[本編] 春川 樹生 編
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【???】
「許せる? 許せる? 優しいから許せる?」
彼が顔を近付けてくる。
俺は目を閉じて、その言葉を跳ね返す。
【???】
「嘘つきぃいいいぃ!! 本心だったら俺の目ぇ見て言えってんだよォおぉあ!!」
【???】
「これが未来予想図。古いあんたは捨てられる。彼氏は機種変するんだって」
【???】
「元カレに未練があったから、手頃なプランで乗り換える気だ」
【???】
「何年もラブラブだったのに振られるんだ。かわいそう」
【???】
「アハ、かわいそうだな!! 振られるんだ!! さんざん弄ばれて捨てられるんだ!!」
【???】
「良いように穴使われて用済みだからポイッ、だ!! だ!! 絶望だ!!」
【???】
「何年ラブラブだったの!? 何年一緒に暮らしたの!? 週に何回ヤッてたの!?」
【???】
「何度咥えた!? 何度突っ込まれた!? 中で出された!? 顔には!?」
【???】
「一緒に風呂は!? デートは!? 映画は!? 水族館は!? 海は山は遊園地は!?」
オレは目を開けてこう言った。
【春川 樹生】
「信じるよ。だって……」
【春川 樹生】
「オレは、ずっと一緒にいたクロノのこと、信頼してるから」
彼を見てもう一度言った。
【春川 樹生】
「オレは、クロノを信じてる」
【???】
「へえ」
彼は無表情だった。
そしてモニターの映像を切り替えながら、再び言う。
【???】
「これを見ても同じことが言えるといいけど」
何を見せられようがオレの心は揺らがない。
そういう自信があったからこそ、迷わずにモニターを直視する。
白い光を放っていた病室の映像がぐにゃりと歪んで、別の映像に変わったようだった。
でもノイズが多くてよく見えない。
【春川 樹生】
「……? っ、……う、うぅ……っ!?」
再び映像がうねった時、目眩を感じてふらついた。
目から頭に手を入れられてるみたいで、吐き気まで感じてその場にうずくまる。
同時に視界が暗くなっていって――――そこから先の記憶は途切れる。
再び目を開けた時、オレはうずくまったままだった。
ただ、包帯を巻いた人の姿はなくなっている。
【春川 樹生】
(今のは……何だったんだ)
【春川 樹生】
(さっきの映像は……、あれ、なんだったっけ)
【春川 樹生】
(思い出せない……? おかしいな)
映像を見て気分が悪くなってそれから…と記憶を整理しながら、
とりあえず、不調が消えているのを感じて立ち上がる。
手足を動かしたりポケットの中を探ったりして、特に変わった様子はないことを確かめる。
【春川 樹生】
(別に、何もされてないみたいだな。良かった…)
【春川 樹生】
(クロノが待ってる。早く夕飯の支度をしないと)
さっきの人がまだ近くにいるかもしれない。
急いで家に帰ろうと思って歩き出す。
【春川 樹生】
(クロノが待ってる。仕事が忙しくて疲れてるみたいだから)
【春川 樹生】
(きちんとした夕食を作って、きちんと支度を整えて待っててあげなきゃ)
【春川 樹生】
(クロノが待ってるからな)
…クロノが待ってる?
待ってないよな?
だってクロノは今、病室であの少年とキスをしている。
【春川 樹生】
「あれ……?」
オレはクロノを信じてる。
クロノは絶対にオレを好きでいてくれる。
そうだったっけ?
