[本編] 銀 夏生 編
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ナツの持ってきたスーツは、よくよく見ると、そういうのに詳しくない俺でも聞いたことのあるような有名ブランドのスーツだった
どうりで手触りが違うはずだ。
家具もそうだったけど、身につけるスーツまでブランドものなんて…。
【銀】
「因みに。こういうスーツは着こなしにコツがいる」
【ハク】
「着こなしに…コツ…?」
【銀】
「まあ、どうやらハクには難しそうだけどな」
【ハク】
「わ、悪かったなっ」
【ハク】
(確かにブランドのスーツなんて初めて着るけど…)
【銀】
「貸せ、一人じゃスーツも着られないハクのためにオレが着せてやる。感謝しろよ」
【ハク】
「え!だ、大丈夫だよ、俺一人で…」
【銀】
「貸せ」
【ハク】
「っ…」
ナツの強い視線と言葉に、俺はそれ以上拒否することができなかった。
時折ナツは、絶対NOと言わせない威圧的な雰囲気になる。
俺は仕方なく、おずおずとさっき手渡されたスーツ一式をナツに差し出した。
【銀】
「ふふ。素直でいい子だ」
【ハク】
「う…」
【ハク】
(なんか…人に着せてもらうのって恥ずかしいな…)
俺は子供に戻ったみたいに、ナツの手で服を着せられていた。
ぱりっとした雰囲気を形状記憶しているシャツ、きちっとしたスラックス、やはり高級ブランドのベルトと、そしてネクタイまで…
着こなしがどうだとか言うこだわりを持つナツに全部おまかせだ。
【ハク】
「ベルトなんて俺が締めても同じような気がするけど」
【銀】
「違う。甘い。そもそもこういう小物はチョイスの時点でセンスがものを言うんだ」
【ハク】
「そういうもんなのか…」
【銀】
「例えばこのネクタイ。結び方一つとってもTPOで分けられる」
【ハク】
「え、そんなのあるんだ?」
【銀】
「予想通りの反応だな」
そんなの、一回覚えたらそれっきりだった。
というか、普通そういうもんじゃないのか?
どうもそういうところに無頓着な俺に、ナツはテキパキと手を動かしながらうっすらと笑った。
【銀】
「尤も。今のハクにはそのくらいがお似合いだろ」
【ハク】
「なんだよ、それ。馬鹿にしてるだろ」
俺は軽く文句を言いながら、ナツの動きを見つめる。
ナツは、俺に軽口を叩きながらもその手は休めない。
俺は用意されたシャツに腕にくぐらせて、ただ羽織った状態のままでナツに向きなおった。そんな俺の肌蹴た胸を、ナツはボタンを一つ一つ丁寧にとめていく。
【ハク】
(あ……)
【ハク】
(……なんか……なんだろう、変な気分…)
ナツの指先や動きを見ていると、俺は何だかドキドキしてしまう。
きゅっ、とベルトを締められるたびに…
きゅっ、とネクタイを締められるたびに…
心臓がドクンドクンと、高鳴っていく。
【ハク】
(…なんだか…されるがまま、っていうか…)
俺の視線に気付いたのか、ナツがチラッと俺を見てくる。
【ハク】
(わっ…!)
俺は、慌てて視線を外した。
まさか、見とれていたなんて、バレたくない。
【ハク】
(何やってるんだ、俺。しかもこんなドキドキして…)
ナツはそんな俺のあやしい態度なんかは意にも介さない、という感じだ。
少しして、一通りの作業が済んだのか、仕上げとばかりにナツがシャツのしわを直してくる。
今までみたいにただ服を着せられている時と違って、シャツのしわを伸ばすナツの指は、俺の身体にぴったりと張り付いてきた。
身体のラインをシャツの上からなぞられて。
………で、その次の瞬間。
【ハク】
「あ…っ!」
ナツの指が胸の突起を軽くかすって、俺は思わず声をあげてしまった。
びくんっ
身体が反応してしまう。
【ハク】
(やば…!俺、なんて声出して…!)
俺は一気に恥ずかしくなって、慌ててナツの反応を確認した。
ナツは俺の声なんて聞こえていなかったみたいに、いつも通りの涼しげな顔をしている。
【ハク】
(聞かれ…て、なかったのか…?)
【ハク】
(でも…とりあえず気にしてはいない、ってことだよな…)
焦ったせいで心臓がドキドキしていた俺は、わざとらしく軽い咳なんかをして、その場をやり過ごした。
ナツの手が俺の身体と服に触れている間は、どうにも落ち着かなかったけれど…。
【銀】
「――ふん、まあひとまずこんなものか」
―――数分後。
ナツのこだわりの着こなしが完了したらしい。
今まで至近距離にいたナツはその身を少し後ずらせて、完成したスーツ姿の俺の全身をまじまじと見てくる。
【銀】
「馬子にも衣装とはよく言ったものだ」
【ハク】
「ば、ばか!誰が馬子だっ!」
俺は思わず照れながら反抗してしまった。
ナツは俺を誉めてるんだか馬鹿にしてるんだかよくわからないけど…この場合、一応は褒められたと思って良いんだよな…?
