[本編] 桃島 光彦 編
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【ハク】
(ホストなんて……でも……)
そんなきらびやかな職業ができるとも思えない。
けれど、自分は今会社をクビになった身だ。
【ハク】
(選り好みもしてられないし……でもホストなんて無理だろ?)
自問自答して改めて無理だと悟る。
【ハク】
(とにかく今日はいろいろあったし、落ち着いてから考えよう)
俺は名刺をポケットにしまうと、残りの酒を煽った。
―――結局その夜は、我を忘れるまで酒に溺れてしまい、気づけば太陽の光が窓に差し込んでいた……。
【ハク】
「……ん……朝……?」
【和久井】
「朝ですよ。そろそろお店閉めるので、お客さんも荷物をまとめてもらえると」
【ハク】
「あっ……すみません! すっかりご迷惑を……」
【和久井】
「いえいえ。あなたみたいな人を受け止められるのも、この店の良いところですから」
【ハク】
「どうも……」
大慌てで荷物をまとめ、想定外の会計にぎょっとしながらもバーをあとにした。
【ハク】
(無職なのにこんなにお金使っちゃったよ……)
【ハク】
(どうしよう……貯金もそんなにないし……明日、いや、今日から……)
とぼとぼと歩きながら自宅マンションの前に着くと、何やらざわついている。
人だかりで前に進めなくなっているし、マンションの周りにはロープが張られていた。
【ハク】
「何だ、これ……」
【藍建】
「あー、すみませんね。今調査中で」
【ハク】
「調査!?」
俺に話しかけてきた男は、どうやら刑事のようだった。
【ハク】
「何かあったんですか!?」
【藍建】
「放火です。一室全焼しちゃってね、いま検証中で」
【ハク】
「全焼って……どこの部屋が……」
【藍建】
「ここからちょうど見えますよ、あの部屋です」
掲示が指差した部屋は……まさかの。
【ハク】
「俺の部屋!」
【藍建】
「俺の部屋ってことは、あんたハクさん?」
【ハク】
「そうです、ハクです!」
【藍建】
「あちゃあ、そりゃ災難だ。じゃあちょっと現場の方に来てもらえます?」
【ハク】
「そんな……全焼って……」
立ち入り禁止のロープを潜り抜けて行くと、変わり果てた俺の部屋があった。
家具も何もかも真っ黒な炭と化し、何も残っているようには見えない。
【ハク】
「……真っ黒だ……」
愕然となって、俺はそれ以上何も言うことが出来なくなった。
【藍建】
「この感じだと、放火されたときは留守だったってことですよね?」
呆然としながら頷く。
【藍建】
「……なんと声をかけたらいいか……」
それから簡単な事情聴取がその場で行われた。
けれど俺は、なんと答えたかあまり覚えていない。
【ハク】
(仕事も家もなくなって……俺はこれからどうすれば……)
何もかもなくなってしまった。
そんな状況でどうすればいいか全くわからない。想像もつかない。
【藍建】
「一応決まりだから聞きますけど、昨夜はどこに?」
【ハク】
「バーで酒を飲んでいました。……会社を、クビになって……」
【藍建】
「……」
刑事も自分の状況を知って絶句していた。
【藍建】
「……大変、でしたね」
【ハク】
「これからもっと大変になると思いますけどね……」
【藍建】
「ちなみに……それを証明できる方は?」
【ハク】
「ひとりで飲んでいたので……あ、でも」
【ハク】
(そういえば、名刺……)
飲んでいるさなかにホストにスカウトされたんだった。
あれが幻でなければ、ポケットに彼の名刺が入っているはずだ。
【ハク】
「あった」
【藍建】
「連絡取れます?」
【ハク】
「はい……あ、でも」
【ハク】
(ここで電話したらホストになりたいって思われるかな……)
【藍建】
「どうかしました?」
【ハク】
「いえ……」
そんなことを言ってもこんな状況なのだから仕方ない。
俺は名刺に書かれている緑川のナンバーにケータイで電話をかけた。
【緑川】
『はい?』
【ハク】
「あ、あのっ……昨日、バーで」
【緑川】
『ああ、あの時のカワイコちゃんか。その気になってくれた?』
明るい緑川の声。
済まないと思いながらも俺は事情を説明する。
【ハク】
「今ちょっと、昨日の所在を聞かれていて……あの店に俺がいたって証言してもらえませんか?」
【緑川】
『え?』
俺はケータイを刑事に渡した。
【藍建】
「あの、こちらのハクさんのですね」
【緑川】
『あー、いましたいました。俺、確かに会いましたしそこに名刺もあるでしょう?』
【藍建】
「ですが……」
【緑川】
『職業上、俺のメールアドレスって月に1回は替えてるんですよ』
【緑川】
『そのアドレスにしたのは最近だし、名刺渡したのも昨日で間違いないです』
【緑川】
『電話で心配ならバーのマスターとか、他にも証言してくれる人はいますよ』
【藍建】
「そうですか、わかりました」
納得したらしい刑事は電話を切る。
(ホストなんて……でも……)
そんなきらびやかな職業ができるとも思えない。
けれど、自分は今会社をクビになった身だ。
【ハク】
(選り好みもしてられないし……でもホストなんて無理だろ?)
