[本編] 浅多 侑思 編
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【浅多 侑思】
「何か、食っていくか?」
物思いにふけっていると、シャワーを浴びて身なりを
整えた侑思が聞いてくる。
【クロノ】
「いただきます」
俺が応えると、侑思は小さく笑ってキッチンに消えていく。
後をついて行くと、しっかり分量を量りながら
料理する姿がそこにあった。
【クロノ】
「食べなくても平気だって言ってるのに、ご飯を作ってくれるのはなんで?」
【浅多 侑思】
「僕が飯を食べるついでだ。……死神は腹が減らないんだな」
【クロノ】
「人間は事が終わるとすぐ腹が減るんだな」
【浅多 侑思】
「お、お前が激しくするから……だろ!」
また真っ赤になった侑思が、包丁を振り回しそうになったので、
慌ててリビングへと戻る。
まあ、ご飯を食うのは嫌いじゃないから、
お言葉に甘えよう。
【クロノ】
(誰かと一緒に食べるのはいいものだなと思うし)
次々とテーブルに並べられる和食を眺めながら、
こっそり幸せな気分を味わう。
【浅多 侑思】
「後輩がな、戻ってくるらしいんだ」
夕食を食べながら侑思が言う。
【クロノ】
「後輩?ああ、もしかしてあの、
海外支部に行った後輩?」
【浅多 侑思】
「その通り。……どうやら向こうで何かやらかしたらしい」
【クロノ】
「上手くやれそうなやつだと思ったけどね。強気で、お調子者で、毒舌で」
【浅多 侑思】
「功を焦ったんだろう。向こうで重要なポストについている人を
陥れるような真似をしたらしい」
【浅多 侑思】
「とにかく一度本社には戻すが、その後の処罰は検討中だと……」
【クロノ】
「クビになるかもって?」
【浅多 侑思】
「ありえるかもな」
侑思は気落ちしているようだった。妙にお人よしなところが
あるのかもしれない。
【クロノ】
「おまえが落ち込むことじゃないだろ。……で、いつ帰ってくるの?」
【浅多 侑思】
「…明日」
【クロノ】
「随分急だ」
【浅多 侑思】
「即刻本社に戻せってことらしい。……社内はそんな噂でもちきりだ」
【クロノ】
「大変そうだけど、おまえにはもう関係ないだろ」
【浅多 侑思】
「それはそうなんだが。あんなことがあったから、
少し気になってな」
【浅多 侑思】
「どんなことがあったにしろ、後輩なのには変わりがないんだ」
【クロノ】
「……気持ちはわかるけど」
………フー
侑思がため息をつく。
この調子じゃ、明日は侑思の様子を
見に行ったほうがいいかもしれない。
俺はそう思いながら、ご飯をかき込んだ。
―――次の日。
侑思の様子を見に来た俺は、『噂』と『後輩の待遇』を目の当たりにすることになった。
【女性社員1】
「調子乗ってたもんね。浅多さんを差し置いて
上手いことやってたみたいだし」
【女性社員2】
「結構陰で人を陥れたりしてたらしいよ」
【男性社員1】
「浅多さんのことも陥れていたのかも。明らかに出世の順番おかしかったし」
【男性社員2】
「そうじゃないかって思ってたー。おかしいと思ったんだよなー」
渦中の後輩は肩を震わせながら、机に向かっている。
その目はうつろで、何も見えていないようだった。
侑思は後輩の様子を気にしていたようけど、声をかけたものかどうか戸惑っているようだ。
そして、昼休みになって。
屋上で弁当を食べて、休憩している侑思の元に、
後輩が現れた。
俺は万が一のために姿を消して、フェンスの上に座り、様子を見る。
【高島田】
「こんなことになってざまあみろとか、思ってるんでしょ? 先輩」
【浅多 侑思】
「……何の話だ」
【高島田】
「知ってるんでしょ?俺がミスって、本社に戻されて、
ついでにクビになりそうだってこと」
【浅多 侑思】
「……知っている。だが、お前が考えているようなことは
思っていない」
【高島田】
「嘘だ……!だって、俺の代わりにあんたを
