[本編] 黒木 忠生 編
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黒木の家は、一言で言えばシンプルだった。
必要最低限のものしかなく、ベッドルームに至ってはベッドとクローゼット以外は特にモノがない。
【ハク】
(なんだか黒木らしいな……)
そう思いながら部屋を見回していると、黒木が着替えらしきもの一式を俺に手渡した。
【黒木】
「シャワー先に使っていいよ、ハク。着替えはコレ、俺の貸すから」
【ハク】
「ああ……ごめんな。本当にありがとう……」
【黒木】
「ハクの役に立てるなら嬉しいよ」
俺は黒木にすすめられるままにシャワーを浴びる。
ここ数日間いろいろあったことを洗い流すみたいな気分だった……。
【黒木】
「ハク。寝る場所、ベッドしかないんだ。俺と一緒でもいいかな?」
【ハク】
「え?ああ、いいよ」
【ハク】
(そんな贅沢いえる立場じゃないし……泊まらせてもらえるだけでありがたいよな……)
ベッドはセミダブルで、一人で寝るにはゆったりしているが、二人では狭い。
黒木と一緒にそのベッドに入り込むと、さすがに男二人というだけだって、かなり体が密着した。
俺はなんだか可笑しくなってしまう。
【ハク】
(男同士でこんな風に寝るなんて、なんか笑えるなあ……こんなの、小学生のとき以来じゃないか……?)
【黒木】
「どうしたの、ハク?」
【ハク】
「え?あ……ごめん。特に意味はなかったんだけど……なんか、男同士でこんなにくっついてるのって不思議な感じだなあと思ってさ」
【黒木】
「あぁ、確かにね」
黒木が、俺の顔を見ながら笑う。
俺たちは一つのベッドの中で、向き合っている状態だった……つまり、顔はかなりの至近距離にある。
【ハク】
(うわ……黒木と……顔が近すぎて………)
俺はドキドキしながら黒木の顔をチラッと見ていた。
当たり前だけど、こんなに間近で黒木の顔を見るのは初めてだ……。
【ハク】
(やっぱり美形だなあ、黒木……なんていうか…モデルみたいだ………)
改めてそんなことを思う俺の前で、黒木は既に目を閉じていた。
俺はしばらくその顔に見とれてしまったが、ハッと我に返って、意識的に目を閉じる。
でも俺は、頭が冴えてしまってなかなか寝付けない………。
【ハク】
(………やばい。目を閉じてても、全然眠れそうにないな………)
頭の中では、昨日の出来事や、今日の出来事がぐるぐると回っていた。
会社のこと、黒木との再会、そして…火事のこと…………。
【ハク】
(なんとかこうして暖かいベッドで横になれるのも…黒木のおかげなんだよな………そういえば、さっきバーで……)
俺は、バーでの会話を思い出していた。黒木の職業について、だ。
黒木は、詐欺師をしている理由については教えてくれなかった……。
ゆっくり話そうなんて言っていたが、やはり最初から話す気なんてなかったんだろうか……。
【ハク】
「………」
【黒木】
「………眠れない?」
【ハク】
「黒木…!?…起きてたのか……。ごめん、なんだか眠れなくて……」
【黒木】
「別にいいよ。俺もそんなに眠いわけじゃないし」
【ハク】
「……じゃあ、さ。ちょっと、話しても……いいか?」
【黒木】
「いいよ?」
【ハク】
「その……さっきの、話なんだけど………」
俺は少し緊張しながらも、なぜ詐欺師になったのかを尋ねた。
また拒否されるかもしれないという気もしたけれど………黒木は、その理由を話してくれた。
【黒木】
「ハク、俺が詐欺師になったのはね……―――――」
黒木の家庭は、父親と、父親の再婚相手と、黒木の、3人の家族だった。
ところが、ある年に父親が事故で亡くなり、黒木は義理の母親と2人きりになってしまったのだ……。
そして、あるとき、その“事件”は起こった―――――。
【黒木母】
「忠生ちゃん……こっちにいらっしゃい……」
【黒木】
「か、あさん………?」
【黒木母】
「お母さんのいうことがきけないの?ほら、いい子ね……早くこっちにくるのよ……」
帰宅した黒木が目にしたのは、母親ではなく、もはや一人の女だった。
その女は、惜しげもなく肌をさらけ出し、息子を一人の男として誘惑してきた。
その信じられない状況に身を固くしていた黒木は、母親のなすがままになってしまったのだ……。
【黒木母】
「あぁ、私の可愛い忠生ちゃん……いい子ね………」
【黒木】
「や、やめて……母さん……こんな、の……っ」
バン―――!
