[本編] 浅多 侑思 編
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【クロノ】
「その話は置いておいて…」
【クロノ】
「いくら俺でも、期限の近付いてる仕事の最中に火遊びはしない」
【クロノ】
「これでも死神の端くれだ。一応、弁えてるつもり」
【アンク】
「なら宜しいんですがね」
【アンク】
「……とにかく、注意していただきたいことはもう一つあります」
注意することがもう一つ…?
そのことについて聞こうとしたが、じいが俺に向かって手をかざす。
それを合図に開いた口を閉じて、俺は軽く目を閉じた。
【アンク】
「夢に引きずられないように、お気をつけて」
どういう意味だと訊こうとした時……
ヘッドセットを頭に被せられた―――。
―――そして、ふわりと浮遊感が襲う。
真っ暗のため、自分の状況が把握できず……。
【クロノ】
「うわっ……!」
突然、急降下するような感覚に襲われて、慌てて目を開けると。
そこは―――
【クロノ】
「……いつも通りの世界に見えるけど…」
【クロノ】
「……これが夢?」
広がっている世界は、浅多が生きている世界と変わらないように思える。
せっかくの憧憬夢なんだから、もっと派手な夢を見ればいいものを。
まあ、リアリストだと思えば、平凡な世界観になるのも頷ける。
浅多を探しにコンクリートの道を歩き出した時、じいに言われたことを思い出した。
……夢に引きずられるな、か。
浅多の夢の中にいるのだから、中にいる俺にも何らかの影響も出るということなら、理屈は通る。
夢ごときに、死神をどうこうできるとも思わないけど。
せいぜい気をつけることにしよう。
歩き続けていると、ふと浅多の気配を感じた。
神経を研ぎ澄ませてみると、近くにいる気がする。
念のため、夢の中でも死神の鎌を生成できるか試してから、慎重に歩いていく。
俺のいた場所からそれ程離れていない場所に――浅多の姿を見つけた。
オフィスの前で、昼間と同じようにスーツを着て、数人の社員達に囲まれている。
昼間は大体1人で居たように思ったが…。
囲んでいる奴らは誰だ。
顔を判別するために目を細めてみる
【クロノ】
「友達、か?……そんな訳ないか」
一人でいる印象を持っているせいか、社員達に囲まれている浅多を見るのは、
何だか違和感を覚える。
囲んでいる連中が気になって、近寄って確認してみる。
【クロノ】
「……?」
近寄って見てみると、近寄り難いだの厳しすぎるだのと遠巻きにしていた連中が、浅多を囲んでいることが分かった。
しかも浅多を良く見ると社員証には、マネージャーと記されていた。
【クロノ】
「浅多は確か、営業のリーダー止まりだったと
思ったけど……?」
浅多は、禍々しいまでの笑顔を浮かべている連中に囲まれて、
蝶よ花よと持て囃されている。
…ふーん、これがこいつの憧憬夢か。
あのお堅そうな顔の下にこんな子供っぽい願望があったとは。
人は見掛けによらないとは、正にこのことだ。
子供っぽい願望を持つ浅多に、少しだけ興味を惹かれて、
俺は更にもう一歩を踏み出す。
【クロノ】
「……ん?」
しかし、浅多は社員達に連れられて、オフィスの中へと消えた。
俺は中には入らずに、軽く地面を蹴って浮かび上がる。
わざわざエスカレーターだかエレベータだかを使うのは面倒だ。
そのままビルの壁に添って上昇し、途中で止まる。
確か浅多の務めている会社が入ってるのは、この辺りの階だと思ったけど。
窓の向こうに浅多の姿を探し始めてすぐに、その姿を見付けた。
会議室の中で一人、座っている浅多。
ここからでは背中しか見えないが、何かを言っているように見える。
……ああなんだ、独り言か。
でもまあ、ストレス抱えてそうな性格だから、仕方ないか。
開いてる窓から会議室へ忍び込む。
浅多は俺に気付く気配も無く、相変わらず背中を丸めたままだ。
声が聞き取れる距離まで近づき、耳を澄ます。
【浅多 侑思】
「僕の実力はマネージャーなんかで収まる器じゃない」
【浅多 侑思】
「もっと上り詰めて、僕を嘲笑った奴らを……見返してやる」
【浅多 侑思】
「そうだ。まずは明日、能力もないのに調子だけいい営業の新人を解雇してやるか」
俺は音もなく地面に着地し、浅多を見下ろす。
【クロノ】
「お前、このままだと死ぬよ」
浅多が、肩を大きく揺らして振り返る。
その弾みでバランスを崩したのか、椅子から転げ落ちた。
声をかけたくらいで、イスから転げ落ちた奴を見たのは始めてだ。
それほど驚かせてしまったかと思うと、良心が少しだけ痛む。
しかし、冷静沈着っていう言葉が服着て歩いてるような外見なのに、ここまで慌てふためくとは。
見た目によらず、もしかして小心者なんだろうか。
突発的な出来事に弱い……とか?
