本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【吉川】
「おう、…来てやったぜ」
【宮沢】
「吉川先輩!本当に来てくれたんですね!」
【吉川】
「…男に二言はねえよ」
ぶっきらぼうに答える吉川瑛二(よしかわえいじ)先輩は、ぱっと見の恐さとは裏腹に面倒見のよい優しい先輩だ。
…なんて、本人に言っても絶対に否定されるけれど。
【宮沢】
「先輩がチームメンバー第1号になってくれて
俺、本当に嬉しかったです!」
【宮沢】
「しかも大学の外で活動することになっても辞めずに付き合ってくれるなんて…」
―大学入学当初、
1年生ながらも新規同好会を結成し、男子シンクロチームメンバーを募集していた俺と谷崎に、
最初に声を掛けてきてくれたのがこの吉川先輩だった。
しかし……2人め以降の入会希望者は一向に現れず、俺はこうしてバイト先のフィットネスプールに活動の場を移しているのだった。
【吉川】
「別に……ヒマだから付き合ってやってるだけだ。
喋ってねえでさっさとシンクロの技教えろよ」
【宮沢】
「はい!それじゃ、よろしくお願いします、先輩!」
【吉川】
「この程度の練習でいいのかよ。シンクロってのも大したことねえな」
そう言いながらも、吉川先輩の身体は軽く上気している
でもそれは、練習メニューのハードさというより…吉川先輩のストイックな取り組み方に原因があるように思えた。
【宮沢】
(吉川先輩は口では悪態ばかりだけど、泳ぎはいつも…爪先の表現にいたるまで絶対に手を抜かないから…)
【宮沢】
「先輩の泳ぎは、いつ見ても参考になります」
【吉川】
「ばっ…!馬鹿じゃねーの、教えてんのはお前だろーが」
プイっと目を逸らし、不機嫌そうに答える吉川先輩。
【宮沢】
「そうですけど、それでも一選手として憧れる気持ちっていうか…」
【宮沢】
「俺も頑張らないとって、先輩の泳ぎから力を貰える感じなんです!」
【吉川】
「だぁーっ!てめーの言動はいつも恥ずかしいんだよ!」
【吉川】
「今日のメニューはあれで全部か?
ならもう帰るぜ」
それだけ言うと、吉川先輩は不機嫌な顔のまま足早にプールから出て行ってしまった。
【宮沢】
「…俺、また吉川先輩の気を悪くさせちゃったのかな」
普通に会話をしているつもりなのに、何故か最後はあんな風に怒らせてしまう。
次は笑顔を見せてくれたらいいな…
そう思いながら、俺は吉川先輩用のトレーニングメニューを再調整するべく見直し始めた。
【梶井】
「こんにちは、宮沢さん」
【宮沢】
「あ、梶井さん。
こんにちは、今日はお早いんですね」
【梶井】
「ええ、今日はめずらしく撮影も締切もなかったものですから…」
そう言って微笑む梶井さんの瞳に、俺は思わず見入ってしまう。
【宮沢】
(いつ見ても綺麗な人だな。なんかこう、オーラが違うっていうか……)
フードコーディネーターをしている梶井さんは、TVのレギュラー番組や雑誌の連載エッセイなども手掛ける有名人だ。
「梶井基哉」の名をつけるだけで、そのレシピ本は飛ぶように売れるのだという。
料理のセンスや腕前もさることながら、
世の女性たちの熱狂ぶりは、その美貌と優雅な物腰に依るところが大きいのだろう。
【宮沢】
(そんな人が何故、俺たちのシンクロチームに興味を持ってくれたのか…)
【梶井】
「こちらに通っている折、時々貴方がコーチしている姿を見かけて、気になっていたのです」
【梶井】
「貴方が指導する姿からは、熱いエネルギーの躍動が感じられました」
初めて梶井さんから声を掛けられたとき、そう言われたのを覚えている。
【宮沢】
(なんだか神秘的な人だな…)
それが俺の第一印象で、その印象は今でも変わっていない。
【梶井】
「…どうしたのですか?ぼんやりとして」
【宮沢】
「!!
