本編
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―社長室にて…
【小野寺】
「何だよ急に……こんなとこへ呼び出しやがって」
【万里】
「いいから座れ」
【小野寺】
「……ちっ………」
【万里】
「お前、この間の敗北―随分気にしているじゃないか」
【小野寺】
「!」
小野寺が自分の料理についてアレコレ試行錯誤を始めた事は周知であった。
【小野寺】
「……だったら、何だよ」
【万里】
「いい心がけだ。敗北に無反応の人間等要らないからな」
【小野寺】
「……………」
【万里】
「しかしいくら研究したって自分が何故負けたか…理解できないのではないか」
【万里】
「―俺には解っていたぞ。勝負の前から、お前の敗北が」
【小野寺】
「っ……!……適当な事、言ってんじゃねえ、だろうな…」
【万里】
「クク。なんだその態度は……教えを乞う人間には相応しくない」
【小野寺】
「…………っ………」
【万里】
「行き詰ってんだろ?…素直にお願いしてみろよ」
【小野寺】
「てめえ……、…………」
悔しそうに唇を噛む小野寺。
―それでも、それ以上の罵倒の言葉は紡がない。
未来の勝利のために、自分の下らない意地は捨てられるようだ。
【小野寺】
「―教えろ……、……教えて、くれ………、俺に……何が足りなかったか…」
【万里】
「言葉の使い方を知らないのか?」
【小野寺】
「っ………教えて、下さい…………」
【万里】
「ふ、はははは。……いいぞ、小野寺。では最後に…ナニをすればいいか解るな?」
【小野寺】
「…、は……?まさか、こんな場所で…っ」
【万里】
「ふん。いいから早くしろ。他人を待ってる時間、ってのが俺は大嫌いなんだよ」
【小野寺】
「っ……!下種、野郎……っ」
【万里】
「お前にしちゃ上出来だな、小野寺」
【小野寺】
「…っうるっせぇ、な……いいから……早く」
【万里】
「―お前はコンクール向きの料理人、って奴なんだよ。―大衆を喜ばせる事は難しい」
【小野寺】
「……?」
【万里】
「コンクールってのはある程度正解がある。理想像があって、審査員がお前の料理はその理想に近いかを判断すんだろ」
【万里】
「つまり、こういう料理を作れば勝てる、ってことが大体決まってんだ」
【小野寺】
「………それじゃ、ダメなのかよ」
【万里】
「普通の客は審査の為に食ってる訳じゃない。自分にとっての純粋な美味さ、ってのが重要なんだよ。」
【万里】
「特に―俺の知り合いでブランドに媚びる馬鹿はいねえからな。単に美味い!ってなりゃそれが正解だ」
【小野寺】
「………………ちっ………そういう事かよ」
【万里】
「丸山は―…あいつは自分が二の次ってタイプだからな。客が何食いたいかしか考えてねえよ」
【万里】
「見た目、衣服の趣味…第一印象でだって食の好みを推し量る事は出来る…客によって味を変えてんだろう」
【小野寺】
「………………………」
【万里】
「逆に丸山はコンクールに不向きだ。一番だとか、正解なんてもんにモチベーション持ってけねえからな」
【万里】
「どっちがイイ悪いじゃねえんだよ。どう戦うかは、その場面で変えるもんだ。…勝ちたいなら」
【小野寺】
「あんたって…………仕事ん事、結構考えてんだな………」
【小野寺】
「―真面目、つうか………」
【万里】
「……ふん?俺をどう思おうと勝手だが…話は終わりだ。―解ったらさっさと行け」
【小野寺】
「ああ。……またやれよ、アレ。負けっぱなしじゃ気分悪ぃ」
小野寺はすがすがしい笑みを浮かべて戻っていった。
【万里】
(……ふ………)
人間を統べるには、料理と同じ、そいつらにとっての美味い物…つまり、降服する点を衝いてやる必要がある。
だが、純粋に各人が求めているソノモノであってはならない。
圧倒的な勝利と徹底した理想像の追求。―その上で、親しみ深さをチラつかせてやらなければ―
【万里】
(やれやれ……アイツの信条とやらがすっかり染みついてンな)
自分の前から姿を消した父親の事を想い浮かべる―と、その時。
【橘】
「失礼します」
【万里】
「おう。―なんだ」
いつものように恭しく頭を下げる橘。
しかし、心なしか―少し顔色が悪く、俺はその疲弊をにじませる目元に視線を送った。
【橘】
「来週から、しばらく…一週間程、お休みを頂けませんでしょうか。」
【万里】
「体調でも悪いのか」
【橘】
「そうですね……体調、…と、私用が。…申し訳ございません。」
【万里】
「―………」
橘が休みを申し立てる等…心当たりは一つしかない。…あの女…彩音が動いたのだ。
【万里】
「何が起きているのか詳しく話せ」
【橘】
「…私自身確証が持てません……。単に私の神経が過敏になっている可能性も」
【万里】
(……………………。)
橘はそれ以上の事を話す様には見えなかったので、俺はため息を吐き事務処理を進める。
事務的な話を少しして、何事もなかったかのように部屋を出ていった。
【万里】
(橘、彩音―……)
橘の、母親の名を反芻する。
活発で、聡明で、美しい…―夫がありながら三宮玲二に心身を捧げた…可哀そうなその女の名を。
【鈴木】
「…ご主人様。例の件、進捗ですけど」
【万里】
「ああ。報告しろ」
【鈴木】
「ご想像通り、で―」
橘彩音の動向と橘の身辺で何が起きているか―といった事の調査を鈴木に依頼した。
果たして彩音の動向に不自然な点はなく…
