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紅茶の芳醇な香りが鼻をくすぐり、俺は目をあけた。
ソファでうたたねをしていたようだ。
上体を起こすと、執事 兼 秘書の橘が穏やかな笑みを浮かべている。
【橘】
「お目覚めですか。ご主人様」
【エリサ】
「お兄ちゃん、すっごく気持ち良さそうに寝てたわ」
【万里】
「エリサ。休みが多いぞ…集団生活を乱すな。学校へ行け。」
【エリサ】
「……イヤ。今日はお兄ちゃんとずっと一緒に居るのっ。」
エリサはゴロゴロと猫が懐くように膝の上に座ってくる。
あやすようにエリサの頭を撫でてやると橘が口を開いた。
【橘】
「丁度、みどころのある者を見つけられたところです。」
執事採用の件。橘にスカウトを依頼していた―。
後継者として呼ぶからには、それなりの地位についている人間でなければならない。
当然、一般的な募集をかける気はさらさらなかった。
【エリサ】
「え!ほんとに採用するのーーーッ?!」
【エリサ】
「最低。憂鬱。絶望!お兄ちゃんと橘以外の男が屋敷をウロつくなんて…!」
【橘】
「お嬢様のお気持ちを優先出来ず…心苦しいのですがご主人様のご意向を…、」
エリサは橘が言い終わる前に、酷く嫌そうに眉根をひそめて言った。
【エリサ】
「あんたがお嬢様、なんて呼び方。…気持ち悪いのよ。」
【エリサ】
「前みたいに、エリサって呼びなさい。」
【橘】
「申し訳ございません、エリサお嬢様。」
全くに意に介さない橘に、エリサはツンと口をとがらせ、目をそらす。
【橘】
「此度の執事雇用は、ご主人様の跡継ぎ候補を見出すことが真の目的でございます」
【橘】
「エリサお嬢様の御心さえも動かせるような者…を私は期待致しております」
【エリサ】
「あのねえ。エリサの心は、お兄ちゃん以外には石になるの」
【エリサ】
「男なんて特に嫌い。
お兄ちゃんさえいればいいの、お兄ちゃんさえ」
【橘】
「そんなエリサお嬢様だからこそ、骨のある者を見出して下さる事でしょう」
【橘】
「さて、ご主人様。早速連れて来た者の紹介を―」
そう橘が言い終わる前に―
カシャ!
…シャッターを押す音が聞こえた。
【橘】
「……鈴木。無粋な真似はやめなさい。」
【鈴木】
「やだなあ、命令しないで下さいよ。呼び捨ても禁止。まだ俺はあんたの部下でもなんでもないんだからさ。」
【橘】
「随分簡単についてきたと思いましたが―、何か企てを?」
【鈴木】
「単なる知的好奇心ですよ。金持ちの考える事は解らない―っていう、一般人のアレ。」
【橘】
「………フ…一般人…、貴方とは対にあるような概念ですね…。」
鈴木という意地の悪い顔をした男―見覚えのある男だった。…鈴木―。
俺は記憶をたぐりよせた。
【万里】
(ああ…、興信所の奴だ。俺を調査するようライバル企業が依頼していた会社の―)
【万里】
(確かに…気にはなっていた男だ。そんなことまで把握してるとは…橘、さすがだな…。)
【万里】
「橘、お前の連れて来た…ってのはコイツの事か」
【橘】
「さようでございます。」
【万里】
「面白い。揉んでやろう。」
【鈴木】
「………っく……ッ」
【鈴木】
「……………」
【鈴木】
「……あんた…結構面白いね。執事アルバイトってのやってもいいかな」
【万里】
「ふ……白々しい言い草はやめろ」
【万里】
「お前…俺のことよぉく知っているだろう?」
【鈴木】
「ハ。やっぱり解ってたんだね。そう、俺は興信所の人間。」
【鈴木】
「あんたの毛穴の奥まで覗き見てた時期…もあったね」
【エリサ】
「橘、興信所ってなに?」
【橘】
「調査会社…クライアントの意向により、個人や法人の財産・信用等の情報を秘密裏に調べる機関です」
【万里】
「調べられている事は解っていたがな―お前は巧妙だったな」
