[期間限定イベント"年末年始"]
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【職員】
「それでは、宜しくお願いします」
【春川】
「はい、ありがとうございました!」
はきはきと答える樹生の様子から察するに、どうやらホテル側に頼まれて集荷に来ていたようだ。
【クロノ】
「じい、ホテルで被害に遭う予定だったのは、上総と侑思と昂正、だよね」
【アンク】
「はい。そして、三人とも既にリストから消えました」
【クロノ】
「それなら、もうホテルを離れて樹生を追って平気だね。樹生の死亡予定場所は……」
【アンク】
「配送トラックの車内、でございます」
【クロノ】
「じゃあ、次の行動は決まりだ」
俺とじいは、少し離れた場所にいる樹生の方へ向かって歩き出した。
樹生はニコニコといつもの笑顔を浮かべながら、きびきびと体を動かしている。
沢山の荷物を抱えては荷台に詰め込み、額に浮いた汗を拭う。
【クロノ】
「樹生のああいうところ、凄くいいよね」
【アンク】
「そうですなあ。労働の楽しさ、尊さが伝わる笑顔ですな。素晴らしい事です」
【クロノ】
「俺がああなりたいとは思わないけど、ああいうところ、樹生の長所だと思うよ」
【アンク】
「なれなくとも、なりたいとは思って下さいませ」
なんてじいと話しているうちに、てきぱきと働いていた樹生は荷物を積み終えて、荷台の扉を閉めた。
【クロノ】
「あの魔物、かなり回復してるのかな。全然気配がしない」
【アンク】
「荷台の奥の方は暗くて見えませんでしたし、トラックの何処かに隠れているのでしょうか……」
【クロノ】
「とにかく、樹生と話してくる……」
俺が、人間の姿をとろうとした瞬間――
慣れた動作でトラックに乗り込んだ樹生が、発車させてしまった。
【クロノ】
「あっ、やば…っ!」
これは少しヤバい。
移動している場所への瞬間移動は、着地の目標設定がずれやすい。
狙った場所の範囲が狭いほど、その場所が静止していないと難しい。
――走っているトラックの車内に入るのは、ほぼ不可能だ。
【アンク】
「クロノ様!!」
考え込んでいた俺は、じいの声ではっとした。
【クロノ】
(これは……!)
【アンク】
「積み荷の方から強い魔力が!」
さっきまでとはまるで違い、明確に魔力が感じ取れる。
樹生の乗ったトラックの荷台から、濃い魔力が尾を引いて行く。
【クロノ】
「あいつ、俺達が離れたの感じ取ってるのか? 魔物の割に知恵が回るな」
魔物にしては知能が高い気がするけど、そうとしか考えられない。
【クロノ】(樹生の死亡予定場所は、――『トラックの車内』)
これは、早く移動しないとまずい。
運転中に襲われたりしたら、事故という面でも危ない。
それに運転中だと、俺が瞬間移動で助けに入る事も難しい。
とにかく、早く樹生のトラックを追わないと。
【クロノ】(トラックを見失わないように、短距離の瞬間移動を繰り返すか)
【クロノ】「行くよ、じい――!」
【クロノ】「………あれ?」
瞬間移動をしようとして振り返ると、思っていた位置にじいがいなかった。
じいは何処に行ったんだろう、まあいいか。
じいならすぐに俺を見付けられるし、今は樹生から目を離さない方が重要だ。
俺は気を取り直して、瞬間移動しようとトラックの方へ視線を遣った。
その時――。
【アンク】
「クロノ様~!」
と、じいの声がした。
俺の頭上から。
【クロノ】
「………え?」
声のした方を見上げると、そこには………。
【クロノ】
「……雲?」
俺の身長よりでかい雲が急降下してくる。
【アンク】
「羊です! じいの愛羊、メリーちゃんですぞ!」
雲に見えたのは空飛ぶ巨大羊で、それにじいが乗っている……。
ちょっと状況がよく分からない俺の前で、羊は大きく口を開けて鳴いた。
【メリーちゃん】
「メェ――――――!!!」
【アンク】
「『よろしくね、色男さん』と、メリーちゃんが言っておりますぞ!」
【メリーちゃん】
