[本編] 緑川 彰一 編
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【緑川】
「……」
絡もうとすると、黙り込んだ緑川さんがじっと俺のことを見ているのに気付く。
【ハク】
(……なんだよ、その目はっ……)
【緑川】
「……そんなこと、ない」
【ハク】
「は?」
思わず乱暴に答えてしまう。
【緑川】
「恵まれてなんかないよ、全然」
伏し目がちに、けれど力強く緑川さんはそう言った。
そんな謙遜さえも今の俺には苛立たしい。
しかし緑川さんは悪態をつく俺に何一つ嫌味を言うことなく顎に手を置き、顔をまじまじと見る。
【ハク】
「くっ……」
その真っすぐな目が眩しくて、俺は思わず目をそらしてしまう。
すると、緑川さんは俺の顎に当てたままの手をクイっと上げると、痛い所を突いてきた。
【緑川】
「仕事……ないんだよね」
【ハク】
「よけいなお世話です!」
「うちでホストやってみない」
【ハク】
「……はっ? ホスト!?」
いきなり……自分には不似合いにもほどがある単語が彼の口から飛び出して、我に返る。
【緑川】
「ちょうど今人が足りなくて、君みたいなタイプを探してたところだし」
【和久井】
「緑川さん、それって……」
和久井さんが何か言いかけたのを遮って、俺はきっぱり緑川さんに言ってやる。
【ハク】
「そんな……冗談やめてください! 俺にできるわけないでしょう」
【ハク】
「だいたい、あなたみたいに背も高くないし、カッコよくもないし……」
【ハク】
「そもそも接客業に向いてるとは思ってません!」
すると緑川さんは俺を諭すようにゆっくりとした口調で話しを続ける。
【緑川】
「ホストにはね、いろんなタイプの人がいるんだ」
【緑川】
「顔がカッコいい人はもちろんだけど……」
【緑川】
「話しの上手い人、聞き上手な人、気配りができる人……」
【緑川】
「あと、君みたいなカワイイ子……とかね」」
不意に自分のことをカワイイと言われた俺は、耳がカッと熱くなる。
【ハク】
「な、何言ってるんですか!」
酔っ払いながらも顎に置かれた手を振り洗い、思わず睨みつけてきっぱりと答える。
【ハク】
「からかうのは止めて下さい」
【緑川】
「からかってなんかないよ」
【緑川】
「君は絶対に向いてると思う」
そんなお世辞、こんなイケメンに言われたところで嫌味でしかない。
【緑川】
「俺の勘はよく当たるんだ」
そう言って俺に笑みかけるが、正直あまりにも根拠がなさ過ぎて馬鹿馬鹿しく思えてくる。
【ハク】
(勘って……)
俺はそう心の中で呟きながら緑川さんから目をそらす。
【緑川】
「大丈夫。最初は誰だって戸惑うものだからね」
【ハク】
「向いてますか……?」
すると緑川さんは、俺のその言葉に対して、ゆっくりとした口調で返答する。
【緑川】
「良ければ考えてほしい。まあ、待遇も悪くないし、面白い仕事だから、体験入店だけでも」
【ハク】
「はっ……何勝手にっ……!」
【緑川】
「これ、名刺。連絡待ってる」
そう言って差し出された名刺には、緑川さんの源氏名なのであろう『ショウ』という名が書かれていた。
【ハク】
「つとまるわけないじゃないですか」
そう言って俺は緑川さんの名刺をカウンターへ置いた。
【緑川】
「いつでもいいよ、その名刺の番号にかけて」
【ハク】
「ふざけないでくださいっ……あぁもうっ! お酒ください! おかわり!」
【緑川】
「……」
俺は緑川さんを無視して強い酒を煽る。
【ハク】
(ホストなんて俺にできるわけない……!)
この王子様とは次元が違う。
そう言って俺は目の前の男を忘れるように酒を煽った。
気付けば、緑川さんはいなくなっていて……。
―――結局その夜は、我を忘れるまで酒に溺れてしまい、
再び目を冷ました時、時計の針は朝の8時を指していた……。
【ハク】
「……ん……朝……?」
【ハク】
「……ここは……一体……?」
【和久井】
「朝ですよ。そろそろお店閉めるので、お客さんも荷物をまとめてもらえると」
【ハク】
「あっ……すみません! すっかりご迷惑を……」
昨日の悪酔いっぷりはところどころ記憶に残っていて、マスターにはひたすら申し訳なく思う。
【和久井】
「いえいえ。あなたみたいな人を受け止められるのも、この店の良いところですから」
【ハク】
「どうも……」
大慌てで荷物をまとめ、想定外の会計にぎょっとしながらもバーを後にした。
【ハク】
(無職なのにこんなにお金使っちゃったよ……)
【ハク】
(どうしよう……貯金もそんなにないし……明日、いや、今日から……)
とぼとぼと歩きながら自宅マンションの前に着くと、何やらざわついている。
人だかりで前に進めなくなっているし、マンションの周りにはロープが張られていた。
【ハク】
「何だ、これ……」
【藍建】
「あー、すみませんね。今調査中で」
【ハク】
「調査!?」
俺に話しかけてきた男は、どうやら刑事のようだった。
【ハク】
「何かあったんですか!?」
【藍建】
「放火です。一室全焼しちゃってね、いま検証中で」
【ハク】
「全焼って……どこの部屋が……」
背を伸ばして奥を覗き込もうとすると。
【藍建】
