[本編] 黒木 忠生 編
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何回かのコールの後、黒木が電話に出た。俺は思わずホッとしてしまう。
【ハク】
「あ…!もしもし、俺、ハクだけど…」
【黒木】
「ああ、ハク。そろそろ電話してくると思ってたよ」
【ハク】
「え……?」
【黒木】
「いや、なんでもない。…何かあった?」
【ハク】
「あ、ああ…。……実はさ、俺……」
俺は、隣に控えている藍建をチラッと見ながら、手短に事情を話した。
とりあえず、昨晩の俺にはアリバイがあることを、藍建に証明しなければならない。
自分の家を放火するなんてバカなこと、あるはずもないけれど……。
【ハク】
「……そういう状況でさ。一緒にいたってこと、証言してほしいんだ…」
【黒木】
「いいよ。ハクのためなら。本当のことだしね」
二つ返事をしてくれた黒木に感謝しながら、俺は藍建に電話口を変わる。
いくつかのことを黒木に聞いた藍建は、ようやく俺のアリバイについて納得してくれたらしく、軽く手を上げて去っていった。
それを見守ってから、俺は安堵のため息をもらす。
【ハク】
「…黒木、ありがとうな。急にごめん、こんな……」
【黒木】
「気にしなくていいよ。それよりハク、大丈夫?」
【ハク】
「………」
黒木にそう言われて、俺は無性に孤独感に襲われた。
目の前には、黒焦げになった部屋―――――
俺に残っているものなんて……今、黒木とつながっている携帯くらいだ……。
【ハク】
(大丈夫…………なんかじゃ、ない………俺………)
ふと、昨日の黒木との時間を思い出した。楽しくて、幸せで………。
まるで、そんな俺の不安な感情を読みとったかのように黒木は、俺にこう話しかけてきた。
【黒木】
「ねぇ、ハク?今から会える?」
【ハク】
「…えっ!」
【黒木】
「今、ハクすごく不安なんだろ?」
そのものズバリの気持ちを言い当てられて、俺は一瞬ドキっとする。
【ハク】
「……黒木…ありがとう」
【黒木】
「いいよ、ハクのためだもん」
【ハク】
「……俺、もうどうすればいいかわかならかったんだ…」
俺は正直な気持ちを吐き出していた。
昨晩は酔っていたせいか、会社をクビになったことも愚痴のようにしかならなかった。
【ハク】
「でも黒木と電話で話して、ちょっと楽になったよ…」
【黒木】
「ハク、そんなに思いつめないで。大丈夫だから……ほら、昨日のこと思い出してさ」
【黒木】
「昨日……」
【黒木】
「楽しかったろ?昔話とかいろいろしてさ」
【ハク】
「ああ……」
【黒木】
「それに、俺もついてるから」
【黒木】
「昔だって、一緒にいろいろ乗り越えてきただろ?だから今度も大丈夫だよ。な、ハク?」
【ハク】
「……ありがとう、黒木……」
俺は、黒木の優しい言葉に少し心を持ち直した。
その上、心配だから今日にも会おうと言ってくれた黒木の言葉に、思わず涙が出そうになってしまう。
【黒木】
「じゃあ、昨日のバーで待ち合わせよう。俺もハクに会いたいしね」
【ハク】
「ありがとう…じゃあ、またあのバーで!」
電話を切った後も、俺はしばらく余韻にひたっていた。
こんな久しぶりに会った俺に、あんなに親身になってくれるなんて……。
【ハク】
(あいつ……本当にいい奴だな………)
俺は、嬉しい気持ちでいっぱいになっていた。
当然、黒木の素性を何一つ知らされていなかったことなど、まるで思い出さなかった。
俺がバーに着くと、見渡す限り客は俺ともうひと組しかいなく、俺はカウンターから少し離れたボックス席に腰を下ろした。
腕の時計を確認すると、今朝電話で待ち合わせた時間の5分前なのがわかる。
【ハク】
「黒木……は、まだ来てないみたいだな……」
ふとカウンターの方をみると若い二人組の男が飲んでいるのが見えた。
整った顔立ちに甘いマスク。
そしてスラっとした長身。
両人とも黒木と比べても劣らない美形の持ち主で、俺は少し落ち込んでしまう。
【ハク】
「服装から想像するに…ホスト…かな?」
するとカウンターから出てきた店員が俺に注文を聞きに声をかけてきた。
【和久井】
「本日はいかがされますか?」
【ハク】
「…じゃあとりあえずビール!」
と勢いよく頼んだ所で、昨日も酒で失敗したことを思い返した。
【ハク】
「…す、すみません。ウーロン茶を頂けますか?」
【和久井】
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
そう言って店員はニコっと笑うと俺のオーダーをとって、そのままカウンターに戻っていく。
俺は再びカウンターの二人の会話に意識を向ける。
二人は興奮しているのか声が大きく、まる聞こえになっていて、俺は黒木が来るまでの暇つぶしを兼ねて彼らの話に耳を向けた。
【ハク】
(何だろう……若くみえるけど……仕事の話か?)
