[本編] 春川 樹生 編
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【春川 樹生】
「……えーと」
オレは困って、彼が持っている液晶タブレットに視線を落とす。
そして気付いたことは、それがどこかで見たことのあるデザインだということ。
見たことがあって、記憶にも残っていて。
できれば思い出したくない過去と紐付けられているものだった。
【???】
「見てみろよ」
【春川 樹生】
「……」
差し出されたモニターから、一歩離れる。
近づかない方がいい。
できれば今すぐこの場から立ち去るべきだ。
包帯で顔が隠れるせいで、オレが知ってる人物と同一人物かどうかはわからないけど。
『アレ』に似たものを持ってるというだけで十分すぎるほど危険だ。
【???】
「ククク……いつもはニコニコしてる兄ちゃんなのにな」
【???】
「何をそんなにおっかねえ顔してんだ? コレに似たようなもんに見覚えでもあんのか?」
【???】
「それとも、使ってくれたかな?」
彼の口角が吊り上がる。
背を向けて駆け出そうとしたが、彼は魔法みたいに目の前に現れた。
【???】
「別にへんなことしようってんじゃねえよ。強いていうなら俺は恋のキューピッドだ」
【???】
「あんたと恋人がずっと幸せでいられるように魔法をかけてやる妖精さ」
【???】
「だからこれを見てみなよ。ここにはあんたと彼氏の未来が映ってんだ」
【???】
「だからこれを見てみなよ。ここにはあんたと彼氏の未来が映ってんだ」
【春川 樹生】
「……いらない」
【???】
「人の好意を無下にすんのか? あんたって冷たいんだな」
【春川 樹生】
「……っ」
【???】
「あんた、優しいところがチャームポイントなんじゃないの?」
【???】
「そんなところが大好きだって恋人にも言われてんじゃねえのかよ?」
【春川 樹生】
「なんで……そんなことまで」
【???】
「知ってんのかって? アハハ! 知ってるわけねえじゃんか!」
【???】
「オールマイティに使えるセリフじゃん! まさか図星だったとは! あははは!」
【春川 樹生】
「……」
【???】
「だから冷たくしないで、見てよ。俺、あんたのために一生懸命頑張ったんだよ」
【???】
「ほら、逃げないで。俺ヒョロヒョロのガリガリだろ?」
【???】
「あんたみたいな人にケンカなんか売らないって」
【???】
「もし俺が嫌なことしたらさ殴っちゃえ。ね? それでも不安?」
【春川 樹生】
「……そんなこと、しない」
【???】
「しない? ありがとう!! 出来ねえよな!! 優しいお前には!!」
【???】
「じゃあこれも見てくれるよな? お前と彼氏の未来予想図」
【春川 樹生】
「見たら……、見たら。ここからいなくなるんだな?」
【???】
「もちろん。だって見せに来ただけだから」
【春川 樹生】
「見るだけでいいんだな」
【???】
「見るだけでいいんだよ」
電源が入ったのか、モニターが蛍のように闇を照らしている。
オレは恐る恐る薄目でそれを覗き込んだ。
【海棠 蓮】
『あ、ようやく来た。すっげー待ってたんだけど』
【クロノ】
『待ってたって…。ちょっとそこの本屋行っただけじゃない…』
【海棠 蓮】
『これだから大人はわかってないな。長編マンガは勢いが大事』
【海棠 蓮】
『で、あった? 16巻』
【クロノ】
『あったけど。ちょっとヤケてるって』
【海棠 蓮】
『全然大丈夫、ありがと。楽しみだ』
【海棠 蓮】
『ていうかさ、最終巻間近の巻が抜けてるとか……あんた仕事が雑なんだよな』
【クロノ】
『だって、セットって書いてあったから…』
