[本編] 黒木 忠生 編
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【ハク】
「昨日……昨日って、何があったんだ……?」
俺は必死に昨日の記憶を呼び起こそうとした。
昨日は、再会した黒木とバーで待ち合わせて飲んでいて……思い出話に花がさいて……それで………。
【ハク】
(………だめだ……その後が思い出せない…………)
そこまでは覚えているのに、その先はまったく思い出せない。
一体全体、どうしてこんな状態になってしまったのか…………。
【ハク】
「く……黒木!なあ、黒木!起きてくれよ……!」
【黒木】
「ンン………んー…………」
【ハク】
「はあ……ダメだ」
【ハク】
「全然起きる気配がない……」
黒木だったら、昨日のことを覚えているかもしれない。
起こして聞いてみようと、体を何度かゆすってみたものの、どうやら黒木はすっかり夢の中らしい……。
【ハク】
「しかたないな………」
俺は、もう一度黒木を起こすことにした
【ハク】
「………ふう」
【ハク】
「黒木?」
【黒木】
「ファ………んー…………」
【ハク】
「おい!黒木!!黒木ってば!?」
しかし黒木は揺さぶっても、耳元で呼んでも眠りから覚めることはなかった。
【ハク】
「ちきしょう…起きそうで起きねぇ…」
【ハク】
「しょうがねぇな…」
シャツとズボンは丁寧にクローゼットにかかっていた。
俺はクローゼットに洋服をかけた記憶はまったくなかったが、ということは黒木がやったのだろう。
【ハク】
「って……。下着……どこにあんだよ………」
最初に見つけたかった下着だが、どこをどう探しても見つかる気配すらしない。
バスルーム、洗面所と部屋の中を再度ぐるっと見回すが、それらしきものは見つからない。
これだから酔っぱらうのは嫌なんだ…と思いつつ、半ばあきらめて俺はそのままズボンを履くことにした。
【ハク】
「はぁ…しかたない…」
そして、黒木への置き手紙を残すと、その部屋をあとにしたのだった。
【黒木】
「……………」
自宅の前につくと、そこには人だかりが出来ていた。
何かあったんだろうか―――?
人混みをかきわけて自宅へ入ろうとしたが、立入禁止のロープがはられていて入れないようになっている。
【ハク】
「なんなんだ…これ……?」
自宅に入れないままオロオロしていると、突然、男が話しかけてきた。
どうやら刑事らしい。見せられた警察手帳に藍建仁と名前が書いてある。
【藍建】
「もしかして…あなた、このアパートの方ですか?」
【ハク】
「あ…は、はい。そうですけど………あの、これは一体……?」
【藍建】
「いやあ、ひどいもんでね。実は昨夜、放火があったんですよ。それで、一部屋まるまる真っ黒になっちゃって……」
【ハク】
「放火…?そ、それ、どこの部屋ですか……!?」
【藍建】
「ええと……」
俺は、藍建の口から出てきた部屋番号に、思わず気を失いそうになってしまった。
だってそれは―――――
俺の部屋だ………。
【ハク】
「あの……お、おれ……確認して、いいですか……?」
【藍建】
「あ、ああ…でも大丈夫か?顔色が悪いぞ」
【ハク】
「大丈夫です……」
藍建の了承を得て、俺は立入禁止のロープを通り抜ける。
人ごみを抜けてみると、俺の部屋で火事にあったことが、外からでもはっきりと分かった。
俺は、ガクガクする膝を奮い立たせながら部屋に向かう。そして、ドアを開けると…………。
【ハク】
「――――――」
………俺は、愕然とするしかなかった……。
部屋の中はほとんどが燃えてしまっていて、昨日まで色鮮やかだった部屋が今は黒一色に染まっている。
とてもじゃないが、生活などできるレベルではない……。
【ハク】
「…………んで…だよ……何で、こんなこと………」
俺は……茫然自失として、しばらくは何もできず、その場から動けなかった……。
とてもじゃないが、信じられなくて――――。
【ハク】
(仕事も失くなって……今度は住む場所も失くなったのか………)
【ハク】
(俺は……なにもかも失ったんだ………)
―――俺は、これからどうすれば良いんだろう……?
仕事も、住む場所も無いなんて……今まで考えたことがなかった。
【ハク】
(……明日から…どうやって生きていけばいいんだよ……?)
