本編
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《兆し》
エンジェル営業でレコーディング会社といい関係を築き上げた結果、CDデビューの目途が立った。
本格的なレコーディングを前に、さらにハイレベルなレッスンをする必要があった。
そんな考えの矢先、政親は山口に呼び止められた。
【山口 遼太】
「く、くく黒田さん、あの……っ、僕、クッキー作ってきたんです」
【政親】
「そうですか」
【山口 遼太】
「冷たい……!
あの、うちの事務所のメンバーの子達を励ますために作ろうと思ったんです。
けど、実際に渡すまえに黒田さんに試食して貰えないかなぁ……と!」
山口はもじもじと背中の後ろに持った紙袋を持っている。
その紙袋には先ほど言っていたクッキーが入っているのであろう。
甘いものは好きではないしそんなことに時間を割きたくないと思う政親だが、
山口は頑固でしつこいところもあるので適当に1枚食べておいた方が良さそうだと判断する。
【政親】
「甘いものは好きではありませんが……1枚いただきましょうか」
【山口 遼太】
「あ、メンバーの中にも甘いもの苦手な子がいるので
その子のためにも甘さ控えめのものを作っています!
もちろん、黒田さんが甘いもの好きじゃないことも知っていました!」
【政親】
「講釈はいいですから、早く。時間がありません」
【山口 遼太】
「すみませんっ……あのっ、こちらです!!!」
受け皿を持ってくるとその上にワックスペーパーを乗せ、クッキーを広げた。
何時のまにかコーヒーも用意していたようで、専用のマグカップにブラックを淹れ政親の手元に置く。
政親は呆れながらもクッキーを一枚手に取り、口に入れた。
【政親】
「ちゃんと低カロリー用に作っているようですね。
しっかりと焼けているようですし、これなら渡してもいいでしょう」
【山口 遼太】
「ありがとうございます……ッ!
俺、黒田さんにも食べてもらえるようにって…」
山口の言葉が止まらなくなる手前、榎本が通りかがる。
【榎本 公志郎】
「あら、おいしそうな匂いがすると思ったらクッキーがあったのね!
私、ちょうど小腹が空いてたところなの♪」
【山口 遼太】
「あ、あぁ~!!!」
榎本がクッキーを食べた瞬間、山口が悲壮な叫びを漏らす。
その声に驚いた榎本は尋ねた。
【榎本 公志郎】
「ヤダ……これなんか食べちゃまずかったやつ?」
【山口 遼太】
「いえ、いいんです……黒田さんにも食べてもらえたんだし、うん……」
【政親】
「いえ、問題ありませんよ。山口がメンバーの為に作る前に試食をして欲しいとのことだったので」
【榎本 公志郎】
「もォ~、それは建前でアンタにクッキー食べて貰いたかったってことじゃない!
ごめんね、山口。でもアンタ、女学生みたいなこと考えんのね……」
気の毒そうに榎本が話しかけると、山口が顔を真っ赤にしたまま答える。
【山口 遼太】
「べ、べべべ別にそんなんじゃ……っ」
【政親】
「……、最初から気づいていましたよ。
面倒ごとを避ける為言わなかっただけです。社長、余計なことは言わないように。
個人的に好意を押し付けられて、私が喜ぶとでも思いましたか?」
【榎本 公志郎】
「相変わらず酷いのねー」
【山口 遼太】
「うううう……ほんとひどいです……!」
わざとらしくため息を吐いた政親は
【政親】
「二度目はありませんよ」
そう言いながらクッキーを手に取った。
【山口 遼太】
「政親さぁあああん!なんだかんだ言って優しい黒田さんが、俺、俺……っ」
【榎本 公志郎】
「山口、もう政親いないわよ」
【榎本 公志郎】
(ま、どこまで計算なんだかわからないけど)
それを伝えないのは、榎本の優しさだった。
《本番》
―ラジオ収録スタジオ
ブースの外で政親と山口が収録を見守っている。
今は、2本録りのラジオ休憩時間だ。
【山口 遼太】
「いやーやっぱり縁って大事ですね。
この前突発ではいった営業の調整大変でしたけど、ラジオ出演できるなんて」
【政親】
「CDデビューが決まれば、次にやることは決まっています。
少しでも多くの人間の耳に残すこと。それから、メディアへの露出です」
【山口 遼太】
「勉強になります……!」
熱心にメモを取り終えた山口は、何かに気づき口を開く。
【山口 遼太】
「あ、これから歌のパート収録ですね。
気合入れてパフォーマンスしてもらわないと!」
【政親】
「ええ。曲を聞き入れてもらうにはしっかりとしたアピールが必要となります。
ましてやラジオのパーソナリティである『フロワ』は歌に定評がありますからね。
同時に流れるなら負けないようにしなければなりません」
【山口 遼太】
「俺、皆と話してきます!」
【政親】
「よろしくおねがいします」
《絶頂》
【山口 遼太】
「すごい良かったですね……!『フロワ』のメンバーも圧倒されてましたよ」
【政親】
「彼らも一緒に盛り上がっていただけたようで」
【山口 遼太】
「あ、あと!クッキーも喜んでくれましたね♪えへへ」
【政親】
「……気持ち悪い」
【山口 遼太】
「ガーン!また、また気持ち悪いって……!」
【政親】
「貴方の差し入れで場が和んだことは評価します」
【山口 遼太】
「えへへへへ」
止まらない政親の笑みを見ると、政親は一つ舌打ちを打つ。
【政親】
「二度同じことを言わせるな」
【山口 遼太】
「えええええええ!!そんなぁ………」