[本編] 藍建 仁 編
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【藍建】
「昨晩は、言ってなかったね」
【ハク】
「警察の人……だったんですか」
【藍建】
「こう見えても刑事なんだ。今朝早くに署から呼び出しがあって……」
【藍建】
「調べて見たら、ここ、ハクくんの家だろう?」
【ハク】
「そうですけど……」
【ハク】
「あの、どういうことなんですか?火事って一体……」
本題を後回しにするような藍建さんの口調に、待ちきれず俺から質問をした。
すると、藍建さんは少し苦い顔をして、口を開いた。
【藍建】
「出火の時刻はおよそ午前4時頃。キミがまだホテルで寝ていた時間だ」
【藍建】
「そして、非常に言いにくいが……その出火の原因は、どうやら、放火だ」
【ハク】
「放火……?」
【藍建】
「いいかい?落ち着いて、こっちに来てくれ」
放火、と言われてもいまいちピンと来ない。
ともかく、藍建さんに言われてロープを跨いでアパートへと足を進める。
近くに行くと、焦げた臭いが鼻についた。
【藍建】
「ここは、キミの部屋で間違いないね」
外からは、中の様子はわからない。
少なくとも、ドアの形は保っているように見えた。
【ハク】
「そう、です……」
藍建さんの最終確認に頷くと、ドアの中へと促される。
……中に入ると、そこはまるで地獄のようだった。
酷い有様だ。
いや、酷いなんて言葉では言い表せない。
壁も、床も、見渡す限りのものが真っ黒に焦げていた。
昨日まで普通に使っていた玄関の靴も、傘も、入ってすぐにあるキッチンも、元がなんだかわからないくらいになっている。
その奥のワンルームにある家具やクローゼットの中身だって、もう使い物にならないだろう。
【藍建】
「……出火元は、この部屋で間違いないそうだ」
藍建さんが言った言葉の意味も、今はよく理解することができない。
俺は玄関だったその場所にただ茫然と立ち尽くしていた。
【ハク】
(なんだよ……なんなんだ、これ……)
泣いたり喚いたり、そんなことをする気力も出てこなかった。
だって、普通に家を出て帰ってきたらこの状態だなんて、誰が想像するだろう?
そう、俺にとってこの状況は想像を絶していた。
【藍建】
「……大変だったな」
【ハク】
「…………」
【藍建】
「昨日一緒に飲んでて、朝帰りしたらこの有様だもんな……」
藍建さんが慰めるように背中を撫でてくれる。
【ハク】
(そうか……これ、夢でもなんでもないんだよな)
藍建さんの手の温もりを感じて、どこか映画でも見るような感覚だった俺の思考が徐々に現実味を帯びてくる。
【ハク】
(仕事をクビになったと思ったら住む場所まで……)
それを認識し始めると悪夢のような現実が俺を襲う。
いっそ、これが夢の中の出来事だったらとすら思った。
【藍建】
「……くん、ハクくん」
そんな俺の思考を、藍建さんの声が呼び覚ます。
どうやら何度か呼び掛けてくれていたのに、俺が気付かなかったみたいだ。
【ハク】
「あ、はい……すいません……」
【藍建】
「いや、これだもんな。無理もないよ」
藍建さんは言葉少なに俺の部屋の奥を見ながら告げる。
【藍建】
「……で、こんな時に悪いんだけどさ、この状況に何か心当たりはないかな」
藍建さんはいつのまにか手帳とペンを用意していた。
そういえば刑事だって、さっき言っていたっけ。
【ハク】
「心当たり、って……どういうことですか」
【藍建】
「例えば、誰か恨まれているような相手がいる、だとか」
【ハク】
「頭の中が真っ白で…」
【藍建】
「……そうか、急に訊かれてもわからないよな」
藍建さんは残念そうな様子で何も書かないまま手帳を閉じる。
【ハク】
「……すみません」
【ハク】
(だめだ……今は何も考えられない)
藍建さんのためにも何か手がかりになるようなことを言わなければという意識はあるのだが、何かを考えるという行為がやけに難しい。
それが二日酔いのせいなのか、この状況に混乱しているせいかはわからなかった。
【藍建】
「あー、そうだ。よかったら飯でも食わないか?この時間だから朝食もまだだっただろう」
【ハク】
「え、はい……じゃあ……」
藍建さんに指摘されて初めて、朝から何も食べていないことを思い出す。
思考がまとまらないのは、空腹のせいもあるのかもしれない。
【ハク】
(何か腹に入れれば、少しはましになるかも……)
俺は藍建さんの誘いに有難く乗ることにした。
【藍建】
「それじゃ……このへんに喫茶店とかあるかな?」
【ハク】
「あ、はい。すぐ近くに、小さいですけど……」
喫茶店の場所を尋ねられると、すぐに近所の店が頭に浮かぶ。
俺はまだ普通に頭が働いていることに安堵した。
【藍建】
「じゃあ、案内頼むよ。奢るからさ」
すぐに歩き出した藍建さんの後を俺は慌てて追う。
しかし、動き始めた頭でも犯人の心当たりなどは思いつく気がしなかった。
