本編
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《兆し》
【本村 果凛】
「あー黒田さん!この日とか…果凛空いてますよぉ☆」
【政親】
「では確認して振り直しましょう」
【本村 果凛】
「はぁい。お願いしますー…ふふ、スケジュール埋まっちゃった」
それなりに忙しかった地下アイドル時代でも、
一カ月のスケジュールがほぼ埋まる事はなかったのだけれど。
果凛は自分でデコしたスケジュール帳に色とりどりのペンでキラキラさせながら、
仕事の日とトレーニング日、それから営業日にチェックをつけていく。
政親と共にスケジュールを確認していく時間が、とても楽しいのだ。
【政親】
「…オフがないですね」
【本村 果凛】
「んー果凛オフとか嫌いなんで、だいじょーぶ」
【政親】
「いい心がけ…ではありますが。倒れられて穴をあけられても困るんですよ」
【本村 果凛】
「えぇ?果凛倒れないですって。
それに、ほら!果凛が頑張れば、みんなもハッピーでしょ?」
くるくると器用にペンを回して、ビシっとポーズをとる。
……出来れば、休みに家に居たくないのが正解だ。
家に居るくらいならば外で大好きな仕事をして、営業を頑張った方が何十倍もいい。
営業スマイルよろしく政親に微笑んで見せると、特に何も言わず
政親は果凛の頭を撫でて行った。
《本番》
【本村 果凛】
「今月も頑張ったなあ~」
果凛はスケジュール帳にゆっくりとチェックを入れていく。
まだちょっと営業が目立つ。
とはいえ、ただ頑張るだけでは、この世界では生きていけない。
【本村 果凛】
(うん。……私は大丈夫。ずるいことだって…
怖いことだって、やってみせちゃうから)
ぐっ!と拳を握って天に突き上げる。
最近お気に入りの日月梓乃が良く言うセリフが頭を駆け巡る。
『アイドルのテッペン目指す!』
…その為には、エンジェル営業がイヤだなんて言っていられない。
慣れたというには少々語弊があるが、…装う事には慣れてしまった。
自前の手鏡を覗く。…母親譲りの可愛い顔。
【本村 果凛】
「よっし、今日はいつも以上に気合い入れて行かなきゃ…ね!」
手鏡の中の自分に笑顔を向け
部屋の時計を確認すると、急いで楽屋を後にした。
《絶頂》
―…ふ、と意識が戻った。
気が付くと既に広い部屋には果凛が一人だけ。
目を擦りゆっくり身体を起こして周りを見たが、既に相手は帰った後らしい。
何か痕跡はないかとサイドボードに目をやれば、何やら紙きれと名刺が置いてあった。
御礼と先に退室するお詫びと次の仕事の話がちょっとだけ書かれている。
【本村 果凛】
「…やった…☆」
切れ端に頭を下げてキスをした。
お仕事をくれる人は皆イイ人。
果凛を可愛いと、喜んでくれる人もイイ人達。
……多少無茶されても。
しん、と静まりかえった一室に、急に金属音が鳴り響き、
誰かが入ってきたが果凛は特に気にしなかった。
【政親】
「…果凛、時間です」
【本村 果凛】
「はぁい…もうこんな時間かーうー、身体痛い…」
前に倒していた身体を伸ばすと心なしか色んな所から軋む音がする。
【政親】
「大層悦ばれて帰られました」
【本村 果凛】
「ふふ、果凛すっごい頑張ったもの」
【本村 果凛】
「…これ、どうしても出たい番組だったんだ……」
子供の頃から憧れてた長寿番組。
出てるアイドル達は必ず出世すると言われていて、
アイドルを目指し始めた時には一つの目標に掲げていたくらいだ。
出演するアイドル達は皆笑顔で、輝いていて。
果凛も夢にまで見たその舞台に立つ。
……こういう形で。
【本村 果凛】
(…今まで出てたアイドルも、エンジェル営業で勝ち取ってたのかな…)
果凛が複雑そうな視線を向けると、政親は落ちていた服を手渡すついでとばかりに頭を撫でる。
【政親】
「先程正式オファーが来ましたよ」
【本村 果凛】
「うん。…やった」
果凛がふと見せた笑顔に政親は少しだけ目を見張って、
それから小さく頷いて見せた。