[本編] 黒木 忠生 編
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高校時代の仲間との再会――その待ち合わせに指定された場所は、あるバーだった。
カラン……
俺は待ち合わせ場所のバーに着いて、かつての仲間の姿を探す。
【ハク】
(時間は……ちょうど、か。もう来てんのか……?)
俺はきょろきょろと周囲を見回した。
バーの店内は洒落た雰囲気で、客もその雰囲気を楽しんでいるようだった。俺なんかは何だか場違いな気がして、そわそわしてしまう。
【ハク】
(早いところ合流したいな…………ん?)
――その時だった。
ふと、視界にある男の姿が止まり、俺は吸い寄せられるようにその男に釘づけになってしまった。
【ハク】
「うわ……」
【ハク】
(なんだ、あの人……信じられないほどの美形だ……)
俺の視線の先には、同じ男でも思わず見惚れてしまうほどの美形がいた。
あんな男が世の中にいるのか……俺はその姿に引き込まれ、ついついぼーっとしてしまう……。
そんな俺に、突然誰かが話しかけてきた。まったく知らない顔だ。
【男1】
「なあ、君。今日は一人でここに?よかったら一緒に飲まないか?」
【ハク】
「え?あ…すみません、俺、待ち合わせしてて……」
【男1】
「待ち合わせ?そんなの蹴って、俺と飲もうよ。おごるから、な?」
【ハク】
「いや、俺、本当に約束があるんで……」
突然話しかけてきたその男は、しつこく俺を誘ってくる。
待ち合わせをしていると言っているのに、まるで聞く耳を持たない。その上、やけに強引だ…。
俺がほとほと困っていると、そこに助け舟を出すように、別の男が割り込んできた。
見れば…………さっきの美形だ。
【???】
「……コレ。あなたのですか?」
【男1】
「へ?」
【???】
「落としてましたけど?」
【男1】
「え?…あ、ああ…どうも。悪いな……」
その美形は、俺に絡んでいた男の財布を床から拾い上げると、にっこりと愛想よく笑った。
【ハク】
(あれ……?あの男、いつの間に財布を落としたんだろう?そんなふうには見えなかったけど……)
そんなことを思う俺の前で、男は財布を受け取ると、バツが悪そうにそのままそこから立ち去っていった。
そして、その場には俺と美形だけが残った―――。
【ハク】
「あの…っ、ありがとうございました」
【???】
「別に?ハクの為だったらこんなの大したことないよ」
【ハク】
「え……?」
【???】
「ナニ?そんなきょとんとしちゃって」
【ハク】
「だ、って……今、俺の名前……」
俺は呆気にとられていた。
だって……今この美形は、俺の名前を口にしたのだ……。
何で俺の名前を知ってるんだ―――?
疑問でいっぱいになる俺の前で、美形が笑う。
【???】
「あれぇ?もしかしてハク、俺のこと忘れちゃった?黒木だよ、黒木!高校の時、よく一緒につるんだだろ?」
【ハク】
「え…!?おまえ、あの……黒木か……!?」
【黒木】
「そうだよ?なにそんなに驚いてるんだよ、ハク?」
【ハク】
「じゃあ俺を呼び出したのって……」
【黒木】
「そう、俺だよ」
【ハク】
「そっか…そうだったんだ…!久しぶりだなぁ…!」
俺は久々の再会に感激していた。
黒木とは、高校時代、同じクラスメイトでよく一緒につるんでいたのだ。
【ハク】
(……あれ?…じゃあ俺、さっき黒木に見とれてた…ってことか!?)
俺は、さっき見惚れてしまったことを思い出して、思わず恥ずかしくなってしまった。
まさか目の前の美形が、黒木だなんて思ってもみなかったから………。
【ハク】
(でもまあ確かに……黒木は高校時代からよくモテてたもんな……)
俺はそんなことを思い返しつつ、黒木の誘導に従って席に腰を下ろした。適当にビールを頼み、それを煽りながら昔話に花を咲かせたりする。
途中、俺の元職場の話題になり、俺は酒に酔いながら身の上話をしたりした。いわれもない罪をきせられたこと、そしてクビになったことを……。
【ハク】
「っとに…ヒドいだろ!?俺、そんなの知らないっての!」
【黒木】
「あぁ、あれはホントに大変だったよなぁ、ハク」
【ハク】
「?……何だよ、その知ったような口ぶり……」
【黒木】
「えぇ?別に?それよりもっとハクの話聞かせてくれよ」
【ハク】
「ああ…。……って、あれ?そういえば黒木はなんの仕事してんだ?」
【黒木】
「俺?俺のことなんてどうでもいいよ。今はハクの話を聞きたいんだ。ほら、話して、ハク」
黒木は、まるで俺の身に起こったことを最初から知ってるような口ぶりだった。
それは謎だったけど……でも俺は、酒に酔っていたし、昔話にも花が咲いて、そんなことはどうでも良くなってしまっていた。
【ハク】
「あの頃はホントによくつるんでたよなあ」
【黒木】
「そう、ハクとの思い出がいっぱいだよ……。ハクはちゃんと覚えてる?」
【ハク】
「そりゃもちろん!覚えてるに決まってるだろ」
【黒木】
「本当かなぁ…?だってハク、さっき俺のこと分からなかっただろ?」
【ハク】
「そ、それは……だってほら、すごい久しぶりだったから、さ……っ」
【黒木】
「あはは。あわててるハク、面白いなぁ」
ひどい状況に陥っていたせいか、黒木との昔話がすごく心地いい。
深く考えなくてもいいし、笑っていられる……俺にとってその時間は、なんだか幸せだった。
【ハク】
(やっぱり来て良かったな……)
俺はしみじみそう思いながら、酒を追加しては黒木との懐かしい時間を過ごしていく。
どのくらいそうやって過ごしたのか……酔っていたせいで、俺には時間の感覚がなくなっていた。
そして…………。
【黒木】
「あれ?ハク、酔っちゃった?」
【ハク】
「ン、んん……っ」
散々話した後―――俺は、とうとう酔いつぶれてしまった。
なんだか妙に気分がよくて、そのままテーブルに突っ伏してしまう。あとはもう、何も考えられなかった。
【???】
「……」
そんな俺のことを、怪しい人影が見つめていることなど……
…もちろん俺は、気づくはずもなかった――――。
目覚めると、そこは俺の知らない部屋だった。
見回してみると、どうやらホテルの一室だということが分かる。
【ハク】
「なんだ、ここ………。……って!何だよ、これ…!?」
俺は、自分の身体を見て思わず声を上げてしまった。
だって―――――裸、だったのだ………。
【ハク】
「なんだこれ…っ。知らないとこだし、は…裸だし……っ」
ふと見ると、俺の隣では、黒木が真っ裸の状態で眠っていた。
俺も黒木もお互いに裸で、ひとつのベッドに一緒に眠っている……
…俺はその事実に、一人で焦ってしまう。
時計を見ると、時間は午前9時半を示していた。
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