒木】
「まぁね。だって眠くなるだろ、授業中って?」
【ハク】
「な……なんで赤点じゃないんだよ!?しかも平均点とってるし…!」
高校時代の黒木は、いつも授業中に居眠りしていたくせに、赤点はとらなかった。
それに、先生やクラスメイトにもそれなりに好かれていたのだ。
【先生】
「ハク、お前には困ったもんだよ。今日までに絶対提出だってあれほど言ったのに」
【ハク】
「はあ…すみません」
【先生】
「はあ、じゃない。お前、そんな適当なことで今後どうするんだ?」
【ハク】
「いや、特にこれといって考えてないですけど…」
【先生】
「お前なぁ…」
【黒木】
「まぁまぁ先生、ここは俺に免じて許してくださいよ。ね、いいでしょ?」
【先生】
「なんだ、黒木。お前どっから…」
【黒木】
「ほら、そうやって眉間に皺ばっかり寄せてると、奥さんに逃げられちゃいますよ?先生、結婚したばっかでしょ?」
【先生】
「ばっ…お前なぁ!……ったく…怒る気が失せた。もう帰っていい。ハク、明日までに提出な!」
【ハク】
「あ、はい。―――ありがとう、黒木」
【黒木】
「どういたしまして!まぁ、お礼はジュース一本でいいよ?」
【ハク】
「えっ!?……ちぇ、調子いいんだから…もう……!」
【黒木】
「あはは」
思えば、黒木は要領が良かったのだ。
そんな黒木といつもつるんでいたあの頃の自分のことを思うと、今更ながら不思議な気がしないでもない。
黒木は、よく俺なんかとつるんでいたなと思う。
【ハク】
(本当にいつも一緒だったもんなぁ……)
俺は、だんだんと思い出されてきたあの頃の思い出に浸っていた。
本当にあの頃は楽しかった。卒業をするその日まで、ずっと―――。
【ハク】
(そういえば卒業の日、黒木と最後に会ったのはパソコンルームだったよな……)
そういえば、卒業式の日、俺は黒木に呼び出されたのだ。
そこで話をして、それから別れを告げたのだ。また会おうと言いながら―――――。
【ハク】
「いい思い出だな……。…それに、ようやく再会したんだな……」
いつの間にか目の前で目を閉じていた黒木に、俺はそっとつぶやく。
俺は、それが黒木にとっても良い思い出なのだと信じていた…………。
自分の家にも帰れず、警察にも行けない俺は、黒木の部屋にしばらく世話になることにした。
初めて泊めてもらったあの翌日――――。
【黒木】
「ハクさえよければ、今日もウチに泊まっていけばいいよ」
【ハク】
「いや、でも…悪いからさ」
【黒木】
「遠慮しないで良いよ。彼女と別れたから部屋も寂しくてさ、しばらくいてくれても全然大丈夫だから」
【ハク】
「本当にいいのか……?なにからなにまで……ごめん」
明るくそう言ってくれる黒木に、俺はすっかり甘えていた。
黒木は、本当に俺に対してなんでもしてくれる。
生活に関わるすべてに、丁寧に対応してくれていたのだ。
【黒木】
「ハク、嫌いなモノある?食べれないものとか」
【ハク】
「いや、特にないけど……何で?」
【黒木】
「ご飯作ったけど、ハクの苦手なものが入ってたら嫌だなぁと思って」
【ハク】
「え…!?黒木、料理できるんだ…!?」
【黒木】
「簡単なものならね」
黒木が作ってくれる料理は、だいたい美味しかった。
しかも、びっくりするくらい俺の好きなものを作ってくる。
特に好き嫌いを教えたことなんてないのに……高校の時に話したりでもしたんだろうか?