「メェ――――――!!!」
【アンク】
「『2015年はひつじ年よ、よろしくね』と、メリーちゃんが言っております!」
【メリーちゃん】
「メェ――――――!!!」
【クロノ】
「あ、うん。よろしく……」
えーっと、うん……。
相手はじいなので、俺は全てをスル―することに決めた。
【アンク】
「さ、乗って下され。メリーちゃんで後を追いましょう!」
【メリーちゃん】
「メェ――――――!!!」
【クロノ】
「……うん。よろしく、メリーちゃん」
俺はつっこみを全て諦めて、メリーちゃんの背中に跨った。
【クロノ】
「おお…」
俺の脚に触れる感触はふわふわもこもこで、俺とじいが乗ってもまだ余裕がある。
そして、メリーちゃんが地を駆け、宙へ浮き上がっても全然揺れない。
結構速い速度で飛んでいるので風は強いけど、メリーちゃんからの振動はまるで来ない。
【クロノ】
「これ凄い快適だね。俺が飛ぶより早いし……」
眼下に見える景色がどんどん流れていく。
【アンク】
「メリーちゃんは、金賞を受賞した由緒正しい羊ですからな!」
【クロノ】
「こういう羊ってどこで手に入るの? 俺も欲しい」
【アンク】
「若いうちから楽をすると、歳をとってからツケがきますぞ」
【クロノ】
「そんな事言って、実はヤバいもので教えられないとかじゃないよね?」
俺は本当に、冗談のつもりで言ったのに。
【アンク】
「ハハハ、マサカ」
じいは、虚ろな目をしながら、口だけパクパクと動かした。
【クロノ】
「えー……」
【アンク】
「ハハハ、マサカ」
【クロノ】
「………さ、仕事に集中するか」
【アンク】
「そうですな、今は春川様の安全が第一!!」
いつものじいに戻ったのを見ながら、俺はこっそり溜息を吐いた。
怪しいから今のやりとり、全部なかったことにしておこう。
メリーちゃんに乗って、俺とじいは樹生のトラックを追った。
今のところ、トラックは何事もなく真っ直ぐ走り続けている。
「それでは、宜しくお願いします」
【春川】
「はい、ありがとうございました!」
はきはきと答える樹生の様子から察するに、どうやらホテル側に頼まれて集荷に来ていたようだ。
【クロノ】
「じい、ホテルで被害に遭う予定だったのは、上総と侑思と昂正、だよね」
【アンク】
「はい。そして、三人とも既にリストから消えました」
【クロノ】
「それなら、もうホテルを離れて樹生を追って平気だね。樹生の死亡予定場所は……」
【アンク】
「配送トラックの車内、でございます」
【クロノ】
「じゃあ、次の行動は決まりだ」
俺とじいは、少し離れた場所にいる樹生の方へ向かって歩き出した。
樹生はニコニコといつもの笑顔を浮かべながら、きびきびと体を動かしている。
沢山の荷物を抱えては荷台に詰め込み、額に浮いた汗を拭う。
【クロノ】
「樹生のああいうところ、凄くいいよね」
【アンク】
「そうですなあ。労働の楽しさ、尊さが伝わる笑顔ですな。素晴らしい事です」
【クロノ】
「俺がああなりたいとは思わないけど、ああいうところ、樹生の長所だと思うよ」
【アンク】
「なれなくとも、なりたいとは思って下さいませ」
なんてじいと話しているうちに、てきぱきと働いていた樹生は荷物を積み終えて、荷台の扉を閉めた。
【クロノ】
「あの魔物、かなり回復してるのかな。全然気配がしない」
【アンク】
「荷台の奥の方は暗くて見えませんでしたし、トラックの何処かに隠れているのでしょうか……」
【クロノ】
「とにかく、樹生と話してくる……」
俺が、人間の姿をとろうとした瞬間――
慣れた動作でトラックに乗り込んだ樹生が、発車させてしまった。
【クロノ】
「あっ、やば…っ!」
これは少しヤバい。
移動している場所への瞬間移動は、着地の目標設定がずれやすい。
狙った場所の範囲が狭いほど、その場所が静止していないと難しい。
――走っているトラックの車内に入るのは、ほぼ不可能だ。
【アンク】
「クロノ様!!」
考え込んでいた俺は、じいの声ではっとした。
【クロノ】
(これは……!)
