[本編] 浅多 侑思 編
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駄目だ。家にいると、あいつのことばかりが気にかかる。
気分を紛らわせたくて飲み屋に向かうと、副社長―――綾さんがいた。
……わざわざ会社から遠い所を選んだというのに。
すぐに出ようとしたが、不意に入り口の方を振り向いた綾さんと目が合う。
そうなると、さすがに無視もできず、軽く会釈をする。
話しかけられる前に店を出ようとした時、入ってこようとする誰かと肩がぶつかった。
【国重 昂正】
「おっと、失礼」
【浅多 侑思】
「いえ、こちらこそすみません……」
その男は軽く手を上げて謝罪を残すと、まっすぐ誰かのもとへ向かっていく。
―――そして綾さんの前で止まり、懐から何かを出してみせる。
目を凝らして取りだした物をマジマジと見るが…手帳らしき物を取りだしたようだ。
【国重 昂正】
「どうも、綾上総さんですよね。ちょっと訊きたいことがあるんですがね」
け、警察…!?
先日の自分の行いに後ろめたいことがあるので、思わず後ずさる。
しかし綾さんは、こちらには目もくれず、淡々とその男と会話を始めた。
【国重 昂正】
「申し遅れましたね、自分はこういう者です」
【綾 上総】
「ああ、名刺……俺は今持ってないんですけど……」
【綾 上総】
「探偵……ね。で、俺に訊きたいことだって?」
【国重 昂正】
「ええ、よろしければ話をお訊かせいただいても?」
【綾 上総】
「……クソめんどくせーけど、今は機嫌がいいんで、いいですよ」
【国重 昂正】
「ご協力感謝します。では隣、失礼しますね」
【綾 上総】
「ああ、浅多、また職場でな!」
2人は僕に背を向けてしまったが……どんな話をするのか気になる。
どうやら警察じゃないらしい…。
警察だったら、僕のあの会社での出来事かと思ったが…。
いや、本当は警察であの件の事を………。
……やめよう。今更後悔しても仕方ないことだ。
それに…どう考えても、あの件に関しては悪いのは僕だ。
飲む気分じゃなくなってきたな…一杯だけ飲んだら帰ろう。
諦めて酒を煽っていると、2人の会話が耳に入ってきた。
【国重 昂正】
「……リビドーが」
【綾 上総】
「……ちょっと待てよ、俺は……」
【国重 昂正】
「……ってるんだ、いいか……」
コップを落としそうになった。……リビドーだと?
何で刑事さんが綾さんにリビドーの話を…?
【浅多 侑思】
(まさか…会社の人間がリビドーを使っている噂でも流れているのか…?)
もし、僕がリビドーを使っていることを知られたら。
あんな夢を見ていることを知られたら―――。
途端に、何故かわからない焦りが沸いてきて、一気に酒を煽って店を出た。
飲み屋から帰ってきて、寝間着に着替えてベッドに倒れ込む。
【浅多 侑思】
「……死にたい奴を助けたりはしない、か」
僕は、何をやってるんだろうな。
勝手にすればいいと言われたんだ。
あいつはもう、僕に干渉する気がないだけだろう。
きっとこの部屋には二度と来ない。
…喜べ。邪魔者がいなくなったんだ。あいつの事が気になるなんて…。
【浅多 侑思】
「何で…気になんだよっ……」
いつもより静かな部屋で、自分に言い聞かせてみたが、気分は暗いままだ。
ベッド脇に置いてあるリビドーを眺める。
酷い夢を見たことや、あいつに言われたことなどが頭を過ぎったが―――。
僕の手は、何かの呪いのようにリビドーを取った。
【浅多 侑思】
「……」
目を開けると、いつものオフィス街ではなかった。
そこは……いつもあいつが訪ねてくる、僕の部屋。
僕はベッドに座り、ドアの方をじっと見ている。
不意に横から伸びてきた手に驚いて振り返ると―――慈愛に満ちた眼差しのあいつがいた。
【クロノ】
「また考え事?俺と一緒にいる時くらい、構えずに楽にしてればいい。何も考えなくていい」
違和感に身構える。
今のあいつが、僕に何も考えるなと言う筈がない。
絶対にこれは本物ではない……、また悪夢か?
