本編
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《兆し》
梓乃はテレビ収録が終わり、局を出て徒歩移動する。
今日の仕事はこれで終わりだが、エンジェル営業がある。
【日月 梓乃】
(もうこれで何回目になんだろうな……)
エンジェル営業に対する嫌悪感は拭えない。
だが、最初よりも反感は少しずつ減っている。
もちろん、無いにはこしたことはない。
絶対にこんな行為認められない。
だが、悔しいことに営業と政親の手腕で
自分達の仕事が増えているのは明らかだ。
今日の収録も、エンジェル営業が無かったら掴めなかった仕事だ。
いつか探している人物が見つけられるぐらいに有名になれば
エンジェル営業をすることもなくなるのだろうか。
夜空を見上げたところで、答えなどわかるはずもなかった。
梓乃が感傷に浸っていると、後ろから己を呼ぶ声がした。
【政親】
「……梓乃」
【日月 梓乃】
「黒田さん!なんで…?」
【政親】
「近くに居たものですから直接捕まえに来ただけです。
今日の営業は無くなりました」
【日月 梓乃】
「えっ……なんでだ?」
【政親】
「ハ…、今からその理由を教えてあげましょう」
《本番》
【日月 梓乃】
「ぁッ……やだ、ン……っ」
【政親】
「嫌だ?そんなこと言える立場ですか」
【日月 梓乃】
「ひっ、……っふぁ……ッ」
何度も揺さぶられぐちゃぐちゃになっていても、終わらない。
生理的に浮かんでしまう涙が悔しく、乱雑に己の腕で拭った。
【政親】
「反抗的な態度や勝気なところは売りですが、
涙は相手に十分に見せつけたあとに拭いなさい」
【日月 梓乃】
「……ち、くしょ……ッ」
エンジェル営業の取り消し―
それは、日月の相手に不足があってのことだった。
幸い、他の相手に変えたいとの要望だったらしいが
営業が無くなるということは、仕事もなくなるところだった―ということになる。
【政親】
「ダンスも歌も覚えは早いのに……
いつまでもこちらがこんな調子では困りますね」
【日月 梓乃】
「痛―ッ」
【政親】
「それとも、私の指導が恋しいあまりに上達しないのでしょうか」
屈辱に顔を歪めるとそれを咎めるように根元を押さえ込まれ先端にギリ、と爪を立てられる。
政親の教育は一切甘くなかった―
《絶頂》
ぼんやりとした視界が張れていく―
梓乃は自分が寝てしまっていたことに気づいた。
政親がまだ部屋にいるということは、
まだそれほど時間は経っておらず一瞬気を失っていただけなのだろう。
梓乃が目覚めたことに気づくと、政親は資料を渡す。
【政親】
「こちらが、次のエンジェル営業の相手です。
失敗は二度と許しません。失礼のないように熟読しておくように」
何時の間に着替えたのだろうか、それだけ言うと政親は扉へ向かう。
そして思い出したかのように振り返り、意味深な一言を残す。
【政親】
「ポラリスと…お前自身にとってメリットのある人物だ」
それだけ言うと言葉の真意を掴めていない梓乃を一人残し、部屋を出て行った。
しぶしぶと資料を持ち上げ目を通すと、梓乃は資料の経歴の項目で目を僅かに開く。
【日月 梓乃】
「……こいつの担当してた年代って……
もしかしたら、親父を知っているかもしれない……!」
父親と同じ世界に入れば近いところへいけるかもしれないと考えていた梓乃にとって
エンジェル営業とはいえ舞い込んできたチャンスには違いなかった。
思いもしないチャンスに喜んでいた梓乃に、とある疑問が浮かぶ。
【日月 梓乃】
「ハッ……あいつ、俺のために……?
いやいやいや!あんな冷徹なやつがまさか!」
すぐにその疑問は打ち消した。
結局はエンジェル営業に行けという話なのだ。
【日月 梓乃】
「親父……」
何か少しでも手がかりが掴めれば……、父親を探せるのなら藁にもすがる想いだった―