本編
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《兆し》
【二條 榛貴】
「よぉ~梓乃ちゃん。今日も気合いはいってんな」
【日月 梓乃】
「…………二條、……さん」
女友達と連れだって歩いていると―前方から日月梓乃の姿が。
【二條 榛貴】
「結構な偶然だな」
くしゃくしゃと梓乃の頭を撫でる二條―
二條の連れの女も梓乃に会釈する。
【日月 梓乃】
「…どうも。……こんにちは」
低い声。見れば、梓乃は二條と女に不躾な視線を送っている。
【二條 榛貴】
「ん?お姉さまのことが気になっちまうか?」
【日月 梓乃】
「……はあ?!」
【二條 榛貴】
「いい女だろ~?……ほらあの脚!あのウェスト。
梓乃ちゃんには刺激強すぎちまうかな」
【日月 梓乃】
「………っ、馬鹿じゃねえの。俺はあんたのそういういい加減なところ、
……どうかと………!」
―ブブブブ!
その時……女の持っていた携帯がバイブレーションによってメールを告げる。
【二條の連れ】
「あら。……ごめんなさい。仕事の連絡……、
最悪……トラブルだわ」
女は大袈裟に頭を抱えてから、二條に謝罪をしてその場を後にする。
【二條 榛貴】
「あぁ~フラれちまった、梓乃ちゃん」
【日月 梓乃】
「……知らねえっつーの」
【二條 榛貴】
「梓乃ちゃんこれからどこ行くんだ?」
【日月 梓乃】
「…………、レッスンだよ」
じゃあ俺もついてくわ、と二條。
【日月 梓乃】
「……なんで、あんたまで……」
眉間にシワを寄せる梓乃。
その顔が可笑しくて、またクシャクシャと頭を撫でる二條だった。
《本番》
【二條 榛貴】
「梓乃ちゃん、あーん」
二條がまるで女にそうするよう、自らのオムライスをスプーンですくい、
梓乃の口元へ運んだ。
【日月 梓乃】
(……オイ!滅茶苦茶目立ってんだろうが)
梓乃は小声で二條を諌める。
【二條 榛貴】
「ん~、じゃあ仕方ねえな。俺にあーん、してくれよ」
【日月 梓乃】
「仕方ねえな、じゃえねえよ!……ったく……
なんだってあんた、俺にばっかりこうなんだよ」
【二條 榛貴】
「こう……ってのは?」
【日月 梓乃】
「……っ馬鹿にしてんだろうがよ!」
梓乃は声を荒げ過ぎたようで―周囲の視線がこちらに集中する。
【二條 榛貴】
「梓乃ちゃん、すげぇ目立ってるぜ」
【日月 梓乃】
「~~~~!!!」
頬を真っ赤に染めて恥じらう梓乃。
【日月 梓乃】
「もう帰る!!」
まるで女の子のような台詞を言い残し、二條の元を去る梓乃。
【二條 榛貴】
「――ありゃ」
―やり過ぎたかな、と頭を掻く二條。
どうも日月 梓乃に対して、構いすぎてしまう。……自覚はある。
しかし―どうしてなのか、までは自分でもはかりかねているのだった。
《絶頂》
【二條 榛貴】
「――………?」
エンジェル営業を終えて事務所に戻ると、誰かの忘れ物らしい
スマートフォンが置いてあった。
【二條 榛貴】
(これ、梓乃の、だな)
【二條 榛貴】
(画面ロックもかかってねえ…ったく不用心だな)
そんな気持ちで、何気なくソレを手に取ると……
【二條 榛貴】
「……あ?」
――待ちうけ画面の画像は、笑顔の女の写真だった。
…昔……とびきり愛した女の姿とよく似ている。
【二條 榛貴】
「……めぐみ……?!」
歳はとっているが、―間違い、ない。
二條が「ハル」の名前でアイドルとして全盛期を迎えいようとして時代に
愛し合っていた恋人―萌美(めぐみ)。
しかし、――事務所によって強引に別れさせられてしまったのだ。
【二條 榛貴】
(…どうして……めぐみの写真……を……)
二條は混乱しながらスマートフォンを握りしめてしまう。
梓乃は――めぐみの息子?――風の噂で結婚した聞いて
失意の底に落とされたが、――今では心から幸せを願っている。
――しかし、それは存在が遠く、実感がわかないからこそ―そう思えていたのである。
【二條 榛貴】
(…梓乃……が)
――梓乃がめぐみの息子?
そう思う程、たまらない愛しさがこみあがってしまう。
同時に、一層混乱が強くなる。
どうしたらいいか分からないままに二條は事務所を飛び出して、夜の街へと消えていった。