本編
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《兆し》
【大須賀 侑生】
「おはようございます!」
【山口 遼太】
「侑生さんおはようございます!!
今日のスケジュールは雑誌の撮影&インタビュー、そのあとにカメラの方とエンジェル営業一件です!」
【大須賀 侑生】
「遼太さん、ありがとう」
エンジェル営業か、政親の腕前か―
実際はどちらの効果もあったのか、新生事務所ポラリスの出だしは上々だった。
とは言え、一人ひとりにマネージャーが付く程ではなく
アイドルが自身でスケジュールを確認するような形になっている。
【榎本 公志郎】
「またあのカメラマン?
大御所に入るクラスだったかしら……侑生、気に入られたのね」
【山口 遼太】
「あのアイドル誌にうちの事務所の枠が貰えたのも、侑生さんのおかげです!」
【大須賀 侑生】
「そんな……」
侑生は、照れたようにはにかんだ笑顔を浮かべるてみせた。
褒められても、どこか素直に喜べない自分がいるのを感じながら―
【政親】
「侑生、さあ行きますよ」
【大須賀 侑生】
「えっ……今日は僕一人じゃあ……」
【政親】
「本日は私も付き添います。山口、車を出しなさい」
【山口 遼太】
「はいぃっ!すぐ回してきます!」
何かしてしまったのだろうか―…自分一人では任せられないと判断されたのか…
悪い考えしか浮かばず、侑生は汗で湿る手を隠すように拳を握った。
《本番》
【スタイリスト】
「今日の侑生くんはふわふわでかわいい~!」
【ヘアメイク】
「でっしょ~ヘアスタイルもワックスで更にふわふわにしたんだから!
侑生くんかわいいからチークしたいなぁ」
【スタイリスト】
「天使がテーマだから大丈夫じゃない?」
【大須賀 侑生】
「もう、僕は男ですって!」
【ヘアメイク】
「あはは、かわいい~」
全身白でコーディネートされ、白の柔らかなニットに腕を通し
鏡の前に立たされ年上のお姉さま方におもちゃにされている侑生を
政親は部屋の片隅で見守っていた。
【ヘアメイク】
「よし、完成!どーお、侑生くん?」
【大須賀 侑生】
「わぁ、かっこいいしかわいいです!ありがとうございます!」
【スタイリスト】
「んー、本当にいい子なんだからっ!じゃあ、撮影頑張ってね!」
【大須賀 侑生】
(お姉ちゃんが居たら、こんな感じだったのかなぁ…)
最後までわいわい騒ぎながらお姉さま方が出て行く。
部屋を出て行く前に政親の前を通りきゃあきゃあと黄色い声を上げていった。
そこらに歩く俳優やアイドルの卵よりも、政親は目立つのだ。
誰も居なくなった控え室で、侑生はこっそりと鏡を見る振りをしながら政親をぼんやりと見つめていた。
鏡の中の政親がこちらに向かってきているのに気づき、慌てて前髪をチェックする振りをして誤魔化し立ち上がった。
【政親】
「……侑生」
【大須賀 侑生】
「黒田さん!今回のテーマ、天使らしいんです。
どうですか?この衣装買い取って営業に行ってみようかなぁ…」
ポーズを取ってみせる侑生は、いつものはつらつとした笑顔に陰りが浮かんでいる。
【政親】
「天使にしては、表情が固すぎますね」
政親の声は、荒げる事もなく低音の力強い声で言葉を制する。
声に逆らえず見上げた侑生と目線を合わせると震える肩を掴むと、
小刻みに震える身体を気にせず唇を合わせ舌を割り込ませる。
【大須賀 侑生】
「んンッ…っふ、ぁ…政親…さ……っ」
【政親】
「そんなこわばった顔で営業には行かせられませんよ。
降りたいのならいつでも降りてもらって構いませんが」
【大須賀 侑生】
「……っ、そんなことっ……」
侑生は、政親に口付けられるといとも簡単にこわばっていた身体が溶けていくのを感じた。
優しく体をあやすように撫でられ、力が抜けていってしまうのだ。
そうされると、戸惑い不安に思っていた気持ちも素直に吐露してしまう。
【大須賀 侑生】
「違うんですっ……僕が頼りないから、黒田さんが来てくださったのかなって……」
【政親】
「ふん……?
余計な心配をせずに、仕事を全うしなさい」
【大須賀 侑生】
「は……っ……、はい……っ」
侑生は促されるままにカリソメの自信を持って営業へと向かうのだった。
《絶頂》
【大須賀 侑生】
「政親、さん……」
侑生は一人残ったホテルの一室で、営業中カメラマンに言われたことをぼんやりと思い起こしていた。
【カメラマン】
「本当は営業中も写真を撮りたかったんだけどね―…。
信用してるとはいえ、どんな陰謀で外に出てしまうかわからないからカメラの持ち込みはダメって言われたんだ。
でも!侑生くんが写真集を出すときは、必ず僕が撮るからね」
そんなようなことを言っていた気がする。
営業という仕事に向かわされることはあれど事務所は、いや、政親は…アイドルを全力で守ってくれている。
だからこそ自分は、営業だとしても仕事はどこまでも全力で頑張りたい。
天使の羽があれば、アイドルとしてもっともっと高く羽ばたける。
そんな気がした。