【万里】
「興信所のしっぽをつかめなかった事は初めてだ」
【鈴木】
「へえ…それで俺を気に入ってくれたんですかァ?」
【万里】
「…そんなところだ。」
【万里】
「…それに……あの件についても詳しく知りたいからな」
【鈴木】
「何です?それ…」
【万里】
「お前の…幼少時代だ」
【鈴木】
「!!…べ、別に……普通に過ごしてましたけど…?」
【万里】
「ふ。お前の母親の再婚相手はいいご趣味をお持ちらしいな…可愛がってもらったんだろ?」
俺は意図して下卑た笑いを浮かべた。
【鈴木】
「……!!」
【万里】
「まあ…、それは追々じっくり教えて貰おうか」
【鈴木】
「あ…んた……その話は…、誰にも……」
【万里】
「ああ…母親には教えてやった方がいいんじゃないか?」
【鈴木】
「……!母さんに言ったら殺す……!!」
鈴木は案の定激情して俺に掴みかかってきた。楽しい限りだ。
それを橘がさりげなく制し、鈴木に言う。
【橘】
「鈴木…様。今後いかがされますか……?」
【橘】
「これは……、執事は強制ではありませんよ。御帰り頂いても結構ですよ…?」
橘は話の意図を理解したようだ。意地が悪い笑みを鈴木に向けていた。
【万里】
「ああ。お前の好きにすればいいが―」
【万里】
「俺の口が滑らないといいな……鈴木?」
【鈴木】
「………ッ」
【鈴木】
「も…ちろん…働かせて下さい。」
【万里】
「ご主人様、だろう?」
【鈴木】
「……………!!」
【鈴木】
「は…働かせて下さい……ご主人…様。」
【万里】
「ふは……はっはははははは……!!」
【万里】
「いいだろう。今日からお前は…俺のモノだ。」
俺は鈴木のアゴを撫でた。一瞬身を固くし目をそらすが、手をはらいのけることはない。
その野良猫のような様子が俺の加虐心をあおっていた…。
ソファでうたたねをしていたようだ。
上体を起こすと、執事 兼 秘書の橘が穏やかな笑みを浮かべている。
【橘】
「お目覚めですか。ご主人様」
【エリサ】
「お兄ちゃん、すっごく気持ち良さそうに寝てたわ」
【万里】
「エリサ。休みが多いぞ…集団生活を乱すな。学校へ行け。」
【エリサ】
「……イヤ。今日はお兄ちゃんとずっと一緒に居るのっ。」
エリサはゴロゴロと猫が懐くように膝の上に座ってくる。
あやすようにエリサの頭を撫でてやると橘が口を開いた。
【橘】
「丁度、みどころのある者を見つけられたところです。」
執事採用の件。橘にスカウトを依頼していた―。
後継者として呼ぶからには、それなりの地位についている人間でなければならない。
当然、一般的な募集をかける気はさらさらなかった。
【エリサ】
「え!ほんとに採用するのーーーッ?!」
【エリサ】
「最低。憂鬱。絶望!お兄ちゃんと橘以外の男が屋敷をウロつくなんて…!」
【橘】
「お嬢様のお気持ちを優先出来ず…心苦しいのですがご主人様のご意向を…、」
エリサは橘が言い終わる前に、酷く嫌そうに眉根をひそめて言った。
【エリサ】
「あんたがお嬢様、なんて呼び方。…気持ち悪いのよ。」
【エリサ】
「前みたいに、エリサって呼びなさい。」
【橘】
「申し訳ございません、エリサお嬢様。」
全くに意に介さない橘に、エリサはツンと口をとがらせ、目をそらす。
【橘】
「此度の執事雇用は、ご主人様の跡継ぎ候補を見出すことが真の目的でございます」
【橘】
「エリサお嬢様の御心さえも動かせるような者…を私は期待致しております」
【エリサ】
「あのねえ。エリサの心は、お兄ちゃん以外には石になるの」
【エリサ】
「男なんて特に嫌い。
お兄ちゃんさえいればいいの、お兄ちゃんさえ」
【橘】
「そんなエリサお嬢様だからこそ、骨のある者を見出して下さる事でしょう」
【橘】
「さて、ご主人様。早速連れて来た者の紹介を―」
そう橘が言い終わる前に―
カシャ!