あっ!すみません」
初対面のときを思い出して意識を飛ばしてしまっていた俺は、梶井さんからの呼びかけてハッと我に返った。
【梶井】
「フフ、構いませんよ。
それではレッスンを開始していただきましょうか」
【梶井】
「ありがとうございました。
とても良かったですよ」
【宮沢】
「それは梶井さんの飲み込みが早いからですよ。
何かスポーツをやってらっしゃたんですか?」
梶井さんは身体の線が細く、「鍛え抜かれた…」という印象はない。
しかし無駄な肉のない張りつめたラインは、ネコ科の猛獣を思わせた。
【梶井】
「普段の立ち居振る舞い…、それに呼吸法を意識することで、人の身体は意外と単純に言うことを聞く様になるものですよ」
【宮沢】
「へえ…、それって俺にもできるでしょうか」
そう言った俺の身体の上を、梶井さんの視線が撫ぜるように移動する。
【宮沢】
(……あ)
ただ見られているだけなのに……
【宮沢】
(何故だろう…、まるで裸にされているような……落ち着かない気持ちになる。)
【梶井】
「…そうですね」
そう呟きながら梶井さんは、指先で下唇を少し抑えるようにして考え込む素振りを見せる。
……柔らかそうに歪む唇。…その…細くしなやかな指先で……
【宮沢】
(触れられてみたい………)
【宮沢】
(……って!俺いま…何考えた!?)
一瞬で我に返り、慌てて梶井さんを見返す俺。
そんな俺の心情を見透かしたかのように、梶井さんは薄っすらと笑みを浮かべ、言った。
【梶井】
「貴方の身体は、とても素直そうですね」
【梶井】
「コツを掴めばすぐにも効果が得られるでしょう。
今度教えて差し上げます」
【宮沢】
「本当ですか!?ありがとうございます!」
【梶井】
「フフ、本当に素直ですね」
満面の笑顔で喜ぶ俺を見て、梶井さんはさらに笑みを深くした。
【???】
「せんぱーい!」
プールサイドでシフト表のチェックをしていると、背後から明るい声が響いた。
【宮沢】
「ああ、井上。来てたのか」
彼は井上虎雄(いのうえとらお)。
俺の高校の後輩だ。
後輩…といっても、俺が卒業した年に入ってきたから在学期間は被っていない。
中学時代に観戦に行ったインターハイで、俺の泳ぎに一目惚れしたとかで
部活が終わるとほぼ毎日このスクールに顔を出している。
【井上】
「ねえ先輩、今日はバックパイク教えてください!」
【宮沢】
「OK。ストレッチは済んでる?」
「おう、…来てやったぜ」
【宮沢】
「吉川先輩!本当に来てくれたんですね!」
【吉川】
「…男に二言はねえよ」
ぶっきらぼうに答える吉川瑛二(よしかわえいじ)先輩は、ぱっと見の恐さとは裏腹に面倒見のよい優しい先輩だ。
…なんて、本人に言っても絶対に否定されるけれど。
【宮沢】
「先輩がチームメンバー第1号になってくれて
俺、本当に嬉しかったです!」
【宮沢】
「しかも大学の外で活動することになっても辞めずに付き合ってくれるなんて…」
―大学入学当初、
1年生ながらも新規同好会を結成し、男子シンクロチームメンバーを募集していた俺と谷崎に、
最初に声を掛けてきてくれたのがこの吉川先輩だった。
しかし……2人め以降の入会希望者は一向に現れず、俺はこうしてバイト先のフィットネスプールに活動の場を移しているのだった。
【吉川】
「別に……ヒマだから付き合ってやってるだけだ。
喋ってねえでさっさとシンクロの技教えろよ」
【宮沢】
「はい!それじゃ、よろしくお願いします、先輩!」
【吉川】
「この程度の練習でいいのかよ。シンクロってのも大したことねえな」
そう言いながらも、吉川先輩の身体は軽く上気している
でもそれは、練習メニューのハードさというより…吉川先輩のストイックな取り組み方に原因があるように思えた。
【宮沢】
(吉川先輩は口では悪態ばかりだけど、泳ぎはいつも…爪先の表現にいたるまで絶対に手を抜かないから…)
【宮沢】
「先輩の泳ぎは、いつ見ても参考になります」
【吉川】
「ばっ…!馬鹿じゃねーの、教えてんのはお前だろーが」
プイっと目を逸らし、不機嫌そうに答える吉川先輩。
【宮沢】
「そうですけど、それでも一選手として憧れる気持ちっていうか…」
【宮沢】
「俺も頑張らないとって、先輩の泳ぎから力を貰える感じなんです!」
【吉川】
「だぁーっ!てめーの言動はいつも恥ずかしいんだよ!」
【吉川】
「今日のメニューはあれで全部か?
