[本編] 銀 夏生 編
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ナツの車に乗り込んだ俺は、シートの位置の低さにまた驚くことになった。
なんていうか、地面から50センチもしない位置に腰をおろしている感じだ。
こんな感覚の車は初めてで何だかソワソワしてしまう。
【銀】
「ハク」
【ハク】
「え?」
エンジンをかけたナツが、ふと俺のほうを見てくる。
何かと思って振り向くと……。
【ハク】
「え…っ」
【ハク】
(ナツ…!?)
――突然。
ナツが俺の身体に上半身を傾けてきた。
いきなりやってきたナツの体温に、俺の心臓は大きくドキン、と高鳴る。
ナツの銀髪が俺の鼻先をかすめて、かすかな匂いが漂ってきて……。
【ハク】
「な…なに?」
【ハク】
(ば、ばか。しずまれ、心臓!)
焦った俺は、やっとのことでそれだけを口にした。
するとナツは、何でもないように爽やかに微笑んでくる。
【銀】
「シートベルト。忘れてるぞ?」
【ハク】
「あ…」
【ハク】
(なんだ、シートベルトか…)
シートベルトをカチャリ、としめてくれたナツは、用件は済んだとばかりに上体を元も戻した。俺の目の前からスッと銀髪が消えていく。
【ハク】
(はあ、びっくりした…)
抱きしめられるのかと思った――なんて。
さっき俺は、思わずそんなことを考えてしまったけど……
まさかそんなことあるわけがないよな。
なに変なこと考えてたんだろう…
【銀】
「出すぞ」
ナツの一言を合図に、車は俺を乗せて駐車場を後にした。
買物をすると言っていたナツが俺を連れてやってきたのはデパートだった。
デパートといっても色々あるけど、一級ブランド品も扱っている名の知れた老舗デパートだ。
普段こんな所で買い物をしない俺は、キョロキョロと回りを眺めてしまう。
前を歩いているナツは、よほど慣れているんだろう、微塵も躊躇せずにまっすぐ紳士服売場へと向かっていく。
鞄を抱えてその背後についていく俺は、正直なんだかちょっと浮いているような気がしないでもない。
目的の紳士服売場につくと、デパートの店員がナツの姿に気づいて、いかにも御得意様という感じで話しかけてきた。見たこともないような満面の笑みだ。
【店員】
「これはこれは銀様、今日はどのようなものを?」
【銀】
「ああ。とりあえずスーツを5着、あいつに似合うものを選んで仕立ててくれ」
【店員】
「かしこまりました」
『あいつ』と目配せされた先にいたのは、もちろん俺だった。
というか…今、ナツは何て言った??
【ハク】
「ちょっ…ナツ!スーツ5着って!」
【銀】
「うるさい。いいから大人しくしてろ」
【店員】
「お連れ様、失礼いたします」
【ハク】
「うわっ」
気付くと、いつの間にかメジャーを手にした店員がぴったりと俺の横についていた。
結局――。
俺はそれ以上ナツにくいつくわけにもいかなくなって、そこからは黙って店員の採寸を受けることになった。
こんなふうに一からサイズを測るのなんて、人生で初めてだ。
しかも恐ろしいほど隅から隅まで細かく測っている。
【店員】
「お連れ様。シルエットラインのお好みについてですが…」
【ハク】
「は?あ、ああ、はい…」
【店員】
「それから生地ですけれども…」
【ハク】
「え?は、はい…」
【ハク】
(どうしよう…い、意味がわからない…)
店員は生地だとかシルエットがどうのこうのとか、よく分らない話をしてくる。
俺には店員が何を言っているのかちんぷんかんぷんで、言われた言葉に「はい、はい」とうなずくのが精一杯だった。
ここがナツの行きつけだとことは、任せておいても悪いようにはならないだろう…。
【ハク】
(す、すごい…あっという間に購入するものが決まってく…)
採寸されたスーツ上下に、それに見合ったシャツ、ネクタイ…。
あれよという間にコーディネートが決まっていって、もはや俺なんかが入る余地はなくなっていた。
思った通り、店員のオススメでそろったそれは、素人の俺が見てもいい感じだった。思わず感心してしまう。
しばらくして一通りのものが揃い終わると、店員が会計を求めてきた。
【店員】
「お会計ですが、こちらになります」
【ハク】
「あ、はい」
俺は何の気なしに差し出された数字を見る。……と。
俺はその金額に本気で飛び上がって驚いた。
――なんだ、この数字は…!?