「ここからちょうど見えますよ、あの部屋です」
刑事が指差した部屋は……まさかの。
「……」
絡もうとすると、黙り込んだ緑川さんがじっと俺のことを見ているのに気付く。
【ハク】
(……なんだよ、その目はっ……)
【緑川】
「……そんなこと、ない」
【ハク】
「は?」
思わず乱暴に答えてしまう。
【緑川】
「恵まれてなんかないよ、全然」
伏し目がちに、けれど力強く緑川さんはそう言った。
そんな謙遜さえも今の俺には苛立たしい。
しかし緑川さんは悪態をつく俺に何一つ嫌味を言うことなく顎に手を置き、顔をまじまじと見る。
【ハク】
「くっ……」
その真っすぐな目が眩しくて、俺は思わず目をそらしてしまう。
すると、緑川さんは俺の顎に当てたままの手をクイっと上げると、痛い所を突いてきた。
【緑川】
「仕事……ないんだよね」
【ハク】
「よけいなお世話です!」
「うちでホストやってみない」
【ハク】
「……はっ? ホスト!?」
いきなり……自分には不似合いにもほどがある単語が彼の口から飛び出して、我に返る。
【緑川】
「ちょうど今人が足りなくて、君みたいなタイプを探してたところだし」
【和久井】
「緑川さん、それって……」
和久井さんが何か言いかけたのを遮って、俺はきっぱり緑川さんに言ってやる。
【ハク】
「そんな……冗談やめてください! 俺にできるわけないでしょう」
【ハク】
「だいたい、あなたみたいに背も高くないし、カッコよくもないし……」
【ハク】
「そもそも接客業に向いてるとは思ってません!」
すると緑川さんは俺を諭すようにゆっくりとした口調で話しを続ける。
【緑川】
「ホストにはね、いろんなタイプの人がいるんだ」
【緑川】
「顔がカッコいい人はもちろんだけど……」
【緑川】
「話しの上手い人、聞き上手な人、気配りができる人……」
【緑川】
「あと、君みたいなカワイイ子……とかね」」
不意に自分のことをカワイイと言われた俺は、耳がカッと熱くなる。
【ハク】
「な、何言ってるんですか!」
酔っ払いながらも顎に置かれた手を振り洗い、思わず睨みつけてきっぱりと答える。
【ハク】
「からかうのは止めて下さい」
【緑川】
「からかってなんかないよ」
【緑川】
「君は絶対に向いてると思う」
そんなお世辞、こんなイケメンに言われたところで嫌味でしかない。
【緑川】
「俺の勘はよく当たるんだ」
そう言って俺に笑みかけるが、正直あまりにも根拠がなさ過ぎて馬鹿馬鹿しく思えてくる。
【ハク】
(勘って……)
俺はそう心の中で呟きながら緑川さんから目をそらす。
【緑川】
「大丈夫。最初は誰だって戸惑うものだからね」
【ハク】
「向いてますか……?」
すると緑川さんは、俺のその言葉に対して、ゆっくりとした口調で返答する。
【緑川】
「良ければ考えてほしい。まあ、待遇も悪くないし、面白い仕事だから、体験入店だけでも」
【ハク】
「はっ……何勝手にっ……!」
【緑川】
「これ、名刺。連絡待ってる」
そう言って差し出された名刺には、緑川さんの源氏名なのであろう『ショウ』という名が書かれていた。
【ハク】
「つとまるわけないじゃないですか」
そう言って俺は緑川さんの名刺をカウンターへ置いた。
【緑川】
「いつでもいいよ、その名刺の番号にかけて」
【ハク】
「ふざけないでくださいっ……あぁもうっ! お酒ください! おかわり!」
【緑川】
「……」
俺は緑川さんを無視して強い酒を煽る。
【ハク】
(ホストなんて俺にできるわけない……!)
この王子様とは次元が違う。
そう言って俺は目の前の男を忘れるように酒を煽った。
気付けば、緑川さんはいなくなっていて……。
―――結局その夜は、我を忘れるまで酒に溺れてしまい、
再び目を冷ました時、時計の針は朝の8時を指していた……。
【ハク】
「……ん……朝……?」
【ハク】
「……ここは……一体……?」
【和久井】
「朝ですよ。そろそろお店閉めるので、お客さんも荷物をまとめてもらえると」
【ハク】
「あっ……すみません! すっかりご迷惑を……」
昨日の悪酔いっぷりはところどころ記憶に残っていて、マスターにはひたすら申し訳なく思う。
【和久井】
「いえいえ。あなたみたいな人を受け止められるのも、この店の良いところですから」
【ハク】
「どうも……」
大慌てで荷物をまとめ、想定外の会計にぎょっとしながらもバーを後にした。
【ハク】
(無職なのにこんなにお金使っちゃったよ……)
【ハク】
(どうしよう……貯金もそんなにないし……明日、いや、今日から……)
とぼとぼと歩きながら自宅マンションの前に着くと、何やらざわついている。
人だかりで前に進めなくなっているし、マンションの周りにはロープが張られていた。
【ハク】
「何だ、これ……」
【藍建】
「あー、すみませんね。今調査中で」
【ハク】
「調査!?」
俺に話しかけてきた男は、どうやら刑事のようだった。
【ハク】
「何かあったんですか!?」
【藍建】
「放火です。一室全焼しちゃってね、いま検証中で」
【ハク】
「全焼って……どこの部屋が……」
背を伸ばして奥を覗き込もうとすると。
【藍建】
「ここからちょうど見えますよ、あの部屋です」
刑事が指差した部屋は……まさかの。