本編
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《兆し》
【二條 榛貴】
「うちの睡蓮?どういう事です?」
墨代睡蓮はポラリスプロの所属だ。
冴島ではない。いきなり何を、とその場に居た3人が全く同じ事を思った時に、
冴島はひとしきり笑った後、3人の顔を見比べるように口を開く。
【冴島 享正】
「本当に頭の軽い事務所で助かる。墨代睡蓮は俺の送り込んだアイドルだ。
まぁあいつもちゃんと仕事をしていたようだな。たまには褒めてやるか…
詳細は睡蓮から聞けばいい。俺から貴様らに言う事は何もないからな」
……墨代睡蓮は冴島の差し金だった?
3人は文句の一つでも冴島にぶつけてやろうと思っていたが、上手く言葉が出なかった。
誰よりも睡蓮はポラリスでの仕事を楽しみにし、皆でご飯を食べるのが好きで
皆で居るのが何より嬉しいと……
―墨代睡蓮が裏切り者、という事実を三人は飲み込む事が出来ずにいた。
《本番》
【墨代 睡蓮】
「……それ、本当。俺がセットリストを持ってった。……冴島に頼まれたから」
【芦沢 由臣】
「貴様……何を言っているのか分かっているのか…!!」
芦沢の声量を抑えた問いかけに、本気の怒りが伝わってくる。
その声をきっかけに墨代は堰を切ったように一生懸命語りだした。
【墨代 睡蓮】
「冴島は……父さんが連れてきた兄さんで、俺は冴島と半分だけ、血が繋がってる。
でも仲良くなかった。俺、母さんがいなくなって、からっぽになっちゃったから。
アイドルとしてポラリスに送り込まれたのは本当。
兄さんが期待してるって俺に初めて言ってくれた。……汚い笑顔で」
段々と声が詰まる睡蓮は、視線を徐々に落として、皆の視線を避けるように声を振り絞る。
【墨代 睡蓮】
「……でも。でも、俺ね。ポラリスでピカピカしたのを見つけられたんだ。
ポラリスは違った。皆は違った。冴島と違った。
ここに来てたくさんのキラキラを知った。からっぽだった俺の中にはキラキラがいっぱい詰まった。
このキラキラはもう手放せないし、なくしたくない。
セットリストを変更させたのは、……ほんとう、ごめんね。ごめんなさい……
……俺、やっぱりダメだと思って、全部黒田さんにはもう全部言いました。……後でいっぱい怒るって」
ここまで吐きだして、睡蓮は下を向いたまま、身体を抱きしめ擦り切れる声で懇願する。
【墨代 睡蓮】
「…っごめんなさい。でも、俺ずっとここに居たい。
皆の足を引っ張ったのも分かってる。ずっとずっと謝るから。許してもらえなくても謝るから。
いっぱい怒られてもいいから!
それでも、俺、ここに居たい……!!」
語尾がどんどん強くなる。
シンと静まり返る楽屋。廊下や会場はまだ騒がしい筈なのに全く聞こえてこなかった。
やがて墨代の弱々しい声が皆の耳に届く。
【墨代 睡蓮】
「……俺、まだここに居てもいい……?」
《絶頂》
精いっぱいの気持ちを吐露した墨代は、静まり返った楽屋でゆっくりと顔を上げた。
大きな目が不安でゆらゆらと揺れている。
どこに焦点をあわせたらいいか分からないのか、墨代は周りを見渡していた。
皆の顔が良く分からない。
……口火を切ったのは果凛だった。
【本村 果凛】
「あったり前でしょ!居ていいに決まってるよ!スイがいないとポラリスじゃないよ!」
その泣きそうな叫びを皮切りに皆が口を開いていく。
【葛城 雄眞】
「……まぁそうだな
。……っていうか黒田さん、お前が言わなくても気付いていたんだろうな……。
とはいえ、墨代。今度はないからな」
【二條 榛貴】
「考えるまでもねーな。つうか、お前今までよく俺ら騙せてたな?そっちの方がすげーわ。
……今日以外に足引っ張られてた覚えないけどよ」
【日月 梓乃】
「てか、墨代さんマジ冴島のヤローに似てないっすよ。
血縁関係って本当すか?……本当マジで似てねぇ……」
【笹雨 清明】
「梓乃……。でも、セットリスト変えられても俺達咄嗟に対処出来るくらい対応力ついたんですね」
【大須賀 侑生】
「僕、最初ビックリの企画かと思っちゃった」
【壱川 咲十郎】
「ふふ、私もです。……スイさん、私達、最初から仲間やし、ね?」
黙り込む墨代に、丁度その後ろにいた芦沢がため息交じりに声を掛ける。
【芦沢 由臣】
「ふん、冴島の稚拙な策略如きで潰れる我らではないわ」
【墨代 睡蓮】
「……うん、うん!」
墨代の顔がくしゃりと歪んだところで、楽屋の扉が激しく叩かれた。
【スタッフ】
「すみません!ポラリスさん、結果発表の為舞台までお願いします!」
【全員】
「……はい!」
ポラリス全員の声が勢いよく響き、全員気持ちを新たに舞台へ足を運ぶ事になった。