…シャッターを押す音が聞こえた。
【橘】
「……鈴木。無粋な真似はやめなさい。」
【鈴木】
「やだなあ、命令しないで下さいよ。呼び捨ても禁止。まだ俺はあんたの部下でもなんでもないんだからさ。」
【橘】
「随分簡単についてきたと思いましたが―、何か企てを?」
【鈴木】
「単なる知的好奇心ですよ。金持ちの考える事は解らない―っていう、一般人のアレ。」
【橘】
「………フ…一般人…、貴方とは対にあるような概念ですね…。」
鈴木という意地の悪い顔をした男―見覚えのある男だった。…鈴木―。
俺は記憶をたぐりよせた。
【万里】
(ああ…、興信所の奴だ。俺を調査するようライバル企業が依頼していた会社の―)
【万里】
(確かに…気にはなっていた男だ。そんなことまで把握してるとは…橘、さすがだな…。)
【万里】
「橘、お前の連れて来た…ってのはコイツの事か」
【橘】
「さようでございます。」
【万里】
「面白い。揉んでやろう。」
【鈴木】
「………っく……ッ」
【鈴木】
「……………」
【鈴木】
「……あんた…結構面白いね。執事アルバイトってのやってもいいかな」
【万里】
「ふ……白々しい言い草はやめろ」
【万里】
「お前…俺のことよぉく知っているだろう?」
【鈴木】
「ハ。やっぱり解ってたんだね。そう、俺は興信所の人間。」
【鈴木】
「あんたの毛穴の奥まで覗き見てた時期…もあったね」
【エリサ】
「橘、興信所ってなに?」
【橘】
「調査会社…クライアントの意向により、個人や法人の財産・信用等の情報を秘密裏に調べる機関です」
【万里】
「調べられている事は解っていたがな―お前は巧妙だったな」
【万里】
「興信所のしっぽをつかめなかった事は初めてだ」
【鈴木】
「へえ…それで俺を気に入ってくれたんですかァ?」
【万里】
「…そんなところだ。」
【万里】
「…それに……あの件についても詳しく知りたいからな」
【鈴木】
「何です?それ…」
【万里】
「お前の…幼少時代だ」
【鈴木】
「!!…べ、別に……普通に過ごしてましたけど…?」
【万里】
「ふ。お前の母親の再婚相手はいいご趣味をお持ちらしいな…可愛がってもらったんだろ?」
俺は意図して下卑た笑いを浮かべた。
【鈴木】
「……!!」
【万里】
「まあ…、それは追々じっくり教えて貰おうか」
【鈴木】
「あ…んた……その話は…、誰にも……」
【万里】
「ああ…母親には教えてやった方がいいんじゃないか?」
【鈴木】
「……!母さんに言ったら殺す……!!」
鈴木は案の定激情して俺に掴みかかってきた。楽しい限りだ。
それを橘がさりげなく制し、鈴木に言う。
【橘】
「鈴木…様。今後いかがされますか……?」
【橘】
「これは……、執事は強制ではありませんよ。御帰り頂いても結構ですよ…?」
橘は話の意図を理解したようだ。意地が悪い笑みを鈴木に向けていた。
【万里】
「ああ。お前の好きにすればいいが―」
【万里】
「俺の口が滑らないといいな……鈴木?」
【鈴木】
「………ッ」
【鈴木】
「も…ちろん…働かせて下さい。」
【万里】
「ご主人様、だろう?」
【鈴木】
「……………!!」
【鈴木】
「は…働かせて下さい……ご主人…様。」
【万里】
「ふは……はっはははははは……!!」
【万里】
「いいだろう。今日からお前は…俺のモノだ。」
俺は鈴木のアゴを撫でた。一瞬身を固くし目をそらすが、手をはらいのけることはない。
その野良猫のような様子が俺の加虐心をあおっていた…。