どうやらその二人組は、ホストの先輩後輩の関係らしい。
【緑川】
「だからよ…仕事だって割り切って接しないとダメな場合もあるんだよ」
【桃島】
「はいはいはーい、わかってますよ」
【緑川】
「こら、マジメに聞け!……まったく、お前はムラがあるからなぁ。それさえなきゃ全然大丈夫なのに」
【緑川】
「ま、客商売はお客が神様なんだから、ちゃんとエスコートしろよ?」
【桃島】
「へーい」
【緑川】
「へーいじゃねぇ!たのむよ…。オレもお前を庇いきれなくなるじゃんか」
【桃島】
「わかってるけど…。本気になれっていう方が無理なときもあるっつーか…」
後輩の男が、ちらっと横目で先輩の男を見ている。
【緑川】
「あるっつーか、じゃなくて。やんの。分かったか?」
【桃島】
「……はーい」
【緑川】
「よし。お前、ちゃんとやらないと見捨てるからな」
【桃島】
「えー!先輩に見捨てられたら、俺、寂しくて死んじゃうじゃないすか!」
【緑川】
「だったら言うこと聞いてくれよ」
【桃島】
「へーい」
【緑川】
「だからその返事!」
【桃島】
「はーい」
なんだかんだと仲の良さそうな先輩後輩だな……。
俺は聞き耳を立てていた二人の会話にそんなことを思う。
【ハク】
「あ…!もしもし、俺、ハクだけど…」
【黒木】
「ああ、ハク。そろそろ電話してくると思ってたよ」
【ハク】
「え……?」
【黒木】
「いや、なんでもない。…何かあった?」
【ハク】
「あ、ああ…。……実はさ、俺……」
俺は、隣に控えている藍建をチラッと見ながら、手短に事情を話した。
とりあえず、昨晩の俺にはアリバイがあることを、藍建に証明しなければならない。
自分の家を放火するなんてバカなこと、あるはずもないけれど……。
【ハク】
「……そういう状況でさ。一緒にいたってこと、証言してほしいんだ…」
【黒木】
「いいよ。ハクのためなら。本当のことだしね」
二つ返事をしてくれた黒木に感謝しながら、俺は藍建に電話口を変わる。
いくつかのことを黒木に聞いた藍建は、ようやく俺のアリバイについて納得してくれたらしく、軽く手を上げて去っていった。
それを見守ってから、俺は安堵のため息をもらす。
【ハク】
「…黒木、ありがとうな。急にごめん、こんな……」
【黒木】
「気にしなくていいよ。それよりハク、大丈夫?」
【ハク】
「………」
黒木にそう言われて、俺は無性に孤独感に襲われた。
目の前には、黒焦げになった部屋―――――
俺に残っているものなんて……今、黒木とつながっている携帯くらいだ……。
【ハク】
(大丈夫…………なんかじゃ、ない………俺………)
ふと、昨日の黒木との時間を思い出した。楽しくて、幸せで………。
まるで、そんな俺の不安な感情を読みとったかのように黒木は、俺にこう話しかけてきた。
【黒木】
「ねぇ、ハク?今から会える?」
【ハク】
「…えっ!」
【黒木】
「今、ハクすごく不安なんだろ?」
そのものズバリの気持ちを言い当てられて、俺は一瞬ドキっとする。
【ハク】
「……黒木…ありがとう」
【黒木】
「いいよ、ハクのためだもん」
【ハク】
「……俺、もうどうすればいいかわかならかったんだ…」
俺は正直な気持ちを吐き出していた。
昨晩は酔っていたせいか、会社をクビになったことも愚痴のようにしかならなかった。
【ハク】
「でも黒木と電話で話して、ちょっと楽になったよ…」
【黒木】
「ハク、そんなに思いつめないで。大丈夫だから……ほら、昨日のこと思い出してさ」
【黒木】
「昨日……」
【黒木】
「楽しかったろ?昔話とかいろいろしてさ」
