本編
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《兆し》
【芦沢 由臣】
(――落ち着くな)
近代ヨーロッパの絵画を中心に常設展を開いている美術館。
芦沢は都会の喧騒を離れ、絵画に魅入っていた。
彼自身が創作してきたジャンルとは一見大きく異なるが、
芦沢の価値観の中では芸術性の高いもの―として。等しく、心を潤すものだった。
【芦沢 由臣】
(凛子………)
自分の心が満ちてくる程に思いだされる―失意の妹。
――二人だけの家族だったのに。あんなに、無邪気な笑顔を浮かべていたのに。
今は病院で―まるで抜けがらのように……人形のように、『無』をたたえて、
ただ日々を過ごしている。
【芦沢 由臣】
(全員、殺してやる)
妹の心を奪った人間を。――奪うように仕向けた人間も、すべて。
……アイドルになることを夢見て上京した芦沢の妹、凛子は―
―業界の人間達に玩具のように扱われた。
政親政親に促されたエンジェル営業等とは比べものにならない行為を強要され
――そして…心が壊れるまで使われて、今はもう―
【芦沢 由臣】
(…………凛子)
まるで決意の言葉のように、妹の名前を呼ぶ。
そうして。復讐心に支配された自分に満足し、芦沢は美術館を後にした。
彼女を貶めた忌まわしい仕事―アイドル、としての自分に戻る為に。
《本番》
【政親】
「おはようございます」
【芦沢 由臣】
「―ああ」
―ス……
【芦沢 由臣】
「っ…」
不意に政親の手が由臣に触れる。
【政親】
「今日はいい目をしていますね、…由臣」
【政親】
「営業に適した瞳です」
【芦沢 由臣】
「貴様―」
あの忌むべき行為に適している、という言葉にカっとなる。
【芦沢 由臣】
「貴様のような下種が俺を計る事など、……許さんぞ…!」
【政親】
「キィキィ煩い猿ですね。――それでは、鳴り物用としても半人前ですよ」
【芦沢 由臣】
「……っ」
政親は…動物にそうするよう、由臣の顎の下を撫であげた。
【芦沢 由臣】
「――、…俺に触るな!」
―由臣はくるりと政親に背を向ける。
けれど……向かう先は―、…政親の命ずるあの『営業』の
相手が待つ場所。―自身の目的を達成する為に必要なコト。
悲しい自己矛盾に由臣は歯ぎしりをするばかりだった。
《絶頂》
【政親】
「お疲れ様です」
【芦沢 由臣】
「……っ…?!」
営業を終え、浅く息をしていた由臣の元、政親が現れて。
――もっとも惨めな状態の自分を見られてしまった。
由臣は恥辱に塗れた表情をたたえる。
【芦沢 由臣】
「貴様……!!どうして此処に……っ」
部屋の内鍵は当然閉まっている。
―相手、はもう既に去った後なのだから鍵を持っている人間は存在していない。
――無論、ホテルの人間やその営業相手と繋がっていれば、鍵など容易く手に入るのだろうが……
【政親】
「予測の通り―今日の貴方は中々いい働きをして下さったようですね」
【政親】
「反抗的で、可哀想な瞳の色。嗜虐心をそそられますよ?」
【芦沢 由臣】
「ふざけるな!!」
由臣は情けない姿のまま吠える。
可哀想な色だと?!―そう、心の中で叫ぶが……
政親の言葉が全くの的外れであると言い切る事が何故か出来ず、ただ、怒りが込み上がってくる。
その怒りは政親に対してか、―自身に対してなのか分からない……。