[本編] 浅多 侑思 編
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【浅多 侑思】
「ん……ぁ」
呼吸が荒くなり、頬も紅潮してきてる。
これなら、もうすぐ目覚めそうだ。
【浅多 侑思】
「っ!?」
【クロノ】
「ああ、起きたか。良かった」
体を離して、ベッド脇に腰掛ける。
浅多はおずおずと起き上がると辺りを見渡し、自分の部屋だと分かるとほっと息を吐き―――。
口元を拭いながら、きつい視線を投げて寄越す。
【浅多 侑思】
「どうしてここへ来た。……それよりも、僕に何をしていた?」
【浅多 侑思】
「……寝込みを襲うなんて、最低な行為だぞ」
【クロノ】
「その最低な行為に感じてたみたいだけど」
微かに立ち上がっている股間を指摘してやると、浅多は慌てて布団で下半身を隠す。
【クロノ】
「ご所望なら、続き、してやるけど」
【浅多 侑思】
「結構だ! っ……とりあえず、助けてくれた礼は言っておく。
だが、これは不法侵入じゃないのか」
【クロノ】
「死神に、人間界の法律の話を持ち出さないでくれる」
【浅多 侑思】
「……確かにお前は僕の……ゆ、夢にも現れたし、
普通の人間には不可能なことばかりする」
浅多はしばらく考え込んでいたようだが、そのうち観念したように項垂れた。
【浅多 侑思】
「この状況じゃ、お前が人間じゃないということも、信じるしかないようだ」
【浅多 侑思】
「ということは……僕は本当に、近々死ぬってことか」
【クロノ】
「このままだと脳死する」
あっさりと言われたことが、逆に真実味があるように響いたらしく。
浅多は俺を見つめたまま絶句している。
【クロノ】
「だから何度も言った。リビドーを使うのをやめろと」
【クロノ】
「このままでいくと、10日後にお前は死ぬ」
【クロノ】
「俺の存在も認めてもらえたようだし、そろそろ寿命の件も信じてもらえた?」
【クロノ】
「そういうことだから、リビドーは回収させてもらう」
項垂れている浅多の方へ手を伸ばすと、その虚ろな顔を上げて―――。
【浅多 侑思】
「……断る」
今度は俺が絶句する番だった。
【浅多 侑思】
「出ていけ」
【クロノ】
「…分かった」
【浅多 侑思】
「……早く、出て行けよ」
あんなことがあった後だ、少し頭を冷やす時間が必要なのかもしれない。
今日の所は引き上げた方が良さそうだと判断し、大人しく腰を上げる。
【クロノ】
「虚構の成功と現実の命……どっちが大切か。一晩、頭を冷やして考えろ」
……
…
―――そして翌日
【浅多 侑思】
「……」
【クロノ】
「お帰り」
仕事が終わって帰ってくる頃を見計らい、俺は浅多の部屋に座っていた。
浅多は、しばらく立ち尽くし、玄関の鍵の具合を調べようとして……やめる。
溜息をついて部屋を出ていこうとする浅多を、俺はしつこく追い回す。
【クロノ】
「どうしてリビドーを使うのをやめない?」
延々と問い詰めても、返ってくるのは『僕にはまだ、リビドーが必要だからだ』
という答えだけ。
【クロノ】
「……教えてくれないなら体に聞くけど」
【浅多 侑思】
「は!?か、体が答えるわけないだろ、
そんな質問!」
馬鹿正直な返事に苦笑しながら、浅多が疲れきって眠るまで問答は続いた……。
昨日、死神が僕のところへ来て、なぜ夢を見ることを止めないのかと問うてきた。
あんな夢を見られてるくらいだから、薄汚い心の中まで読まれたようなものだ。
あの世界が、いかに心地よくて手放せないもので、いかに僕が現実世界で苦渋を舐めているか。
惨めったらしく、赤裸々に語ってやっても良かったが。
―――まだそれをやれるほど、僕は堕ちきれてなかった。
【部長】
「―――というわけで、海外支部にマネージャーは、
高島田くんに決定だ!」
これも悪夢の続きなら、どれだけマシだろう。
僕は立ち尽くしたまま、晴れやかな笑顔を浮かべる
高島田を眺めていた。
喝采に囲まれている高島田が、ふと僕と目を合わせて、
ニヤニヤしながら近づいてくる。
【高島田】
「いやあ、すんません。若輩者の俺が
掠め取るような真似しちまって。
ははは」
【高島田】
「先輩もずっと、このボジション狙ってましたもんね」
視界が怒りで歪むのを感じて、僕は黙ってその場から離れた。
ふと視線を逃すと、昨日の死神の姿が窓の向こうに見えた。
ということは夢か?