自問自答して改めて無理だと悟る。
【ハク】
(とにかく今日はいろいろあったし、落ち着いてから考えよう)
俺は名刺をポケットにしまうと、残りの酒を煽った。
―――結局その夜は、我を忘れるまで酒に溺れてしまい、気づけば太陽の光が窓に差し込んでいた……。
【ハク】
「……ん……朝……?」
【和久井】
「朝ですよ。そろそろお店閉めるので、お客さんも荷物をまとめてもらえると」
【ハク】
「あっ……すみません! すっかりご迷惑を……」
【和久井】
「いえいえ。あなたみたいな人を受け止められるのも、この店の良いところですから」
【ハク】
「どうも……」
大慌てで荷物をまとめ、想定外の会計にぎょっとしながらもバーをあとにした。
【ハク】
(無職なのにこんなにお金使っちゃったよ……)
【ハク】
(どうしよう……貯金もそんなにないし……明日、いや、今日から……)
とぼとぼと歩きながら自宅マンションの前に着くと、何やらざわついている。
人だかりで前に進めなくなっているし、マンションの周りにはロープが張られていた。
【ハク】
「何だ、これ……」
【藍建】
「あー、すみませんね。今調査中で」
【ハク】
「調査!?」
俺に話しかけてきた男は、どうやら刑事のようだった。
【ハク】
「何かあったんですか!?」
【藍建】
「放火です。一室全焼しちゃってね、いま検証中で」
【ハク】
「全焼って……どこの部屋が……」
【藍建】
「ここからちょうど見えますよ、あの部屋です」
掲示が指差した部屋は……まさかの。
【ハク】
「俺の部屋!」
【藍建】
「俺の部屋ってことは、あんたハクさん?」
【ハク】
「そうです、ハクです!」
【藍建】
「あちゃあ、そりゃ災難だ。じゃあちょっと現場の方に来てもらえます?」
【ハク】
「そんな……全焼って……」
立ち入り禁止のロープを潜り抜けて行くと、変わり果てた俺の部屋があった。
家具も何もかも真っ黒な炭と化し、何も残っているようには見えない。
【ハク】
「……真っ黒だ……」
愕然となって、俺はそれ以上何も言うことが出来なくなった。
【藍建】
「この感じだと、放火されたときは留守だったってことですよね?」
呆然としながら頷く。
【藍建】
「……なんと声をかけたらいいか……」
それから簡単な事情聴取がその場で行われた。
けれど俺は、なんと答えたかあまり覚えていない。
【ハク】
(仕事も家もなくなって……俺はこれからどうすれば……)
何もかもなくなってしまった。
そんな状況でどうすればいいか全くわからない。想像もつかない。
【藍建】
「一応決まりだから聞きますけど、昨夜はどこに?」
【ハク】
「バーで酒を飲んでいました。……会社を、クビになって……」
【藍建】
「……」
刑事も自分の状況を知って絶句していた。
【藍建】
「……大変、でしたね」
【ハク】
「これからもっと大変になると思いますけどね……」
【藍建】
「ちなみに……それを証明できる方は?」
【ハク】
「ひとりで飲んでいたので……あ、でも」
【ハク】
(そういえば、名刺……)
飲んでいるさなかにホストにスカウトされたんだった。
あれが幻でなければ、ポケットに彼の名刺が入っているはずだ。
【ハク】
「あった」
【藍建】
「連絡取れます?」
【ハク】
「はい……あ、でも」
【ハク】
(ここで電話したらホストになりたいって思われるかな……)
【藍建】
「どうかしました?」
【ハク】
「いえ……」
そんなことを言ってもこんな状況なのだから仕方ない。
俺は名刺に書かれている緑川のナンバーにケータイで電話をかけた。
【緑川】
『はい?』
【ハク】
「あ、あのっ……昨日、バーで」
【緑川】
『ああ、あの時のカワイコちゃんか。その気になってくれた?』
明るい緑川の声。
済まないと思いながらも俺は事情を説明する。
【ハク】
「今ちょっと、昨日の所在を聞かれていて……あの店に俺がいたって証言してもらえませんか?」
【緑川】
『え?』
俺はケータイを刑事に渡した。
【藍建】
「あの、こちらのハクさんのですね」
【緑川】
『あー、いましたいました。俺、確かに会いましたしそこに名刺もあるでしょう?』
【藍建】
「ですが……」
【緑川】
『職業上、俺のメールアドレスって月に1回は替えてるんですよ』
【緑川】
『そのアドレスにしたのは最近だし、名刺渡したのも昨日で間違いないです』
【緑川】
『電話で心配ならバーのマスターとか、他にも証言してくれる人はいますよ』
【藍建】
「そうですか、わかりました」
納得したらしい刑事は電話を切る。