[本編] 浅多 侑思 編
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夢に飛び込んだ途端に、俺の視界に入ってきたのは―――
巨大な化物に掴まれている浅多の姿だった。
何かを考える前に体が勝手に動いて、掌の中に鎌を出現させ始めていて。
だけど―――
浅多の服が破れていることや、足を開かされていることや……
下品な形をした触手のようなものが、彼の中へと迫っているのを見て――。
ぶつん、と頭の中で、何かが切れる音がした。
猛スピードで突進していく俺の姿を見た、その化物は――
次の瞬間には、塵となって掻き消えた。
地面へ落ちていく浅多を受け止めようと、急いで宙を蹴ったが―――。
すぐに新手の化物が出現して、浅多を横から掠め取り。
ニヤリと、嫌悪感を抱く笑い方をして、素早く距離を取る。
俺は、鎌を握り直した。
【???】
「怖い顔だな。僕のためにそんな顔をしてるのかと思うとゾクゾクする」
【クロノ】
「面白い冗談だな」
【???】
「冗談なんかじゃないさ。僕は、この哀れな出来損ないの鏡だ」
気を失っている浅多を見つめる
【クロノ】
「…お前自身が化物になるとはな」
【クロノ】
「何で浅多が……」
浅多が気を失っているのが、そのことと関係あるのかもしれない。
【???】
「理屈が重要か?とりあえず確実に言えることは―――」
【???】
「僕は、反吐が出るほど浮気者が嫌いだ」
【???】
「お前のような奴は僕の中から出て行け。二度と現れるな、胸糞悪い」
斧のような形に変化した触手が、目にも止まらぬ速さで振り下ろされる。
【クロノ】
「ちょっと待て、浮気者ってどういう―――っ」
間一髪で避けたが、周囲の景色が吹き飛ぶほど、攻撃が重い。
ここまでだとは思ってなかった。
夢の中と言えど、無傷でいられるのか……?
いや、それよりも、今の単語は聞き流せなかった。
【クロノ】
「おい、聞いてるか」
【???】
「ああ、聞こえてるぜ。浮気者ってどういう意味だって?」
【???】
「めでたい野郎だ。そんなことを僕に尋ねるのか?
全くお前はどこまで残酷なんだ」
化物が高笑いする。
その耳障りな爆音に思わず顔をしかめたが……それは、なぜか慟哭に聞こえた。
悲しくて泣いているような。
馬鹿らしくて笑っているような。
そんな、寂しい感情を含んでいるようだった。
だけど、どうしてこの化物が、浅多が、そんなことをするのかがわからない。
いや、この景色が全て『俺が見ている』悪夢なのかもしれない。
けど、化け物の手の中に収まっている浅多は……『あの浅多』は本物だと思う。
目を閉じている時にも消えない眉間の皺や。
眠っていても、だらしなく開くことのない口が。
俺が見てきた、浅多の姿そのものだから。
これが浅多の見ている夢なら、あの化物はもう一人の浅多ということになる。
だから、ごまかしたりせず、真摯に対応しよう。
俺が、浅多にそうしたいと思っているように。
化物の咆哮が小さくなって、その手に握っている自分の姿を見下ろした。
そして、慈しむようにそっと握り直す。
【???】
「こいつは可哀想な奴なんだ」
【???】
「1等が欲しかった。表彰状が欲しかった。新聞で自分の名前を見たかった」
【???】
「両親の愛情と、同級生や同僚の友情が欲しかった」
【???】
「だけどいつも無理なんだ。それをもらう最低限の条件を満たせないから」
【???】
「親の愛情は、僕が1位をとることが前提だ。
同級生や同僚の友情も同じ」
【???】
「見栄としての恋人を作ったことはあったがな。
だけど僕に何もないことを
知って離れていった」
【???】
「だから28年間、ひたすらトロフィーだけを追いかけた」
化物が、俺を見下ろす。
【???】
「それで、やっと見つけたんだ。久し振りに新しく欲しいものを」
【???】
「何もなくてもいいと言ってくれそうな奴を。
価値のない僕を見てくれそうな奴を」
【???】
「だけど僕はまた、そいつの1番になれそうにない」
【???】
「だからいらない」
全ての触覚が斧の形へと変化して、天を突く。
【???】
「お前も、現実も、何もかも」
振り下ろされた凶器で、世界が揺れて煙幕が立ち込める。
俺は―――標的を見失ってキョロキョロしている化物の肩にいた。
そこに、綻びを見つけたから。
【クロノ】
