[本編] 浅多 侑思 編
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俺はあれから、急いで死神界に戻って、サイトやリビドーの調査を続行した。
―――こんな無様な姿を見ても、まだリビドーを捨てて
現実に生きろって言えるか
あの時、そう言ったあいつの表情が、脳裏に焼き付いて離れない。
俺は、パソコンを打つ手を止めた。
また、前の時のようになるには嫌なのに。
あの時の苦い思い出が金木犀の香りと共に蘇りそうになり、俺はきつく目をつむる。
そして、事件についての仮定を組み立てることだけに集中した。
―――数時間後
作業が一段落したので、姿を消して浅多の部屋を訪れる。
奴はパソコンに向かい、paraisoでチャットをしていた。
どうやら、既に数人がログインしているようで。
チャットルームでは、今日もリビドーの話題で持ち切りだ。
青白い光に照らされた無表情の顔が、規則的にキーを打つ音だけが響いている。
【マクシミリアヌス】
「最近、リビドーを使うのをやめろって、とある奴に言われてる」
【マクシミリアヌス】
「だけどやめられない。僕は弱い人間だから」
【マクシミリアヌス】
「お前たちはやめられそうか?僕は多分まだ無理だ」
【マクシミリアヌス】
「地獄を見に行くのは、きっとこの中では、僕が一番最初だろう」
【カイン】
「地獄なんて、大げさな言い方だ。大丈夫だよ、きっと」
【イクシード】
「地獄とかwww現実が似たようなもんだからwww
今こんなトコに居るんだろw」
俺は、浅多の瞳の奥をじっと見つめた。
こんな冷たい顔をしながら、淡々と文字にされていく感情が、
何だか悲しい。
浅多の額にそっと手を当てて、心の中で語りかける。
―――きっと俺が、なんとかしてやるから。
浅多がリビドーを装着して眠るのを待って、俺も夢の中へと身を落とした。
オフィスへと向かうと、浅多は相変わらず、笑顔の社員達に囲まれていた。
だけど、意気消沈しているらしく、何を言われても俯いているだけで言葉を発しようとはしない。
窓から入って目の前に降り立っても、今日は社員達をけしかけられる気配はない。
【クロノ】
「今、リビドーやあの謎のサイトのことを仕事で調べてる」
浅多は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに首を振った。
【浅多 侑思】
「僕にはもう……関係ない」
どうやら本格的に、自虐的になってるらしい。
【クロノ】
「お前さっき、paraisoでチャットをやってたな」
【浅多 侑思】
「覗き見とは悪趣味だな」
どうでも良さそうな返事に、俺は黙って手を伸ばし、動物にするように頭を撫でる。
【クロノ】
「死ぬつもりでいるみたいだし、どうせならその前に楽しませてもらうとしようか」
【クロノ】
「どうせ死ぬんだし、身体だって、どうなっても構わないよな」
座っていたパイプ椅子ごと押し倒し、ようやく驚いた浅多の対処が遅れているうちに馬乗りになる。
【クロノ】
「リビドーを使うのをやめろと言っても聞かない。何を言っても『お前には関係ない』の一点張り」
【浅多 侑思】
「は? なっ……!」
浅多の服を乱暴に引きちぎると、驚きと恐怖を浮かべて小刻みに震え始めた。
……ろくな抵抗もできないほど、怯えきってしまったらしい。
俺は自分の中にわだかまっていた怒りを鎮めて、浅多に背を向ける。
【クロノ】
「あんな下らない後輩の出世くらいで、お前が生きるのを諦めてどうする」
【クロノ】
「ここ数日見てただけでも、お前のいいとこ、結構見つけたのに」
飛び起きると、そこは僕の部屋だった。
自分の体を抱きしめながら視線を逸らすと、リビドーがそこにあった。
【浅多 侑思】
「死神……お前だって、僕を傷つけるじゃないか」
【浅多 侑思】
「この世界は、虚構を捨てて生き抜けるほど、僕に優しくはない」