遠ざかろうとすると、引き寄せられて、胸の中にすっぽりと抱き込まれる。
あいつの匂いが混じった、心地よい香りと体温に眩暈がしそうな程だったが、頭を振って跳ね除ける。
【浅多 侑思】
「はっ……離せ」
【クロノ】
「……可愛い。そうやって無駄な抵抗して」
妖しく笑って、死神は俺の唇を指でなぞった。
【浅多 侑思】
「なっ……!」
【クロノ】
「何驚いてる。もっとやらしいこと沢山しただろ」
【浅多 侑思】
「……!!」
確かに、目覚めたら服が破けてたことはあったが、何をされたのかは知らない。
い、いや、考えればわかりそうだが、考えたくない。
【クロノ】
「耳まで真っ赤。恥ずかしがることないのに。だって―――」
顎を掴まれ、顔を引き寄せられる。
顔をそむけたまま―――耳元で甘く囁かれる。
【クロノ】
「お前は、ずっとここにいていいんだ」
そう言われた瞬間、胸がいっぱいになる。
多幸感が満ちてきて、体中から力が抜ける。
だけど死神が、しっかりと支えてくれた。
【クロノ】
「俺と一緒にずっとここにいよう。もう現実になんて戻らなくていい」
【クロノ】
「俺がそばにいて、お前を支え続けてやる」
【クロノ】
「辛いことは全て俺が受け止める。俺がお前を守ってやる」
幸せだ。ずっとそう言って欲しかった。
もうどうなってもいい。この優しい人と一緒にここにいたい。
そうだ、この人は他の人とは違う。
両親や同級生達のように、僕に冷たくしたり蔑んだりしない。
完璧ではない僕に、いつでも優しくしてくれる―――。
【浅多 侑思】
「……はっ!」
我に返って目覚めると、今までと同じ自分の部屋があって、一瞬混乱する。
【浅多 侑思】
「い、今のは、夢か……?」
体に残っている感触と、安堵感で満ちた胸を確かめるように、自分の体を抱き締める。
……まだ心臓がバクバクしている。
リビドーを装着しているのを確認して、唖然とした。
―――今のが、僕の願望なのか?
違う。僕の願望はもっと別のものだ。
仕事で成功してマネージャーに昇格して、完璧な人間になる僕の姿の筈だ。
じゃあ、さっきのはあいつ本人か?
……絶対に違う。
胸に苦い思いが滲んで、歯を噛みしめる。
さっきのは何かの間違いだ。そう思って再び目を閉じて横たわり、再び夢の世界の門を叩いた。
【クロノ】
「安心しきって眠ってたな」
【浅多 侑思】
「は……、え!?」
夢の中に入った筈なのに、なぜかまた僕の部屋。
そしてまた、死神が僕の体を抱いている。
【クロノ】
「……あのさ。言い難かったんだけど、ずっとお前をこうやってたから」
臀部の辺りに、何かを押し付けられて息を飲む。
【クロノ】
「ちょっと、勃った」
見上げたそいつの顔は、妙に熱っぽく、いつもの余裕は微塵もない。
初めて見る表情に、ズンと腰が疼き、体の奥から熱が引き上げられていく。
迫ってきた顔に慌てて口を開く。
【浅多 侑思】
「待てって…!」
【クロノ】
「そんなこと言っていいの?」
【浅多 侑思】
「……お前が悪いんだろ…っ」
そして、懲りずに迫ってきた顔を慌てて押しのけると、露骨に拗ねたように目を細めた。
また見たことのない顔に、どんどん体が熱くなってくる。
【クロノ】
「これ以上お預けする気なら、俺にも考えがある」
途端、死神の口元を押さえつけていた掌に、甘い刺激が走る。
―――舐められた。
思考が止まった瞬間、手首を取られてベッドに押し倒される。
奴はすかさず僕にまたがり、僕の頭上で手首を一纏めにし……微笑んだ。
【クロノ】
「じゃ、いただきます」
【浅多 侑思】
「……っ!」
抵抗する間もなく、首筋を吸い上げられて息が詰まる。
【浅多 侑思】
「あ、や、やめろ……!」
【クロノ】
「なんで?」
【クロノ】
「――あ、わかった。待ちきれないのか」
【浅多 侑思】
「違っ……うっ」
下半身を布の上から触られて、体が跳ねる。
それに気を良くしたのか、奴は器用に僕のベルトを緩めて……軽くそこを撫で上げた。
【浅多 侑思】
「……!!」
駄目だ。こんなのは違う。
こんなことは僕の願望な筈がない。違う。絶対に違う。
―――そうか? ずっとこいつとやってみたかったんじゃないか?
僕の体を使って、あの余裕ぶった顔を崩してみたかったんじゃないのか?
