[本編] 浅多 侑思 編
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浅多の顔を覗き込んだまま、俺は物思いに耽っていた。
今回の夢では、無理やり追い出されなかっただけ良かったけど。
さんざん罵られた上に顎まで殴られた俺としては、何だか素直に喜べない。
【クロノ】
「……黙ってればまだ可愛げあるのに」
眉間の皺が消えるよう、指で軽く擦ってから。
眠っている浅多の額に張り付いた前髪を払ってやる。
【クロノ】
「……わかった。する、するよ」
【クロノ】
「キスならどこにしても構わない?」
まあ、という返事があったので、浅多の額に唇を軽く落とす。
【クロノ】
「悪かったな、無理させて」
顔を上げてから、意見を問うつもりでじいに視線を流す。
【クロノ】
「今更、想いが篭ってなきゃダメとか言うのはナシだから」
【アンク】
「ま、大丈夫でしょう。ご覧ください、息が軽くなりましたぞ」
確かに、浅多の呼吸が安定してきた。
頬もほんのり色づいてきている。
浅多が寝返りを打ったのを見て、俺とじいはベッドから離れた。
【アンク】
「これなら、後は自然覚醒するでしょう」
【クロノ】
「それなら良かった。てか、今時計見て思ったんだけど」
【アンク】
「はい、どうされました?」
【クロノ】
「こいつがリビドーをつけてすぐ後を追ったんだけど、もう4時間以上経過してる」
じいが難しそうな顔をして、俯いた。
【クロノ】
「憧憬夢を見れるのは3時間が限度って聞いてる。……これが死ぬ前兆ってこと?」
【アンク】
「本日の収穫と、それに伴う疑問点は―――」
【アンク】
「私めが調べておきますので、クロノ様は明日に備えてお休みください」
今はそれ以外にできることはなにもない。
俺達は仕方なくその場から退散した。
【クロノ】
「背中と肩が痛い……」
かれこれ数時間、俺は机に向かっていた。
じいは、自分が調べると言ってくれたけど、俺も出来ることはやろうと思った。
長管轄の倉庫から大量の資料を借りてきて、朝早くからぶっ通しで調べ物。
この中から、昨日のサイトのことを調べるのは骨が折れた。
そして、ようやく見つけた情報を、パソコンに打ち込んでいく。
ちなみにパソコンは、死神界でも普及はしている。
俺も一般的な操作くらいはできるけど、やっぱりアナログの方が向いてると思う。
一通りまとめ終わった資料を、読み返してみる。
昨日、浅多がインストールしていたもの。あれは、じい曰く―――。
『Libido-inflate plug-in』通称LIPと呼ばれているものらしい。
3時間以上連続した憧憬夢を見ることが可能になるよう、
機能拡張プログラムらしい
【クロノ】
「憧憬夢を見ている間は幸せって事か」
【クロノ】
「……バカな奴だ」
現代日本の若者の間に広がる噂20XX、という見出しの資料には。
リビドーとLIPに関しての記述があった―――。
『すなわち夢とは、その者が生きることのできる、もう1つの現実である』
『リビドーという脳波装置は、その世界での神の椅子を提供してくれるが』
『自分が創造主になることの代償は、決して小さくはない』
『人工的に脳波を調整することは、使用時間に比例して脳に多大な負担がかかる』
『いずれ脳波に歪みが生じ、死に近づくことだろう』
『忘れてはいけない―――』
『貴方の望む夢の園の片隅には、死神が住んでいる』
手にしていた資料を、机の上に置いた。
貴方の望む夢の園の片隅には、死神が住んでいる―――か。
【クロノ】
「皮肉だな……いるよ、本当に」
……とにかく、この資料によると、脳波を弄ること自体が危険なのだから。
LIPによって、長時間の夢を見続けることは自殺行為だ。
きっと、今回の事件での死亡者のほとんどが、LIP使用者なんじゃないだろうか。
じいからあらかじめ渡されていた、死期が近い人間のリストを広げる。
そこに、浅多の名前がある。
何度も見た死因の項目に、目を落とす。
『死因:突然死』
【クロノ】
「はあ……」
あいつは俺の話をまったく聞こうとしない。
このままだと、このリストの通りになるだろう。
阻止するためには、もっと情報が必要だ。
気を取り直して、LIP使用者についての資料を漁る。
どうやら限られたリビドー使用者だけに、ダウンロード用のURLがメールで送られてくるようだ。