マネージャーにって話が出てるんですよ」
【浅多 侑思】
「それは……初耳だが。判断は僕じゃない、会社がすることだ。
戻るぞ」
【高島田】
「かっこいいこと言っちゃって。結局俺、本当の意味で先輩に勝てなかったなあ。でも……」
――侑思達が会話している時に俺は、死神界から連絡がきていて。
【高島田】
「こういう形でなら、簡単に勝てますからね!!」
後輩の手に握られていた刃物に、気がつけなくて……
【浅多 侑思】
「お前……っ!」
侑思が刺されそうになっていることに気付けず…助けに入ることが出来なかった。
【クロノ】
「侑思―――!!!」
―――救急車のサイレンの音が響き渡った。
侑思が病院に運ばれてから、3ヵ月後。
【クロノ】
「……」
俺は今日も、病院を訪れていた。
【クロノ】
「……侑思」
呼びかけても、侑思からの返事はない。
毎日毎日呼びかけているけど、……返事が返ってきたことはない。
侑思の体中から伸びる、医療用チューブ。それは侑思の命を繋ぎとめておく為の糸。
規則正しい心電図の音が、侑思が生きているという唯一の証。
【クロノ】
「ごめん。……ごめん、助けられなかった……!」
何度謝っても、侑思はこちらを見ない。閉じられた目は、もう二度と開くことはない。
―――後輩に刺された侑思は、俺の通報によって、すぐに病院に運ばれた。
俺はすぐに死神界に戻って、死亡予定者のリストを長に頼みこんで見せて貰おうとしたが―――見せて貰うことはできなかった。
しかし、侑思の生死についてだけ教えて貰うことができた。
長に教えて貰った結果……侑思は死なないことが分かった。
侑思は刺された時の衝撃、頭を強く打ったときの衝撃が合わさって。
心が死んだ状態で、体だけ、生きている。
脳が死んでいないだけマシだった。いつか目を覚ます可能性があるからだ。
でも、確実じゃない。いつ起きるのかは、
医者にも分からないと言う。
【クロノ】
「侑思……起きてくれよ」
屈んで、唇にキスをする。
お姫様はキスをすれば起きるはずなのに……侑思は静かに眠ったままだ。
「何か、食っていくか?」
物思いにふけっていると、シャワーを浴びて身なりを
整えた侑思が聞いてくる。
【クロノ】
「いただきます」
俺が応えると、侑思は小さく笑ってキッチンに消えていく。
後をついて行くと、しっかり分量を量りながら
料理する姿がそこにあった。
【クロノ】
「食べなくても平気だって言ってるのに、ご飯を作ってくれるのはなんで?」
【浅多 侑思】
「僕が飯を食べるついでだ。……死神は腹が減らないんだな」
【クロノ】
「人間は事が終わるとすぐ腹が減るんだな」
【浅多 侑思】
「お、お前が激しくするから……だろ!」
また真っ赤になった侑思が、包丁を振り回しそうになったので、
慌ててリビングへと戻る。
まあ、ご飯を食うのは嫌いじゃないから、
お言葉に甘えよう。
【クロノ】
(誰かと一緒に食べるのはいいものだなと思うし)
次々とテーブルに並べられる和食を眺めながら、
こっそり幸せな気分を味わう。
【浅多 侑思】
「後輩がな、戻ってくるらしいんだ」
夕食を食べながら侑思が言う。
【クロノ】
「後輩?ああ、もしかしてあの、
海外支部に行った後輩?」
【浅多 侑思】
「その通り。……どうやら向こうで何かやらかしたらしい」
【クロノ】
「上手くやれそうなやつだと思ったけどね。強気で、お調子者で、毒舌で」
【浅多 侑思】
「功を焦ったんだろう。向こうで重要なポストについている人を
陥れるような真似をしたらしい」
【浅多 侑思】
「とにかく一度本社には戻すが、その後の処罰は検討中だと……」
【クロノ】
「クビになるかもって?」
【浅多 侑思】
「ありえるかもな」
侑思は気落ちしているようだった。妙にお人よしなところが
あるのかもしれない。
【クロノ】
「おまえが落ち込むことじゃないだろ。……で、いつ帰ってくるの?」
【浅多 侑思】
「…明日」
【クロノ】
「随分急だ」
