[本編] 浅多 侑思 編
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突然の大声に、浅多は目を白黒させていた。
握り締めた拳に爪が食い込んでいる。
頭の中では、あの『彼』のことを思い出していた。
病気のせいで、生きたくても生きられなくて。
俺がいたずらに関わったせいで、死なせてしまった高校生のことを。
浅多の胸ぐらを掴んで引き寄せ、できるだけ声を殺して告げる。
そうしないと、感情が溢れ出してしまいそうだったから。
【クロノ】
「そんな軽はずみな気持ちで死んでもいい?ふざけるな」
睨み付けている浅多の目の中には、怯えや不安はなく、驚きがあるだけだ。
―――俺がなぜ、急に怒り出したのかが理解できないんだろう。
それもそうだな。
何だか笑えてくる。
たかが人間に、こんなに肩入れすること自体がおかしいんだ。
【クロノ】
「そこまでして夢が見たいのか。ただの夢に命を賭けたいか」
浅多は答えない。
【クロノ】
「生きたくても生きられない者もいるのにと、正義面をするつもりはない」
【クロノ】
「ただ―――」
顔を上げて、目と鼻の先で口を開く。
【クロノ】
「俺は死にたい奴を助けたりはしない。勝手にすればいい」
突き飛ばすように浅多を解放し、その場から立ち去った。
目が覚めたのは、昼過ぎだった。
【クロノ】
「……体がだるい」
夢を見るのが怖くて、あまり眠れなかったせいで頭も痛い。
浅多の悪夢の中で、あんな光景を見せられた衝撃が、一夜明けても心の片隅に残っている。
夢の内容が、現実世界の精神状態にここまで影響あるとは思ってなかった。
浅多を含めた数多くの人間が、嵌る気持ちもわからないでもないけれど。
少なくとも俺は、憧憬夢を見るために死んでも良いなどとは思えない。
夢は夢、現実は現実。2つの世界は決して交わらない。
そして夢のことは、せいぜい1日経てば忘れてしまうだろう。
意識の奥に僅かに残った金木犀の香りも、明日になれば完全に消え去る。
でも、浅多のことは、そうもいかない。
【クロノ】
「手間のかかる奴」
死にたがりの堅物メガネめ。
毒づきながら、今まで事件についてまとめた資料を読み直し、立ち上がる。
頭の中の犯人像は、ほぼ形になった
【クロノ】
「……図書館にいるかな」
【クロノ】
「……行くか」
サーバーのラインを、死神界のものを使っているという時点で、犯人はかなり絞られる。
というか知る限りで、一人しか思いつかない。
あまり会いたくはないが、これも仕事だ。
…探すしかないか。
あいつが居そうなところを歩きまわって探してみると…。
俺もたまに仕事で訪れる図書館の奥の方で、奴は本を読んでいた。
何の本を読んでるんだろうと、表紙や背表紙に目を凝らしていると。
俺に気付いたユリスが顔を上げて、背中側に本を隠す。
【ユリス】
「うわ、珍しい。お前って読書趣味だったっけ?」
【クロノ】
「違う。お前に話があって来た」
ユリスの顔が、驚きと期待に輝く。
【ユリス】
「そう。それなら聞かないわけにはいかないね」
【ユリス】
「場所移動しよう。ここは本を読む所であって、話をする場所じゃないからね」
【ユリス】
「どこがいい?そのへんの喫茶店とか入る?」
【クロノ】
「どこでもいい」
何故か浮かれているユリスにうんざりしながら、後をついていく。
外を歩きながら、ユリスの様子を窺うと。
警戒しているといったよりは、機嫌がいいように見える。
……俺に探されてると知って、調子に乗ってるんだろう。
そう思うとちょっと癪だ。
【クロノ】
「時間の無駄だから、率直に言う」
【クロノ】
「人間界で起こってる例の事件の犯人、お前だろ?」
どういう反応をするだろうと、注意深く観察していたが。
ユリスは動じることなく、挑発的に笑った。
【ユリス】
「何の根拠があって言ってるの?」
【クロノ】
「決定的な証拠は、リビドー関連のサイトのほとんどが、死神界のラインを使っていたことだ」
【クロノ】
「どんなに解析しても、管理人不明。そこまでのプログラムを組める奴は、死神界でも数える程しかいない」
【クロノ】
「候補者の中で、お前だけ人間界への出入りが異常に多い」
【クロノ】
「そして、最近お前が狩った魂は、全てリビドーによる死者のものだ」
その他にも、ユリスを犯人だと特定するに至った経緯を告げていく。
最後まで言い終わると、奴はゆっくりと瞬きをし、不敵に微笑んだ。
【ユリス】
「へー、よくそこまで調べたね。頑張ったじゃん。褒めてあげる」
【クロノ】
「ふざけるな。他に言うことはないのか」
【ユリス】
「あるよ?結局証拠はないんだろ、とかさ」
【クロノ】
「……」
【ユリス】
「ねえ? 言い返せないよね?だって今のお前の話って
全部仮定だもんねぇ」
【ユリス】
「それで俺の首を立てに振らせようってのは無理があるんじゃない?」
唇を噛み締める。確かに、ユリスを犯人だとする証拠はまだ出てきてない。
俺が目を伏せている間に、奴はこちらに寄ってきていて。
手を伸ばし、俺の頬に触れるか触れないかの距離を保ちながら、ゆっくりとラインをなぞっていく。
【ユリス】
「そんなに、その人間が好きなの?」
【クロノ】
「は……?」
思いがけない言葉に目を丸くする俺を他所に、柔らかな声が続く。
【ユリス】
「だってそうじゃん?無気力で面倒臭がりのお前が、
ここまで根気強く調査してるなんて」
【ユリス】
「あ、死神長のおっさんから言われたから仕方なくって?