【海棠 蓮】
『全巻セットって書いてなかったら全巻揃ってないんだよ』
【海棠 蓮】
『そんなことだと騙されるよ。もっと危機感持った方がいいんじゃない?』
【クロノ】
『…偉そう。俺がせっかくお土産にって買ってきてあげたのに』
【海棠 蓮】
『それは本当に嬉しい。しかもこれとっても面白いし』
【海棠 蓮】
『かなり古いマンガなのによく知ってたね。あんたが昔読んでたの?』
【クロノ】
『……まあ、そんなとこ』
【海棠 蓮】
『あ、笑った。あんた笑うと急に可愛いくなるよね』
【海棠 蓮】
『……って言うとやめるしな。もっかい笑ってよ』
【クロノ】
『え!? ちょっと、くすぐるのはナシ……、ちょっとやめ、あっはっはは!』
【クロノ】
『くすぐった、くすぐったい死ぬぅわははは!! やめて、やめてあはははは!!』
【海棠 蓮】
『アハハ、くすぐったがり? 面白い!』
【春川 樹生】
「…………」
【???】
「ね? 俺の言った通りだろ? 彼氏が浮気してるって」
【???】
「ほんっとかわいそうになぁ」
優しく言ってオレの顔を覗き込み、肩を叩く。
液晶の中ではまだクロノと少年が笑い合っている。
その少年の顔に見覚えがあった。
数日前のお墓で、クロノが話しかけに行った少年だ。
あの後から少しクロノの様子が変わったから印象に残っていた。
【???】
「知ってるかなぁ」
毒々しいほど優しい声が、耳たぶを掠める。
【???】
「こいつさ、クロノの死んだ恋人にそっくりなんだってさぁ」
液晶をコンコンと叩きながら、彼は多分オレを見た。
【???】
「こんなに楽しそうに話してて、クソむかつくよな。ハラワタ煮えくり返るよな」
【???】
「あんたっていう恋人がいるのに、こんな風に笑ってさぁ」
【???】
「これもう完璧ネンゴロだろ? このベッドでアンアンやってんだぜ」
【???】
「あんたが汗水垂らして働いてる時にさぁ。アンアン、アンアン」
「……えーと」
オレは困って、彼が持っている液晶タブレットに視線を落とす。
そして気付いたことは、それがどこかで見たことのあるデザインだということ。
見たことがあって、記憶にも残っていて。
できれば思い出したくない過去と紐付けられているものだった。
【???】
「見てみろよ」
【春川 樹生】
「……」
差し出されたモニターから、一歩離れる。
近づかない方がいい。
できれば今すぐこの場から立ち去るべきだ。
包帯で顔が隠れるせいで、オレが知ってる人物と同一人物かどうかはわからないけど。
『アレ』に似たものを持ってるというだけで十分すぎるほど危険だ。
【???】
「ククク……いつもはニコニコしてる兄ちゃんなのにな」
【???】
「何をそんなにおっかねえ顔してんだ? コレに似たようなもんに見覚えでもあんのか?」
【???】
「それとも、使ってくれたかな?」
彼の口角が吊り上がる。
背を向けて駆け出そうとしたが、彼は魔法みたいに目の前に現れた。
【???】
「別にへんなことしようってんじゃねえよ。強いていうなら俺は恋のキューピッドだ」
【???】
「あんたと恋人がずっと幸せでいられるように魔法をかけてやる妖精さ」
【???】
「だからこれを見てみなよ。ここにはあんたと彼氏の未来が映ってんだ」
【???】
「だからこれを見てみなよ。ここにはあんたと彼氏の未来が映ってんだ」
【春川 樹生】
「……いらない」
【???】
「人の好意を無下にすんのか? あんたって冷たいんだな」
【春川 樹生】
「……っ」
【???】
「あんた、優しいところがチャームポイントなんじゃないの?」
【???】
「そんなところが大好きだって恋人にも言われてんじゃねえのかよ?」
【春川 樹生】