黒焦げの部屋をぼんやり見つめながら佇んでいた俺に、そっと藍建が近寄ってくる。
藍建はねぎらいの言葉をかけてくると、申し訳なさそうな顔をして俺に尋問を始めた。
【藍建】
「……大変だったな」
【ハク】
「…………」
【藍建】
「こんな時に悪いんだけど…一応決まりだからさ。昨日、どこにいたか教えてくれるかな?」
【ハク】
「……はい……」
俺は無気力の中、藍建の尋問にぽつぽつと答えた。
そうしながらも、俺の頭の中はほかのことでいっぱいだった……。
【ハク】
(何で……一体どうして、こんなことになったんだろう……)
放火魔だといわれればそれまでだけど……でも、アパートの中で俺の部屋だけが、狙われたように火事になったのだ。
特別な理由もなく、そんなことがあるだろうか………。
【ハク】
(でも……じゃあ一体誰が?何のために、こんなことをしたっていうんだ……?)
俺が、誰かの恨みでも買っているというのか……。
【藍建】
「友達と会っていたってことだけど…その友達とは連絡取れるかな?」
【ハク】
「え…?」
【藍建】
「君本人の証言だけじゃアリバイの証明にはならないんだ。だから、昨晩一緒だった人に連絡をつけて欲しいんだけど…できるか?」
【ハク】
「……ああ、はい。分かりました」
【藍建】
「本当にこんな時に悪いな……仕事なもんで」
俺は、済まなそうにする藍建を横に、携帯電話を取り出した。
そして、昨日一緒にいた友達――――黒木の番号を呼び出す。
【ハク】
(そういえば黒木、もう起きたかな……。置き手紙、気づいてくれただろうか……?)
あの時には、まさかこんなことになるとは思ってもみなかった。
家に帰るためにあの部屋を出たのに、その家がこんなふうに失くなって帰れないなんて……。
【ハク】
(あの時は下着がどこにもなくて焦ったけど……これに比べればまだマトモだよな……)
俺は、黒木が電話に出るのを待っていた。何もかも失った俺だけど………。
この電話が黒木に繋がったら、まだ全部を失ったわけじゃないと、そう思えるような気がしていた…………。
続く…
「昨日……昨日って、何があったんだ……?」
俺は必死に昨日の記憶を呼び起こそうとした。
昨日は、再会した黒木とバーで待ち合わせて飲んでいて……思い出話に花がさいて……それで………。
【ハク】
(………だめだ……その後が思い出せない…………)
そこまでは覚えているのに、その先はまったく思い出せない。
一体全体、どうしてこんな状態になってしまったのか…………。
【ハク】
「く……黒木!なあ、黒木!起きてくれよ……!」
【黒木】
「ンン………んー…………」
【ハク】
「はあ……ダメだ」
【ハク】
「全然起きる気配がない……」
黒木だったら、昨日のことを覚えているかもしれない。
起こして聞いてみようと、体を何度かゆすってみたものの、どうやら黒木はすっかり夢の中らしい……。
【ハク】
「しかたないな………」
俺は、もう一度黒木を起こすことにした
【ハク】
「………ふう」
【ハク】
「黒木?」
【黒木】
「ファ………んー…………」
【ハク】
「おい!黒木!!黒木ってば!?」
しかし黒木は揺さぶっても、耳元で呼んでも眠りから覚めることはなかった。
【ハク】
「ちきしょう…起きそうで起きねぇ…」
【ハク】
「しょうがねぇな…」
シャツとズボンは丁寧にクローゼットにかかっていた。
俺はクローゼットに洋服をかけた記憶はまったくなかったが、ということは黒木がやったのだろう。
【ハク】
「って……。下着……どこにあんだよ………」
最初に見つけたかった下着だが、どこをどう探しても見つかる気配すらしない。
バスルーム、洗面所と部屋の中を再度ぐるっと見回すが、それらしきものは見つからない。
これだから酔っぱらうのは嫌なんだ…と思いつつ、半ばあきらめて俺はそのままズボンを履くことにした。
【ハク】
「はぁ…しかたない…」
そして、黒木への置き手紙を残すと、その部屋をあとにしたのだった。
【黒木】
「……………」
自宅の前につくと、そこには人だかりが出来ていた。
何かあったんだろうか―――?