頭の奥で響いた声は、思考を一瞬で黒く染め上げた。
別の生き物のように手が動いて、死神の頭を鷲掴みにする。
―――そして、むさぼりつくように口付けた。
気分を紛らわせたくて飲み屋に向かうと、副社長―――綾さんがいた。
……わざわざ会社から遠い所を選んだというのに。
すぐに出ようとしたが、不意に入り口の方を振り向いた綾さんと目が合う。
そうなると、さすがに無視もできず、軽く会釈をする。
話しかけられる前に店を出ようとした時、入ってこようとする誰かと肩がぶつかった。
【国重 昂正】
「おっと、失礼」
【浅多 侑思】
「いえ、こちらこそすみません……」
その男は軽く手を上げて謝罪を残すと、まっすぐ誰かのもとへ向かっていく。
―――そして綾さんの前で止まり、懐から何かを出してみせる。
目を凝らして取りだした物をマジマジと見るが…手帳らしき物を取りだしたようだ。
【国重 昂正】
「どうも、綾上総さんですよね。ちょっと訊きたいことがあるんですがね」
け、警察…!?
先日の自分の行いに後ろめたいことがあるので、思わず後ずさる。
しかし綾さんは、こちらには目もくれず、淡々とその男と会話を始めた。
【国重 昂正】
「申し遅れましたね、自分はこういう者です」
【綾 上総】
「ああ、名刺……俺は今持ってないんですけど……」
【綾 上総】
「探偵……ね。で、俺に訊きたいことだって?」
【国重 昂正】
「ええ、よろしければ話をお訊かせいただいても?」
【綾 上総】
「……クソめんどくせーけど、今は機嫌がいいんで、いいですよ」
【国重 昂正】
「ご協力感謝します。では隣、失礼しますね」
【綾 上総】
「ああ、浅多、また職場でな!」
2人は僕に背を向けてしまったが……どんな話をするのか気になる。
どうやら警察じゃないらしい…。
警察だったら、僕のあの会社での出来事かと思ったが…。
いや、本当は警察であの件の事を………。
……やめよう。今更後悔しても仕方ないことだ。
それに…どう考えても、あの件に関しては悪いのは僕だ。
飲む気分じゃなくなってきたな…一杯だけ飲んだら帰ろう。
諦めて酒を煽っていると、2人の会話が耳に入ってきた。
【国重 昂正】
「……リビドーが」
【綾 上総】
「……ちょっと待てよ、俺は……」
【国重 昂正】
「……ってるんだ、いいか……」
コップを落としそうになった。……リビドーだと?
何で刑事さんが綾さんにリビドーの話を…?
【浅多 侑思】
(まさか…会社の人間がリビドーを使っている噂でも流れているのか…?)
もし、僕がリビドーを使っていることを知られたら。
あんな夢を見ていることを知られたら―――。
途端に、何故かわからない焦りが沸いてきて、一気に酒を煽って店を出た。
飲み屋から帰ってきて、寝間着に着替えてベッドに倒れ込む。
【浅多 侑思】
「……死にたい奴を助けたりはしない、か」
僕は、何をやってるんだろうな。
勝手にすればいいと言われたんだ。
あいつはもう、僕に干渉する気がないだけだろう。
きっとこの部屋には二度と来ない。
…喜べ。邪魔者がいなくなったんだ。あいつの事が気になるなんて…。
【浅多 侑思】
「何で…気になんだよっ……」
いつもより静かな部屋で、自分に言い聞かせてみたが、気分は暗いままだ。
ベッド脇に置いてあるリビドーを眺める。
酷い夢を見たことや、あいつに言われたことなどが頭を過ぎったが―――。
僕の手は、何かの呪いのようにリビドーを取った。
【浅多 侑思】
「……」
目を開けると、いつものオフィス街ではなかった。
そこは……いつもあいつが訪ねてくる、僕の部屋。
僕はベッドに座り、ドアの方をじっと見ている。
不意に横から伸びてきた手に驚いて振り返ると―――慈愛に満ちた眼差しのあいつがいた。
【クロノ】
「また考え事?俺と一緒にいる時くらい、構えずに楽にしてればいい。何も考えなくていい」
違和感に身構える。
今のあいつが、僕に何も考えるなと言う筈がない。
絶対にこれは本物ではない……、また悪夢か?