【ハク】
「あ…っと。居候させてもらってるんだから……俺、掃除くらいやるよ」
これといって何も取り柄のない俺は、せめてそれくらいと思って黒木に申し出る。
でも、黒木は大丈夫だからと言って俺には掃除もさせなかった。
【黒木】
「ハクはゲストなんだから。そんなことしなくて良いんだよ。ほら、洗濯するから服、脱いで?」
【ハク】
「え……あ、ああ……」
【黒木】
「着替えはクローゼットの中にあるよ。新しいの、買ってきたんだ。それ着てくれる?」
【ハク】
「ああ、分かった」
俺はいつも、黒木の買ってきた新しい服を着ていた。これもまた驚くくらいにぴったりで、俺は何だか黒木に感激してしまう。
ただ、ふと気づくと、洗濯したはずの服がなくなっているのは不思議だった………
でも、常に新しい服があるのでそれも気にならない。
【ハク】
(黒木って本当にすごいな……料理、掃除、洗濯……なんでもやってくれるんだもんな……)
感心するものの、やはり申し訳ない気持ちにもなる。
せめて早く働き口を探そうと、就職情報などに目を通してみたが……今の俺には肝心なものが欠けていた。
【ハク】
「そうか……俺、住所が………」
思えば、それは一番困ることでもあった。
住所不定のままだから、今の俺では就職活動が思うようにできないのだ。
【ハク】
「まいったな……。家が火事になったんですって、本当のことを面接で言えばいいもんなのか……?」
俺は、ああでもないこうでもないと悩みながら、毎日過ごしていた。
そうして、あっという間に1週間が経ってしまう……。
それくらい時間が経つと、俺はだんだんと今後の生活に不安を覚えるようになっていった……。
【ハク】
「俺……この先、どうするんだろう……」
黒木が家を出ている間、俺は一人でそんなことを考えていた。
自分のことなのに、他人事のようだ……それくらい、途方にくれている。
【ハク】
「今日明日のことには困らないにしても……それだって黒木がいてくれるからで……」
黒木が帰ってくれば、何かしら会話が生まれて、俺はこの思考から逃れられる。
それをわかっているせいか、無意識に俺は考えてしまう。
不安から逃れるために………。
【ハク】
「黒木……早く帰ってこいよ…………」
なんとなく時間が過ぎていって、俺は黒木と一緒に過ごすのにも慣れてきていた。
黒木は相変わらず俺のことをなんでもやってくれる……。
申し訳ないと思いつつも甘えたまま、それが普通のようになっていた。
そんなある日のこと―――。
【ハク】
「あ、れ……この会社………」
【黒木】
「ハク、どうかした?」
思えば黒木とはいろんな悪いこともしたし、とにかくいつも一緒にいたものだ。
【ハク】
「ああ~俺、今回の期末、最悪だ……。黒木、テストどうだった?」
【黒木】
「別に?適当だけど」
【ハク】
「何だよ、ちょっと見せてくれよ!…………って。なにこれ……」
【黒木】
「どうしたの、ハク?」
【ハク】
「お、お前……だって、昨日勉強してないって言ってたよな…?」
【黒木】
「あぁ、してないよ?」
【ハク】
「黒木さ…お前って確か、いつも授業中寝てるよな…?」
【黒木】
「まぁね。だって眠くなるだろ、授業中って?」
【ハク】
「な……なんで赤点じゃないんだよ!?しかも平均点とってるし…!」
高校時代の黒木は、いつも授業中に居眠りしていたくせに、赤点はとらなかった。
それに、先生やクラスメイトにもそれなりに好かれていたのだ。
【先生】
「ハク、お前には困ったもんだよ。今日までに絶対提出だってあれほど言ったのに」
【ハク】
「はあ…すみません」
【先生】
「はあ、じゃない。お前、そんな適当なことで今後どうするんだ?」
【ハク】
「いや、特にこれといって考えてないですけど…」
【先生】
「お前なぁ…」
【黒木】
「まぁまぁ先生、ここは俺に免じて許してくださいよ。ね、いいでしょ?」
【先生】
「なんだ、黒木。お前どっから…」
【黒木】
「ほら、そうやって眉間に皺ばっかり寄せてると、奥さんに逃げられちゃいますよ?先生、結婚したばっかでしょ?」
【先生】
「ばっ…お前なぁ!……ったく…怒る気が失せた。もう帰っていい。ハク、明日までに提出な!」
【ハク】
「あ、はい。―――ありがとう、黒木」
【黒木】
「どういたしまして!まぁ、お礼はジュース一本でいいよ?」
【ハク】
「えっ!?……ちぇ、調子いいんだから…もう……!」
【黒木】
「あはは」
思えば、黒木は要領が良かったのだ。
そんな黒木といつもつるんでいたあの頃の自分のことを思うと、今更ながら不思議な気がしないでもない。