「少し自信過剰だとは思うが、その相手とやらは俺か」
驚いて振り返った化物が、たじろぐ。
【クロノ】
「今、無性に抱きしめてやりたい気分だが、幾分お前はでかすぎる」
俺が乗っている自分の肩を目掛けて、再び凶器を落とそうとする。
【クロノ】
「だから、これがキスだと思ってくれ」
ほころびに向けて、俺は鎌を振った。
誤解は本人の前で解く。
そう、付け加えて。
消え去った化物の手から落ちる浅多を、今度こそしっかりと受け止める。
すぐに横たわらせて、頬を叩く。
【クロノ】
「浅多! 目を覚ませ!」
だけど返事はなく、深い眠りについているように見えた。
その寝顔が、彼と重なって見えて、首を振る。
違う。浅多と彼は別人だ。
―――そうやってまた殺したんだ。俺みたいに。
二兎を追う者は一兎をも得ずってね。
それにしても浮気者だなんて、なかなか言い得て妙じゃない。
【クロノ】
「違う!!」
【クロノ】
「俺は―――どちらも救いたかっただけだ!!」
どうか、それを二兎と呼ばないでくれ。
どちらも大事な人なんだ。どちらかなんて選べない。
一生のうちに救える者の数を決められているのなら。
俺はなんて貪欲な仕事をしているのだろう。
頑張り続けた魂に、休息という救いを与えることが仕事なのに。
俺達の存在すら間違っていたなんて―――どうやったって認められるわけがない。
【ユリス】
『ったく、うっさいなー。そんなに感情を揺らさないでよ
……ガラでもない。見てられんないよ』
どこからか聞こえてきた声に、はっと顔をあげる。
頭の中から聞こえた彼の声とは違って、今の声は外部からだ。
しかも……今の声って。
自分の両手を見ると、また震えそうになっている。
だからしっかりしろと強く念じたあと、立ち上がった。
ふわりと空が光って、何かが降りてくる。
その姿は、見間違えようもなく、ユリスだった。
俺は眠っている浅多を庇うように前に出て、ユリスを見据える。
奴は軽やかに地面に着地し、歩み寄ってくる。
【ユリス】
「あれ、意外と平気そうだね?お前も悪夢の影響受けて、
結構しんどい思いしたはずなのに」
【ユリス】
「ここはお前の夢じゃないから、内容を見れなかったのが残念だけどね」
そして地面に浅多を見下ろして、冷たく言い放つ。
【ユリス】
「悪夢に耐え切れなくて、意識をシャットダウンしてるのか。
フン、もろい奴」
【ユリス】
「お前を見習ってほしいよねえ?ひっどいトラウマ見せられたでしょ?」
巨大な化物に掴まれている浅多の姿だった。
何かを考える前に体が勝手に動いて、掌の中に鎌を出現させ始めていて。
だけど―――
浅多の服が破れていることや、足を開かされていることや……
下品な形をした触手のようなものが、彼の中へと迫っているのを見て――。
ぶつん、と頭の中で、何かが切れる音がした。
猛スピードで突進していく俺の姿を見た、その化物は――
次の瞬間には、塵となって掻き消えた。
地面へ落ちていく浅多を受け止めようと、急いで宙を蹴ったが―――。
すぐに新手の化物が出現して、浅多を横から掠め取り。
ニヤリと、嫌悪感を抱く笑い方をして、素早く距離を取る。
俺は、鎌を握り直した。
【???】
「怖い顔だな。僕のためにそんな顔をしてるのかと思うとゾクゾクする」
【クロノ】
「面白い冗談だな」
【???】
「冗談なんかじゃないさ。僕は、この哀れな出来損ないの鏡だ」
気を失っている浅多を見つめる
【クロノ】
「…お前自身が化物になるとはな」
【クロノ】
「何で浅多が……」
浅多が気を失っているのが、そのことと関係あるのかもしれない。
【???】
「理屈が重要か?とりあえず確実に言えることは―――」
【???】
「僕は、反吐が出るほど浮気者が嫌いだ」
【???】
「お前のような奴は僕の中から出て行け。二度と現れるな、胸糞悪い」
斧のような形に変化した触手が、目にも止まらぬ速さで振り下ろされる。
【クロノ】
「ちょっと待て、浮気者ってどういう―――っ」
間一髪で避けたが、周囲の景色が吹き飛ぶほど、攻撃が重い。
ここまでだとは思ってなかった。
夢の中と言えど、無傷でいられるのか……?
いや、それよりも、今の単語は聞き流せなかった。
【クロノ】
「おい、聞いてるか」
【???】
「ああ、聞こえてるぜ。浮気者ってどういう意味だって?」
【???】
「めでたい野郎だ。そんなことを僕に尋ねるのか?