呆然としつつ、声をかける
【クロノ】
「悪い、大丈夫か?」
【浅多 侑思】
「お前には、大丈夫に見えるのかよ…」
【浅多 侑思】
「痛っ……たたっ……」
【クロノ】
「いや、おい……本当に大丈夫か?」
体を起こそうとしている浅多に手を差し伸べると、思いっきり跳ね除けられた。
【浅多 侑思】
「触るな!! お前は誰だ!?」
あ、なんか既視感……わかった、野良猫だ。野良猫に似てるんだこいつ。
叩かれた方の手を垂らしたまま、じっとそいつを見つめ返す。
【クロノ】
「お前、このままだと死ぬよ」
【浅多 侑思】
「さっきもそんな台詞を言ってたな。だがそんなことは訊いてない」
浅多は、イスを起こして座り直し、眼鏡を拭き始める。
落ち着いたらしく、声も目つきも冷静だ。
聞いてるんだか聞いてないんだか、俺の方を見ようともしないけど。
【浅多 侑思】
「僕の質問に答えろ。お前は誰だ?」
【クロノ】
「お前を助けに来た死神」
【浅多 侑思】
「死神…?ああ、CM撮影用の役者か何かか?
ここはフロアが違う、広報に連絡を……」
【クロノ】
「信じる信じないは好きにして」
【クロノ】
「とにかく、お前に忠告をしにきた」
【クロノ】
「このままだとお前は近い内に死ぬ、というよりは極端に寿命が縮まってる」
俺の言葉が途切れると、浅多は、拭き終わった眼鏡を掛け、眼鏡クリーナーを畳んで背筋を伸ばす。
【浅多 侑思】
「言いたいことはそれだけか?」
【クロノ】
「まあ」
【浅多 侑思】
「なら出て行け」
浅多の目つきが、凶暴な色に光る。
……ファーストインプレッションは最悪だろうな。
【浅多 侑思】
「お前のような得体の知れない奴は、僕の世界には必要ないんでな」
【クロノ】
「そっちが用は無くても、こっちにはあるんだけど」
【浅多 侑思】
「ここは僕のテリトリーだと言ってるんだ」
【浅多 侑思】
「客人は、招かれた家のルールに従うものじゃないのか?」
【クロノ】
「ルールに抵触しないよう、部外者らしく慎ましく行動してるつもりだけど」
「その話は置いておいて…」
【クロノ】
「いくら俺でも、期限の近付いてる仕事の最中に火遊びはしない」
【クロノ】
「これでも死神の端くれだ。一応、弁えてるつもり」
【アンク】
「なら宜しいんですがね」
【アンク】
「……とにかく、注意していただきたいことはもう一つあります」
注意することがもう一つ…?
そのことについて聞こうとしたが、じいが俺に向かって手をかざす。
それを合図に開いた口を閉じて、俺は軽く目を閉じた。
【アンク】
「夢に引きずられないように、お気をつけて」
どういう意味だと訊こうとした時……
ヘッドセットを頭に被せられた―――。
―――そして、ふわりと浮遊感が襲う。
真っ暗のため、自分の状況が把握できず……。
【クロノ】
「うわっ……!」
突然、急降下するような感覚に襲われて、慌てて目を開けると。
そこは―――
【クロノ】
「……いつも通りの世界に見えるけど…」
【クロノ】
「……これが夢?」
広がっている世界は、浅多が生きている世界と変わらないように思える。
せっかくの憧憬夢なんだから、もっと派手な夢を見ればいいものを。
まあ、リアリストだと思えば、平凡な世界観になるのも頷ける。
浅多を探しにコンクリートの道を歩き出した時、じいに言われたことを思い出した。
……夢に引きずられるな、か。
浅多の夢の中にいるのだから、中にいる俺にも何らかの影響も出るということなら、理屈は通る。
夢ごときに、死神をどうこうできるとも思わないけど。
せいぜい気をつけることにしよう。
歩き続けていると、ふと浅多の気配を感じた。
神経を研ぎ澄ませてみると、近くにいる気がする。
念のため、夢の中でも死神の鎌を生成できるか試してから、慎重に歩いていく。
俺のいた場所からそれ程離れていない場所に――浅多の姿を見つけた。
オフィスの前で、昼間と同じようにスーツを着て、数人の社員達に囲まれている。
昼間は大体1人で居たように思ったが…。
囲んでいる奴らは誰だ。
顔を判別するために目を細めてみる
【クロノ】
「友達、か?……そんな訳ないか」
一人でいる印象を持っているせいか、社員達に囲まれている浅多を見るのは、
何だか違和感を覚える。
囲んでいる連中が気になって、近寄って確認してみる。
【クロノ】
「……?」
