[本編] 赤屋 竜次 編
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リュウの運転で警察署へ向かう車内。
高校生のリュウしか覚えていないからか、車を運転してるのがなんか不思議な感じだ。
【ハク】
(リュウが俺の知らないうちに大人になっちゃったみたいだ……)
【赤屋】
「そうだ、ハク。シートベルトつけろよ。最近うるせぇんだ」
【ハク】
「あっ、ごめん。俺、普段運転しないから……」
考え事をしていた俺は、リュウに言われて初めてシートベルトの存在に気付いた。
公共交通機関ばっかりで車なんて滅多に乗らないから油断してた……。
慌ててシートベルトを装着しようとするが、差込口がみつからない。
【赤屋】
「ほら、ココ。ちょっとわかりにくいトコにあるんだ」
信号待ちでちょうど停車していたので、リュウがわざわざ体を乗り出して説明してくれる。
俺の横に手をついて、反対の手で場所を示す。
それは、いいんだけど……。
【ハク】
(顔が、近い……!)
リュウが俺の方に体を倒す体制なので、俺より少し高い位置にあるはずのリュウの顔が俺と同じくらいに下りてきてる。
リュウもそれに気付いたようで、心なしか顔が赤い。
でも、お互い何も言えず見つめあったまま少しの時が過ぎた。
【赤屋】
「…………」
【ハク】
「…………」
そのなんとも言えない空気は、後続車のクラクションの音で壊された。
【赤屋】
「ば、馬鹿野郎!シートベルトくらいちゃんと締めろ」
【ハク】
「そ、そっちこそ、信号青だよ」
リュウは慌てて定位置に戻ると、アクセルを踏む。
信号は青に替わった直後のようで、後続車をこれ以上焦らさせることなく車は先へ進んだ。
【ハク】
(なんだよ、さっきと言ってることが逆じゃないか)
【ハク】
(だいたいそんな反応しなくたって……昔だってこのくらいのことよくあっただろ……!)
その後、なんとなく会話は途切れてしばらく無言の時間が続いている。
そりゃさっきみたいな出来事のあとになんて会話を続けていいかわからない。
リュウは口下手だから余計だろう。
しかし、俺はリュウに確認したいことが少なくともひとつ、あった。
【ハク】
「ところで、さ……」
沈黙を破って、俺は口を開いた。
【赤屋】
「なんだ?」
【ハク】
「……リュウはさっき、久々津さん……のこと『組長』って呼んでたよな」
【赤屋】
「そうだな」
実を言うと、俺は先ほどのやりとりを見ても、まだリュウがヤクザをやってることを完全には信じられなかった。
いや、信じたくないのかもしれない。高校以来の友人が、ヤクザだなんて……。組長と言っても町内会か何かだったらいいな……とか、まだ少し思っている。
もしかしたら、先に見た黒塗りの車はリュウとは関係ないかもしれないし……とか。
なぜなら、リュウは正義感が強くて、ヤクザとかそういうものは嫌いだと思っていたから。
昨日もバーで俺を助けてくれたし、今日もこうして二つ返事で警察署に同行してまで俺の疑いを晴らそうとしてくれている。
そんなリュウが、なぜ……。
【ハク】
「それって、リュウも、その……ヤクザなのか?」
上手い言い方が浮かばずに、ストレートな言い方になってしまって自分でどきっとする。
それを、リュウは表情を変えずに肯定した。
【赤屋】
「…………そうだ」
【赤屋】
「やっぱり、話しておかなきゃなんねぇよな」
【赤屋】
「いや……と言うよりも、ハクにはちゃんと聞いて欲しい」
そう前置きして、リュウは仕事に就いた経緯……
ヤクザになった経緯を話し始めた。
【赤屋】
「俺は、もともとはヤクザなんて大嫌いだった」
【赤屋】
「ヤクザなんて悪党と同じだと思ってたからな」
【赤屋】
「……でも、そうじゃない人もいた」
【ハク】
「それが、久々津さん……ってこと?」
【赤屋】
「そうだ」
少しの沈黙のあとリュウは、卒業して俺と離れた後のことをゆっくりと話してくれた。
リュウは高校時代にしていた土建屋のアルバイト先にその体格の良さを買われ、卒業と同時に土建屋に入社したらしい。
……再会のときの俺の読みは、あながち外れてはいなかったということか。
しばらくは普通に働いていたリュウだが、あるとき仕事の進め方をめぐって上司とトラブルになった。
絶対にリュウの案のほうが筋が通っていて効率的だった。
今俺が聞いただけでも、リュウを支持するだろうと思う内容だ。