焦燥感と嫌悪感に襲われ、黒木は思わず母親を突き飛ばす。
すると、母親は人が変わったかのようにみるみる形相を変えていった。
【黒木母】
「…忠生ちゃん。お母さんのいうことがきけないの…?」
【黒木】
「なんて悪い子なのかしら……お母さん、そんな悪い子は許せないの……」
【黒木】
「や、やめ……っ、ゆるして、母さん……っ」
【黒木母】
「黙れ!私の言うことを大人しく聞くのよ!ほら、その身体で私を悦ばせなさい!」
【黒木】
「や、だ…やめて……母さん……、やめ…て…っ」
―――――黒木は、継母に虐待されたのだ……。
それ以来、黒木は女性不信に陥り、母親から逃れるために家を飛び出したのだという。
………ところが。
【黒木母】
「なんとしてでも連れ戻すのよ!……私から逃げようなんて、絶対許さないわ……」
不幸なことに、黒木の義理の母親はある財閥の娘でもあった。
母親はその財力にものを言わせ、全力で黒木を追ってくる――――。
恐ろしいほどに執着している義理の息子を、なんとしてでも見つけ出そうと………。
【黒木】
「はぁ、はぁ、はぁ………」
母親は、どんな手段でも使ってきた。
そんな、地獄の果てまでも自分を追ってこようとする母親は、黒木にとって恐怖の存在でしかなかった。
【黒木】
「なんとか……逃げ切らなきゃ………なんとか、して………」
必死の思いで、なんとか母親の追っ手を欺いて逃げる……捕まりそうになっても、間一髪で逃げ切って、それを繰り返して………。
そうこうしているうちに、黒木は裏社会に接触することになったのだ―――――。
【黒木】
「――――まぁ…そのまま裏社会に入って、詐欺するようになって……今に至るわけ」
【ハク】
「…そ、うだったんだ………」
【ハク】
(まさか、そんなことが黒木の身に起こっていただなんて………)
詐欺師になるなんて普通ではないとは思っていたが、まさかそんなことだとは思わなかった……。
予想だにしなかった壮絶な過去を聞いて、俺はうまく言葉を口にできなくなってしまう。
【黒木】
「あの時は必死だったからなぁ。なんでもよかったんだよ、逃げられるなら」
【ハク】
「………その、俺、なんて言ったらいいか……」
【黒木】
「あれ?どうしたのハク?びっくりしちゃった?」
【ハク】
「そりゃ……びっくりしたよ……」
【黒木】
「………やっぱり、軽蔑する?」
【ハク】
「し、しないよ!……そんなの……」
【ハク】
(そんなのできるもんか……。だって……そんな過去がある黒木を、責めるなんてできないだろ……)
詐欺なんて人を騙しているだけじゃないかと思ったりもしたが、なんだか俺はそう思えなくなってしまった。
必要最低限のものしかなく、ベッドルームに至ってはベッドとクローゼット以外は特にモノがない。
【ハク】
(なんだか黒木らしいな……)
そう思いながら部屋を見回していると、黒木が着替えらしきもの一式を俺に手渡した。
【黒木】
「シャワー先に使っていいよ、ハク。着替えはコレ、俺の貸すから」
【ハク】
「ああ……ごめんな。本当にありがとう……」
【黒木】
「ハクの役に立てるなら嬉しいよ」
俺は黒木にすすめられるままにシャワーを浴びる。
ここ数日間いろいろあったことを洗い流すみたいな気分だった……。
【黒木】
「ハク。寝る場所、ベッドしかないんだ。俺と一緒でもいいかな?」
【ハク】
「え?ああ、いいよ」
【ハク】
(そんな贅沢いえる立場じゃないし……泊まらせてもらえるだけでありがたいよな……)
ベッドはセミダブルで、一人で寝るにはゆったりしているが、二人では狭い。
黒木と一緒にそのベッドに入り込むと、さすがに男二人というだけだって、かなり体が密着した。
俺はなんだか可笑しくなってしまう。
【ハク】
(男同士でこんな風に寝るなんて、なんか笑えるなあ……こんなの、小学生のとき以来じゃないか……?)
