[本編] 藍建 仁 編
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【ハク】
「でもこうして会うなんて偶然だな~。リュウはすぐに俺だってわかった?」
【赤屋】
「ああ。ハクは昔と変わってねぇからな」
【ハク】
「なんだよ、全然成長してないって言いたいわけ?」
俺が笑ってツッコむと、リュウも笑って返す……はずだった
だが、リュウはなぜか真剣な表情をする。
【赤屋】
「そうじゃないさ。ハクはあの頃から変わらずに可愛い」
【赤屋】
「だが今は大人っぽくて、前より男前になったな……」
【ハク】
「なっ……」
不意に褒められて、返す言葉を失くしてしまう。
それに、あの頃からって……昔からそういう風に思われていたんだろうか……。
【ハク】
「なに言ってんだよ、リュウのほうが全然かっこいいだろ」
【赤屋】
「そうか?」
【赤屋】
「ところで、ハクは今どうしてるんだ?」
【ハク】
「いま……」
何気なく投げかけられたであろうその言葉に、俺は少し怯む。
正直言って、今の状況はとても報告できるような内容ではない。
だが、俺の知っているリュウはそんなことで態度を変えるような人ではなかったはずだ。
【ハク】
「実は……」
俺は素直に会社をクビになってしまったこと、今朝家に帰ると自宅が火事になったことを、リュウに話した。
すると……。
【赤屋】
「……ひでぇ、なんでハクがそんな目に遭わなくちゃならないんだっ……!」
【ハク】
「まぁ、しょうがないよ……」
俺の境遇を聞いたリュウは、不幸続きでただ困惑するばかりの俺の代わりのように怒りを顕わにする。
そういえば、リュウは昔から正義感の強い奴だった。
それに、そんなリュウの態度が今の俺にはなんだかうれしい。
【赤屋】
「それにしても、今朝の火事だったんだろ?今夜、寝るとことかどうすんだ?」
【赤屋】
「泊まる所がないなら……俺の所来るか?」
【ハク】
「ありがとう……でも、とりあえず今日は刑事さんの所に置いてもらえることになったんだ」
【赤屋】
「そうか……」
そこまで話して、リュウは腕時計に目をやる。
この後何か用事があるなら引き留めても悪いだろう。
俺はそろそろ会話を切り上げることにした。
【ハク】
「じゃあ、俺は待ち合わせだから」
【赤屋】
「……それじゃ俺ももう行くが、これ」
リュウから手渡されたのは名刺だった。
名前と連絡先が書いてある。
【赤屋】
「何かあったら連絡くれよな。じゃ」
リュウはそのまま去っていった。
藍建さんの姿はまだ、ない。
【ハク】
(リュウの近況は聞き損ねちゃったな)
【ハク】
(ま、連絡先も貰ったことだし落ち着いたらまた会って訊けばいいか)
そんなことを思っていると、駅の近くの路地から怒鳴り声が聞こえてきた。
【ハク】
(な、なんだ!?)
何を言っているかは聞き取れないが、ドスのきいた低い声で何事かを怒鳴っている。
しかし、俺はもう一つのことに気付いてしまった。
【ハク】
(これ……リュウの声だ)
その怒鳴り声は先ほど話していたばかりのリュウの声に似ている。
【ハク】
(何か、トラブルでもあったんだろうか……)
リュウは高校時代は外見のためか絡まられることも多く、ケンカだってしょっちゅうだった。
今も、もしそうだとしたら……。
【ハク】
(藍建さんも来ないし、少しだけ……少し覗くだけなら、大丈夫だよな?)
俺はそっと、声のした裏路地へと足を踏み入れた。
【ハク】
「ひっ……」
裏路地から響くリュウの怒鳴り声を聞いた俺は藍建さんと待ち合わせをしていた駅前を抜け出し、路地に足を踏み入れた。
そこで見たものに、俺は思わず息を呑む……。
【ハク】
(なんだ……これ……)
そこには、男性が血まみれで倒れていた。
そして、そのすぐ脇には男のものであろう返り血を浴びたリュウの姿。
男の傍には真っ赤な血の付いたナイフが落ちている。
そんなリュウは俺に気付いていない様子で口を開いた。
【赤屋】
「お前、何処の組の斬り込みだ?」
【赤屋】
「三下の分際で俺の相手が務まるとでも思ったのか」
【ハク】
(組……?組ってなんのことだ?)
