[本編] 浅多 侑思 編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【浅多 侑思】
「はあ、はあ、はあ……!」
死神が逃げていくのを、僕はがむしゃらに追いかける。
あいつの性格なら、よほどのことが無い限り自分から逃げ出したりしない筈だから。
逃げ出したということは、あの光景を見られたことを意味していて絶望した。
それなのに、僕の足は止まらない。
追ってどうする? 僕は何を説明しようっていうんだ?
考え始めれば、逃げ出したいのはこっちの方なのに。
【浅多 侑思】
「死神」
走るのをやめて飛び立とうとした時に、落ち着いた声が聞こえて立ち止まる。
ゆっくと振り返ると、額に汗を浮かべた浅多がそこにいた。
荒い呼吸を繰り返す口は、開いているものの何の言葉も発さない。
何かを訴えかけるように、じっと俺を見つめている。
浅多の目から罪悪感がダダ漏れで、内心苦笑する。
だけど、今日は代弁してやるつもりも、気持ちを汲んでやるつもりない。
そして、こいつに冷たくしてやりたい気分だった。
もっと苦しめばいいとすら思う。
救い上げてやろうとする手を何度も振り払って、地獄に足を突っ込みたがるような物好きは。
―――でもやっぱり、そんなお前を見捨てることは、俺には無理そうだ。
それに。
そんな綺麗事なんてどうでも良くなるくらい。
さっきの『あいつ』と同じ行動をしてたまるかという気持ちの方が強くて、笑えてくる。
その感情の名前はきっと、"嫉妬"だから。
【クロノ】
「本物は、俺だ」
横目で言い捨てて、俺は1人で現実に戻る。
そして、浅多の部屋で胡座を掻いて待った。
予想していた通り、なかなか戻ってこないけど。
あいつが現実に戻ってくるまで、いつまでも待つつもりだった。
数十分後に、奴が目を覚まして、気だるそうに体を起こす。
会話は、しばらく始まらなかった。
【クロノ】
「なんで、あんな夢を見た」
わざと核心を突いた質問すると、浅多は肩を揺らし、間を置いて掠れ声を返した。
【浅多 侑思】
「……自分でも、よくわからない」
【クロノ】
「憧憬夢なんだから、ああいう欲求があったということになる」
【浅多 侑思】
「……言うな。頼むから」
情けないほどか細い声に、いっそ同情する。
【クロノ】
「お前に頼み事をされたのは初めてだ」
自分の偽者と、目の前でイチャつかれたこっちの身にもなって欲しい。
一向に上がらない顔を見やって、俺も視線を外した。
【浅多 侑思】
「もう、放っておいてくれ」
訥々と語られる台詞を聞きながら、浅多の座っているベッドの奥にある窓から空を見る。
空には星と月が外を照らしていた。
【浅多 侑思】
「あんなところを見られては……お前に、合わせる顔がない」
【クロノ】
「もう合わせてるんだから無理」
【浅多 侑思】
「……」
【クロノ】
「放っておくのは、もっと無理」
浅多に目を戻すと、奴は顔を上げていて。
その時――窓の向こうで雲の間から月が顔を出した。
浅多のぼんやりとした視線の中に、疑問符が浮かんでいる。
そんな浅多の姿を月明かりが照らした。
何だか神秘的に感じながら、俺は口を開いて浅多に尋ねる。
【クロノ】
「俺の言いたいことは言った。だけど理由は教えない。同等の条件でお前の言葉も聞きたい」
【浅多 侑思】
「え……」
【クロノ】
「お前はどうしたい」
動向を見守るように、月が雲の隙間からそっと顔を出す。
窓から見える月は綺麗な満月の形をしている。
浅多の部屋が、何故かいつもと違うように感じた。
【クロノ】
「お前は、夢が現実になったら幸せか」
静寂が辺りを支配している。
動かない俺達の代わりに、開いたカーテンの向こうで雲が流れていく。
【浅多 侑思】
「夢が、現実に」
【クロノ】
「そう」
【浅多 侑思】
「か……、からかうな」
【クロノ】
「この状態でからかうかよ」
【浅多 侑思】
「夢が、現実になんて……」
ぎこちない返答に小さく笑う。
…こんな時まで大真面目か。
【クロノ】
「……偽物と違って、優しくはないけどな」
軽くかわせばいいものを、できない堅物。
片手を伸ばすと、あと数センチのところで浅多に届かない。
自分の目の前に迫った指先を注視していた浅多は、それが動く気配がないと知ると。
もの問いたげに俺を見上げる。
【クロノ】
「届かない」
2つの視線が絡まり合う。
