本編
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《兆し》
【政親】
「……成る程、梓乃、侑生と友人。名前は」
【笹雨 清明】
「さそう、きよあきです」
笹雨 清明(さそう きよあき)
日月梓乃、大須賀侑生の友人。
将来の夢は弁護士。現在一流大学在籍。
【笹雨 清明】
「知ってるかと思いますが…二人に誘われて、応募しました」
【政親】
「そうらしいですね。勿論聞き及んでいますが」
ぱっと見た所、なんの問題もない真面目なタイプの優等生。
しかも夢は弁護士。…頭が堅いタイプだと言うのをルックスで全面に押し出している。
だが……
―政親は一瞬で判断し、少し意識して怪訝な口調で話しだした。
【政親】
「軽い気持ちで応募されては、貴方にも周囲にも不利益でしょう」
【政親】
「日月梓乃、大須賀侑生の2人はアイドルに憧れてここに来ました」
【政親】
「では、貴方は。2人にただ連れられて来ただけですか?」
【笹雨 清明】
「…確かに、きっかけは2人に言われてです…けれど」
清明は顔色を変えずに、真顔で肯定してくる。
【笹雨 清明】
「…でもこの世界に入ると決めたからには、全力で取り組みます」
キッと睨みつける双眸には揺らがない。
口調もはっきりと力強く事務所に響く。
【政親】
「その言葉に二言は」
【笹雨 清明】
「声に出した以上、曲げる気はありません」
【政親】
「いいでしょう。ではこちらへ」
《本番》
【政親】
「やはり」
【笹雨 清明】
「そりゃあ…ド素人ですよ、俺」
床に座り込んでじっと手渡された台本を眺める清明。
口元を見れば、悔しいのか唇を噛みしめているようだった。
歌唱はそれなり。ダンスも練習すれば多分それなりにこなしてしまうだろうが…。
現状、思った通り演技力があまりに乏しい。棒読み以前の問題だ。
集中力もあるし、なんとかしようとする努力は垣間見られる。
…とはいえ、元来のバカ正直さがところどころで出てきてしまい、
台本で指定されている感情とは、別の表情が浮かんできてしまうのだ。
【政親】
「ですが。演技力と言うのは、とても大事な要素です」
【笹雨 清明】
「…俺だってそこは理解してます」
【政親】
「ああそうだ、清明。…これは、いい勉強になるかもしれません」
【笹雨 清明】
「?何がですか?」
【政親】
「早速仕事に参りましょうか」
【笹雨 清明】
「は…?もう……ですか」
政親は事務所の扉を開け、
青年がこの世界を知る一歩目を踏み出すのを最後まで見届けた。
《絶頂》
【政親】
「清明」
【笹雨 清明】
「……なんです」
日の落ち切った事務所。
薄暗い部屋の中でソファに身体を預けて、ぐったりと屑折れる清明。
血が出そうなくらいに強く強く握りしめられた拳が目に入る。
―予想外に、先方からは初々しい反応をする清明を甚く気に入ったようで、
大変満足したとの連絡があった。
【政親】
「今のご気分は?」
【笹雨 清明】
「…ぅ…吐きそうだ……っなんなんですか、あれ…!俺は聞いてな…」
【政親】
「エンジェル営業も、大事な仕事です。あれはここでの『普通』です」
【笹雨 清明】
「っ……!?こんなの、普通…だ、なんて……」
怒気を含んだ語尾は小さくなり、途中で掻き消えてしまった。
目の端に浮かんでは流れて行く水滴と切っ先のような双眸を見ると、
政親は挑発するように頷いてみせる。
【政親】
「皆さん通る道ですよ。こんな『普通』の事で動揺されては…」
【笹雨 清明】
「…み、皆…?……
…っ!梓乃…侑生…!…」
【笹雨 清明】
「っだ、…大丈夫、大丈夫…です。…こ、れくら…い…」
自分に言い聞かせるように呟く清明。
最中もきっと大声で叫びたいくらい動揺していただろう、彼は後を考えて踏み留まったようだ。
政親は自身の抱きしめる清明の隣に座り、爪を立てているそこにそっと手を宛がう。
ビクリと過剰反応する身体。思わず口角が上がる。
―ただのおまけが付いてきたと思いきや…
政親は即座に、「笹雨清明」を商品とした企画案を構築し始めるのだった。