【クロノ】
「……選ばれた人間のみに、LIPの配布が行われてるみたいだけど」
【クロノ】
(個人個人に関係性はないな。共通点も……、あ)
【アンク】
「調子はいかがですか、クロノ様」
【クロノ】
「おわっ!? びっくりした……」
突然目の前に現れたじいを手で追い払いながら、驚いて落としてしまった物を拾う。
【クロノ】
「……出てくるにしても、普通、遠慮して玄関とか廊下とか選ぶもんだと思うけど」
【アンク】
「私とクロノ様の仲ではありませんか、そう堅いことは言わずに」
【アンク】
「さあ、今日の戦果を報告して下され」
目を輝かせているじいを一瞥して、俺は渋々と資料を開いた。
【クロノ】
「あの謎のチャットサイトのparaisoや、拡張プラグインのLIPが―――」
【クロノ】
「どういうものなのかはハッキリしたけど」
【クロノ】
「その辺はじいも調査済だろうから省くとして……謎なのは死んだ人間の共通点」
【クロノ】
「ほとんどどころか、全員がトラウマ持ちだった」
【クロノ】
「ちょっと偶然にしては出来すぎだ」
【アンク】
「ふむ……夢に逃げるのは基本そう言った人間達だからでは?」
【クロノ】
「だけど全員ってのは、絶対おかしいと思う」
【アンク】
「ふむ……まあ、違和感はあるものの、今ひとつハッキリしませんな」
【アンク】
「そういえば、私もparaisoについて調べてみたのですが」
【アンク】
「プロテクトがかかっていて、パスワードがないと閲覧はできませんでした」
【クロノ】
「……でも浅多が見れたってことは……」
【アンク】
「ええ、LIP使用者だけが入ることのできるチャットです」
【アンク】
「私も、死神の力を使ったり、ネットに詳しい友人に助力を乞うてみたりしたのですが」
【アンク】
「これほど頑丈なプロテクトも珍しいとのことです」
【クロノ】
(じい、友達とかいたのか…)
【クロノ】
「…ホントきな臭い……いいよ、浅多の部屋でサイトの中身の確認はしてるから」
【クロノ】
「見た感じ、普通のチャットサイトだったし、」
【クロノ】
「特に問題ないと思う。」
【アンク】
「情報収集に活用出来そうですな」
【クロノ】
「……情報収集とかには、使えそうだな」
神妙に頷いたじいが立ち上がり、時計を見やる。
今回の夢では、無理やり追い出されなかっただけ良かったけど。
さんざん罵られた上に顎まで殴られた俺としては、何だか素直に喜べない。
【クロノ】
「……黙ってればまだ可愛げあるのに」
眉間の皺が消えるよう、指で軽く擦ってから。
眠っている浅多の額に張り付いた前髪を払ってやる。
【クロノ】
「……わかった。する、するよ」
【クロノ】
「キスならどこにしても構わない?」
まあ、という返事があったので、浅多の額に唇を軽く落とす。
【クロノ】
「悪かったな、無理させて」
顔を上げてから、意見を問うつもりでじいに視線を流す。
【クロノ】
「今更、想いが篭ってなきゃダメとか言うのはナシだから」
【アンク】
「ま、大丈夫でしょう。ご覧ください、息が軽くなりましたぞ」
確かに、浅多の呼吸が安定してきた。
頬もほんのり色づいてきている。
浅多が寝返りを打ったのを見て、俺とじいはベッドから離れた。
【アンク】
「これなら、後は自然覚醒するでしょう」
【クロノ】
「それなら良かった。てか、今時計見て思ったんだけど」
【アンク】
「はい、どうされました?」
【クロノ】
「こいつがリビドーをつけてすぐ後を追ったんだけど、もう4時間以上経過してる」
じいが難しそうな顔をして、俯いた。
【クロノ】
「憧憬夢を見れるのは3時間が限度って聞いてる。……これが死ぬ前兆ってこと?」
【アンク】
「本日の収穫と、それに伴う疑問点は―――」
【アンク】
「私めが調べておきますので、クロノ様は明日に備えてお休みください」
今はそれ以外にできることはなにもない。
俺達は仕方なくその場から退散した。
【クロノ】
「背中と肩が痛い……」
かれこれ数時間、俺は机に向かっていた。
じいは、自分が調べると言ってくれたけど、俺も出来ることはやろうと思った。
長管轄の倉庫から大量の資料を借りてきて、朝早くからぶっ通しで調べ物。
この中から、昨日のサイトのことを調べるのは骨が折れた。
そして、ようやく見つけた情報を、パソコンに打ち込んでいく。
ちなみにパソコンは、死神界でも普及はしている。