夢なら願ったり叶ったりだ。
奴はやけに神妙な顔をしている。
……なるほど、今までの流れを見ていたのか。
僕の無様な姿を見て笑っていたわけだ。
ギシリと胸の奥が軋む。
【浅多 侑思】
「ずっと見てたんだろう。なあ、これは夢か?」
死神は目を伏せた後、ゆっくりと首を振る。
―――僕は笑った。
【浅多 侑思】
「こんな無様な姿を見ても、まだリビドーを捨てて現実に生きろって言えるか!?」
奴と僕を隔てている窓に、拳を思い切り叩きつける。
死神は驚かず、ひび割れたガラスの向こうで悲しい目をしているのみ。
拳を離すと、ガラスに滲んだ血は、ちょうど奴の目元の辺りだった。
なんだか血の涙を流しているように見えて、僕はまた笑った。
――こんな現実を生きて…何になるんだ。
死神なんかに……僕の気持ちが分かる訳ない。
こんな生き地獄……誰だって逃げ出したくなるだろ…。
【浅多 侑思】
「お前なんかに…分かる訳ない…っ!」
―――もう一度、強くガラスを叩きつけた。
「ん……ぁ」
呼吸が荒くなり、頬も紅潮してきてる。
これなら、もうすぐ目覚めそうだ。
【浅多 侑思】
「っ!?」
【クロノ】
「ああ、起きたか。良かった」
体を離して、ベッド脇に腰掛ける。
浅多はおずおずと起き上がると辺りを見渡し、自分の部屋だと分かるとほっと息を吐き―――。
口元を拭いながら、きつい視線を投げて寄越す。
【浅多 侑思】
「どうしてここへ来た。……それよりも、僕に何をしていた?」
【浅多 侑思】
「……寝込みを襲うなんて、最低な行為だぞ」
【クロノ】
「その最低な行為に感じてたみたいだけど」
微かに立ち上がっている股間を指摘してやると、浅多は慌てて布団で下半身を隠す。
【クロノ】
「ご所望なら、続き、してやるけど」
【浅多 侑思】
「結構だ! っ……とりあえず、助けてくれた礼は言っておく。
だが、これは不法侵入じゃないのか」
【クロノ】
「死神に、人間界の法律の話を持ち出さないでくれる」
【浅多 侑思】
「……確かにお前は僕の……ゆ、夢にも現れたし、
普通の人間には不可能なことばかりする」
浅多はしばらく考え込んでいたようだが、そのうち観念したように項垂れた。
【浅多 侑思】
「この状況じゃ、お前が人間じゃないということも、信じるしかないようだ」
【浅多 侑思】
「ということは……僕は本当に、近々死ぬってことか」
【クロノ】
「このままだと脳死する」
あっさりと言われたことが、逆に真実味があるように響いたらしく。
浅多は俺を見つめたまま絶句している。
【クロノ】
「だから何度も言った。リビドーを使うのをやめろと」
【クロノ】
「このままでいくと、10日後にお前は死ぬ」
【クロノ】
「俺の存在も認めてもらえたようだし、そろそろ寿命の件も信じてもらえた?」
【クロノ】
「そういうことだから、リビドーは回収させてもらう」
項垂れている浅多の方へ手を伸ばすと、その虚ろな顔を上げて―――。
【浅多 侑思】
「……断る」
今度は俺が絶句する番だった。
【浅多 侑思】
「出ていけ」
【クロノ】
「…分かった」
【浅多 侑思】
