本編
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《兆し》
【山口 遼太】
「政親さァァァァん……!」
巨大な犬が飛び込んでくるかのように政親に覆い被さったのは、助手の山口だった。
【政親】
「……………」
飛びついてきた山口を引っ剥がしながら政親はずれた眼鏡を直す。
【山口 遼太】
「き、聞いて下さい!黒田さん。
ライブが!決まったんです……!!」
【政親】
「……、詳細は?」
【山口 遼太】
「す、すみません……
その、昨日、の……え、営業先の、アンバーさんところです」
【政親】
「男性アイドル5組を招いて、池袋のハコでの企画―ですか」
【山口 遼太】
「はい!」
【政親】
「歌えて5曲…というところ…か。
―分かりました。すぐに構成を考えます。
15時に社長が帰ってきますから―その30分後にミーティング、決定事項を本日中にメンバーに伝えるように」
【山口 遼太】
「ラジャァァァ!!」
《本番》
いよいよ本番当日。
まだまだ小さい事務所であるポラリス・プロダクションでは全員が物販や差し入れ、マネージャー対応をしなければならない。
ひと通り準備が終わったところで、山口が声をかけてきた。
【山口 遼太】
「今回競演するアイドルさんたちはうちのアイドルちゃんたちと同じく、新人アイドルさんです。
見劣りしたりすることはないと…思いますが……」
【政親】
「ふ……、誰がプロデュースをしていると思っているんですか?」
【山口 遼太】
「はっ…」
山口は自分の失言に気が付き、政親を見つめた。
そうして息を吸い込み―
【山口 遼太】
「カ…カリスマプロデューサー、黒田政親です…!!!」
まるで軍人のように敬礼するのだった…。
《絶頂》
アンコールの声もかかり、盛り上がったライブ。
ステージの上で精一杯のお辞儀をしているアイドルを眺めながら
政親は満足げにほほ笑んだ。
【山口 遼太】
「俺…感動で涙が止まりません……!!黒田さんっ!素晴らしいです!!!!」
【政親】
「こんなステージで感動?―安い涙ですね」
【山口 遼太】
「っう……ごめんなさい………」
【政親】
「ふ……、失礼。冗談ですよ。貴方があんまり素直に泣くので、
少しからかいたくなりました」
【山口 遼太】
「く…っ黒田しゃん……」
ぐちゃぐちゃになった顔で政親を眺めると、一寸頭をなでられ、
山口は昇天しかねない喜びに包まれた。―が…
政親はすぐに踵を返し―他のアイドルの偵察にいってしまった。
【山口 遼太】
(これが、飴と鞭……ってやつかあ……)
山口は笑みを浮かべながら、トンチンカンな悦びに浸った。