[本編] 春川 樹生 編
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【春川 樹生】
「クロノ、少しだけ時間をくれるか?弟に話したいことがあるんだ」
【春川 樹生】
「これで、本当に最後にするから、あんたも……聞いててくれ」
【クロノ】
「……わかった」
俺が頷いたのを合図に、春川は弟の頭を撫でる手を止め、静かに口を開く。
穏やかな声が、今はとても悲しく響いていた。
【春川 樹生】
「今まで、オレを慰めてくれて……ありがとう」
【春川 樹生】
「……お前がいてくれたお陰で、オレは毎日幸せだったよ」
【春川 樹生】
「お前が死んでしまってから、ずっと苦しかった」
【春川 樹生】
「……お前はそんな事願ってなかったろうに、罪の意識を抱え込んでた」
【春川 樹生】
「オレは、夢の中のお前に、全て押しつけていたんだよ」
そこで言葉を詰まらせた春川の目から、涙が零れる。
だけど弟に見られていると思ったのか、涙を流し続けながら春川は―――微笑んでいた。
【春川 樹生】
「オレが、弱かったから。一人で抱えきれなかったから」
【春川 樹生】
「……でも、もう大丈夫だ。――今度は、現実のお前と向き合わなきゃいけない」
春川の胸に抱かれている弟の姿は、既に光の粒子となって宙に溶け始めていた。
それは死神である俺の目にも、やけに神々しく映った。
ただの人間と幻に、心を動かされる死神なんて、多分この先も俺しかいないだろう。
【春川 生汰】
「うん。お兄ちゃんも、ありがとう」
かすれる声で、弟が言う。
【春川 生汰】
「いっぱいお話できて、嬉しかった」
そして春川の頬に、透けている手を伸ばす。
【春川 生汰】
「僕を笑わせてくれて、嬉しかった」
春川は弟の手を取ろうとして……唇を噛みしめて、耐えた。
そこから滲んだ血を弟の指がそっと拭い取り、弟は徐々に消えていき―――
【春川 生汰】
「僕の大好きなお兄ちゃん。最後まで……一緒に居てくれて、ありがとう」
そして弟は、春川の腕の中で輝く粒子となって崩れて……
―――跡形もなく、消えた。
【春川 樹生】
「……」
春川は、まだ弟がそこにいるかのように、姿勢を変えなかったが――
腕をだらんと落とすと、俺に背を向けて素早く涙を拭い、振り返った。
【春川 樹生】
「……全部、終わったよ」
【春川 樹生】
「もう、オレは夢なんかにすがらない」
【クロノ】
「春川……良かった」
【春川 樹生】
「ありがとう。クロノのおかげだ」
真っ直ぐな目で、春川が告げる。
生まれ変わったような、今までとは違う声で。
俺は、胸の痛みを隠すように、一際優しく微笑み返した。
だって、口が裂けても言えるものか。
さっきあの瞬間まで、幻は確かに春川が愛している弟だった。
その弟のことを、たかが幻だと思い続け―――
なのに、そう思っているにも関わらず、嫉妬したなどと。
俺は、そっと目を上げる。
春川は清々しい顔をしていて、今度こそトラウマを克服したと思える。
一度は目を背け、夢にすがりつき……
でも、最後は自分の力で立ち向かっていった―――
そんな春川がなんだか眩しく、直視できなかった。
こんなことを考えている自分が、後ろめたくて。
だから俺は、春川から視線を外し、そろそろ力の効力が切れるだろうユリスを見やる。
【クロノ】
「春川。礼は受け取っておくけど、そういう話は全て終わってから」
春川もはっとしたように、身構える。
床に伸びたまま、淡々と一部始終を眺めていたユリスが、せせら笑った。
【ユリス】
「くっだらねー。そいつが弟の夢見てたのは、そんな理由だったわけ?」
【クロノ】
「何度も何度も、弟とさよならしなければならない気持ちは、お前なんかにはわからないと思う」
ユリスはやっと解呪出来たようで、緩慢な仕草で立ち上がった。――だけど、俺は……
【クロノ】
「死神界にも、お前の悪事は伝わってる」
【クロノ】
「肉体も、すぐ探し当てられるはず」
【クロノ】
「お前のことなんか、もうどうでもいい」
【ユリス】
「……っ!なんだと……!」
【クロノ】
「見逃してやるから、さっさとどこへでも行け」
【ユリス】
「情けでもかけたつもりかよ……!」