【ハク】
「な、78万円!?」
俺は思わず…ありえない!と呟いた。
【銀】
「何を言ってる!」
そう言いいながらナツは俺の横に姿を現した。
【ハク】
「いや、だってこの金額…」
俺はおそるおそる金額がをナツに向けると、俺の前に進み出て、サッと黒光りしたクレジットカードを差し出した。
店員はそれを両手で受け取り、そそくさと会計をし始める。
【ハク】
「おい、俺、あんな金額はらえないぞ?」
俺は急いでナツの耳元にそう告げた。だって、まさかあんな値段になるなんて思ってもみなかった。
ナツはそんな俺を見もせずに、しらっとこう言ってくる。
【銀】
「知ってる。問題ない。言っただろう、忘れたか?その分キッチリ仕事してもらう、ってな」
【ハク】
「そ、そういう…」
【銀】
「異論でも?」
【ハク】
「う…。…ないです」
俺はたじたじになりながら同意する……というか、たぶんこの先ずっとこう言われ続けるような気がする…。
【店員】
「銀様、ありがとうございました」
【銀】
「どうも。――いくぞ。ハク」
【ハク】
「あ、ああ!」
会計が終ると、ナツは早速というように次の目的の場所へと歩きだす。
深々と会釈する店員に、俺は軽くぺこぺこと頭を下げると、既に少し遠ざかっていたナツの背中を追いかけた。
駐車場に戻ると、俺達は再び車に乗り込んだ。
ナツは間髪いれずに車のエンジンをかけている。
【ハク】
「ナツ、なんでこんなことするんだよ?」
【銀】
「『こんなこと』?」
【ハク】
「いや、だからさ。こんな上から下まで高級品で、しかもスーツ5着も…」
オーダーメイドスーツを1日に5着も仕立てるなんて…どういうことなんだ。
だって、普通はそこまでする必要なんてない気がする。思えばナツから借りているこの腕時計だって――。
『ウチの会社に入るんだったら、これぐらいのものをしててもらわないとオレが困る』
――確かナツはそんなことを言っていたけど。
なんていうか、地面から50センチもしない位置に腰をおろしている感じだ。
こんな感覚の車は初めてで何だかソワソワしてしまう。
【銀】
「ハク」
【ハク】
「え?」
エンジンをかけたナツが、ふと俺のほうを見てくる。
何かと思って振り向くと……。
【ハク】
「え…っ」
【ハク】
(ナツ…!?)
――突然。
ナツが俺の身体に上半身を傾けてきた。
いきなりやってきたナツの体温に、俺の心臓は大きくドキン、と高鳴る。
ナツの銀髪が俺の鼻先をかすめて、かすかな匂いが漂ってきて……。
【ハク】
「な…なに?」
【ハク】
(ば、ばか。しずまれ、心臓!)
焦った俺は、やっとのことでそれだけを口にした。
するとナツは、何でもないように爽やかに微笑んでくる。
【銀】
「シートベルト。忘れてるぞ?」
【ハク】
「あ…」
【ハク】
(なんだ、シートベルトか…)
シートベルトをカチャリ、としめてくれたナツは、用件は済んだとばかりに上体を元も戻した。俺の目の前からスッと銀髪が消えていく。
【ハク】
(はあ、びっくりした…)
抱きしめられるのかと思った――なんて。
さっき俺は、思わずそんなことを考えてしまったけど……
まさかそんなことあるわけがないよな。
なに変なこと考えてたんだろう…
【銀】
「出すぞ」
ナツの一言を合図に、車は俺を乗せて駐車場を後にした。
買物をすると言っていたナツが俺を連れてやってきたのはデパートだった。
デパートといっても色々あるけど、一級ブランド品も扱っている名の知れた老舗デパートだ。
普段こんな所で買い物をしない俺は、キョロキョロと回りを眺めてしまう。
前を歩いているナツは、よほど慣れているんだろう、微塵も躊躇せずにまっすぐ紳士服売場へと向かっていく。
鞄を抱えてその背後についていく俺は、正直なんだかちょっと浮いているような気がしないでもない。
目的の紳士服売場につくと、デパートの店員がナツの姿に気づいて、いかにも御得意様という感じで話しかけてきた。見たこともないような満面の笑みだ。
【店員】
「これはこれは銀様、今日はどのようなものを?」
【銀】
「ああ。とりあえずスーツを5着、あいつに似合うものを選んで仕立ててくれ」
【店員】
「かしこまりました」
『あいつ』と目配せされた先にいたのは、もちろん俺だった。
というか…今、ナツは何て言った??