【ハク】
(もしかして、リュウが、ヤクザ……?)
考えたくないが、俺の頭はこの状況から答えを叩きだそうとする。
リュウが発する腹に響くようでいて冷たい声は、先ほど俺の話を親身に聞いてくれていた姿とはまるで別人のものだ。
不意にリュウが俯いていた顔を上げ、街灯に横顔が照らされる。
その顔は、まさに鬼の形相だった……。
【ハク】
「っ…………」
その顔に、俺は心底恐怖を感じた。
全身が凍りついたみたいだ。
リュウは確かに高校時代も荒れてはいたが、こんな顔をする人間ではなかったはずだ。
ケンカが強くて、でも優しくて、守ってもらったことは一度や二度ではない。
正義感に溢れているリュウは、いつも俺のヒーローだった。
【ハク】
(あのリュウが、こんな……)
それとも、あの時俺に見せていた表情こそが偽りだったのだろうか。
とにかく、こんなリュウをこれ以上見ているのを全身が拒否した。
【ハク】
(なんだったんだ……今のは……)
見てはいけないものを見てしまったと言う思いで、俺は逃げるようにふらふらと来た道を辿る。
その光景はまるで頭を殴られたような衝撃だった。
心の中でリュウじゃないと言い聞かせようとしても、目の前にさっきの場面が思い出される。
男の身体から流れていた赤い血とナイフ。
忘れようにもそれは、自らの頭の中をグルグルと繰り返すように回っていた。
藍建さんとの待ち合わせ場所である駅前には先ほどまでと同じ光景が広がっていたが、
俺の心はとてもさっきまでのように戻れそうにはなかった。
続く…
「でもこうして会うなんて偶然だな~。リュウはすぐに俺だってわかった?」
【赤屋】
「ああ。ハクは昔と変わってねぇからな」
【ハク】
「なんだよ、全然成長してないって言いたいわけ?」
俺が笑ってツッコむと、リュウも笑って返す……はずだった
だが、リュウはなぜか真剣な表情をする。
【赤屋】
「そうじゃないさ。ハクはあの頃から変わらずに可愛い」
【赤屋】
「だが今は大人っぽくて、前より男前になったな……」
【ハク】
「なっ……」
不意に褒められて、返す言葉を失くしてしまう。
それに、あの頃からって……昔からそういう風に思われていたんだろうか……。
【ハク】
「なに言ってんだよ、リュウのほうが全然かっこいいだろ」
【赤屋】
「そうか?」
【赤屋】
「ところで、ハクは今どうしてるんだ?」
【ハク】
「いま……」
何気なく投げかけられたであろうその言葉に、俺は少し怯む。
正直言って、今の状況はとても報告できるような内容ではない。
だが、俺の知っているリュウはそんなことで態度を変えるような人ではなかったはずだ。
【ハク】
「実は……」
俺は素直に会社をクビになってしまったこと、今朝家に帰ると自宅が火事になったことを、リュウに話した。
すると……。
【赤屋】
「……ひでぇ、なんでハクがそんな目に遭わなくちゃならないんだっ……!」
【ハク】
「まぁ、しょうがないよ……」
俺の境遇を聞いたリュウは、不幸続きでただ困惑するばかりの俺の代わりのように怒りを顕わにする。
そういえば、リュウは昔から正義感の強い奴だった。
それに、そんなリュウの態度が今の俺にはなんだかうれしい。
【赤屋】
「それにしても、今朝の火事だったんだろ?今夜、寝るとことかどうすんだ?」
【赤屋】
「泊まる所がないなら……俺の所来るか?」
【ハク】
「ありがとう……でも、とりあえず今日は刑事さんの所に置いてもらえることになったんだ」
【赤屋】
「そうか……」
そこまで話して、リュウは腕時計に目をやる。
この後何か用事があるなら引き留めても悪いだろう。
俺はそろそろ会話を切り上げることにした。
【ハク】
「じゃあ、俺は待ち合わせだから」
【赤屋】
「……それじゃ俺ももう行くが、これ」
リュウから手渡されたのは名刺だった。
名前と連絡先が書いてある。
【赤屋】
「何かあったら連絡くれよな。じゃ」
リュウはそのまま去っていった。
藍建さんの姿はまだ、ない。
【ハク】
(リュウの近況は聞き損ねちゃったな)
【ハク】
(ま、連絡先も貰ったことだし落ち着いたらまた会って訊けばいいか)
そんなことを思っていると、駅の近くの路地から怒鳴り声が聞こえてきた。
【ハク】
(な、なんだ!?)