【ハク】
(それにしてもこのスーツ、やけに着心地が良いな)
素材とか、俺にはよくわからない。
でも、サイズがぴったりだということは俺でもわかる。
身体の上半身と下半身のバランスが違うと、既製品のスーツの場合は上下どちらかが合わなかったりするものだ。
でも、このスーツは違う。
【ハク】
(俺のサイズにぴったりなんだ、これ)
俺はこのスーツが、俺のサイズ通りに作られていることに気付いた。
まさか、俺が寝ている間にナツが採寸して、そのまま発注していたなんてことには気づかなかったけど…。
【銀】
「あとは靴と時計か」
【ハク】
「靴?時計?」
【銀】
「ハク。とりあえずコレをやるから、してろ」
ナツは自分の腕から時計を外すと、それを俺に投げ渡した。
例によって、時計に詳しくない俺でもわかる高級ブランドの腕時計だ。
時計と車は男のステータスだとかいうけど、この腕時計はまさにその最高値をたたき出している感じだ。
【ハク】
「こ、こんな高級時計もらえないよ!」
【銀】
「勘違いするな。これぐらいのものをしててもらわないとオレが困る。それとも、今さらウチでは働けないとでもいう気か?」
ナツが、威圧感のある目で俺を見てくる。
この目でみられると、俺は蛇に睨まれた蛙のようになってしまう。
とても拒否なんて許されない。そういう感じだ。
【銀】
「靴はリビングに新しいのがある。それを履け」
そう言いながらナツは、俺に背を向けて自分の身支度を始めた。
ナツは、さっき俺に服を着せたときもそうだったみたいに、手際の良い感じで自分の着替えを始める。
シャツ、ネクタイ…その一つ一つを丁寧に身につけていくナツの姿に、俺はやっぱり、ついつい見とれてしまう。
【ハク】
(手慣れてるな、ナツ…それに、すごく様になってるっていうか…)
男でも見惚れる立ち居振る舞いって、こういう感じなんだろう。
気づいたら俺はぼうっとナツを見つめていて、当のナツにそれを指摘されてようやくハッと我に返った。
【銀】
「ことごとく間抜け面を晒すヤツだな、ハクは」
【ハク】
「えっ?」
気づくと、ナツは既に完璧に身支度を済ませていた。
ということはつまり、俺はナツの着替えの一部始終を無意識に見つめてたってことか…どう考えてもアヤしい行動だよな。
それを自分でも気づかないなんて。
どうりで手触りが違うはずだ。
家具もそうだったけど、身につけるスーツまでブランドものなんて…。
【銀】
「因みに。こういうスーツは着こなしにコツがいる」
【ハク】
「着こなしに…コツ…?」
【銀】
「まあ、どうやらハクには難しそうだけどな」
【ハク】
「わ、悪かったなっ」
【ハク】
(確かにブランドのスーツなんて初めて着るけど…)
【銀】
「貸せ、一人じゃスーツも着られないハクのためにオレが着せてやる。感謝しろよ」
【ハク】
「え!だ、大丈夫だよ、俺一人で…」
【銀】
「貸せ」
【ハク】
「っ…」
ナツの強い視線と言葉に、俺はそれ以上拒否することができなかった。
時折ナツは、絶対NOと言わせない威圧的な雰囲気になる。
俺は仕方なく、おずおずとさっき手渡されたスーツ一式をナツに差し出した。
【銀】
「ふふ。素直でいい子だ」
【ハク】
「う…」
【ハク】
(なんか…人に着せてもらうのって恥ずかしいな…)
俺は子供に戻ったみたいに、ナツの手で服を着せられていた。
ぱりっとした雰囲気を形状記憶しているシャツ、きちっとしたスラックス、やはり高級ブランドのベルトと、そしてネクタイまで…
着こなしがどうだとか言うこだわりを持つナツに全部おまかせだ。
【ハク】
「ベルトなんて俺が締めても同じような気がするけど」
【銀】
「違う。甘い。そもそもこういう小物はチョイスの時点でセンスがものを言うんだ」
【ハク】
「そういうもんなのか…」
【銀】
「例えばこのネクタイ。結び方一つとってもTPOで分けられる」
【ハク】
「え、そんなのあるんだ?」
【銀】
「予想通りの反応だな」
そんなの、一回覚えたらそれっきりだった。
というか、普通そういうもんじゃないのか?