【黒木】
「どうしたの、ハク?」
【ハク】
「え?あ……ごめん。特に意味はなかったんだけど……なんか、男同士でこんなにくっついてるのって不思議な感じだなあと思ってさ」
【黒木】
「あぁ、確かにね」
黒木が、俺の顔を見ながら笑う。
俺たちは一つのベッドの中で、向き合っている状態だった……つまり、顔はかなりの至近距離にある。
【ハク】
(うわ……黒木と……顔が近すぎて………)
俺はドキドキしながら黒木の顔をチラッと見ていた。
当たり前だけど、こんなに間近で黒木の顔を見るのは初めてだ……。
【ハク】
(やっぱり美形だなあ、黒木……なんていうか…モデルみたいだ………)
改めてそんなことを思う俺の前で、黒木は既に目を閉じていた。
俺はしばらくその顔に見とれてしまったが、ハッと我に返って、意識的に目を閉じる。
でも俺は、頭が冴えてしまってなかなか寝付けない………。
【ハク】
(………やばい。目を閉じてても、全然眠れそうにないな………)
頭の中では、昨日の出来事や、今日の出来事がぐるぐると回っていた。
会社のこと、黒木との再会、そして…火事のこと…………。
【ハク】
(なんとかこうして暖かいベッドで横になれるのも…黒木のおかげなんだよな………そういえば、さっきバーで……)
俺は、バーでの会話を思い出していた。黒木の職業について、だ。
黒木は、詐欺師をしている理由については教えてくれなかった……。
ゆっくり話そうなんて言っていたが、やはり最初から話す気なんてなかったんだろうか……。
【ハク】
「………」
【黒木】
「………眠れない?」
【ハク】
「黒木…!?…起きてたのか……。ごめん、なんだか眠れなくて……」
【黒木】
「別にいいよ。俺もそんなに眠いわけじゃないし」
【ハク】
「……じゃあ、さ。ちょっと、話しても……いいか?」
【黒木】
「いいよ?」
【ハク】
「その……さっきの、話なんだけど………」
俺は少し緊張しながらも、なぜ詐欺師になったのかを尋ねた。
また拒否されるかもしれないという気もしたけれど………黒木は、その理由を話してくれた。
【黒木】
「ハク、俺が詐欺師になったのはね……―――――」
黒木の家庭は、父親と、父親の再婚相手と、黒木の、3人の家族だった。
ところが、ある年に父親が事故で亡くなり、黒木は義理の母親と2人きりになってしまったのだ……。
そして、あるとき、その“事件”は起こった―――――。
【黒木母】
「忠生ちゃん……こっちにいらっしゃい……」
【黒木】
「か、あさん………?」
【黒木母】
「お母さんのいうことがきけないの?ほら、いい子ね……早くこっちにくるのよ……」
帰宅した黒木が目にしたのは、母親ではなく、もはや一人の女だった。
その女は、惜しげもなく肌をさらけ出し、息子を一人の男として誘惑してきた。
その信じられない状況に身を固くしていた黒木は、母親のなすがままになってしまったのだ……。
【黒木母】
「あぁ、私の可愛い忠生ちゃん……いい子ね………」
【黒木】
「や、やめて……母さん……こんな、の……っ」
バン―――!
焦燥感と嫌悪感に襲われ、黒木は思わず母親を突き飛ばす。
すると、母親は人が変わったかのようにみるみる形相を変えていった。
【黒木母】
「…忠生ちゃん。お母さんのいうことがきけないの…?」
【黒木】
「なんて悪い子なのかしら……お母さん、そんな悪い子は許せないの……」
【黒木】
「や、やめ……っ、ゆるして、母さん……っ」
【黒木母】
「黙れ!私の言うことを大人しく聞くのよ!ほら、その身体で私を悦ばせなさい!」
【黒木】
「や、だ…やめて……母さん……、やめ…て…っ」
―――――黒木は、継母に虐待されたのだ……。
それ以来、黒木は女性不信に陥り、母親から逃れるために家を飛び出したのだという。
………ところが。
【黒木母】
「なんとしてでも連れ戻すのよ!……私から逃げようなんて、絶対許さないわ……」
不幸なことに、黒木の義理の母親はある財閥の娘でもあった。
母親はその財力にものを言わせ、全力で黒木を追ってくる――――。
恐ろしいほどに執着している義理の息子を、なんとしてでも見つけ出そうと………。
【黒木】
「はぁ、はぁ、はぁ………」
母親は、どんな手段でも使ってきた。
そんな、地獄の果てまでも自分を追ってこようとする母親は、黒木にとって恐怖の存在でしかなかった。
【黒木】
「なんとか……逃げ切らなきゃ………なんとか、して………」
必死の思いで、なんとか母親の追っ手を欺いて逃げる……捕まりそうになっても、間一髪で逃げ切って、それを繰り返して………。
そうこうしているうちに、黒木は裏社会に接触することになったのだ―――――。
【黒木】
「――――まぁ…そのまま裏社会に入って、詐欺するようになって……今に至るわけ」
【ハク】
「…そ、うだったんだ………」
【ハク】
(まさか、そんなことが黒木の身に起こっていただなんて………)
詐欺師になるなんて普通ではないとは思っていたが、まさかそんなことだとは思わなかった……。
予想だにしなかった壮絶な過去を聞いて、俺はうまく言葉を口にできなくなってしまう。
【黒木】
「あの時は必死だったからなぁ。なんでもよかったんだよ、逃げられるなら」
【ハク】
「………その、俺、なんて言ったらいいか……」
【黒木】
「あれ?どうしたのハク?びっくりしちゃった?」
【ハク】
「そりゃ……びっくりしたよ……」
【黒木】
「………やっぱり、軽蔑する?」
【ハク】
「し、しないよ!……そんなの……」
【ハク】
(そんなのできるもんか……。だって……そんな過去がある黒木を、責めるなんてできないだろ……)
詐欺なんて人を騙しているだけじゃないかと思ったりもしたが、なんだか俺はそう思えなくなってしまった。