そして僕は、目を伏せ……リビドーを手に取った。
―浅多1章・NORMAL END―
―――こんな無様な姿を見ても、まだリビドーを捨てて
現実に生きろって言えるか
あの時、そう言ったあいつの表情が、脳裏に焼き付いて離れない。
俺は、パソコンを打つ手を止めた。
また、前の時のようになるには嫌なのに。
あの時の苦い思い出が金木犀の香りと共に蘇りそうになり、俺はきつく目をつむる。
そして、事件についての仮定を組み立てることだけに集中した。
―――数時間後
作業が一段落したので、姿を消して浅多の部屋を訪れる。
奴はパソコンに向かい、paraisoでチャットをしていた。
どうやら、既に数人がログインしているようで。
チャットルームでは、今日もリビドーの話題で持ち切りだ。
青白い光に照らされた無表情の顔が、規則的にキーを打つ音だけが響いている。
【マクシミリアヌス】
「最近、リビドーを使うのをやめろって、とある奴に言われてる」
【マクシミリアヌス】
「だけどやめられない。僕は弱い人間だから」
【マクシミリアヌス】
「お前たちはやめられそうか?僕は多分まだ無理だ」
【マクシミリアヌス】
「地獄を見に行くのは、きっとこの中では、僕が一番最初だろう」
【カイン】
「地獄なんて、大げさな言い方だ。大丈夫だよ、きっと」
【イクシード】
「地獄とかwww現実が似たようなもんだからwww
今こんなトコに居るんだろw」
俺は、浅多の瞳の奥をじっと見つめた。
こんな冷たい顔をしながら、淡々と文字にされていく感情が、
何だか悲しい。
浅多の額にそっと手を当てて、心の中で語りかける。
―――きっと俺が、なんとかしてやるから。
浅多がリビドーを装着して眠るのを待って、俺も夢の中へと身を落とした。
オフィスへと向かうと、浅多は相変わらず、笑顔の社員達に囲まれていた。
だけど、意気消沈しているらしく、何を言われても俯いているだけで言葉を発しようとはしない。
窓から入って目の前に降り立っても、今日は社員達をけしかけられる気配はない。
【クロノ】
「今、リビドーやあの謎のサイトのことを仕事で調べてる」
浅多は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに首を振った。
【浅多 侑思】
「僕にはもう……関係ない」
どうやら本格的に、自虐的になってるらしい。
【クロノ】
「お前さっき、paraisoでチャットをやってたな」
【浅多 侑思】
「覗き見とは悪趣味だな」
どうでも良さそうな返事に、俺は黙って手を伸ばし、動物にするように頭を撫でる。
【クロノ】
「死ぬつもりでいるみたいだし、どうせならその前に楽しませてもらうとしようか」
【クロノ】
「どうせ死ぬんだし、身体だって、どうなっても構わないよな」
座っていたパイプ椅子ごと押し倒し、ようやく驚いた浅多の対処が遅れているうちに馬乗りになる。
【クロノ】
「リビドーを使うのをやめろと言っても聞かない。何を言っても『お前には関係ない』の一点張り」
【浅多 侑思】
「は? なっ……!」
浅多の服を乱暴に引きちぎると、驚きと恐怖を浮かべて小刻みに震え始めた。
……ろくな抵抗もできないほど、怯えきってしまったらしい。
俺は自分の中にわだかまっていた怒りを鎮めて、浅多に背を向ける。
【クロノ】
「あんな下らない後輩の出世くらいで、お前が生きるのを諦めてどうする」
【クロノ】
「ここ数日見てただけでも、お前のいいとこ、結構見つけたのに」
飛び起きると、そこは僕の部屋だった。
自分の体を抱きしめながら視線を逸らすと、リビドーがそこにあった。
【浅多 侑思】
「死神……お前だって、僕を傷つけるじゃないか」
【浅多 侑思】
「この世界は、虚構を捨てて生き抜けるほど、僕に優しくはない」
そして僕は、目を伏せ……リビドーを手に取った。
―浅多1章・NORMAL END―