【ハク】
「ああ……」
【黒木】
「それに、俺もついてるから」
【黒木】
「昔だって、一緒にいろいろ乗り越えてきただろ?だから今度も大丈夫だよ。な、ハク?」
【ハク】
「……ありがとう、黒木……」
俺は、黒木の優しい言葉に少し心を持ち直した。
その上、心配だから今日にも会おうと言ってくれた黒木の言葉に、思わず涙が出そうになってしまう。
【黒木】
「じゃあ、昨日のバーで待ち合わせよう。俺もハクに会いたいしね」
【ハク】
「ありがとう…じゃあ、またあのバーで!」
電話を切った後も、俺はしばらく余韻にひたっていた。
こんな久しぶりに会った俺に、あんなに親身になってくれるなんて……。
【ハク】
(あいつ……本当にいい奴だな………)
俺は、嬉しい気持ちでいっぱいになっていた。
当然、黒木の素性を何一つ知らされていなかったことなど、まるで思い出さなかった。
俺がバーに着くと、見渡す限り客は俺ともうひと組しかいなく、俺はカウンターから少し離れたボックス席に腰を下ろした。
腕の時計を確認すると、今朝電話で待ち合わせた時間の5分前なのがわかる。
【ハク】
「黒木……は、まだ来てないみたいだな……」
ふとカウンターの方をみると若い二人組の男が飲んでいるのが見えた。
整った顔立ちに甘いマスク。
そしてスラっとした長身。
両人とも黒木と比べても劣らない美形の持ち主で、俺は少し落ち込んでしまう。
【ハク】
「服装から想像するに…ホスト…かな?」
するとカウンターから出てきた店員が俺に注文を聞きに声をかけてきた。
【和久井】
「本日はいかがされますか?」
【ハク】
「…じゃあとりあえずビール!」
と勢いよく頼んだ所で、昨日も酒で失敗したことを思い返した。
【ハク】
「…す、すみません。ウーロン茶を頂けますか?」
【和久井】
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
そう言って店員はニコっと笑うと俺のオーダーをとって、そのままカウンターに戻っていく。
俺は再びカウンターの二人の会話に意識を向ける。
二人は興奮しているのか声が大きく、まる聞こえになっていて、俺は黒木が来るまでの暇つぶしを兼ねて彼らの話に耳を向けた。
【ハク】
(何だろう……若くみえるけど……仕事の話か?)
どうやらその二人組は、ホストの先輩後輩の関係らしい。
【緑川】
「だからよ…仕事だって割り切って接しないとダメな場合もあるんだよ」
【桃島】
「はいはいはーい、わかってますよ」
【緑川】
「こら、マジメに聞け!……まったく、お前はムラがあるからなぁ。それさえなきゃ全然大丈夫なのに」
【緑川】
「ま、客商売はお客が神様なんだから、ちゃんとエスコートしろよ?」
【桃島】
「へーい」
【緑川】
「へーいじゃねぇ!たのむよ…。オレもお前を庇いきれなくなるじゃんか」
【桃島】
「わかってるけど…。本気になれっていう方が無理なときもあるっつーか…」
後輩の男が、ちらっと横目で先輩の男を見ている。
【緑川】
「あるっつーか、じゃなくて。やんの。分かったか?」
【桃島】
「……はーい」
【緑川】
「よし。お前、ちゃんとやらないと見捨てるからな」
【桃島】
「えー!先輩に見捨てられたら、俺、寂しくて死んじゃうじゃないすか!」
【緑川】
「だったら言うこと聞いてくれよ」
【桃島】
「へーい」
【緑川】
「だからその返事!」
【桃島】
「はーい」
なんだかんだと仲の良さそうな先輩後輩だな……。
俺は聞き耳を立てていた二人の会話にそんなことを思う。