どうもそういうところに無頓着な俺に、ナツはテキパキと手を動かしながらうっすらと笑った。
【銀】
「尤も。今のハクにはそのくらいがお似合いだろ」
【ハク】
「なんだよ、それ。馬鹿にしてるだろ」
俺は軽く文句を言いながら、ナツの動きを見つめる。
ナツは、俺に軽口を叩きながらもその手は休めない。
俺は用意されたシャツに腕にくぐらせて、ただ羽織った状態のままでナツに向きなおった。そんな俺の肌蹴た胸を、ナツはボタンを一つ一つ丁寧にとめていく。
【ハク】
(あ……)
【ハク】
(……なんか……なんだろう、変な気分…)
ナツの指先や動きを見ていると、俺は何だかドキドキしてしまう。
きゅっ、とベルトを締められるたびに…
きゅっ、とネクタイを締められるたびに…
心臓がドクンドクンと、高鳴っていく。
【ハク】
(…なんだか…されるがまま、っていうか…)
俺の視線に気付いたのか、ナツがチラッと俺を見てくる。
【ハク】
(わっ…!)
俺は、慌てて視線を外した。
まさか、見とれていたなんて、バレたくない。
【ハク】
(何やってるんだ、俺。しかもこんなドキドキして…)
ナツはそんな俺のあやしい態度なんかは意にも介さない、という感じだ。
少しして、一通りの作業が済んだのか、仕上げとばかりにナツがシャツのしわを直してくる。
今までみたいにただ服を着せられている時と違って、シャツのしわを伸ばすナツの指は、俺の身体にぴったりと張り付いてきた。
身体のラインをシャツの上からなぞられて。
………で、その次の瞬間。
【ハク】
「あ…っ!」
ナツの指が胸の突起を軽くかすって、俺は思わず声をあげてしまった。
びくんっ
身体が反応してしまう。
【ハク】
(やば…!俺、なんて声出して…!)
俺は一気に恥ずかしくなって、慌ててナツの反応を確認した。
ナツは俺の声なんて聞こえていなかったみたいに、いつも通りの涼しげな顔をしている。
【ハク】
(聞かれ…て、なかったのか…?)
【ハク】
(でも…とりあえず気にしてはいない、ってことだよな…)
焦ったせいで心臓がドキドキしていた俺は、わざとらしく軽い咳なんかをして、その場をやり過ごした。
ナツの手が俺の身体と服に触れている間は、どうにも落ち着かなかったけれど…。
【銀】
「――ふん、まあひとまずこんなものか」
―――数分後。
ナツのこだわりの着こなしが完了したらしい。
今まで至近距離にいたナツはその身を少し後ずらせて、完成したスーツ姿の俺の全身をまじまじと見てくる。
【銀】
「馬子にも衣装とはよく言ったものだ」
【ハク】
「ば、ばか!誰が馬子だっ!」
俺は思わず照れながら反抗してしまった。
ナツは俺を誉めてるんだか馬鹿にしてるんだかよくわからないけど…この場合、一応は褒められたと思って良いんだよな…?
【ハク】
(それにしてもこのスーツ、やけに着心地が良いな)
素材とか、俺にはよくわからない。
でも、サイズがぴったりだということは俺でもわかる。
身体の上半身と下半身のバランスが違うと、既製品のスーツの場合は上下どちらかが合わなかったりするものだ。
でも、このスーツは違う。
【ハク】
(俺のサイズにぴったりなんだ、これ)
俺はこのスーツが、俺のサイズ通りに作られていることに気付いた。
まさか、俺が寝ている間にナツが採寸して、そのまま発注していたなんてことには気づかなかったけど…。
【銀】
「あとは靴と時計か」
【ハク】
「靴?時計?」
【銀】
「ハク。とりあえずコレをやるから、してろ」
ナツは自分の腕から時計を外すと、それを俺に投げ渡した。
例によって、時計に詳しくない俺でもわかる高級ブランドの腕時計だ。
時計と車は男のステータスだとかいうけど、この腕時計はまさにその最高値をたたき出している感じだ。
【ハク】
「こ、こんな高級時計もらえないよ!」
【銀】
「勘違いするな。これぐらいのものをしててもらわないとオレが困る。それとも、今さらウチでは働けないとでもいう気か?」
ナツが、威圧感のある目で俺を見てくる。
この目でみられると、俺は蛇に睨まれた蛙のようになってしまう。
とても拒否なんて許されない。そういう感じだ。
【銀】
「靴はリビングに新しいのがある。それを履け」
そう言いながらナツは、俺に背を向けて自分の身支度を始めた。
ナツは、さっき俺に服を着せたときもそうだったみたいに、手際の良い感じで自分の着替えを始める。
シャツ、ネクタイ…その一つ一つを丁寧に身につけていくナツの姿に、俺はやっぱり、ついつい見とれてしまう。
【ハク】
(手慣れてるな、ナツ…それに、すごく様になってるっていうか…)
男でも見惚れる立ち居振る舞いって、こういう感じなんだろう。
気づいたら俺はぼうっとナツを見つめていて、当のナツにそれを指摘されてようやくハッと我に返った。
【銀】
「ことごとく間抜け面を晒すヤツだな、ハクは」
【ハク】
「えっ?」
気づくと、ナツは既に完璧に身支度を済ませていた。
ということはつまり、俺はナツの着替えの一部始終を無意識に見つめてたってことか…どう考えてもアヤしい行動だよな。
それを自分でも気づかないなんて。