「……早く、出て行けよ」
あんなことがあった後だ、少し頭を冷やす時間が必要なのかもしれない。
今日の所は引き上げた方が良さそうだと判断し、大人しく腰を上げる。
【クロノ】
「虚構の成功と現実の命……どっちが大切か。一晩、頭を冷やして考えろ」
……
…
―――そして翌日
【浅多 侑思】
「……」
【クロノ】
「お帰り」
仕事が終わって帰ってくる頃を見計らい、俺は浅多の部屋に座っていた。
浅多は、しばらく立ち尽くし、玄関の鍵の具合を調べようとして……やめる。
溜息をついて部屋を出ていこうとする浅多を、俺はしつこく追い回す。
【クロノ】
「どうしてリビドーを使うのをやめない?」
延々と問い詰めても、返ってくるのは『僕にはまだ、リビドーが必要だからだ』
という答えだけ。
【クロノ】
「……教えてくれないなら体に聞くけど」
【浅多 侑思】
「は!?か、体が答えるわけないだろ、
そんな質問!」
馬鹿正直な返事に苦笑しながら、浅多が疲れきって眠るまで問答は続いた……。
昨日、死神が僕のところへ来て、なぜ夢を見ることを止めないのかと問うてきた。
あんな夢を見られてるくらいだから、薄汚い心の中まで読まれたようなものだ。
あの世界が、いかに心地よくて手放せないもので、いかに僕が現実世界で苦渋を舐めているか。
惨めったらしく、赤裸々に語ってやっても良かったが。
―――まだそれをやれるほど、僕は堕ちきれてなかった。
【部長】
「―――というわけで、海外支部にマネージャーは、
高島田くんに決定だ!」
これも悪夢の続きなら、どれだけマシだろう。
僕は立ち尽くしたまま、晴れやかな笑顔を浮かべる
高島田を眺めていた。
喝采に囲まれている高島田が、ふと僕と目を合わせて、
ニヤニヤしながら近づいてくる。
【高島田】
「いやあ、すんません。若輩者の俺が
掠め取るような真似しちまって。
ははは」
【高島田】
「先輩もずっと、このボジション狙ってましたもんね」
視界が怒りで歪むのを感じて、僕は黙ってその場から離れた。
ふと視線を逃すと、昨日の死神の姿が窓の向こうに見えた。
ということは夢か?
夢なら願ったり叶ったりだ。
奴はやけに神妙な顔をしている。
……なるほど、今までの流れを見ていたのか。
僕の無様な姿を見て笑っていたわけだ。
ギシリと胸の奥が軋む。
【浅多 侑思】
「ずっと見てたんだろう。なあ、これは夢か?」
死神は目を伏せた後、ゆっくりと首を振る。
―――僕は笑った。
【浅多 侑思】
「こんな無様な姿を見ても、まだリビドーを捨てて現実に生きろって言えるか!?」
奴と僕を隔てている窓に、拳を思い切り叩きつける。
死神は驚かず、ひび割れたガラスの向こうで悲しい目をしているのみ。
拳を離すと、ガラスに滲んだ血は、ちょうど奴の目元の辺りだった。
なんだか血の涙を流しているように見えて、僕はまた笑った。
――こんな現実を生きて…何になるんだ。
死神なんかに……僕の気持ちが分かる訳ない。
こんな生き地獄……誰だって逃げ出したくなるだろ…。
【浅多 侑思】
「お前なんかに…分かる訳ない…っ!」
―――もう一度、強くガラスを叩きつけた。