でも上司は自分の意見を曲げずに言い争いになった。
【上司】
「いや、今まで通り進める。お前の意見は却下だ」
【赤屋】
「は?なんで……!」
【上司】
「だいたいお前みたいな高校出たばかりの坊主の言うことなんて通るわけねぇだろ」
【赤屋】
「っ……!なんだよその言い方は!」
そこで、カッとなって手が出てしまったんだそうだ。
リュウならありそうなことだ、と俺は思った。
昔から口が上手いほうではなく、相手に口撃を受けると言葉が返せず手が先に出てしまう。そんな不器用な性格だった。
理由はどうあれ、上司に暴力をふるったとなればリュウは立場が悪い。
その際、間に入ってくれたのが久々津さんだと言う。
【久々津】
「まあまあ、そこの若いのの言い分ももっともだ」
【上司】
「……!久々津さん!」
【赤屋】
「アンタは……?」
【上司】
「アンタなんて口を聞くな!このお方はな……」
【久々津】
「はっはっは、アンタか。まぁいい、若いうちは威勢がいいのが一番だ」
久々津さんの取り成しで、リュウはなんとか元通り会社にいられるようになった。
トラブルを起こすと気まずくて辞める奴も多くいる中で、いっそう真面目に働くリュウの姿は久々津さんの目にも止まったらしい。
【久々津】
「気に入った。ウチの組に入る気はないか?」
【赤屋】
「え、俺が……?」
【久々津】
「もちろん、無理強いはしないさ」
【久々津】
「でもお前のことを買ってるのは嘘じゃない」
【ハク】
「それで久々津さんのところに……」
【赤屋】
「あの人は……組長は、ケンカっ早い若造だった俺の話を真剣に聞いてくれた」
【赤屋】
「誤解も晴らしてくれた。すげぇ人なんだ、ホントに」
リュウは自分のことのように誇らしげに語る。
俺もそんなリュウを見ていると、なんだか嬉しい気持ちになった。
【赤屋】
「そういうわけで組長には恩義もあるし、尊敬してる」
【赤屋】
「俺がそんな人の誘いを断るわけにはいかねぇだろ」
【ハク】
(リュウ……本当に久々津さんのこと尊敬してるんだな)
俺は今まで高校生のリュウしか知らなかったから、今のリュウには驚いたけど理由を聞くと納得することができた。
同時に、俺に話してくれたことも嬉しく思う。リュウも俺のこと、信頼……してくれてるんだよな。
【ハク】
「会ってない間に、リュウにもいろいろあったんだな……」
とりあえずリュウが自暴自棄になったり、ただ目的もなくヤクザになってしまったのではなくてほっとする。
それどころか、そんな風に心から尊敬できる人がいることがうらやましくもあった。
リュウの話ぶりからは、久々津さんに心酔していることが簡単に見て取れたからだ。
高校生のリュウしか覚えていないからか、車を運転してるのがなんか不思議な感じだ。
【ハク】
(リュウが俺の知らないうちに大人になっちゃったみたいだ……)
【赤屋】
「そうだ、ハク。シートベルトつけろよ。最近うるせぇんだ」
【ハク】
「あっ、ごめん。俺、普段運転しないから……」
考え事をしていた俺は、リュウに言われて初めてシートベルトの存在に気付いた。
公共交通機関ばっかりで車なんて滅多に乗らないから油断してた……。
慌ててシートベルトを装着しようとするが、差込口がみつからない。
【赤屋】
「ほら、ココ。ちょっとわかりにくいトコにあるんだ」
信号待ちでちょうど停車していたので、リュウがわざわざ体を乗り出して説明してくれる。
俺の横に手をついて、反対の手で場所を示す。
それは、いいんだけど……。
【ハク】
(顔が、近い……!)
リュウが俺の方に体を倒す体制なので、俺より少し高い位置にあるはずのリュウの顔が俺と同じくらいに下りてきてる。
リュウもそれに気付いたようで、心なしか顔が赤い。
でも、お互い何も言えず見つめあったまま少しの時が過ぎた。
【赤屋】
「…………」
【ハク】
「…………」
そのなんとも言えない空気は、後続車のクラクションの音で壊された。
【赤屋】
「ば、馬鹿野郎!シートベルトくらいちゃんと締めろ」
【ハク】
「そ、そっちこそ、信号青だよ」
リュウは慌てて定位置に戻ると、アクセルを踏む。
信号は青に替わった直後のようで、後続車をこれ以上焦らさせることなく車は先へ進んだ。
【ハク】
(なんだよ、さっきと言ってることが逆じゃないか)
【ハク】
(だいたいそんな反応しなくたって……昔だってこのくらいのことよくあっただろ……!)
