[本編] 浅多 侑思 編
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積乱雲のようだった黒い影は、やがてコールタールのような塊に成長した。
そして、うっすらと目らしきものを開けて、俺と浅多を見下ろしたような気がした。
【浅多 侑思】
「……」
射竦められたように動かない浅多の前に立ちふさがり、天を振り仰ぐ。
【クロノ】
「聞こえるか!? じい!!」
【アンク】
『そろそろ出番だと思っておりましたぞ!出ましたな、悪夢が!』
姿は見えないものの、じいの声が空から大きく響き渡る。
【化物】
「オオオオオオオ……!」
化物は雄叫びをあげて、俺達に向かってくると――手を振り上げた。
俺は下ろしたばかりの浅多を抱えて高くジャンプし、化物と更に離れたところに着地する。
【アンク】
『夢は夢、実体のある化物とは違うもの!それ故、力押しでは消し去れませんぞ!』
【アンク】
『本体のどこかに、靄のような『綻び』が必ずあります!』
【クロノ】
「弱点ってことか!?そんなものみすみす見えるところにあるわけないだろ……!?」
悪夢の象徴とやらの黒い物体は、おもむろに首らしきものを動かして―――。
まだ残っている世界を、全て喰らい尽くさんとばかりにかき集めて巨大化を続けている。
【アンク】
『それは正しい夢の名残、夢の始まりでございます。隠しきれるものでは決してございません!』
【アンク】
『そこを突けば、塵は塵へ、悪夢は夢へ還るでしょう!』
【クロノ】
「―――わかった」
鎌を構え直し、巨大な化物を見上げる。
【アンク】
『さて、久方ぶりの戦闘かと思いますが、腕はなまっておりませんな!? クロノ様!』
【クロノ】
「さあ、どうだか……せいぜい返り討ちに合わないよう努力するけど」
足元にへたり込んでいる浅多を最後に一度だけ見下ろす。
【クロノ】
「じい、そいつのこと頼んだ」
夢の中だから実際に死ぬこともないとは思うが、万が一の事があっては困る。
【アンク】
「お任せを」
空間から滲み出る様に、じいが浅多の横に姿を現した。
【アンク】
「ホホホ。まるでナイトですな、クロノ様」
【クロノ】
「そいつ死なせたら、任務失敗だろ」
からかう様な、じいの言葉に一言だけ反論して、地面を蹴った。
滞空しながら夢の残骸を見下ろし、化物を探す。
そいつは、周囲の夢を飲み込みながら、血眼で俺達を探しているようだ。
鎌の柄をきつく握り締めながら、化物の体のどこかにある綻びを探す。
【クロノ】
(あった……! あれか!)
短く息を吸い込み、空中を蹴った。
そしてどんどん加速していき、化物が俺の方を向いた時には―――。
俺は奴の目の前で、鎌を振り上げていた。
【クロノ】
「悪いな、仕事なんだ」
鎌の先端が、化物の首の下にあった綻び突き刺さる。
【化物】
「ぐぉおオオオオおぉぉぉ……!」
一瞬凍ったように静止した化物は、2秒後にはあっけなく霧散した―――。
見下ろした地上に浅多の姿を確認し、ほっとしながら下降していく。
しかし、浅多の近くにじいの姿がないことに気付く。
じいのことだから、化物が消えた事を確認してから先に現実世界に戻って、装置の状態の確認でもしにいったんだろう。
地上に降り立ち浅多に近寄ると、表情が翳っていた。
【クロノ】
「……どうかしたのか」
浅多は、言葉を選ぶように視線をさまよわせた後、嘲笑した。
【浅多 侑思】
「どうやら出られないらしい」
【クロノ】
「は……?」
【浅多 侑思】
「いつもなら自然に目が覚めるんだが、 今日は、そうもいかないようだ」
【浅多 侑思】
「ここが夢の中だとはわかってるのに、覚醒の仕方がわからないなんて
……笑い草だ」
【クロノ】
「……俺が先に現実に戻って、お前を起こしてやる」
【クロノ】
「だから、少しだけ待ってろ」
浅多を抱きしめる。
【浅多 侑思】
「そういう女みたいな扱いをするな…」
恥ずかしがる浅多の体を抱き寄せ、慰めるつもりで背中を軽く叩く。
【浅多 侑思】
「…!そ、そういう女子供のような扱いはやめろって……」
浅多の赤面に思わずクスリと笑ってしまう。
浅多に微笑みかけると―――急いで意識を浮上させた。
飛び起きた俺は、急いで裏スイッチを探して押す。
俺のヘッドセットが青白く光り、その光が回線を辿って浅多のヘッドセットに吸い込まれていく 。
