本編
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《兆し》
【山口 遼太】
「く、黒田さん……っあの、この後の予定は…っ」
【政親】
「仕事に決まっているでしょう」
【山口 遼太】
「ですよね……って、あれ……?」
政親と山口はとあるテレビ局を歩いていた。
エンジェル営業の評判は良く、プロデューサーから局員まで話を聞かせてほしいとの要望が増えたからだった。
挨拶を終え収録しているアイドルの楽屋まで赴こうとした矢先、
廊下にそのアイドルの姿を見つけた。
【山口 遼太】
「墨代く―むぐっ」
【政親】
「静かに」
政親は、声をかけようとする山口の口を塞ぐ。
この廊下は滅多に使わないスタジオへ続いている廊下だ。
二人は、スタジオへ入っていった墨代の後を静かに追った。
【墨代】
「ん……どうなんだろう」
【???】
「どうとはなんだ、大体……」
薄暗いスタジオから話し声が聞こえる。
どうやら、墨代は一人ではないようだ。―相手は……
【山口 遼太】
「あれって……!」
冴島 享正―
政親を陥れた人物に他ならない。
冴島 享正と墨代 睡蓮は繋がっている…!?
【政親】
「―先に帰っていなさい」
【山口 遼太】
「でも……」
【政親】
「………」
【山口 遼太】
「―わかりました……」
政親の無言の圧力によりすごすごと帰っていく山口。
政親は山口に見向きもせず、スタジオへ目線を向け最後まで二人の会話を聞いた。
冴島がスタジオから出ていくのを見届け、墨代の前に立ちはだかる。
【墨代 睡蓮】
「あっ…黒田さん、こんにちは」
《本番》
【政親】
「私への弁明をしなさい」
【墨代 睡蓮】
「特には…弁明って、弁論大会ですか?」
【政親】
「冴島は…どういう人間か知っていますか」
【墨代 睡蓮】
「はい、知ってますよ。
――笑い方が、すこし汚い人です」
【政親】
「…………」
墨代は先ほどからずっとこんな調子だ。
政親を前にしてもふと視線が他に移ってしまう。
ことの次第は大方予想が付くのだが、冴島はともかく―墨代の出方や目的が全くわからなかったからだ。
【墨代 睡蓮】
「俺は、黒田さんと一緒がいいなって、思ってます」
―敵の事務所と繋がっていると露呈したというのに。
嘘を付いたり騙したりしようとする姿勢ではないと判断できる。
【政親】
「―ふん……、一緒……か。―笑わせてくれる」
政親は新しいオモチャでも見つけたかのような、無邪気な笑みを浮かべた。
《絶頂》
【墨代 睡蓮】
「黒田さん、ルームサービス取ってもいいですか」
【政親】
「……、どうぞ」
個人レッスンと称して墨代をホテルに連れてきたが、
自分に入れ込むわけでもなさそうだ。
最中にポラリスの商品である自覚はあるかと問えば
ふわりと笑うだけで答えることはしなかった。
それは誤魔化すというよりも、肯定も否定もしないという風にとれた。
裏切るわけではないのだから、それでいい。
墨代自身、あまり考えていないのなら処遇をどうするかと割く時間が馬鹿らしい。
次の仕事に向かう為政親はスーツに着替えながら墨代を見遣る。
まだ裸のまま身体を隠すことなくベッドに腰掛けて足を遊ばせていた。
【政親】
「風邪を引く、これを着なさい」
【墨代 睡蓮】
「おわっ、……っぷは」
ホテルに備え付けられたガウンを頭から被せる。
近づき、襟足を指でくすぐるように撫でるとくすくす笑い身を捩る。
この危うい儚げな空気こそが、墨代の持つ魅力に思えた。
―ならばこのままこの個性を育てればいい。
【墨代 睡蓮】
「おなかすいたなぁ」
政親の考えとは裏腹に、墨代は暢気に腹を摩っていた。