遠ざかろうとすると、引き寄せられて、胸の中にすっぽりと抱き込まれる。
あいつの匂いが混じった、心地よい香りと体温に眩暈がしそうな程だったが、頭を振って跳ね除ける。
【浅多 侑思】
「はっ……離せ」
【クロノ】
「……可愛い。そうやって無駄な抵抗して」
妖しく笑って、死神は俺の唇を指でなぞった。
【浅多 侑思】
「なっ……!」
【クロノ】
「何驚いてる。もっとやらしいこと沢山しただろ」
【浅多 侑思】
「……!!」
確かに、目覚めたら服が破けてたことはあったが、何をされたのかは知らない。
い、いや、考えればわかりそうだが、考えたくない。
【クロノ】
「耳まで真っ赤。恥ずかしがることないのに。だって―――」
顎を掴まれ、顔を引き寄せられる。
顔をそむけたまま―――耳元で甘く囁かれる。
【クロノ】
「お前は、ずっとここにいていいんだ」
そう言われた瞬間、胸がいっぱいになる。
多幸感が満ちてきて、体中から力が抜ける。
だけど死神が、しっかりと支えてくれた。
【クロノ】
「俺と一緒にずっとここにいよう。もう現実になんて戻らなくていい」
【クロノ】
「俺がそばにいて、お前を支え続けてやる」
【クロノ】
「辛いことは全て俺が受け止める。俺がお前を守ってやる」
幸せだ。ずっとそう言って欲しかった。
もうどうなってもいい。この優しい人と一緒にここにいたい。
そうだ、この人は他の人とは違う。
両親や同級生達のように、僕に冷たくしたり蔑んだりしない。
完璧ではない僕に、いつでも優しくしてくれる―――。
【浅多 侑思】
「……はっ!」
我に返って目覚めると、今までと同じ自分の部屋があって、一瞬混乱する。
【浅多 侑思】
「い、今のは、夢か……?」
体に残っている感触と、安堵感で満ちた胸を確かめるように、自分の体を抱き締める。
……まだ心臓がバクバクしている。
リビドーを装着しているのを確認して、唖然とした。
―――今のが、僕の願望なのか?
違う。僕の願望はもっと別のものだ。
仕事で成功してマネージャーに昇格して、完璧な人間になる僕の姿の筈だ。
じゃあ、さっきのはあいつ本人か?
……絶対に違う。
胸に苦い思いが滲んで、歯を噛みしめる。
さっきのは何かの間違いだ。そう思って再び目を閉じて横たわり、再び夢の世界の門を叩いた。
【クロノ】
「安心しきって眠ってたな」
【浅多 侑思】
「は……、え!?」
夢の中に入った筈なのに、なぜかまた僕の部屋。
そしてまた、死神が僕の体を抱いている。
【クロノ】
「……あのさ。言い難かったんだけど、ずっとお前をこうやってたから」
臀部の辺りに、何かを押し付けられて息を飲む。
【クロノ】
「ちょっと、勃った」
見上げたそいつの顔は、妙に熱っぽく、いつもの余裕は微塵もない。
初めて見る表情に、ズンと腰が疼き、体の奥から熱が引き上げられていく。
迫ってきた顔に慌てて口を開く。
【浅多 侑思】
「待てって…!」
【クロノ】
「そんなこと言っていいの?」
【浅多 侑思】
「……お前が悪いんだろ…っ」
そして、懲りずに迫ってきた顔を慌てて押しのけると、露骨に拗ねたように目を細めた。
また見たことのない顔に、どんどん体が熱くなってくる。
【クロノ】
「これ以上お預けする気なら、俺にも考えがある」
途端、死神の口元を押さえつけていた掌に、甘い刺激が走る。
―――舐められた。
思考が止まった瞬間、手首を取られてベッドに押し倒される。
奴はすかさず僕にまたがり、僕の頭上で手首を一纏めにし……微笑んだ。
【クロノ】
「じゃ、いただきます」
【浅多 侑思】
「……っ!」
抵抗する間もなく、首筋を吸い上げられて息が詰まる。
【浅多 侑思】
「あ、や、やめろ……!」
【クロノ】
「なんで?」
【クロノ】
「――あ、わかった。待ちきれないのか」
【浅多 侑思】
「違っ……うっ」
下半身を布の上から触られて、体が跳ねる。
それに気を良くしたのか、奴は器用に僕のベルトを緩めて……軽くそこを撫で上げた。
【浅多 侑思】
「……!!」
駄目だ。こんなのは違う。
こんなことは僕の願望な筈がない。違う。絶対に違う。
―――そうか? ずっとこいつとやってみたかったんじゃないか?
僕の体を使って、あの余裕ぶった顔を崩してみたかったんじゃないのか?
頭の奥で響いた声は、思考を一瞬で黒く染め上げた。
別の生き物のように手が動いて、死神の頭を鷲掴みにする。
―――そして、むさぼりつくように口付けた。