―――だけど、浅多は目を覚ます気配がない。
【アンク】
「やはり、脳波だけでは無理でしたか……懸念はしていたのですが」
【クロノ】
「じい! これってどういうこと?」
突然現れたじいは、浅多の体に触ってうむむと唸る。
【アンク】
「この場合は、外部からの直接的な刺激が必要ですな」
【アンク】
「どうか勝手をお許し下さい」
【アンク】
「こんなこともあろうかと、クロノ様の体にとある仕掛けを致しました」
【クロノ】
「前置きはいいから、手短に説明して」
【アンク】
「かしこまりました。人命救助と思って、クロノ様の口から浅多さんの口へ―――」
【アンク】
「何か流し込むよう意識しながら接触してみてくださいませ」
【アンク】
「…きっと目を覚まされることでしょう」
閉口した俺を置いて、じいは軽やかに身を翻して地面を蹴った。
【アンク】
「他の目があると気が散るでしょうからな、私めは一旦お暇致します」
そしてそのまま…じいは姿を消した。
俺は状況を整理しながら、再び浅多を見下ろす。
さっきの話を聞いたせいで、勝手に視線が唇に吸い寄せられてしまう。
【クロノ】
「……ていうか俺の体の仕掛けってなに…?」
【クロノ】
「妙なトコいじられてないだろうな……」
何をされたのかという不安を振り払い、浅多の顔を覗き込む。
とにかく、言われた通りにやってみよう。
【クロノ】
「これじゃ…本当に王子様って感じだな」
【クロノ】
「…毎回キスしないと起きないなんて、とんだお姫様だ」
溜息をついて、浅多に口付ける。
言われた通り、何かを流し込むように意識しながら。
浅多の唇は、ひんやりと冷たかった。
体温を与えるように、しばらく唇をつけたままにしてみる。
それでも反応がないので、角度を変えて深く口を合わせる。
【浅多 侑思】
「……ふ……」
浅多の瞼がピクリと痙攣したが、覚醒には至らないようだ。
歯の間から舌を挿し入れて、口内をねぶると、浅多の呼吸が熱くなってきた。
そして、うっすらと目らしきものを開けて、俺と浅多を見下ろしたような気がした。
【浅多 侑思】
「……」
射竦められたように動かない浅多の前に立ちふさがり、天を振り仰ぐ。
【クロノ】
「聞こえるか!? じい!!」
【アンク】
『そろそろ出番だと思っておりましたぞ!出ましたな、悪夢が!』
姿は見えないものの、じいの声が空から大きく響き渡る。
【化物】
「オオオオオオオ……!」
化物は雄叫びをあげて、俺達に向かってくると――手を振り上げた。
俺は下ろしたばかりの浅多を抱えて高くジャンプし、化物と更に離れたところに着地する。
【アンク】
『夢は夢、実体のある化物とは違うもの!それ故、力押しでは消し去れませんぞ!』
【アンク】
『本体のどこかに、靄のような『綻び』が必ずあります!』
【クロノ】
「弱点ってことか!?そんなものみすみす見えるところにあるわけないだろ……!?」
悪夢の象徴とやらの黒い物体は、おもむろに首らしきものを動かして―――。
まだ残っている世界を、全て喰らい尽くさんとばかりにかき集めて巨大化を続けている。
【アンク】
『それは正しい夢の名残、夢の始まりでございます。隠しきれるものでは決してございません!』
【アンク】
『そこを突けば、塵は塵へ、悪夢は夢へ還るでしょう!』
【クロノ】
「―――わかった」
鎌を構え直し、巨大な化物を見上げる。
【アンク】
『さて、久方ぶりの戦闘かと思いますが、腕はなまっておりませんな!? クロノ様!』
【クロノ】
「さあ、どうだか……せいぜい返り討ちに合わないよう努力するけど」
足元にへたり込んでいる浅多を最後に一度だけ見下ろす。
【クロノ】
「じい、そいつのこと頼んだ」
夢の中だから実際に死ぬこともないとは思うが、万が一の事があっては困る。
【アンク】
「お任せを」
空間から滲み出る様に、じいが浅多の横に姿を現した。
【アンク】
「ホホホ。まるでナイトですな、クロノ様」
【クロノ】
「そいつ死なせたら、任務失敗だろ」
からかう様な、じいの言葉に一言だけ反論して、地面を蹴った。
滞空しながら夢の残骸を見下ろし、化物を探す。
そいつは、周囲の夢を飲み込みながら、血眼で俺達を探しているようだ。
鎌の柄をきつく握り締めながら、化物の体のどこかにある綻びを探す。
【クロノ】
(あった……! あれか!)