そんなの通じないよ」
【ユリス】
「労力に見合わないとか、長引きそうとか、
他の仕事の邪魔になるとか―――」
【ユリス】
「まともそうな言い訳なんて、幾らでもあるんだから」
【ユリス】
「人間なんてどうせただの点数稼ぎの道具じゃん」
【ユリス】
「もし血迷ってるなら、目ェ醒ましな。肩入れするだけ無駄だから」
【ユリス】
「あ、もしかしてあの人間とヤッたとか?」
【ユリス】
「人間なんかじゃ物足りなくて溜まってんでしょ? 俺が解消してやろっか」
ニヤリと微笑んだユリスは、緩やかに、俺の頬にあった手を下半身へ伸ばす。
それを払いのけて、俺は背を向けて歩き出した。
―――好き? あいつを? 俺が?
幾ら考えても、答えは出なかった。
……
…
あれから、何もする気が起きなくてずっと寝転がっていて。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
外は暗く、街の灯りが点っている。いつもならそろそろ帰宅する時間だ。
それからパソコンをつけて、paraisoを開く。
何もせず画面だけを眺めていると、10分程経った。あいつは現れない。
それから寝転がって20分起きていた。まだ来ない。
風呂に入ってから水を飲み……時計を見る。
30分経ったが、やはりあいつは現れない。
【浅多 侑思】
「……」
握り締めた拳に爪が食い込んでいる。
頭の中では、あの『彼』のことを思い出していた。
病気のせいで、生きたくても生きられなくて。
俺がいたずらに関わったせいで、死なせてしまった高校生のことを。
浅多の胸ぐらを掴んで引き寄せ、できるだけ声を殺して告げる。
そうしないと、感情が溢れ出してしまいそうだったから。
【クロノ】
「そんな軽はずみな気持ちで死んでもいい?ふざけるな」
睨み付けている浅多の目の中には、怯えや不安はなく、驚きがあるだけだ。
―――俺がなぜ、急に怒り出したのかが理解できないんだろう。
それもそうだな。
何だか笑えてくる。
たかが人間に、こんなに肩入れすること自体がおかしいんだ。
【クロノ】
「そこまでして夢が見たいのか。ただの夢に命を賭けたいか」
浅多は答えない。
【クロノ】
「生きたくても生きられない者もいるのにと、正義面をするつもりはない」
【クロノ】
「ただ―――」
顔を上げて、目と鼻の先で口を開く。
【クロノ】
「俺は死にたい奴を助けたりはしない。勝手にすればいい」
突き飛ばすように浅多を解放し、その場から立ち去った。
目が覚めたのは、昼過ぎだった。
【クロノ】
「……体がだるい」
夢を見るのが怖くて、あまり眠れなかったせいで頭も痛い。
浅多の悪夢の中で、あんな光景を見せられた衝撃が、一夜明けても心の片隅に残っている。
夢の内容が、現実世界の精神状態にここまで影響あるとは思ってなかった。
浅多を含めた数多くの人間が、嵌る気持ちもわからないでもないけれど。
少なくとも俺は、憧憬夢を見るために死んでも良いなどとは思えない。
夢は夢、現実は現実。2つの世界は決して交わらない。
そして夢のことは、せいぜい1日経てば忘れてしまうだろう。
意識の奥に僅かに残った金木犀の香りも、明日になれば完全に消え去る。
でも、浅多のことは、そうもいかない。
【クロノ】
「手間のかかる奴」
死にたがりの堅物メガネめ。
毒づきながら、今まで事件についてまとめた資料を読み直し、立ち上がる。
頭の中の犯人像は、ほぼ形になった
【クロノ】
「……図書館にいるかな」
【クロノ】
「……行くか」
サーバーのラインを、死神界のものを使っているという時点で、犯人はかなり絞られる。
というか知る限りで、一人しか思いつかない。
あまり会いたくはないが、これも仕事だ。
…探すしかないか。
あいつが居そうなところを歩きまわって探してみると…。
俺もたまに仕事で訪れる図書館の奥の方で、奴は本を読んでいた。
何の本を読んでるんだろうと、表紙や背表紙に目を凝らしていると。
俺に気付いたユリスが顔を上げて、背中側に本を隠す。