近寄って見てみると、近寄り難いだの厳しすぎるだのと遠巻きにしていた連中が、浅多を囲んでいることが分かった。
しかも浅多を良く見ると社員証には、マネージャーと記されていた。
【クロノ】
「浅多は確か、営業のリーダー止まりだったと
思ったけど……?」
浅多は、禍々しいまでの笑顔を浮かべている連中に囲まれて、
蝶よ花よと持て囃されている。
…ふーん、これがこいつの憧憬夢か。
あのお堅そうな顔の下にこんな子供っぽい願望があったとは。
人は見掛けによらないとは、正にこのことだ。
子供っぽい願望を持つ浅多に、少しだけ興味を惹かれて、
俺は更にもう一歩を踏み出す。
【クロノ】
「……ん?」
しかし、浅多は社員達に連れられて、オフィスの中へと消えた。
俺は中には入らずに、軽く地面を蹴って浮かび上がる。
わざわざエスカレーターだかエレベータだかを使うのは面倒だ。
そのままビルの壁に添って上昇し、途中で止まる。
確か浅多の務めている会社が入ってるのは、この辺りの階だと思ったけど。
窓の向こうに浅多の姿を探し始めてすぐに、その姿を見付けた。
会議室の中で一人、座っている浅多。
ここからでは背中しか見えないが、何かを言っているように見える。
……ああなんだ、独り言か。
でもまあ、ストレス抱えてそうな性格だから、仕方ないか。
開いてる窓から会議室へ忍び込む。
浅多は俺に気付く気配も無く、相変わらず背中を丸めたままだ。
声が聞き取れる距離まで近づき、耳を澄ます。
【浅多 侑思】
「僕の実力はマネージャーなんかで収まる器じゃない」
【浅多 侑思】
「もっと上り詰めて、僕を嘲笑った奴らを……見返してやる」
【浅多 侑思】
「そうだ。まずは明日、能力もないのに調子だけいい営業の新人を解雇してやるか」
俺は音もなく地面に着地し、浅多を見下ろす。
【クロノ】
「お前、このままだと死ぬよ」
浅多が、肩を大きく揺らして振り返る。
その弾みでバランスを崩したのか、椅子から転げ落ちた。
声をかけたくらいで、イスから転げ落ちた奴を見たのは始めてだ。
それほど驚かせてしまったかと思うと、良心が少しだけ痛む。
しかし、冷静沈着っていう言葉が服着て歩いてるような外見なのに、ここまで慌てふためくとは。
見た目によらず、もしかして小心者なんだろうか。
突発的な出来事に弱い……とか?
呆然としつつ、声をかける
【クロノ】
「悪い、大丈夫か?」
【浅多 侑思】
「お前には、大丈夫に見えるのかよ…」
【浅多 侑思】
「痛っ……たたっ……」
【クロノ】
「いや、おい……本当に大丈夫か?」
体を起こそうとしている浅多に手を差し伸べると、思いっきり跳ね除けられた。
【浅多 侑思】
「触るな!! お前は誰だ!?」
あ、なんか既視感……わかった、野良猫だ。野良猫に似てるんだこいつ。
叩かれた方の手を垂らしたまま、じっとそいつを見つめ返す。
【クロノ】
「お前、このままだと死ぬよ」
【浅多 侑思】
「さっきもそんな台詞を言ってたな。だがそんなことは訊いてない」
浅多は、イスを起こして座り直し、眼鏡を拭き始める。
落ち着いたらしく、声も目つきも冷静だ。
聞いてるんだか聞いてないんだか、俺の方を見ようともしないけど。
【浅多 侑思】
「僕の質問に答えろ。お前は誰だ?」
【クロノ】
「お前を助けに来た死神」
【浅多 侑思】
「死神…?ああ、CM撮影用の役者か何かか?
ここはフロアが違う、広報に連絡を……」
【クロノ】
「信じる信じないは好きにして」
【クロノ】
「とにかく、お前に忠告をしにきた」
【クロノ】
「このままだとお前は近い内に死ぬ、というよりは極端に寿命が縮まってる」
俺の言葉が途切れると、浅多は、拭き終わった眼鏡を掛け、眼鏡クリーナーを畳んで背筋を伸ばす。
【浅多 侑思】
「言いたいことはそれだけか?」
【クロノ】
「まあ」
【浅多 侑思】
「なら出て行け」
浅多の目つきが、凶暴な色に光る。
……ファーストインプレッションは最悪だろうな。
【浅多 侑思】
「お前のような得体の知れない奴は、僕の世界には必要ないんでな」
【クロノ】
「そっちが用は無くても、こっちにはあるんだけど」
【浅多 侑思】
「ここは僕のテリトリーだと言ってるんだ」
【浅多 侑思】
「客人は、招かれた家のルールに従うものじゃないのか?」
【クロノ】
「ルールに抵触しないよう、部外者らしく慎ましく行動してるつもりだけど」