月が隠れたのをきっかけに、浅多が首を伸ばして俺の指をかじった。
おずおずと舌が追ってきて、ためらいを反映するように俺の指先をつつく。
そして、アレを咥えるように舐めた。
俺は片手で地面を押し、浅多を力任せに抱き寄せて、頬、額、唇……場所なんか構わずに口付ける。
息をするのも許さないほど、激しいキスを交わす。
【浅多 侑思】
「ふっ……う、……っ」
人間には辛いくらいまで呼吸をさせず、浅多の体から力が抜けるのを待って。
音を立てて唇を離すと、浅多の腰が跳ねる。
【浅多 侑思】
「ハッ……ハア、はあっ……!」
【クロノ】
「なあ、夢とどっちがいい」
既に熱に浮かされ始めている涙目が見上げている。
その中に映っている俺の表情が、予想外に凶暴で。
こいつが夢の中で見ていた俺の姿との差に、ほんの少しだけ悲しくなった。
抱き締めていた腕を緩めてやり、下ろす。
【クロノ】
「もう寝ろ」
流石に突然すぎたのか、浅多は、熱を持て余した瞳を丸くする。
だけどこいつには、性交渉の中断の理由を問い正すまでの勇気は無いだろう。
ましてや俺は同性で、人間でもない。
そう踏んでいたら、まったく俺の予想通りになった。
しぶしぶ浅多は身を起こし、言われた通りバカ正直にベッドに入る。
さすがに、この状況でリビドーを装着するような暴挙には出ないようだ。
【浅多 侑思】
「リビドーを付けないで寝るのは久し振りだ」
【クロノ】
「さっき付けてた」
【浅多 侑思】
「今付けてない」
【クロノ】
「さっき付けてただろ……」
布団に潜った浅多が、ムスッとした顔をする。
【浅多 侑思】
「今はつけてないからいいんだ。頑固な死神だな」
【クロノ】
「どっちが頑固……」
子供のような応酬にゲンナリして目を閉じる。
【クロノ】
「とにかく、今は何も考えないで眠れ」
【浅多 侑思】
「お前はどうするんだ」
送られてくる僅かな期待を含んだ視線に、俺は気付かない振りをした。
【クロノ】
「さあ。お前がうなされたら助けに入るかも」
【浅多 侑思】
「……そうか」
『リビドーをつけてないから悪夢は見ない。』
いつもの浅多なら、それくらい可愛げのない切り返しをしたかもしれないけど。
俺もまた、今は指摘する気分じゃなかった。
……そして、互いの視線の糸を断ち切るように、俺達は瞼を下ろした。
「はあ、はあ、はあ……!」
死神が逃げていくのを、僕はがむしゃらに追いかける。
あいつの性格なら、よほどのことが無い限り自分から逃げ出したりしない筈だから。
逃げ出したということは、あの光景を見られたことを意味していて絶望した。
それなのに、僕の足は止まらない。
追ってどうする? 僕は何を説明しようっていうんだ?
考え始めれば、逃げ出したいのはこっちの方なのに。
【浅多 侑思】
「死神」
走るのをやめて飛び立とうとした時に、落ち着いた声が聞こえて立ち止まる。
ゆっくと振り返ると、額に汗を浮かべた浅多がそこにいた。
荒い呼吸を繰り返す口は、開いているものの何の言葉も発さない。
何かを訴えかけるように、じっと俺を見つめている。
浅多の目から罪悪感がダダ漏れで、内心苦笑する。
だけど、今日は代弁してやるつもりも、気持ちを汲んでやるつもりない。
そして、こいつに冷たくしてやりたい気分だった。
もっと苦しめばいいとすら思う。
救い上げてやろうとする手を何度も振り払って、地獄に足を突っ込みたがるような物好きは。
―――でもやっぱり、そんなお前を見捨てることは、俺には無理そうだ。
それに。
そんな綺麗事なんてどうでも良くなるくらい。
さっきの『あいつ』と同じ行動をしてたまるかという気持ちの方が強くて、笑えてくる。
その感情の名前はきっと、"嫉妬"だから。
【クロノ】
「本物は、俺だ」
横目で言い捨てて、俺は1人で現実に戻る。
そして、浅多の部屋で胡座を掻いて待った。
予想していた通り、なかなか戻ってこないけど。
あいつが現実に戻ってくるまで、いつまでも待つつもりだった。
数十分後に、奴が目を覚まして、気だるそうに体を起こす。
会話は、しばらく始まらなかった。
【クロノ】
「なんで、あんな夢を見た」
わざと核心を突いた質問すると、浅多は肩を揺らし、間を置いて掠れ声を返した。
【浅多 侑思】
「……自分でも、よくわからない」
【クロノ】
「憧憬夢なんだから、ああいう欲求があったということになる」
【浅多 侑思】
「……言うな。頼むから」
情けないほどか細い声に、いっそ同情する。
