本編
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《兆し》
【政親】
「おはようございます」
【葛城 雄眞】
「―、おはようございます」
時刻は18時を過ぎていた。
事務所に向かえば、ピシリとスーツに身を纏った政親が視界に入る。
【葛城 雄眞】
「……………」
――昨日は徹夜明けで―そのくせまた午前中には出勤していたように聞いていたが
疲労感を微塵も感じさせないその様子に、同性ではあるにしてもつい視線を向けてしまう。
そのまま、何気なく政親の隣に腰かけた。
【政親】
「――雄眞」
【葛城 雄眞】
「なんです?」
【政親】
「今日の『お相手』とはクラブで落ち合う予定でしたね」
【葛城 雄眞】
「ええ。俺もよく行くハコで―」
そう言いかけた時。
【葛城 雄眞】
「っ…ツ…!」
――キュウ……
不意に首筋を強く吸われて雄眞は身をよじった。
【葛城 雄眞】
「……っ、……何―」
【政親】
「先方は、放蕩な貴方の噂をよくご存じで―その上で所望されているようです
――キスマークの1つや2つぐらい、演出して差し上げた方がお喜び頂けるかと」
【葛城 雄眞】
「――……ハ。それはご丁寧に、……どうも」
雄眞は自身すら気がついていなかった―媚びるような熱、を見咎められたのかと感じてしまっていた。
―その為に肩を撫でおろすと―
【政親】
「無論、貴方の物欲気な視線に応えた訳ではありませんよ」
【葛城 雄眞】
「っ…」
見透かされたようにそう微笑まれ、雄眞は少し上ずったような声で
「残念です」と茶化すのだった。
《本番》
【葛城 雄眞】
「……、…………」
葛城はクラブの喧騒をよそに、一人、カクテルを舐めていた。
―ドン!
【???】
「雄眞、どーしたのぉ?暗い顔」
【葛城 雄眞】
「―っ、……ああ。なんだ、お前か」
【女友達】
「ひっどーい。なんだって、何~」
不意に後ろから身を寄せてきた女は、名前すらよく覚えていない、
クラブの常連客だった。確か、グラビアアイドル、なんて肩書きのある女だった。
酷い、と言いながら女は嬉しそうに葛城の腕の中に納まる。
【葛城 雄眞】
「―…………」
今にもたやすく……抱いてしまえそうなその女に、ささやかな欲はともる。
けれどそれは―退屈にも似た色をしていた。
【葛城 雄眞】
(ここ…、―だよな)
―政親に吸われたあたり……首筋に自身の指を這わせる。
【葛城 雄眞】
(カリスマプロデューサーの手管、ってか)
そう、自分に言い聞かせるように思ったところで、
―エンジェル営業の相手が到着した、と店員に聞かされ、雄眞はVIPルームへと向かった。
《絶頂》
【葛城 雄眞】
「………、……あり得ねえな」
雄眞は焦れるように呟いていた。
――まさか、男相手に我知らず声があがるなんて。
―――これまで演技、で出してきた声とは明らかに違う―自身の声。
【営業相手】
「キスマーク、か。噂通り、激しいアソビしてるんだな……雄眞」
【営業相手】
「俺が上書きしてやるよ……」
――ちゅ……ちゅう…ッ……
【葛城 雄眞】
「………っ」
そこに男の唇が這った瞬間―
政親の意地悪な声と、――強い熱が蘇って……
【葛城 雄眞】
(―――酒)
雄眞は今日の自身をすべて忘れるように、
注文していたドッグノーズが届くやいなや、一息に飲み干していた。