短く息を吸い込み、空中を蹴った。
そしてどんどん加速していき、化物が俺の方を向いた時には―――。
俺は奴の目の前で、鎌を振り上げていた。
【クロノ】
「悪いな、仕事なんだ」
鎌の先端が、化物の首の下にあった綻び突き刺さる。
【化物】
「ぐぉおオオオオおぉぉぉ……!」
一瞬凍ったように静止した化物は、2秒後にはあっけなく霧散した―――。
見下ろした地上に浅多の姿を確認し、ほっとしながら下降していく。
しかし、浅多の近くにじいの姿がないことに気付く。
じいのことだから、化物が消えた事を確認してから先に現実世界に戻って、装置の状態の確認でもしにいったんだろう。
地上に降り立ち浅多に近寄ると、表情が翳っていた。
【クロノ】
「……どうかしたのか」
浅多は、言葉を選ぶように視線をさまよわせた後、嘲笑した。
【浅多 侑思】
「どうやら出られないらしい」
【クロノ】
「は……?」
【浅多 侑思】
「いつもなら自然に目が覚めるんだが、 今日は、そうもいかないようだ」
【浅多 侑思】
「ここが夢の中だとはわかってるのに、覚醒の仕方がわからないなんて
……笑い草だ」
【クロノ】
「……俺が先に現実に戻って、お前を起こしてやる」
【クロノ】
「だから、少しだけ待ってろ」
浅多を抱きしめる。
【浅多 侑思】
「そういう女みたいな扱いをするな…」
恥ずかしがる浅多の体を抱き寄せ、慰めるつもりで背中を軽く叩く。
【浅多 侑思】
「…!そ、そういう女子供のような扱いはやめろって……」
浅多の赤面に思わずクスリと笑ってしまう。
浅多に微笑みかけると―――急いで意識を浮上させた。
飛び起きた俺は、急いで裏スイッチを探して押す。
俺のヘッドセットが青白く光り、その光が回線を辿って浅多のヘッドセットに吸い込まれていく 。
―――だけど、浅多は目を覚ます気配がない。
【アンク】
「やはり、脳波だけでは無理でしたか……懸念はしていたのですが」
【クロノ】
「じい! これってどういうこと?」
突然現れたじいは、浅多の体に触ってうむむと唸る。
【アンク】
「この場合は、外部からの直接的な刺激が必要ですな」
【アンク】
「どうか勝手をお許し下さい」
【アンク】
「こんなこともあろうかと、クロノ様の体にとある仕掛けを致しました」
【クロノ】
「前置きはいいから、手短に説明して」
【アンク】
「かしこまりました。人命救助と思って、クロノ様の口から浅多さんの口へ―――」
【アンク】
「何か流し込むよう意識しながら接触してみてくださいませ」
【アンク】
「…きっと目を覚まされることでしょう」
閉口した俺を置いて、じいは軽やかに身を翻して地面を蹴った。
【アンク】
「他の目があると気が散るでしょうからな、私めは一旦お暇致します」
そしてそのまま…じいは姿を消した。
俺は状況を整理しながら、再び浅多を見下ろす。
さっきの話を聞いたせいで、勝手に視線が唇に吸い寄せられてしまう。
【クロノ】
「……ていうか俺の体の仕掛けってなに…?」
【クロノ】
「妙なトコいじられてないだろうな……」
何をされたのかという不安を振り払い、浅多の顔を覗き込む。
とにかく、言われた通りにやってみよう。
【クロノ】
「これじゃ…本当に王子様って感じだな」
【クロノ】
「…毎回キスしないと起きないなんて、とんだお姫様だ」
溜息をついて、浅多に口付ける。
言われた通り、何かを流し込むように意識しながら。
浅多の唇は、ひんやりと冷たかった。
体温を与えるように、しばらく唇をつけたままにしてみる。
それでも反応がないので、角度を変えて深く口を合わせる。
【浅多 侑思】
「……ふ……」
浅多の瞼がピクリと痙攣したが、覚醒には至らないようだ。
歯の間から舌を挿し入れて、口内をねぶると、浅多の呼吸が熱くなってきた。