確かクロノは、どこかの病院で誰かと楽しそうに話してて。
そうそう、確かお土産だと言ってマンガを持ってきてあげてた。
全巻セットだったと思ってたのが1冊抜けてて、それをクロノが買ってきてあげて。
一緒に読もうよって言って、2人で1冊のマンガを仲良く見て。
あの男の子がクロノをチラチラ見て、それから頬にキスをして。
クロノが驚いて振り返ると、男の子がごめんって言って目を逸らして。
それをクロノが恥ずかしがらなくていいって言って、もう一度キスをして。
じゃあ今度は口にしてくれる?っていう男の子にクロノが応じて、
男の子の腰を抱き寄せて深くキスをして舌を入れて。
クロノの手が男の子の服の裾から中に入って…
胸を触って、男の子が気持ち良さそうにしたからクロノが押し倒して。
――オレは捨てられたんだ。
オレは捨てられたんだ。
クロノは今でも死んだ昔の恋人のことを愛してるんだ。
忘れられないからよく似た子に会いに行ってるんだ。
クロノはお墓であの子に声をかけた理由を『知り合いに似てたから』って言ってたけど、
そっかぁ昔の恋人かあ。
仕方ないよ、忘れられなくても。
死んじゃったんだもん、悲しいよな。
だから毎日疲れてたんだ。
仕事の合間に毎日会いに行ってたから。
入院してるから心配だったんだね。
オレのことは気にしないで。クロノが幸せな方がオレも嬉しい。
クロノが一緒にいたいって思う人と一緒にいた方がずっといい。
昔の恋人と幸せになっていいよ。その方がおまえもきっと幸せだよ。
クロノ、きっとすごく辛かっただろうなあ。オレと一緒にいる間。
だって本当に好きな相手のことを考えながら、
好きじゃないオレと暮らさなきゃいけないから。
きっとすごく疲れただろうな。すごく傷ついただろうな。
オレになんて言おうって。なんて切り出そうって。
いつにしよういつ言おうって、ずっとずっと悩んでたんだろうなあ。
オレが夕飯のメニューなんか考えてる時、クロノはずっと考えてたんだろうなあ。
クロノは優しいから。
どうしたらオレが傷つかないかって、そればっかり考えてたんだろうなあ。
オレが言いたいことを溜め込むからって、我慢させないようにしようって。
オレのことばっかり考えて行き詰まったから、恋人のところに行っちゃったんだね。
恋人のことばかり考えてたから行き詰まって、オレの元からいなくなっちゃったのかな。
オレがうじうじしてて、行為が苦手で、言いたいことを言わないから。
やっぱり我慢できなくなっちゃったんだ。
ずっと無理させてたんだ。
こんなつまらない男より、一緒にいて楽しい人のほうがいいよな。
もっと前向きな人の方が一緒にいて気持ちいいもんな。
仕方ない。
おまえと一緒にいた数年間に育んできた、何があっても揺らがない密かな決意。
おまえがオレを助けてくれたように、変えてくれたように。
今度はオレがおまえの力になるって決めてたけど。
こんなオレじゃ、無理だったんだ。
【春川 樹生】
「…………」
どこからか、赤だぞ、という大声が聞こえた。
顔を上げると、血が滲むみたいな、ピカピカの赤色が目に飛び込んできて。
横から何かの大きな音が迫ってきて、見ると、それはこっちに向かってくる車で。
ああ、と残念に思った。
オレはドジだな。
だからクロノに嫌われるんだ。
【海棠 蓮】
「……あれ、救急車」
【クロノ】
「ここって、結構急患来るの?」
【海棠 蓮】
「うん。この辺りじゃ大きい病院だからね。……あ、もうこんな時間か」
【海棠 蓮】
「そろそろ帰りなよ。面会時間も終わっちゃうし」
【クロノ】
「ん? あれ、ほんとだ。マンガ読んでたら時間が経つのが早いな」
【海棠 蓮】
「怖いよなぁマンガって。ゲームもだけど」