人混みをかきわけて自宅へ入ろうとしたが、立入禁止のロープがはられていて入れないようになっている。
【ハク】
「なんなんだ…これ……?」
自宅に入れないままオロオロしていると、突然、男が話しかけてきた。
どうやら刑事らしい。見せられた警察手帳に藍建仁と名前が書いてある。
【藍建】
「もしかして…あなた、このアパートの方ですか?」
【ハク】
「あ…は、はい。そうですけど………あの、これは一体……?」
【藍建】
「いやあ、ひどいもんでね。実は昨夜、放火があったんですよ。それで、一部屋まるまる真っ黒になっちゃって……」
【ハク】
「放火…?そ、それ、どこの部屋ですか……!?」
【藍建】
「ええと……」
俺は、藍建の口から出てきた部屋番号に、思わず気を失いそうになってしまった。
だってそれは―――――
俺の部屋だ………。
【ハク】
「あの……お、おれ……確認して、いいですか……?」
【藍建】
「あ、ああ…でも大丈夫か?顔色が悪いぞ」
【ハク】
「大丈夫です……」
藍建の了承を得て、俺は立入禁止のロープを通り抜ける。
人ごみを抜けてみると、俺の部屋で火事にあったことが、外からでもはっきりと分かった。
俺は、ガクガクする膝を奮い立たせながら部屋に向かう。そして、ドアを開けると…………。
【ハク】
「――――――」
………俺は、愕然とするしかなかった……。
部屋の中はほとんどが燃えてしまっていて、昨日まで色鮮やかだった部屋が今は黒一色に染まっている。
とてもじゃないが、生活などできるレベルではない……。
【ハク】
「…………んで…だよ……何で、こんなこと………」
俺は……茫然自失として、しばらくは何もできず、その場から動けなかった……。
とてもじゃないが、信じられなくて――――。
【ハク】
(仕事も失くなって……今度は住む場所も失くなったのか………)
【ハク】
(俺は……なにもかも失ったんだ………)
―――俺は、これからどうすれば良いんだろう……?
仕事も、住む場所も無いなんて……今まで考えたことがなかった。
【ハク】
(……明日から…どうやって生きていけばいいんだよ……?)
黒焦げの部屋をぼんやり見つめながら佇んでいた俺に、そっと藍建が近寄ってくる。
藍建はねぎらいの言葉をかけてくると、申し訳なさそうな顔をして俺に尋問を始めた。
【藍建】
「……大変だったな」
【ハク】
「…………」
【藍建】
「こんな時に悪いんだけど…一応決まりだからさ。昨日、どこにいたか教えてくれるかな?」
【ハク】
「……はい……」
俺は無気力の中、藍建の尋問にぽつぽつと答えた。
そうしながらも、俺の頭の中はほかのことでいっぱいだった……。
【ハク】
(何で……一体どうして、こんなことになったんだろう……)
放火魔だといわれればそれまでだけど……でも、アパートの中で俺の部屋だけが、狙われたように火事になったのだ。
特別な理由もなく、そんなことがあるだろうか………。
【ハク】
(でも……じゃあ一体誰が?何のために、こんなことをしたっていうんだ……?)
俺が、誰かの恨みでも買っているというのか……。
【藍建】
「友達と会っていたってことだけど…その友達とは連絡取れるかな?」
【ハク】
「え…?」
【藍建】
「君本人の証言だけじゃアリバイの証明にはならないんだ。だから、昨晩一緒だった人に連絡をつけて欲しいんだけど…できるか?」
【ハク】
「……ああ、はい。分かりました」
【藍建】
「本当にこんな時に悪いな……仕事なもんで」
俺は、済まなそうにする藍建を横に、携帯電話を取り出した。
そして、昨日一緒にいた友達――――黒木の番号を呼び出す。
【ハク】
(そういえば黒木、もう起きたかな……。置き手紙、気づいてくれただろうか……?)
あの時には、まさかこんなことになるとは思ってもみなかった。
家に帰るためにあの部屋を出たのに、その家がこんなふうに失くなって帰れないなんて……。
【ハク】
(あの時は下着がどこにもなくて焦ったけど……これに比べればまだマトモだよな……)
俺は、黒木が電話に出るのを待っていた。何もかも失った俺だけど………。
この電話が黒木に繋がったら、まだ全部を失ったわけじゃないと、そう思えるような気がしていた…………。
続く…