【クロノ】
「お前に頼み事をされたのは初めてだ」
自分の偽者と、目の前でイチャつかれたこっちの身にもなって欲しい。
一向に上がらない顔を見やって、俺も視線を外した。
【浅多 侑思】
「もう、放っておいてくれ」
訥々と語られる台詞を聞きながら、浅多の座っているベッドの奥にある窓から空を見る。
空には星と月が外を照らしていた。
【浅多 侑思】
「あんなところを見られては……お前に、合わせる顔がない」
【クロノ】
「もう合わせてるんだから無理」
【浅多 侑思】
「……」
【クロノ】
「放っておくのは、もっと無理」
浅多に目を戻すと、奴は顔を上げていて。
その時――窓の向こうで雲の間から月が顔を出した。
浅多のぼんやりとした視線の中に、疑問符が浮かんでいる。
そんな浅多の姿を月明かりが照らした。
何だか神秘的に感じながら、俺は口を開いて浅多に尋ねる。
【クロノ】
「俺の言いたいことは言った。だけど理由は教えない。同等の条件でお前の言葉も聞きたい」
【浅多 侑思】
「え……」
【クロノ】
「お前はどうしたい」
動向を見守るように、月が雲の隙間からそっと顔を出す。
窓から見える月は綺麗な満月の形をしている。
浅多の部屋が、何故かいつもと違うように感じた。
【クロノ】
「お前は、夢が現実になったら幸せか」
静寂が辺りを支配している。
動かない俺達の代わりに、開いたカーテンの向こうで雲が流れていく。
【浅多 侑思】
「夢が、現実に」
【クロノ】
「そう」
【浅多 侑思】
「か……、からかうな」
【クロノ】
「この状態でからかうかよ」
【浅多 侑思】
「夢が、現実になんて……」
ぎこちない返答に小さく笑う。
…こんな時まで大真面目か。
【クロノ】
「……偽物と違って、優しくはないけどな」
軽くかわせばいいものを、できない堅物。
片手を伸ばすと、あと数センチのところで浅多に届かない。
自分の目の前に迫った指先を注視していた浅多は、それが動く気配がないと知ると。
もの問いたげに俺を見上げる。
【クロノ】
「届かない」
2つの視線が絡まり合う。
月が隠れたのをきっかけに、浅多が首を伸ばして俺の指をかじった。
おずおずと舌が追ってきて、ためらいを反映するように俺の指先をつつく。
そして、アレを咥えるように舐めた。
俺は片手で地面を押し、浅多を力任せに抱き寄せて、頬、額、唇……場所なんか構わずに口付ける。
息をするのも許さないほど、激しいキスを交わす。
【浅多 侑思】
「ふっ……う、……っ」
人間には辛いくらいまで呼吸をさせず、浅多の体から力が抜けるのを待って。
音を立てて唇を離すと、浅多の腰が跳ねる。
【浅多 侑思】
「ハッ……ハア、はあっ……!」
【クロノ】
「なあ、夢とどっちがいい」
既に熱に浮かされ始めている涙目が見上げている。
その中に映っている俺の表情が、予想外に凶暴で。
こいつが夢の中で見ていた俺の姿との差に、ほんの少しだけ悲しくなった。
抱き締めていた腕を緩めてやり、下ろす。
【クロノ】
「もう寝ろ」
流石に突然すぎたのか、浅多は、熱を持て余した瞳を丸くする。
だけどこいつには、性交渉の中断の理由を問い正すまでの勇気は無いだろう。
ましてや俺は同性で、人間でもない。
そう踏んでいたら、まったく俺の予想通りになった。
しぶしぶ浅多は身を起こし、言われた通りバカ正直にベッドに入る。
さすがに、この状況でリビドーを装着するような暴挙には出ないようだ。
【浅多 侑思】
「リビドーを付けないで寝るのは久し振りだ」
【クロノ】
「さっき付けてた」
【浅多 侑思】
「今付けてない」
【クロノ】
「さっき付けてただろ……」
布団に潜った浅多が、ムスッとした顔をする。
【浅多 侑思】
「今はつけてないからいいんだ。頑固な死神だな」
【クロノ】
「どっちが頑固……」
子供のような応酬にゲンナリして目を閉じる。
【クロノ】
「とにかく、今は何も考えないで眠れ」
【浅多 侑思】
「お前はどうするんだ」
送られてくる僅かな期待を含んだ視線に、俺は気付かない振りをした。
【クロノ】
「さあ。お前がうなされたら助けに入るかも」
【浅多 侑思】
「……そうか」
『リビドーをつけてないから悪夢は見ない。』
いつもの浅多なら、それくらい可愛げのない切り返しをしたかもしれないけど。
俺もまた、今は指摘する気分じゃなかった。
……そして、互いの視線の糸を断ち切るように、俺達は瞼を下ろした。