「なんで……そんなことまで」
【???】
「知ってんのかって? アハハ! 知ってるわけねえじゃんか!」
【???】
「オールマイティに使えるセリフじゃん! まさか図星だったとは! あははは!」
【春川 樹生】
「……」
【???】
「だから冷たくしないで、見てよ。俺、あんたのために一生懸命頑張ったんだよ」
【???】
「ほら、逃げないで。俺ヒョロヒョロのガリガリだろ?」
【???】
「あんたみたいな人にケンカなんか売らないって」
【???】
「もし俺が嫌なことしたらさ殴っちゃえ。ね? それでも不安?」
【春川 樹生】
「……そんなこと、しない」
【???】
「しない? ありがとう!! 出来ねえよな!! 優しいお前には!!」
【???】
「じゃあこれも見てくれるよな? お前と彼氏の未来予想図」
【春川 樹生】
「見たら……、見たら。ここからいなくなるんだな?」
【???】
「もちろん。だって見せに来ただけだから」
【春川 樹生】
「見るだけでいいんだな」
【???】
「見るだけでいいんだよ」
電源が入ったのか、モニターが蛍のように闇を照らしている。
オレは恐る恐る薄目でそれを覗き込んだ。
【海棠 蓮】
『あ、ようやく来た。すっげー待ってたんだけど』
【クロノ】
『待ってたって…。ちょっとそこの本屋行っただけじゃない…』
【海棠 蓮】
『これだから大人はわかってないな。長編マンガは勢いが大事』
【海棠 蓮】
『で、あった? 16巻』
【クロノ】
『あったけど。ちょっとヤケてるって』
【海棠 蓮】
『全然大丈夫、ありがと。楽しみだ』
【海棠 蓮】
『ていうかさ、最終巻間近の巻が抜けてるとか……あんた仕事が雑なんだよな』
【クロノ】
『だって、セットって書いてあったから…』
【海棠 蓮】
『全巻セットって書いてなかったら全巻揃ってないんだよ』
【海棠 蓮】
『そんなことだと騙されるよ。もっと危機感持った方がいいんじゃない?』
【クロノ】
『…偉そう。俺がせっかくお土産にって買ってきてあげたのに』
【海棠 蓮】
『それは本当に嬉しい。しかもこれとっても面白いし』
【海棠 蓮】
『かなり古いマンガなのによく知ってたね。あんたが昔読んでたの?』
【クロノ】
『……まあ、そんなとこ』
【海棠 蓮】
『あ、笑った。あんた笑うと急に可愛いくなるよね』
【海棠 蓮】
『……って言うとやめるしな。もっかい笑ってよ』
【クロノ】
『え!? ちょっと、くすぐるのはナシ……、ちょっとやめ、あっはっはは!』
【クロノ】
『くすぐった、くすぐったい死ぬぅわははは!! やめて、やめてあはははは!!』
【海棠 蓮】
『アハハ、くすぐったがり? 面白い!』
【春川 樹生】
「…………」
【???】
「ね? 俺の言った通りだろ? 彼氏が浮気してるって」
【???】
「ほんっとかわいそうになぁ」
優しく言ってオレの顔を覗き込み、肩を叩く。
液晶の中ではまだクロノと少年が笑い合っている。
その少年の顔に見覚えがあった。
数日前のお墓で、クロノが話しかけに行った少年だ。
あの後から少しクロノの様子が変わったから印象に残っていた。
【???】
「知ってるかなぁ」
毒々しいほど優しい声が、耳たぶを掠める。
【???】
「こいつさ、クロノの死んだ恋人にそっくりなんだってさぁ」
液晶をコンコンと叩きながら、彼は多分オレを見た。
【???】
「こんなに楽しそうに話してて、クソむかつくよな。ハラワタ煮えくり返るよな」
【???】
「あんたっていう恋人がいるのに、こんな風に笑ってさぁ」
【???】
「これもう完璧ネンゴロだろ? このベッドでアンアンやってんだぜ」
【???】
「あんたが汗水垂らして働いてる時にさぁ。アンアン、アンアン」