全くお前はどこまで残酷なんだ」
化物が高笑いする。
その耳障りな爆音に思わず顔をしかめたが……それは、なぜか慟哭に聞こえた。
悲しくて泣いているような。
馬鹿らしくて笑っているような。
そんな、寂しい感情を含んでいるようだった。
だけど、どうしてこの化物が、浅多が、そんなことをするのかがわからない。
いや、この景色が全て『俺が見ている』悪夢なのかもしれない。
けど、化け物の手の中に収まっている浅多は……『あの浅多』は本物だと思う。
目を閉じている時にも消えない眉間の皺や。
眠っていても、だらしなく開くことのない口が。
俺が見てきた、浅多の姿そのものだから。
これが浅多の見ている夢なら、あの化物はもう一人の浅多ということになる。
だから、ごまかしたりせず、真摯に対応しよう。
俺が、浅多にそうしたいと思っているように。
化物の咆哮が小さくなって、その手に握っている自分の姿を見下ろした。
そして、慈しむようにそっと握り直す。
【???】
「こいつは可哀想な奴なんだ」
【???】
「1等が欲しかった。表彰状が欲しかった。新聞で自分の名前を見たかった」
【???】
「両親の愛情と、同級生や同僚の友情が欲しかった」
【???】
「だけどいつも無理なんだ。それをもらう最低限の条件を満たせないから」
【???】
「親の愛情は、僕が1位をとることが前提だ。
同級生や同僚の友情も同じ」
【???】
「見栄としての恋人を作ったことはあったがな。
だけど僕に何もないことを
知って離れていった」
【???】
「だから28年間、ひたすらトロフィーだけを追いかけた」
化物が、俺を見下ろす。
【???】
「それで、やっと見つけたんだ。久し振りに新しく欲しいものを」
【???】
「何もなくてもいいと言ってくれそうな奴を。
価値のない僕を見てくれそうな奴を」
【???】
「だけど僕はまた、そいつの1番になれそうにない」
【???】
「だからいらない」
全ての触覚が斧の形へと変化して、天を突く。
【???】
「お前も、現実も、何もかも」
振り下ろされた凶器で、世界が揺れて煙幕が立ち込める。
俺は―――標的を見失ってキョロキョロしている化物の肩にいた。
そこに、綻びを見つけたから。
【クロノ】
「少し自信過剰だとは思うが、その相手とやらは俺か」
驚いて振り返った化物が、たじろぐ。
【クロノ】
「今、無性に抱きしめてやりたい気分だが、幾分お前はでかすぎる」
俺が乗っている自分の肩を目掛けて、再び凶器を落とそうとする。
【クロノ】
「だから、これがキスだと思ってくれ」
ほころびに向けて、俺は鎌を振った。
誤解は本人の前で解く。
そう、付け加えて。
消え去った化物の手から落ちる浅多を、今度こそしっかりと受け止める。
すぐに横たわらせて、頬を叩く。
【クロノ】
「浅多! 目を覚ませ!」
だけど返事はなく、深い眠りについているように見えた。
その寝顔が、彼と重なって見えて、首を振る。
違う。浅多と彼は別人だ。
―――そうやってまた殺したんだ。俺みたいに。
二兎を追う者は一兎をも得ずってね。
それにしても浮気者だなんて、なかなか言い得て妙じゃない。
【クロノ】
「違う!!」
【クロノ】
「俺は―――どちらも救いたかっただけだ!!」
どうか、それを二兎と呼ばないでくれ。
どちらも大事な人なんだ。どちらかなんて選べない。
一生のうちに救える者の数を決められているのなら。
俺はなんて貪欲な仕事をしているのだろう。
頑張り続けた魂に、休息という救いを与えることが仕事なのに。
俺達の存在すら間違っていたなんて―――どうやったって認められるわけがない。
【ユリス】
『ったく、うっさいなー。そんなに感情を揺らさないでよ
……ガラでもない。見てられんないよ』
どこからか聞こえてきた声に、はっと顔をあげる。
頭の中から聞こえた彼の声とは違って、今の声は外部からだ。
しかも……今の声って。
自分の両手を見ると、また震えそうになっている。
だからしっかりしろと強く念じたあと、立ち上がった。
ふわりと空が光って、何かが降りてくる。
その姿は、見間違えようもなく、ユリスだった。
俺は眠っている浅多を庇うように前に出て、ユリスを見据える。
奴は軽やかに地面に着地し、歩み寄ってくる。
【ユリス】
「あれ、意外と平気そうだね?お前も悪夢の影響受けて、
結構しんどい思いしたはずなのに」
【ユリス】
「ここはお前の夢じゃないから、内容を見れなかったのが残念だけどね」
そして地面に浅多を見下ろして、冷たく言い放つ。
【ユリス】
「悪夢に耐え切れなくて、意識をシャットダウンしてるのか。
フン、もろい奴」
【ユリス】
「お前を見習ってほしいよねえ?ひっどいトラウマ見せられたでしょ?」