【クロノ】
「明日は来れないけど、いい機会だから勉強でもしてな」
【海棠 蓮】
「勉強はイヤ。……だけどほんとさ、無理して時間作らなくていいんだからね」
【海棠 蓮】
「一緒に住んでる人、寂しがらせるのも嫌だしさ」
【海棠 蓮】
「遊び来てってお願いしといてなんだけど、やっぱかわいそう」
【クロノ】
「……今日帰ったら、ちゃんと恋人孝行する」
「許せる? 許せる? 優しいから許せる?」
彼が顔を近付けてくる。
俺は目を閉じて、その言葉を跳ね返す。
【???】
「嘘つきぃいいいぃ!! 本心だったら俺の目ぇ見て言えってんだよォおぉあ!!」
【???】
「これが未来予想図。古いあんたは捨てられる。彼氏は機種変するんだって」
【???】
「元カレに未練があったから、手頃なプランで乗り換える気だ」
【???】
「何年もラブラブだったのに振られるんだ。かわいそう」
【???】
「アハ、かわいそうだな!! 振られるんだ!! さんざん弄ばれて捨てられるんだ!!」
【???】
「良いように穴使われて用済みだからポイッ、だ!! だ!! 絶望だ!!」
【???】
「何年ラブラブだったの!? 何年一緒に暮らしたの!? 週に何回ヤッてたの!?」
【???】
「何度咥えた!? 何度突っ込まれた!? 中で出された!? 顔には!?」
【???】
「一緒に風呂は!? デートは!? 映画は!? 水族館は!? 海は山は遊園地は!?」
オレは目を開けてこう言った。
【春川 樹生】
「信じるよ。だって……」
【春川 樹生】
「オレは、ずっと一緒にいたクロノのこと、信頼してるから」
彼を見てもう一度言った。
【春川 樹生】
「オレは、クロノを信じてる」
【???】
「へえ」
彼は無表情だった。
そしてモニターの映像を切り替えながら、再び言う。
【???】
「これを見ても同じことが言えるといいけど」
何を見せられようがオレの心は揺らがない。
そういう自信があったからこそ、迷わずにモニターを直視する。
白い光を放っていた病室の映像がぐにゃりと歪んで、別の映像に変わったようだった。
でもノイズが多くてよく見えない。
【春川 樹生】
「……? っ、……う、うぅ……っ!?」
再び映像がうねった時、目眩を感じてふらついた。
目から頭に手を入れられてるみたいで、吐き気まで感じてその場にうずくまる。
同時に視界が暗くなっていって――――そこから先の記憶は途切れる。
再び目を開けた時、オレはうずくまったままだった。
ただ、包帯を巻いた人の姿はなくなっている。
【春川 樹生】
(今のは……何だったんだ)
【春川 樹生】
(さっきの映像は……、あれ、なんだったっけ)
【春川 樹生】
(思い出せない……? おかしいな)
映像を見て気分が悪くなってそれから…と記憶を整理しながら、
とりあえず、不調が消えているのを感じて立ち上がる。
手足を動かしたりポケットの中を探ったりして、特に変わった様子はないことを確かめる。
【春川 樹生】
(別に、何もされてないみたいだな。良かった…)
【春川 樹生】
(クロノが待ってる。早く夕飯の支度をしないと)
さっきの人がまだ近くにいるかもしれない。
急いで家に帰ろうと思って歩き出す。
【春川 樹生】
(クロノが待ってる。仕事が忙しくて疲れてるみたいだから)
【春川 樹生】
(きちんとした夕食を作って、きちんと支度を整えて待っててあげなきゃ)
【春川 樹生】
(クロノが待ってるからな)
…クロノが待ってる?
待ってないよな?
だってクロノは今、病室であの少年とキスをしている。
【春川 樹生】
「あれ……?」
オレはクロノを信じてる。
クロノは絶対にオレを好きでいてくれる。
そうだったっけ?