その後、なんとなく会話は途切れてしばらく無言の時間が続いている。
そりゃさっきみたいな出来事のあとになんて会話を続けていいかわからない。
リュウは口下手だから余計だろう。
しかし、俺はリュウに確認したいことが少なくともひとつ、あった。
【ハク】
「ところで、さ……」
沈黙を破って、俺は口を開いた。
【赤屋】
「なんだ?」
【ハク】
「……リュウはさっき、久々津さん……のこと『組長』って呼んでたよな」
【赤屋】
「そうだな」
実を言うと、俺は先ほどのやりとりを見ても、まだリュウがヤクザをやってることを完全には信じられなかった。
いや、信じたくないのかもしれない。高校以来の友人が、ヤクザだなんて……。組長と言っても町内会か何かだったらいいな……とか、まだ少し思っている。
もしかしたら、先に見た黒塗りの車はリュウとは関係ないかもしれないし……とか。
なぜなら、リュウは正義感が強くて、ヤクザとかそういうものは嫌いだと思っていたから。
昨日もバーで俺を助けてくれたし、今日もこうして二つ返事で警察署に同行してまで俺の疑いを晴らそうとしてくれている。
そんなリュウが、なぜ……。
【ハク】
「それって、リュウも、その……ヤクザなのか?」
上手い言い方が浮かばずに、ストレートな言い方になってしまって自分でどきっとする。
それを、リュウは表情を変えずに肯定した。
【赤屋】
「…………そうだ」
【赤屋】
「やっぱり、話しておかなきゃなんねぇよな」
【赤屋】
「いや……と言うよりも、ハクにはちゃんと聞いて欲しい」
そう前置きして、リュウは仕事に就いた経緯……
ヤクザになった経緯を話し始めた。
【赤屋】
「俺は、もともとはヤクザなんて大嫌いだった」
【赤屋】
「ヤクザなんて悪党と同じだと思ってたからな」
【赤屋】
「……でも、そうじゃない人もいた」
【ハク】
「それが、久々津さん……ってこと?」
【赤屋】
「そうだ」
少しの沈黙のあとリュウは、卒業して俺と離れた後のことをゆっくりと話してくれた。
リュウは高校時代にしていた土建屋のアルバイト先にその体格の良さを買われ、卒業と同時に土建屋に入社したらしい。
……再会のときの俺の読みは、あながち外れてはいなかったということか。
しばらくは普通に働いていたリュウだが、あるとき仕事の進め方をめぐって上司とトラブルになった。
絶対にリュウの案のほうが筋が通っていて効率的だった。
今俺が聞いただけでも、リュウを支持するだろうと思う内容だ。
でも上司は自分の意見を曲げずに言い争いになった。
【上司】
「いや、今まで通り進める。お前の意見は却下だ」
【赤屋】
「は?なんで……!」
【上司】
「だいたいお前みたいな高校出たばかりの坊主の言うことなんて通るわけねぇだろ」
【赤屋】
「っ……!なんだよその言い方は!」
そこで、カッとなって手が出てしまったんだそうだ。
リュウならありそうなことだ、と俺は思った。
昔から口が上手いほうではなく、相手に口撃を受けると言葉が返せず手が先に出てしまう。そんな不器用な性格だった。
理由はどうあれ、上司に暴力をふるったとなればリュウは立場が悪い。
その際、間に入ってくれたのが久々津さんだと言う。
【久々津】
「まあまあ、そこの若いのの言い分ももっともだ」
【上司】
「……!久々津さん!」
【赤屋】
「アンタは……?」
【上司】
「アンタなんて口を聞くな!このお方はな……」
【久々津】
「はっはっは、アンタか。まぁいい、若いうちは威勢がいいのが一番だ」
久々津さんの取り成しで、リュウはなんとか元通り会社にいられるようになった。
トラブルを起こすと気まずくて辞める奴も多くいる中で、いっそう真面目に働くリュウの姿は久々津さんの目にも止まったらしい。
【久々津】
「気に入った。ウチの組に入る気はないか?」
【赤屋】
「え、俺が……?」
【久々津】
「もちろん、無理強いはしないさ」
【久々津】
「でもお前のことを買ってるのは嘘じゃない」
【ハク】
「それで久々津さんのところに……」
【赤屋】
「あの人は……組長は、ケンカっ早い若造だった俺の話を真剣に聞いてくれた」
【赤屋】
「誤解も晴らしてくれた。すげぇ人なんだ、ホントに」
リュウは自分のことのように誇らしげに語る。
俺もそんなリュウを見ていると、なんだか嬉しい気持ちになった。
【赤屋】
「そういうわけで組長には恩義もあるし、尊敬してる」
【赤屋】
「俺がそんな人の誘いを断るわけにはいかねぇだろ」
【ハク】
(リュウ……本当に久々津さんのこと尊敬してるんだな)
俺は今まで高校生のリュウしか知らなかったから、今のリュウには驚いたけど理由を聞くと納得することができた。
同時に、俺に話してくれたことも嬉しく思う。リュウも俺のこと、信頼……してくれてるんだよな。
【ハク】
「会ってない間に、リュウにもいろいろあったんだな……」
とりあえずリュウが自暴自棄になったり、ただ目的もなくヤクザになってしまったのではなくてほっとする。
それどころか、そんな風に心から尊敬できる人がいることがうらやましくもあった。
リュウの話ぶりからは、久々津さんに心酔していることが簡単に見て取れたからだ。