平常通り日本最大手の弁護士事務所―橘・橋本弁護士事務所で代表として働いている。
一方橘の身辺では―
【小野寺】
「何だよ急に……こんなとこへ呼び出しやがって」
【万里】
「いいから座れ」
【小野寺】
「……ちっ………」
【万里】
「お前、この間の敗北―随分気にしているじゃないか」
【小野寺】
「!」
小野寺が自分の料理についてアレコレ試行錯誤を始めた事は周知であった。
【小野寺】
「……だったら、何だよ」
【万里】
「いい心がけだ。敗北に無反応の人間等要らないからな」
【小野寺】
「……………」
【万里】
「しかしいくら研究したって自分が何故負けたか…理解できないのではないか」
【万里】
「―俺には解っていたぞ。勝負の前から、お前の敗北が」
【小野寺】
「っ……!……適当な事、言ってんじゃねえ、だろうな…」
【万里】
「クク。なんだその態度は……教えを乞う人間には相応しくない」
【小野寺】
「…………っ………」
【万里】
「行き詰ってんだろ?…素直にお願いしてみろよ」
【小野寺】
「てめえ……、…………」
悔しそうに唇を噛む小野寺。
―それでも、それ以上の罵倒の言葉は紡がない。
未来の勝利のために、自分の下らない意地は捨てられるようだ。
【小野寺】
「―教えろ……、……教えて、くれ………、俺に……何が足りなかったか…」
【万里】
「言葉の使い方を知らないのか?」
【小野寺】
「っ………教えて、下さい…………」
【万里】
「ふ、はははは。……いいぞ、小野寺。では最後に…ナニをすればいいか解るな?」
【小野寺】
「…、は……?まさか、こんな場所で…っ」
【万里】
「ふん。いいから早くしろ。他人を待ってる時間、ってのが俺は大嫌いなんだよ」
【小野寺】
「っ……!下種、野郎……っ」
【万里】
「お前にしちゃ上出来だな、小野寺」
【小野寺】
「…っうるっせぇ、な……いいから……早く」
【万里】
「―お前はコンクール向きの料理人、って奴なんだよ。―大衆を喜ばせる事は難しい」
【小野寺】
「……?」
【万里】
「コンクールってのはある程度正解がある。理想像があって、審査員がお前の料理はその理想に近いかを判断すんだろ」
【万里】
「つまり、こういう料理を作れば勝てる、ってことが大体決まってんだ」
【小野寺】
「………それじゃ、ダメなのかよ」
【万里】
「普通の客は審査の為に食ってる訳じゃない。自分にとっての純粋な美味さ、ってのが重要なんだよ。」
【万里】
「特に―俺の知り合いでブランドに媚びる馬鹿はいねえからな。単に美味い!ってなりゃそれが正解だ」
【小野寺】
「………………ちっ………そういう事かよ」
【万里】
「丸山は―…あいつは自分が二の次ってタイプだからな。客が何食いたいかしか考えてねえよ」
【万里】
「見た目、衣服の趣味…第一印象でだって食の好みを推し量る事は出来る…客によって味を変えてんだろう」
【小野寺】
「………………………」
【万里】
「逆に丸山はコンクールに不向きだ。一番だとか、正解なんてもんにモチベーション持ってけねえからな」
【万里】
「どっちがイイ悪いじゃねえんだよ。どう戦うかは、その場面で変えるもんだ。…勝ちたいなら」
【小野寺】
「あんたって…………仕事ん事、結構考えてんだな………」
【小野寺】
「―真面目、つうか………」
【万里】
「……ふん?俺をどう思おうと勝手だが…話は終わりだ。―解ったらさっさと行け」
【小野寺】
「ああ。……またやれよ、アレ。負けっぱなしじゃ気分悪ぃ」
小野寺はすがすがしい笑みを浮かべて戻っていった。
【万里】
(……ふ………)
人間を統べるには、料理と同じ、そいつらにとっての美味い物…つまり、降服する点を衝いてやる必要がある。
だが、純粋に各人が求めているソノモノであってはならない。
圧倒的な勝利と徹底した理想像の追求。―その上で、親しみ深さをチラつかせてやらなければ―
【万里】
(やれやれ……アイツの信条とやらがすっかり染みついてンな)
自分の前から姿を消した父親の事を想い浮かべる―と、その時。
【橘】
「失礼します」
【万里】
「おう。―なんだ」
いつものように恭しく頭を下げる橘。
しかし、心なしか―少し顔色が悪く、俺はその疲弊をにじませる目元に視線を送った。
【橘】
「来週から、しばらく…一週間程、お休みを頂けませんでしょうか。」
【万里】
「体調でも悪いのか」
【橘】
「そうですね……体調、…と、私用が。…申し訳ございません。」
【万里】
「―………」
橘が休みを申し立てる等…心当たりは一つしかない。…あの女…彩音が動いたのだ。
【万里】
「何が起きているのか詳しく話せ」
【橘】
「…私自身確証が持てません……。単に私の神経が過敏になっている可能性も」
【万里】
(……………………。)
橘はそれ以上の事を話す様には見えなかったので、俺はため息を吐き事務処理を進める。
事務的な話を少しして、何事もなかったかのように部屋を出ていった。
【万里】
(橘、彩音―……)
橘の、母親の名を反芻する。
活発で、聡明で、美しい…―夫がありながら三宮玲二に心身を捧げた…可哀そうなその女の名を。
【鈴木】
「…ご主人様。例の件、進捗ですけど」
【万里】
「ああ。報告しろ」
【鈴木】
「ご想像通り、で―」
橘彩音の動向と橘の身辺で何が起きているか―といった事の調査を鈴木に依頼した。
果たして彩音の動向に不自然な点はなく…
平常通り日本最大手の弁護士事務所―橘・橋本弁護士事務所で代表として働いている。
一方橘の身辺では―