何を言っているかは聞き取れないが、ドスのきいた低い声で何事かを怒鳴っている。
しかし、俺はもう一つのことに気付いてしまった。
【ハク】
(これ……リュウの声だ)
その怒鳴り声は先ほど話していたばかりのリュウの声に似ている。
【ハク】
(何か、トラブルでもあったんだろうか……)
リュウは高校時代は外見のためか絡まられることも多く、ケンカだってしょっちゅうだった。
今も、もしそうだとしたら……。
【ハク】
(藍建さんも来ないし、少しだけ……少し覗くだけなら、大丈夫だよな?)
俺はそっと、声のした裏路地へと足を踏み入れた。
【ハク】
「ひっ……」
裏路地から響くリュウの怒鳴り声を聞いた俺は藍建さんと待ち合わせをしていた駅前を抜け出し、路地に足を踏み入れた。
そこで見たものに、俺は思わず息を呑む……。
【ハク】
(なんだ……これ……)
そこには、男性が血まみれで倒れていた。
そして、そのすぐ脇には男のものであろう返り血を浴びたリュウの姿。
男の傍には真っ赤な血の付いたナイフが落ちている。
そんなリュウは俺に気付いていない様子で口を開いた。
【赤屋】
「お前、何処の組の斬り込みだ?」
【赤屋】
「三下の分際で俺の相手が務まるとでも思ったのか」
【ハク】
(組……?組ってなんのことだ?)
【ハク】
(もしかして、リュウが、ヤクザ……?)
考えたくないが、俺の頭はこの状況から答えを叩きだそうとする。
リュウが発する腹に響くようでいて冷たい声は、先ほど俺の話を親身に聞いてくれていた姿とはまるで別人のものだ。
不意にリュウが俯いていた顔を上げ、街灯に横顔が照らされる。
その顔は、まさに鬼の形相だった……。
【ハク】
「っ…………」
その顔に、俺は心底恐怖を感じた。
全身が凍りついたみたいだ。
リュウは確かに高校時代も荒れてはいたが、こんな顔をする人間ではなかったはずだ。
ケンカが強くて、でも優しくて、守ってもらったことは一度や二度ではない。
正義感に溢れているリュウは、いつも俺のヒーローだった。
【ハク】
(あのリュウが、こんな……)
それとも、あの時俺に見せていた表情こそが偽りだったのだろうか。
とにかく、こんなリュウをこれ以上見ているのを全身が拒否した。
【ハク】
(なんだったんだ……今のは……)
見てはいけないものを見てしまったと言う思いで、俺は逃げるようにふらふらと来た道を辿る。
その光景はまるで頭を殴られたような衝撃だった。
心の中でリュウじゃないと言い聞かせようとしても、目の前にさっきの場面が思い出される。
男の身体から流れていた赤い血とナイフ。
忘れようにもそれは、自らの頭の中をグルグルと繰り返すように回っていた。
藍建さんとの待ち合わせ場所である駅前には先ほどまでと同じ光景が広がっていたが、
俺の心はとてもさっきまでのように戻れそうにはなかった。
続く…