俺も一般的な操作くらいはできるけど、やっぱりアナログの方が向いてると思う。
一通りまとめ終わった資料を、読み返してみる。
昨日、浅多がインストールしていたもの。あれは、じい曰く―――。
『Libido-inflate plug-in』通称LIPと呼ばれているものらしい。
3時間以上連続した憧憬夢を見ることが可能になるよう、
機能拡張プログラムらしい
【クロノ】
「憧憬夢を見ている間は幸せって事か」
【クロノ】
「……バカな奴だ」
現代日本の若者の間に広がる噂20XX、という見出しの資料には。
リビドーとLIPに関しての記述があった―――。
『すなわち夢とは、その者が生きることのできる、もう1つの現実である』
『リビドーという脳波装置は、その世界での神の椅子を提供してくれるが』
『自分が創造主になることの代償は、決して小さくはない』
『人工的に脳波を調整することは、使用時間に比例して脳に多大な負担がかかる』
『いずれ脳波に歪みが生じ、死に近づくことだろう』
『忘れてはいけない―――』
『貴方の望む夢の園の片隅には、死神が住んでいる』
手にしていた資料を、机の上に置いた。
貴方の望む夢の園の片隅には、死神が住んでいる―――か。
【クロノ】
「皮肉だな……いるよ、本当に」
……とにかく、この資料によると、脳波を弄ること自体が危険なのだから。
LIPによって、長時間の夢を見続けることは自殺行為だ。
きっと、今回の事件での死亡者のほとんどが、LIP使用者なんじゃないだろうか。
じいからあらかじめ渡されていた、死期が近い人間のリストを広げる。
そこに、浅多の名前がある。
何度も見た死因の項目に、目を落とす。
『死因:突然死』
【クロノ】
「はあ……」
あいつは俺の話をまったく聞こうとしない。
このままだと、このリストの通りになるだろう。
阻止するためには、もっと情報が必要だ。
気を取り直して、LIP使用者についての資料を漁る。
どうやら限られたリビドー使用者だけに、ダウンロード用のURLがメールで送られてくるようだ。
【クロノ】
「……選ばれた人間のみに、LIPの配布が行われてるみたいだけど」
【クロノ】
(個人個人に関係性はないな。共通点も……、あ)
【アンク】
「調子はいかがですか、クロノ様」
【クロノ】
「おわっ!? びっくりした……」
突然目の前に現れたじいを手で追い払いながら、驚いて落としてしまった物を拾う。
【クロノ】
「……出てくるにしても、普通、遠慮して玄関とか廊下とか選ぶもんだと思うけど」
【アンク】
「私とクロノ様の仲ではありませんか、そう堅いことは言わずに」
【アンク】
「さあ、今日の戦果を報告して下され」
目を輝かせているじいを一瞥して、俺は渋々と資料を開いた。
【クロノ】
「あの謎のチャットサイトのparaisoや、拡張プラグインのLIPが―――」
【クロノ】
「どういうものなのかはハッキリしたけど」
【クロノ】
「その辺はじいも調査済だろうから省くとして……謎なのは死んだ人間の共通点」
【クロノ】
「ほとんどどころか、全員がトラウマ持ちだった」
【クロノ】
「ちょっと偶然にしては出来すぎだ」
【アンク】
「ふむ……夢に逃げるのは基本そう言った人間達だからでは?」
【クロノ】
「だけど全員ってのは、絶対おかしいと思う」
【アンク】
「ふむ……まあ、違和感はあるものの、今ひとつハッキリしませんな」
【アンク】
「そういえば、私もparaisoについて調べてみたのですが」
【アンク】
「プロテクトがかかっていて、パスワードがないと閲覧はできませんでした」
【クロノ】
「……でも浅多が見れたってことは……」
【アンク】
「ええ、LIP使用者だけが入ることのできるチャットです」
【アンク】
「私も、死神の力を使ったり、ネットに詳しい友人に助力を乞うてみたりしたのですが」
【アンク】
「これほど頑丈なプロテクトも珍しいとのことです」
【クロノ】
(じい、友達とかいたのか…)
【クロノ】
「…ホントきな臭い……いいよ、浅多の部屋でサイトの中身の確認はしてるから」
【クロノ】
「見た感じ、普通のチャットサイトだったし、」
【クロノ】
「特に問題ないと思う。」
【アンク】
「情報収集に活用出来そうですな」
【クロノ】
「……情報収集とかには、使えそうだな」
神妙に頷いたじいが立ち上がり、時計を見やる。