ならもう帰るぜ」
それだけ言うと、吉川先輩は不機嫌な顔のまま足早にプールから出て行ってしまった。
【宮沢】
「…俺、また吉川先輩の気を悪くさせちゃったのかな」
普通に会話をしているつもりなのに、何故か最後はあんな風に怒らせてしまう。
次は笑顔を見せてくれたらいいな…
そう思いながら、俺は吉川先輩用のトレーニングメニューを再調整するべく見直し始めた。
【梶井】
「こんにちは、宮沢さん」
【宮沢】
「あ、梶井さん。
こんにちは、今日はお早いんですね」
【梶井】
「ええ、今日はめずらしく撮影も締切もなかったものですから…」
そう言って微笑む梶井さんの瞳に、俺は思わず見入ってしまう。
【宮沢】
(いつ見ても綺麗な人だな。なんかこう、オーラが違うっていうか……)
フードコーディネーターをしている梶井さんは、TVのレギュラー番組や雑誌の連載エッセイなども手掛ける有名人だ。
「梶井基哉」の名をつけるだけで、そのレシピ本は飛ぶように売れるのだという。
料理のセンスや腕前もさることながら、
世の女性たちの熱狂ぶりは、その美貌と優雅な物腰に依るところが大きいのだろう。
【宮沢】
(そんな人が何故、俺たちのシンクロチームに興味を持ってくれたのか…)
【梶井】
「こちらに通っている折、時々貴方がコーチしている姿を見かけて、気になっていたのです」
【梶井】
「貴方が指導する姿からは、熱いエネルギーの躍動が感じられました」
初めて梶井さんから声を掛けられたとき、そう言われたのを覚えている。
【宮沢】
(なんだか神秘的な人だな…)
それが俺の第一印象で、その印象は今でも変わっていない。
【梶井】
「…どうしたのですか?ぼんやりとして」
【宮沢】
「!!
あっ!すみません」
初対面のときを思い出して意識を飛ばしてしまっていた俺は、梶井さんからの呼びかけてハッと我に返った。
【梶井】
「フフ、構いませんよ。
それではレッスンを開始していただきましょうか」
【梶井】
「ありがとうございました。
とても良かったですよ」
【宮沢】
「それは梶井さんの飲み込みが早いからですよ。
何かスポーツをやってらっしゃたんですか?」
梶井さんは身体の線が細く、「鍛え抜かれた…」という印象はない。
しかし無駄な肉のない張りつめたラインは、ネコ科の猛獣を思わせた。
【梶井】
「普段の立ち居振る舞い…、それに呼吸法を意識することで、人の身体は意外と単純に言うことを聞く様になるものですよ」
【宮沢】
「へえ…、それって俺にもできるでしょうか」
そう言った俺の身体の上を、梶井さんの視線が撫ぜるように移動する。
【宮沢】
(……あ)
ただ見られているだけなのに……
【宮沢】
(何故だろう…、まるで裸にされているような……落ち着かない気持ちになる。)
【梶井】
「…そうですね」
そう呟きながら梶井さんは、指先で下唇を少し抑えるようにして考え込む素振りを見せる。
……柔らかそうに歪む唇。…その…細くしなやかな指先で……
【宮沢】
(触れられてみたい………)
【宮沢】
(……って!俺いま…何考えた!?)
一瞬で我に返り、慌てて梶井さんを見返す俺。
そんな俺の心情を見透かしたかのように、梶井さんは薄っすらと笑みを浮かべ、言った。
【梶井】
「貴方の身体は、とても素直そうですね」
【梶井】
「コツを掴めばすぐにも効果が得られるでしょう。
今度教えて差し上げます」
【宮沢】
「本当ですか!?ありがとうございます!」
【梶井】
「フフ、本当に素直ですね」
満面の笑顔で喜ぶ俺を見て、梶井さんはさらに笑みを深くした。
【???】
「せんぱーい!」
プールサイドでシフト表のチェックをしていると、背後から明るい声が響いた。
【宮沢】
「ああ、井上。来てたのか」
彼は井上虎雄(いのうえとらお)。
俺の高校の後輩だ。
後輩…といっても、俺が卒業した年に入ってきたから在学期間は被っていない。
中学時代に観戦に行ったインターハイで、俺の泳ぎに一目惚れしたとかで
部活が終わるとほぼ毎日このスクールに顔を出している。
【井上】
「ねえ先輩、今日はバックパイク教えてください!」
【宮沢】
「OK。ストレッチは済んでる?」