【ユリス】
「うわ、珍しい。お前って読書趣味だったっけ?」
【クロノ】
「違う。お前に話があって来た」
ユリスの顔が、驚きと期待に輝く。
【ユリス】
「そう。それなら聞かないわけにはいかないね」
【ユリス】
「場所移動しよう。ここは本を読む所であって、話をする場所じゃないからね」
【ユリス】
「どこがいい?そのへんの喫茶店とか入る?」
【クロノ】
「どこでもいい」
何故か浮かれているユリスにうんざりしながら、後をついていく。
外を歩きながら、ユリスの様子を窺うと。
警戒しているといったよりは、機嫌がいいように見える。
……俺に探されてると知って、調子に乗ってるんだろう。
そう思うとちょっと癪だ。
【クロノ】
「時間の無駄だから、率直に言う」
【クロノ】
「人間界で起こってる例の事件の犯人、お前だろ?」
どういう反応をするだろうと、注意深く観察していたが。
ユリスは動じることなく、挑発的に笑った。
【ユリス】
「何の根拠があって言ってるの?」
【クロノ】
「決定的な証拠は、リビドー関連のサイトのほとんどが、死神界のラインを使っていたことだ」
【クロノ】
「どんなに解析しても、管理人不明。そこまでのプログラムを組める奴は、死神界でも数える程しかいない」
【クロノ】
「候補者の中で、お前だけ人間界への出入りが異常に多い」
【クロノ】
「そして、最近お前が狩った魂は、全てリビドーによる死者のものだ」
その他にも、ユリスを犯人だと特定するに至った経緯を告げていく。
最後まで言い終わると、奴はゆっくりと瞬きをし、不敵に微笑んだ。
【ユリス】
「へー、よくそこまで調べたね。頑張ったじゃん。褒めてあげる」
【クロノ】
「ふざけるな。他に言うことはないのか」
【ユリス】
「あるよ?結局証拠はないんだろ、とかさ」
【クロノ】
「……」
【ユリス】
「ねえ? 言い返せないよね?だって今のお前の話って
全部仮定だもんねぇ」
【ユリス】
「それで俺の首を立てに振らせようってのは無理があるんじゃない?」
唇を噛み締める。確かに、ユリスを犯人だとする証拠はまだ出てきてない。
俺が目を伏せている間に、奴はこちらに寄ってきていて。
手を伸ばし、俺の頬に触れるか触れないかの距離を保ちながら、ゆっくりとラインをなぞっていく。
【ユリス】
「そんなに、その人間が好きなの?」
【クロノ】
「は……?」
思いがけない言葉に目を丸くする俺を他所に、柔らかな声が続く。
【ユリス】
「だってそうじゃん?無気力で面倒臭がりのお前が、
ここまで根気強く調査してるなんて」
【ユリス】
「あ、死神長のおっさんから言われたから仕方なくって?
そんなの通じないよ」
【ユリス】
「労力に見合わないとか、長引きそうとか、
他の仕事の邪魔になるとか―――」
【ユリス】
「まともそうな言い訳なんて、幾らでもあるんだから」
【ユリス】
「人間なんてどうせただの点数稼ぎの道具じゃん」
【ユリス】
「もし血迷ってるなら、目ェ醒ましな。肩入れするだけ無駄だから」
【ユリス】
「あ、もしかしてあの人間とヤッたとか?」
【ユリス】
「人間なんかじゃ物足りなくて溜まってんでしょ? 俺が解消してやろっか」
ニヤリと微笑んだユリスは、緩やかに、俺の頬にあった手を下半身へ伸ばす。
それを払いのけて、俺は背を向けて歩き出した。
―――好き? あいつを? 俺が?
幾ら考えても、答えは出なかった。
……
…
あれから、何もする気が起きなくてずっと寝転がっていて。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
外は暗く、街の灯りが点っている。いつもならそろそろ帰宅する時間だ。
それからパソコンをつけて、paraisoを開く。
何もせず画面だけを眺めていると、10分程経った。あいつは現れない。
それから寝転がって20分起きていた。まだ来ない。
風呂に入ってから水を飲み……時計を見る。
30分経ったが、やはりあいつは現れない。
【浅多 侑思】
「……」