【クロノ】
「違う。もう誰も、こいつの目の前で死なせたくないだけ」
「クロノ、少しだけ時間をくれるか?弟に話したいことがあるんだ」
【春川 樹生】
「これで、本当に最後にするから、あんたも……聞いててくれ」
【クロノ】
「……わかった」
俺が頷いたのを合図に、春川は弟の頭を撫でる手を止め、静かに口を開く。
穏やかな声が、今はとても悲しく響いていた。
【春川 樹生】
「今まで、オレを慰めてくれて……ありがとう」
【春川 樹生】
「……お前がいてくれたお陰で、オレは毎日幸せだったよ」
【春川 樹生】
「お前が死んでしまってから、ずっと苦しかった」
【春川 樹生】
「……お前はそんな事願ってなかったろうに、罪の意識を抱え込んでた」
【春川 樹生】
「オレは、夢の中のお前に、全て押しつけていたんだよ」
そこで言葉を詰まらせた春川の目から、涙が零れる。
だけど弟に見られていると思ったのか、涙を流し続けながら春川は―――微笑んでいた。
【春川 樹生】
「オレが、弱かったから。一人で抱えきれなかったから」
【春川 樹生】
「……でも、もう大丈夫だ。――今度は、現実のお前と向き合わなきゃいけない」
春川の胸に抱かれている弟の姿は、既に光の粒子となって宙に溶け始めていた。
それは死神である俺の目にも、やけに神々しく映った。
ただの人間と幻に、心を動かされる死神なんて、多分この先も俺しかいないだろう。
【春川 生汰】
「うん。お兄ちゃんも、ありがとう」
かすれる声で、弟が言う。
【春川 生汰】
「いっぱいお話できて、嬉しかった」
そして春川の頬に、透けている手を伸ばす。
【春川 生汰】
「僕を笑わせてくれて、嬉しかった」
春川は弟の手を取ろうとして……唇を噛みしめて、耐えた。
そこから滲んだ血を弟の指がそっと拭い取り、弟は徐々に消えていき―――
【春川 生汰】
「僕の大好きなお兄ちゃん。最後まで……一緒に居てくれて、ありがとう」
そして弟は、春川の腕の中で輝く粒子となって崩れて……
―――跡形もなく、消えた。
【春川 樹生】
「……」
春川は、まだ弟がそこにいるかのように、姿勢を変えなかったが――
腕をだらんと落とすと、俺に背を向けて素早く涙を拭い、振り返った。
【春川 樹生】
「……全部、終わったよ」
【春川 樹生】
「もう、オレは夢なんかにすがらない」
【クロノ】
「春川……良かった」
【春川 樹生】
「ありがとう。クロノのおかげだ」
真っ直ぐな目で、春川が告げる。
生まれ変わったような、今までとは違う声で。
俺は、胸の痛みを隠すように、一際優しく微笑み返した。
だって、口が裂けても言えるものか。
さっきあの瞬間まで、幻は確かに春川が愛している弟だった。
その弟のことを、たかが幻だと思い続け―――
なのに、そう思っているにも関わらず、嫉妬したなどと。
俺は、そっと目を上げる。
春川は清々しい顔をしていて、今度こそトラウマを克服したと思える。
一度は目を背け、夢にすがりつき……
でも、最後は自分の力で立ち向かっていった―――
そんな春川がなんだか眩しく、直視できなかった。
こんなことを考えている自分が、後ろめたくて。
だから俺は、春川から視線を外し、そろそろ力の効力が切れるだろうユリスを見やる。
【クロノ】
「春川。礼は受け取っておくけど、そういう話は全て終わってから」
春川もはっとしたように、身構える。
床に伸びたまま、淡々と一部始終を眺めていたユリスが、せせら笑った。
【ユリス】
「くっだらねー。そいつが弟の夢見てたのは、そんな理由だったわけ?」
【クロノ】
「何度も何度も、弟とさよならしなければならない気持ちは、お前なんかにはわからないと思う」
ユリスはやっと解呪出来たようで、緩慢な仕草で立ち上がった。――だけど、俺は……
【クロノ】
「死神界にも、お前の悪事は伝わってる」
【クロノ】
「肉体も、すぐ探し当てられるはず」
【クロノ】
「お前のことなんか、もうどうでもいい」
【ユリス】
「……っ!なんだと……!」
【クロノ】
「見逃してやるから、さっさとどこへでも行け」
【ユリス】
「情けでもかけたつもりかよ……!」
【クロノ】
「違う。もう誰も、こいつの目の前で死なせたくないだけ」