【ハク】
(でも一体、誰が、何のために放火なんて真似を……)
続く…
「昨晩は、言ってなかったね」
【ハク】
「警察の人……だったんですか」
【藍建】
「こう見えても刑事なんだ。今朝早くに署から呼び出しがあって……」
【藍建】
「調べて見たら、ここ、ハクくんの家だろう?」
【ハク】
「そうですけど……」
【ハク】
「あの、どういうことなんですか?火事って一体……」
本題を後回しにするような藍建さんの口調に、待ちきれず俺から質問をした。
すると、藍建さんは少し苦い顔をして、口を開いた。
【藍建】
「出火の時刻はおよそ午前4時頃。キミがまだホテルで寝ていた時間だ」
【藍建】
「そして、非常に言いにくいが……その出火の原因は、どうやら、放火だ」
【ハク】
「放火……?」
【藍建】
「いいかい?落ち着いて、こっちに来てくれ」
放火、と言われてもいまいちピンと来ない。
ともかく、藍建さんに言われてロープを跨いでアパートへと足を進める。
近くに行くと、焦げた臭いが鼻についた。
【藍建】
「ここは、キミの部屋で間違いないね」
外からは、中の様子はわからない。
少なくとも、ドアの形は保っているように見えた。
【ハク】
「そう、です……」
藍建さんの最終確認に頷くと、ドアの中へと促される。
……中に入ると、そこはまるで地獄のようだった。
酷い有様だ。
いや、酷いなんて言葉では言い表せない。
壁も、床も、見渡す限りのものが真っ黒に焦げていた。
昨日まで普通に使っていた玄関の靴も、傘も、入ってすぐにあるキッチンも、元がなんだかわからないくらいになっている。
その奥のワンルームにある家具やクローゼットの中身だって、もう使い物にならないだろう。
【藍建】
「……出火元は、この部屋で間違いないそうだ」
藍建さんが言った言葉の意味も、今はよく理解することができない。
俺は玄関だったその場所にただ茫然と立ち尽くしていた。
【ハク】
(なんだよ……なんなんだ、これ……)
泣いたり喚いたり、そんなことをする気力も出てこなかった。
だって、普通に家を出て帰ってきたらこの状態だなんて、誰が想像するだろう?
そう、俺にとってこの状況は想像を絶していた。
【藍建】
「……大変だったな」
【ハク】
「…………」
【藍建】
「昨日一緒に飲んでて、朝帰りしたらこの有様だもんな……」
藍建さんが慰めるように背中を撫でてくれる。
【ハク】
(そうか……これ、夢でもなんでもないんだよな)
藍建さんの手の温もりを感じて、どこか映画でも見るような感覚だった俺の思考が徐々に現実味を帯びてくる。
【ハク】
(仕事をクビになったと思ったら住む場所まで……)
それを認識し始めると悪夢のような現実が俺を襲う。
いっそ、これが夢の中の出来事だったらとすら思った。
【藍建】
「……くん、ハクくん」
そんな俺の思考を、藍建さんの声が呼び覚ます。
どうやら何度か呼び掛けてくれていたのに、俺が気付かなかったみたいだ。
【ハク】
「あ、はい……すいません……」
【藍建】
「いや、これだもんな。無理もないよ」
藍建さんは言葉少なに俺の部屋の奥を見ながら告げる。
【藍建】
「……で、こんな時に悪いんだけどさ、この状況に何か心当たりはないかな」
藍建さんはいつのまにか手帳とペンを用意していた。
そういえば刑事だって、さっき言っていたっけ。
【ハク】
「心当たり、って……どういうことですか」
【藍建】
「例えば、誰か恨まれているような相手がいる、だとか」
【ハク】
「頭の中が真っ白で…」
【藍建】
「……そうか、急に訊かれてもわからないよな」
藍建さんは残念そうな様子で何も書かないまま手帳を閉じる。
【ハク】
「……すみません」
【ハク】
(だめだ……今は何も考えられない)
藍建さんのためにも何か手がかりになるようなことを言わなければという意識はあるのだが、何かを考えるという行為がやけに難しい。
それが二日酔いのせいなのか、この状況に混乱しているせいかはわからなかった。
【藍建】
「あー、そうだ。よかったら飯でも食わないか?この時間だから朝食もまだだっただろう」
【ハク】
「え、はい……じゃあ……」
藍建さんに指摘されて初めて、朝から何も食べていないことを思い出す。
思考がまとまらないのは、空腹のせいもあるのかもしれない。
【ハク】
(何か腹に入れれば、少しはましになるかも……)
俺は藍建さんの誘いに有難く乗ることにした。
【藍建】
「それじゃ……このへんに喫茶店とかあるかな?」
【ハク】
「あ、はい。すぐ近くに、小さいですけど……」
喫茶店の場所を尋ねられると、すぐに近所の店が頭に浮かぶ。
俺はまだ普通に頭が働いていることに安堵した。
【藍建】
「じゃあ、案内頼むよ。奢るからさ」
すぐに歩き出した藍建さんの後を俺は慌てて追う。
しかし、動き始めた頭でも犯人の心当たりなどは思いつく気がしなかった。
【ハク】
(でも一体、誰が、何のために放火なんて真似を……)
続く…