本編
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《兆し》
【MC】
「……そして予選ラスト通過は……ポラリスのみなさんです!」
ポラリスの名前がホールに響くと会場は大きく盛り上がりを見せた。
……結局セットリストを変えたところで影響はなかったようだ。
問題なくベスト8に滑り込む事に成功したポラリスは、
今度こそ前回のリベンジとばかりに決勝の舞台へと堂々と足を運ぶ事になる。
【MC】
「15分の休憩の後、ベスト8のみなさんはくじを引きその順番でパフォーマンスをする事になります。
それまで今しばらくお待ちください!」
決勝に残った8グループはくじが用意されるのを待ってお互いに話し合ったりしている。
同じアイドルとして高みを目指す所は一緒だが、仲が悪いわけではない。
こういうコミュニケーションをファンに見せるのも立派なパフォーマンスだ。
【葛城 雄眞】
「墨代、大丈夫か」
【墨代 睡蓮】
「……うん、だいじょうぶ」
思っていたよりしっかりとした返事だったので、葛城は安堵する。
【葛城 雄眞】
「あの社長が考えそうな事だな。卑怯な手を使う事に対して罪の意識がない。
だからこそ、俺はトップの地位を捨ててでも、ポラリスに来た」
【シン】
「へー?トップアイドルだったのに、それがイヤで冴島飛び出したんですか?」
【葛城 雄眞】
「……VIRTUE」
割り込んできたのはVIRTUEシンだった。
じとりと見てくる視線とは別に、口から吐き出される言葉は予想外のものだった。
《本番》
【シン】
「ま、でもね。うちのタツもちょーっと最近辟易してるみたいでサ」
【タツ】
「……他のアイドルはおろか自分の所のアイドルも関係ない。
トップになるという事だけが社長の目的だ。それは俺達じゃなくてもいい。
……そういう事ですよね、葛城さん」
真剣な顔つきでタツが葛城の前に立つ。
葛城はその質問に対して、答えはしなかったものの、目を細め肩をすくめて見せた。
【ユージ】
「社長の小細工抜きで、俺達がトップ!ってのをそろそろ分からせてもいいかなって思ってんだ!
……本番はセトリ変えさせるような事、僕等がさせないからさ」
【大須賀 侑生】
「!なんでそれ……」
【タツ】
「俺達の出番は最後だ。……全て見ている。分からない訳がないだろう」
【シン】
「で、タツがJIFの委員を問い詰めたと。ま、そんな事がなくったって、トップは今年も俺達だぜ!実力でな」
【日月 梓乃】
「いーや、今回は俺達が貰ってくからな!」
【シン】
「ほざけ、ポラリス」
一触即発…と思いきや、にっと笑い握手を交わす梓乃とシン。
VIRTUEもまた一皮むける日が近いのかもしれないと、葛城は一人ほくそ笑む。
自分を脅かす存在がどんどん増えていく。
決して負ける気はしないが…
【葛城 雄眞】
「……これはこれで刺激的だな」
葛城はファンで溢れかえる会場の中で2人のやりとりを見つめていた。
《絶頂》
―パンッ
……乾いた音が静かな廊下に響いた。
崩れ落ちる冴島と、仁王立ちでそれを見降ろすのは榎本社長だった。
【榎本 公志郎】
「政親。そこおどき」
【政親】
「はい」
榎本は転がっている冴島の腕を乱暴に掴みあげ、出番待ちをしているであろうポラリスの待機部屋へと乗り込んだ。
【榎本 公志郎】
「あんた達!」
【二條 榛貴】
「社長……と、げ!冴島の社長……」
頬の赤みと榎本の形相を見て、何があったかを皆が瞬時に理解した。
怒らせると怖い、榎本社長だ。
【榎本 公志郎】
「こいつにはヤキ入れたからね!みんなしっかり全力出し切ってやってきなさい!」
【政親】
「VIRTUEの皆さんも全力で、との事でしたので。
色々思う事も多いでしょうが、全てを出し切ってVIRTUEからトップを取ってきなさい。
―貴方達ならば余裕でしょう?」
【皆】
「はい!!!」
【スタッフ】
「失礼します、ポラリスのみなさん!準備お願いします!」
【政親】
「皆さん。最高のパフォーマンスを」
スタッフに呼ばれ皆バタバタと舞台へ向かっていく。
政親も袖口へと移動し始めた。
皆が居なくなった静かなレッスン場には榎本と下を向いて動かない冴島だけが存在している。
【榎本 公志郎】
「あんた、本当昔っからそう。……なんで、わかんないのかしら」
【冴島 享正】
「……」
その内静まり返ったレッスン場に、遠くから歓声が聞こえてきたのだった。