【浅多 侑思】
「即刻本社に戻せってことらしい。……社内はそんな噂でもちきりだ」
【クロノ】
「大変そうだけど、おまえにはもう関係ないだろ」
【浅多 侑思】
「それはそうなんだが。あんなことがあったから、
少し気になってな」
【浅多 侑思】
「どんなことがあったにしろ、後輩なのには変わりがないんだ」
【クロノ】
「……気持ちはわかるけど」
………フー
侑思がため息をつく。
この調子じゃ、明日は侑思の様子を
見に行ったほうがいいかもしれない。
俺はそう思いながら、ご飯をかき込んだ。
―――次の日。
侑思の様子を見に来た俺は、『噂』と『後輩の待遇』を目の当たりにすることになった。
【女性社員1】
「調子乗ってたもんね。浅多さんを差し置いて
上手いことやってたみたいだし」
【女性社員2】
「結構陰で人を陥れたりしてたらしいよ」
【男性社員1】
「浅多さんのことも陥れていたのかも。明らかに出世の順番おかしかったし」
【男性社員2】
「そうじゃないかって思ってたー。おかしいと思ったんだよなー」
渦中の後輩は肩を震わせながら、机に向かっている。
その目はうつろで、何も見えていないようだった。
侑思は後輩の様子を気にしていたようけど、声をかけたものかどうか戸惑っているようだ。
そして、昼休みになって。
屋上で弁当を食べて、休憩している侑思の元に、
後輩が現れた。
俺は万が一のために姿を消して、フェンスの上に座り、様子を見る。
【高島田】
「こんなことになってざまあみろとか、思ってるんでしょ? 先輩」
【浅多 侑思】
「……何の話だ」
【高島田】
「知ってるんでしょ?俺がミスって、本社に戻されて、
ついでにクビになりそうだってこと」
【浅多 侑思】
「……知っている。だが、お前が考えているようなことは
思っていない」
【高島田】
「嘘だ……!だって、俺の代わりにあんたを
マネージャーにって話が出てるんですよ」
【浅多 侑思】
「それは……初耳だが。判断は僕じゃない、会社がすることだ。
戻るぞ」
【高島田】
「かっこいいこと言っちゃって。結局俺、本当の意味で先輩に勝てなかったなあ。でも……」
――侑思達が会話している時に俺は、死神界から連絡がきていて。
【高島田】
「こういう形でなら、簡単に勝てますからね!!」
後輩の手に握られていた刃物に、気がつけなくて……
【浅多 侑思】
「お前……っ!」
侑思が刺されそうになっていることに気付けず…助けに入ることが出来なかった。
【クロノ】
「侑思―――!!!」
―――救急車のサイレンの音が響き渡った。
侑思が病院に運ばれてから、3ヵ月後。
【クロノ】
「……」
俺は今日も、病院を訪れていた。
【クロノ】
「……侑思」
呼びかけても、侑思からの返事はない。
毎日毎日呼びかけているけど、……返事が返ってきたことはない。
侑思の体中から伸びる、医療用チューブ。それは侑思の命を繋ぎとめておく為の糸。
規則正しい心電図の音が、侑思が生きているという唯一の証。
【クロノ】
「ごめん。……ごめん、助けられなかった……!」
何度謝っても、侑思はこちらを見ない。閉じられた目は、もう二度と開くことはない。
―――後輩に刺された侑思は、俺の通報によって、すぐに病院に運ばれた。
俺はすぐに死神界に戻って、死亡予定者のリストを長に頼みこんで見せて貰おうとしたが―――見せて貰うことはできなかった。
しかし、侑思の生死についてだけ教えて貰うことができた。
長に教えて貰った結果……侑思は死なないことが分かった。
侑思は刺された時の衝撃、頭を強く打ったときの衝撃が合わさって。
心が死んだ状態で、体だけ、生きている。
脳が死んでいないだけマシだった。いつか目を覚ます可能性があるからだ。
でも、確実じゃない。いつ起きるのかは、
医者にも分からないと言う。
【クロノ】
「侑思……起きてくれよ」
屈んで、唇にキスをする。
お姫様はキスをすれば起きるはずなのに……侑思は静かに眠ったままだ。