黒木は、よく俺なんかとつるんでいたなと思う。
【ハク】
(本当にいつも一緒だったもんなぁ……)
俺は、だんだんと思い出されてきたあの頃の思い出に浸っていた。
本当にあの頃は楽しかった。卒業をするその日まで、ずっと―――。
【ハク】
(そういえば卒業の日、黒木と最後に会ったのはパソコンルームだったよな……)
そういえば、卒業式の日、俺は黒木に呼び出されたのだ。
そこで話をして、それから別れを告げたのだ。また会おうと言いながら―――――。
【ハク】
「いい思い出だな……。…それに、ようやく再会したんだな……」
いつの間にか目の前で目を閉じていた黒木に、俺はそっとつぶやく。
俺は、それが黒木にとっても良い思い出なのだと信じていた…………。
自分の家にも帰れず、警察にも行けない俺は、黒木の部屋にしばらく世話になることにした。
初めて泊めてもらったあの翌日――――。
【黒木】
「ハクさえよければ、今日もウチに泊まっていけばいいよ」
【ハク】
「いや、でも…悪いからさ」
【黒木】
「遠慮しないで良いよ。彼女と別れたから部屋も寂しくてさ、しばらくいてくれても全然大丈夫だから」
【ハク】
「本当にいいのか……?なにからなにまで……ごめん」
明るくそう言ってくれる黒木に、俺はすっかり甘えていた。
黒木は、本当に俺に対してなんでもしてくれる。
生活に関わるすべてに、丁寧に対応してくれていたのだ。
【黒木】
「ハク、嫌いなモノある?食べれないものとか」
【ハク】
「いや、特にないけど……何で?」
【黒木】
「ご飯作ったけど、ハクの苦手なものが入ってたら嫌だなぁと思って」
【ハク】
「え…!?黒木、料理できるんだ…!?」
【黒木】
「簡単なものならね」
黒木が作ってくれる料理は、だいたい美味しかった。
しかも、びっくりするくらい俺の好きなものを作ってくる。
特に好き嫌いを教えたことなんてないのに……高校の時に話したりでもしたんだろうか?
【ハク】
「あ…っと。居候させてもらってるんだから……俺、掃除くらいやるよ」
これといって何も取り柄のない俺は、せめてそれくらいと思って黒木に申し出る。
でも、黒木は大丈夫だからと言って俺には掃除もさせなかった。
【黒木】
「ハクはゲストなんだから。そんなことしなくて良いんだよ。ほら、洗濯するから服、脱いで?」
【ハク】
「え……あ、ああ……」
【黒木】
「着替えはクローゼットの中にあるよ。新しいの、買ってきたんだ。それ着てくれる?」
【ハク】
「ああ、分かった」
俺はいつも、黒木の買ってきた新しい服を着ていた。これもまた驚くくらいにぴったりで、俺は何だか黒木に感激してしまう。
ただ、ふと気づくと、洗濯したはずの服がなくなっているのは不思議だった………
でも、常に新しい服があるのでそれも気にならない。
【ハク】
(黒木って本当にすごいな……料理、掃除、洗濯……なんでもやってくれるんだもんな……)
感心するものの、やはり申し訳ない気持ちにもなる。
せめて早く働き口を探そうと、就職情報などに目を通してみたが……今の俺には肝心なものが欠けていた。
【ハク】
「そうか……俺、住所が………」
思えば、それは一番困ることでもあった。
住所不定のままだから、今の俺では就職活動が思うようにできないのだ。
【ハク】
「まいったな……。家が火事になったんですって、本当のことを面接で言えばいいもんなのか……?」
俺は、ああでもないこうでもないと悩みながら、毎日過ごしていた。
そうして、あっという間に1週間が経ってしまう……。
それくらい時間が経つと、俺はだんだんと今後の生活に不安を覚えるようになっていった……。
【ハク】
「俺……この先、どうするんだろう……」
黒木が家を出ている間、俺は一人でそんなことを考えていた。
自分のことなのに、他人事のようだ……それくらい、途方にくれている。
【ハク】
「今日明日のことには困らないにしても……それだって黒木がいてくれるからで……」
黒木が帰ってくれば、何かしら会話が生まれて、俺はこの思考から逃れられる。
それをわかっているせいか、無意識に俺は考えてしまう。
不安から逃れるために………。
【ハク】
「黒木……早く帰ってこいよ…………」
なんとなく時間が過ぎていって、俺は黒木と一緒に過ごすのにも慣れてきていた。
黒木は相変わらず俺のことをなんでもやってくれる……。
申し訳ないと思いつつも甘えたまま、それが普通のようになっていた。
そんなある日のこと―――。
【ハク】
「あ、れ……この会社………」
【黒木】
「ハク、どうかした?」