確かクロノは、どこかの病院で誰かと楽しそうに話してて。
そうそう、確かお土産だと言ってマンガを持ってきてあげてた。
全巻セットだったと思ってたのが1冊抜けてて、それをクロノが買ってきてあげて。
一緒に読もうよって言って、2人で1冊のマンガを仲良く見て。
あの男の子がクロノをチラチラ見て、それから頬にキスをして。
クロノが驚いて振り返ると、男の子がごめんって言って目を逸らして。
それをクロノが恥ずかしがらなくていいって言って、もう一度キスをして。
じゃあ今度は口にしてくれる?っていう男の子にクロノが応じて、
男の子の腰を抱き寄せて深くキスをして舌を入れて。
クロノの手が男の子の服の裾から中に入って…
胸を触って、男の子が気持ち良さそうにしたからクロノが押し倒して。
――オレは捨てられたんだ。
オレは捨てられたんだ。
クロノは今でも死んだ昔の恋人のことを愛してるんだ。
忘れられないからよく似た子に会いに行ってるんだ。
クロノはお墓であの子に声をかけた理由を『知り合いに似てたから』って言ってたけど、
そっかぁ昔の恋人かあ。
仕方ないよ、忘れられなくても。
死んじゃったんだもん、悲しいよな。
だから毎日疲れてたんだ。
仕事の合間に毎日会いに行ってたから。
入院してるから心配だったんだね。
オレのことは気にしないで。クロノが幸せな方がオレも嬉しい。
クロノが一緒にいたいって思う人と一緒にいた方がずっといい。
昔の恋人と幸せになっていいよ。その方がおまえもきっと幸せだよ。
クロノ、きっとすごく辛かっただろうなあ。オレと一緒にいる間。
だって本当に好きな相手のことを考えながら、
好きじゃないオレと暮らさなきゃいけないから。
きっとすごく疲れただろうな。すごく傷ついただろうな。
オレになんて言おうって。なんて切り出そうって。
いつにしよういつ言おうって、ずっとずっと悩んでたんだろうなあ。
オレが夕飯のメニューなんか考えてる時、クロノはずっと考えてたんだろうなあ。
クロノは優しいから。
どうしたらオレが傷つかないかって、そればっかり考えてたんだろうなあ。
オレが言いたいことを溜め込むからって、我慢させないようにしようって。
オレのことばっかり考えて行き詰まったから、恋人のところに行っちゃったんだね。
恋人のことばかり考えてたから行き詰まって、オレの元からいなくなっちゃったのかな。
オレがうじうじしてて、行為が苦手で、言いたいことを言わないから。
やっぱり我慢できなくなっちゃったんだ。
ずっと無理させてたんだ。
こんなつまらない男より、一緒にいて楽しい人のほうがいいよな。
もっと前向きな人の方が一緒にいて気持ちいいもんな。
仕方ない。
おまえと一緒にいた数年間に育んできた、何があっても揺らがない密かな決意。
おまえがオレを助けてくれたように、変えてくれたように。
今度はオレがおまえの力になるって決めてたけど。
こんなオレじゃ、無理だったんだ。
【春川 樹生】
「…………」
どこからか、赤だぞ、という大声が聞こえた。
顔を上げると、血が滲むみたいな、ピカピカの赤色が目に飛び込んできて。
横から何かの大きな音が迫ってきて、見ると、それはこっちに向かってくる車で。
ああ、と残念に思った。
オレはドジだな。
だからクロノに嫌われるんだ。
【海棠 蓮】
「……あれ、救急車」
【クロノ】
「ここって、結構急患来るの?」
【海棠 蓮】
「うん。この辺りじゃ大きい病院だからね。……あ、もうこんな時間か」
【海棠 蓮】
「そろそろ帰りなよ。面会時間も終わっちゃうし」
【クロノ】
「ん? あれ、ほんとだ。マンガ読んでたら時間が経つのが早いな」
【海棠 蓮】
「怖いよなぁマンガって。ゲームもだけど」
【クロノ】
「明日は来れないけど、いい機会だから勉強でもしてな」
【海棠 蓮】
「勉強はイヤ。……だけどほんとさ、無理して時間作らなくていいんだからね」
【海棠 蓮】
「一緒に住んでる人、寂しがらせるのも嫌だしさ」
【海棠 蓮】
「遊び来てってお願いしといてなんだけど、やっぱかわいそう」
【クロノ】
「……今日帰ったら、ちゃんと恋人孝行する」