【ハク】
「ちょっ…ナツ!スーツ5着って!」
【銀】
「うるさい。いいから大人しくしてろ」
【店員】
「お連れ様、失礼いたします」
【ハク】
「うわっ」
気付くと、いつの間にかメジャーを手にした店員がぴったりと俺の横についていた。
結局――。
俺はそれ以上ナツにくいつくわけにもいかなくなって、そこからは黙って店員の採寸を受けることになった。
こんなふうに一からサイズを測るのなんて、人生で初めてだ。
しかも恐ろしいほど隅から隅まで細かく測っている。
【店員】
「お連れ様。シルエットラインのお好みについてですが…」
【ハク】
「は?あ、ああ、はい…」
【店員】
「それから生地ですけれども…」
【ハク】
「え?は、はい…」
【ハク】
(どうしよう…い、意味がわからない…)
店員は生地だとかシルエットがどうのこうのとか、よく分らない話をしてくる。
俺には店員が何を言っているのかちんぷんかんぷんで、言われた言葉に「はい、はい」とうなずくのが精一杯だった。
ここがナツの行きつけだとことは、任せておいても悪いようにはならないだろう…。
【ハク】
(す、すごい…あっという間に購入するものが決まってく…)
採寸されたスーツ上下に、それに見合ったシャツ、ネクタイ…。
あれよという間にコーディネートが決まっていって、もはや俺なんかが入る余地はなくなっていた。
思った通り、店員のオススメでそろったそれは、素人の俺が見てもいい感じだった。思わず感心してしまう。
しばらくして一通りのものが揃い終わると、店員が会計を求めてきた。
【店員】
「お会計ですが、こちらになります」
【ハク】
「あ、はい」
俺は何の気なしに差し出された数字を見る。……と。
俺はその金額に本気で飛び上がって驚いた。
――なんだ、この数字は…!?
【ハク】
「な、78万円!?」
俺は思わず…ありえない!と呟いた。
【銀】
「何を言ってる!」
そう言いいながらナツは俺の横に姿を現した。
【ハク】
「いや、だってこの金額…」
俺はおそるおそる金額がをナツに向けると、俺の前に進み出て、サッと黒光りしたクレジットカードを差し出した。
店員はそれを両手で受け取り、そそくさと会計をし始める。
【ハク】
「おい、俺、あんな金額はらえないぞ?」
俺は急いでナツの耳元にそう告げた。だって、まさかあんな値段になるなんて思ってもみなかった。
ナツはそんな俺を見もせずに、しらっとこう言ってくる。
【銀】
「知ってる。問題ない。言っただろう、忘れたか?その分キッチリ仕事してもらう、ってな」
【ハク】
「そ、そういう…」
【銀】
「異論でも?」
【ハク】
「う…。…ないです」
俺はたじたじになりながら同意する……というか、たぶんこの先ずっとこう言われ続けるような気がする…。
【店員】
「銀様、ありがとうございました」
【銀】
「どうも。――いくぞ。ハク」
【ハク】
「あ、ああ!」
会計が終ると、ナツは早速というように次の目的の場所へと歩きだす。
深々と会釈する店員に、俺は軽くぺこぺこと頭を下げると、既に少し遠ざかっていたナツの背中を追いかけた。
駐車場に戻ると、俺達は再び車に乗り込んだ。
ナツは間髪いれずに車のエンジンをかけている。
【ハク】
「ナツ、なんでこんなことするんだよ?」
【銀】
「『こんなこと』?」
【ハク】
「いや、だからさ。こんな上から下まで高級品で、しかもスーツ5着も…」
オーダーメイドスーツを1日に5着も仕立てるなんて…どういうことなんだ。
だって、普通はそこまでする必要なんてない気がする。思えばナツから借りているこの腕時計だって――。
『ウチの会社に入るんだったら、これぐらいのものをしててもらわないとオレが困る』
――確かナツはそんなことを言っていたけど。