【アンク】
「積み荷の方から強い魔力が!」
さっきまでとはまるで違い、明確に魔力が感じ取れる。
樹生の乗ったトラックの荷台から、濃い魔力が尾を引いて行く。
【クロノ】
「あいつ、俺達が離れたの感じ取ってるのか? 魔物の割に知恵が回るな」
魔物にしては知能が高い気がするけど、そうとしか考えられない。
【クロノ】(樹生の死亡予定場所は、――『トラックの車内』)
これは、早く移動しないとまずい。
運転中に襲われたりしたら、事故という面でも危ない。
それに運転中だと、俺が瞬間移動で助けに入る事も難しい。
とにかく、早く樹生のトラックを追わないと。
【クロノ】(トラックを見失わないように、短距離の瞬間移動を繰り返すか)
【クロノ】「行くよ、じい――!」
【クロノ】「………あれ?」
瞬間移動をしようとして振り返ると、思っていた位置にじいがいなかった。
じいは何処に行ったんだろう、まあいいか。
じいならすぐに俺を見付けられるし、今は樹生から目を離さない方が重要だ。
俺は気を取り直して、瞬間移動しようとトラックの方へ視線を遣った。
その時――。
【アンク】
「クロノ様~!」
と、じいの声がした。
俺の頭上から。
【クロノ】
「………え?」
声のした方を見上げると、そこには………。
【クロノ】
「……雲?」
俺の身長よりでかい雲が急降下してくる。
【アンク】
「羊です! じいの愛羊、メリーちゃんですぞ!」
雲に見えたのは空飛ぶ巨大羊で、それにじいが乗っている……。
ちょっと状況がよく分からない俺の前で、羊は大きく口を開けて鳴いた。
【メリーちゃん】
「メェ――――――!!!」
【アンク】
「『よろしくね、色男さん』と、メリーちゃんが言っておりますぞ!」
【メリーちゃん】
「メェ――――――!!!」
【アンク】
「『2015年はひつじ年よ、よろしくね』と、メリーちゃんが言っております!」
【メリーちゃん】
「メェ――――――!!!」
【クロノ】
「あ、うん。よろしく……」
えーっと、うん……。
相手はじいなので、俺は全てをスル―することに決めた。
【アンク】
「さ、乗って下され。メリーちゃんで後を追いましょう!」
【メリーちゃん】
「メェ――――――!!!」
【クロノ】
「……うん。よろしく、メリーちゃん」
俺はつっこみを全て諦めて、メリーちゃんの背中に跨った。
【クロノ】
「おお…」
俺の脚に触れる感触はふわふわもこもこで、俺とじいが乗ってもまだ余裕がある。
そして、メリーちゃんが地を駆け、宙へ浮き上がっても全然揺れない。
結構速い速度で飛んでいるので風は強いけど、メリーちゃんからの振動はまるで来ない。
【クロノ】
「これ凄い快適だね。俺が飛ぶより早いし……」
眼下に見える景色がどんどん流れていく。
【アンク】
「メリーちゃんは、金賞を受賞した由緒正しい羊ですからな!」
【クロノ】
「こういう羊ってどこで手に入るの? 俺も欲しい」
【アンク】
「若いうちから楽をすると、歳をとってからツケがきますぞ」
【クロノ】
「そんな事言って、実はヤバいもので教えられないとかじゃないよね?」
俺は本当に、冗談のつもりで言ったのに。
【アンク】
「ハハハ、マサカ」
じいは、虚ろな目をしながら、口だけパクパクと動かした。
【クロノ】
「えー……」
【アンク】
「ハハハ、マサカ」
【クロノ】
「………さ、仕事に集中するか」
【アンク】
「そうですな、今は春川様の安全が第一!!」
いつものじいに戻ったのを見ながら、俺はこっそり溜息を吐いた。
怪しいから今のやりとり、全部なかったことにしておこう。
メリーちゃんに乗って、俺とじいは樹生のトラックを追った。
今のところ、トラックは何事もなく真っ直ぐ走り続けている。